元銀行員が語る「資金使途」第1部:資金使途の重要性について

資金使途とは、資金の使い道のことであり、銀行が融資を判断する際に重視するものだとされています。

そのため、当サイトでもしばしば取り上げてきたのですが、当サイトで取り上げる際には会社目線での解説になることが多かったように思います。

今回、元銀行員の知人に融資についてインタビューした際、「資金使途はなぜ重要か」、また「資金使途はどのように見られているか」といったことについても聞くことができましたので、本稿で紹介していきます。

銀行員の目線で考えてゆけば、資金使途が問題視される可能性も低くなり、スムーズな融資に役立つことと思います。

資金使途はなぜ大切なのか?

―――融資が申し込まれた時、どのような対応を意識していますか?

元銀行員:それは、正確な融資をすることですね。

貸し倒れリスクの少ない相手を選んで融資するとか、融資しても問題がない相手、例えば反社会勢力に資金が流れないように融資するとかですね。

その上で、できるだけ早く対応します。

実際には結構忙しくて、それほど早く対応できないことも多いですが。

―――貸し倒れリスクの少ない相手に正確に融資するとは、具体的にどう判断しますか?

元銀行員:決算書とか、担保とか、色々なことが参考になります。

けれど、決算書は全部が本当じゃないのが普通ですし、担保があれば絶対にOKというわけでもないですからね。

ですから、お金の使い道とかは重要だと思いますよ。

―――つまり「資金使途」ですか?

元銀行員:そうです。何にお金を必要としているのかを正しく把握して判断するのですが、これは若手時代にも上司から厳しき指導されます。

―――どうして、資金使途がそれほど重要なのですか?

元銀行員:資金使途って、お金が必要な理由ですよね。

例えば、販売するための商品を仕入れるためのお金が必要とか、製品を製造するための機械を導入するためのお金とか。

それを知れば、何が分かると思いますか?返済状況がどうなるかということが、結構分かるんですよ。

商品を仕入れるために融資を受けるなら、その商品を販売して得た利益を返済に回すのが普通ですよね。

機械を導入するための融資なら、その機械を使って生み出される利益が返済に回されます。

つまり、資金使途を知れば、それを分析することによって、ちゃんと利益がでて返済できるかどうか、ということが考えられるわけです。

利益が出るなら、どれくらいの利益が出て、どれくらいで返済できるかということも推測できます。

あと、返済方法についても大体予測がつきますね。

機械を購入するために融資したお金を、半年後に一括返済してください、なんていう返済方法は無理ですよね。

期待できる利益を踏まえて、だったら何年で返済にしましょうと話しを進めていくんです。

分割返済、それもどれくらいの分割でといったことまで話を広げていくことができますよ。

―――もし、資金使途を把握せずに融資したらどうなるでしょうか。

元銀行員:決算書とか担保だけで判断するとなると、かなり危ないですよね。

そこに問題がなかったとしても、融資を受けたお金の使い道が危なかったら貸し倒れになるかもしれません。

極端な話、資金使途を聞かずに融資して、社長がそのお金で株や仮想通貨に投資して、暴落したらどうなりますか。返済のための財源はなくなりますよね。

決算書や担保には問題がなかったとしても、融資したお金の使い道がまずければ、融資したお金は利益につながりません。

すると、利益から回収することもできません。

その会社の現預金や担保から回収することができるかもしれませんが、審査の時点で利益による回収が見込める場合に比べると、随分危ないですよね。

それに、融資したお金をきちんと活用して、利益を出して、そこからしっかり返済できる会社は、銀行にとっても良いお客さんです。

長く付き合って、銀行も会社もどちらも儲けていくことができるんです。

そのような将来的な付き合いを考えるうえでも、資金使途はきちんと聞いて、そこから返済が見込めるかを確認することが大切なんです。

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―――なるほど。将来の付き合いを考えるうえでも資金使途が重要になるという視点はありませんでした。

元銀行員:全ての銀行員がそのように考えているかはわかりませんよ。でも、私が現役の頃はそういう考え方をしていました。

実際に、将来の付き合いまで考えたほうが銀行にとっても、会社にとってもベターなんですよ。

資金使途からそこまで広げられるなら、そうするに越したことはないですよね。

機械導入の融資で考えると分かりやすいんですけど、機械を導入して、利益の中から返済していくとき、機械っていうとやっぱりそれなりに値段がしますから、結構年数がかかるのが普通ですよね。5年とか、10年とか。

そうなると、返済しながら機械は老朽化していきます。耐用年数が5年の機械だったとしましょう。

6年目以降で故障が出てくるのに、10年返済で組んでいたならどうなりますか?耐用年数以前と以降で、返済に大きく響いてきますよね。

―――でも、会社としては返済期間が長い方がいいと考えますよね。

元銀行員:それはそうです。返済期間が長いほど、1回あたりの返済額が小さくなるから、会社にとってはメリットがあると考えるのが普通です。

しかし、機械となるとそう単純にもいきません。

6年目以降、修理しながら使うにしても、生産力は落ちるかもしれませんし、修理もタダじゃありませんから、資金繰りを圧迫することになります。

10年たたないうちに完全に故障してしまうかもしれません。

そうなれば、新たに機械を購入する必要がありますが、お金がなければ融資で賄うほかありません。

最初の融資が終わるまでの期間、既に破棄した機械の購入代金を返済しつつ、新しく購入した機械の代金も返済しなければなりませんから、会社の負担は大きくなります。

場合によっては、資金が回らなくなることもありますし、そうなる可能性は確実に高まりますよね。

―――適切な返済期間を考えるうえでも、資金使途は大切なんですね。

元銀行員:そうです。だから絶対に聞くんです。

「資金使途は機械の購入ですか。耐用年数はこれくらい、見込めるキャッシュはこれくらい。それなら将来的なことを考えると、何年返済で組むのがよさそうですね」って考えます。

資金使途を聞かずに融資したら、資金を投入したときに期待できる利益も分からないから、返済期間も正確に立てられませんよね。

返済期間が長いと、返済期間中に経営が悪化することもありますから、銀行は早く回収したい。

でも、社長は普通、将来のことまでそう深く考えず、月々の資金繰りをラクにしたいと考えるから、返済期間を長くしたいと考える。

銀行と会社で落としどころを見つけるわけですが、資金使途という観点が欠落してしまうと、正しい落としどころを見つけられません。

それが、将来的に会社の負担を大きくして、経営難の原因になるかもしれません。そうなれば、銀行も当然被害を受けます。

それを避けるために、というかそれ以前にお互いうまくやっていくためにも、資金使途を聞いて、返済条件とか返済期間について考えていくことが大切なんです。

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資金使途を含めた審査の流れ

―――では、資金使途を伝えられたときに、どんなことに気を付けますか?

元銀行員:気を付けるといえば、その資金使途が嘘じゃないかどうかということですね。

仕入れ代金を希望しながら、社長個人の借金返済に充てられたり、何に使われたか分からないなんてこともあります。

そうなれば返済にも影響が出てくるわけですから。

だから、資金使途を聞く時には、返済の財源は?返済方法は?返済期間は?という感じで話を詰めていくんですけど、ここでミスマッチが起こると問題です。

どうせ融資するのですから、ただ問題なく回収できるかどうかという当たり前のことだけではなくて、どうせなら感謝されて良い関係につながるような融資にしたいですよね。

そのような融資をするためには、会社の状況を普段からできるだけ掴んでおくことが大切です。

そうすれば、そろそろお金が必要になりそうだとか、この時期は大体お金が必要になっているとか分かりますでしょう。

すると、異常にも気づきやすくなります。

お金が必要な状況ではないと思っていたのに融資を申し込んで来たら、資金使途は要チェックです。

良い変化にしろ、悪い変化にしろ、資金使途を聞けば会社の変化は分かります。

また、普段から会社の情報にアンテナを張っていると、良くない兆候も見えてくるものです。

取引先への支払いに困っているらしい、社長個人がお金に困っているらしいとか、色々な情報が入ってくることがあります。

そんなときに融資を申し込まれて、資金使途が通常の運転資金となっていれば、鵜呑みにせずに調査していく必要があるでしょう。

―――事前に情報を得ていれば、資金使途について正しく捉えるだけではなく、スピーディな融資にもつながるでしょうね。

元銀行員:そうですね。融資が申し込まれたときに何の準備もできていなかったら、その時点での状況把握に時間をかけて審査していく必要がありますから。

「そろそろ、こんな資金使途で融資が申し込まれるだろう」と予測できていれば、銀行の動きも早いですよ。

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―――資金使途の判断も含めた、審査の流れはどんなものですか?

元銀行員:まず融資の申し込みがあって、融資担当者が融資申込についてその日のうちに報告します。

次に、支店内で協議が行われます。

融資にかかわる人、融資担当者や、取引先によっては担当役席やもっと上席者が絡むこともありますが、会社から提出された資料から業績や財務や、資産状況などを分析して、社長とも面談して資金使途や疑問点を聞きます。

あと、社長が説明したいことがあれば、説明を受けることになります。

さっき言った通り、事前に情報がある程度集まっていたら、実態把握にかける時間が省略されますし、資金使途や返済原資の整合性なんかも考えやすくなりますね。

実態がつかめていなかったら、注意して審査するにしてもリスクは大きくなります。

良くわからない会社には融資しない、新規融資先には保証協会を絶対につけて融資条件も厳しめにするといった判断が普通ですが、これも実態調査が不十分な状態での審査になるからです。

店内で協議した結果をもとに、稟議書が作られていきます。

稟議書には、資金が必要な理由、返済原資や返済方法、金利や保全の条件などを踏まえて、融資を出すべき、あるいは出すべきではない理由をまとめます。

必要に応じて稟議書の裏付けとなる補助資料も添付して。

稟議書が支店長の最終判断でひっくり返ることもありますが、基本的には稟議書で融資しても良いと判断されれば、融資にされるのが普通です。

―――会社から資金使途の説明を受けた時、それが融資にふさわしいものかどうか、どうやって考えていくのですか?

元銀行員:そうですね。お金がどうして必要なのか、何に使うかを聞いてみて、その理由を説明してもらいますね。

借りてでも資金を用意しなければならないんですから、何か理由がありますよね。

資金繰りに問題のなかった会社が、過去と全く同じように経営してきたとすれば、新しくお金が必要になるはずはないんです。

いろんな理由が考えられます。

店舗を改装する、仕入れを増やす、赤字が発生したから補填したい、取引先が支払えなくなって資金繰りが狂った、売れると見込んで仕入れた商品が売れずに仕入れ代金を支払えなくなった、仕入先から現金で支払うように求められた・・・色々な理由があります。

資金が必要となった理由を聞き出すと、その理由に応じて、資金使途の類型に当てはめて考えていくことができます。

それに当てはめてみて、融資すべき合理性があるか、返済原資と返済方法はどうなるかが決まります。

また、それに応じて求める資料も変わってきますね

運転資金を必要としているなら、試算表、月別売上仕入計画、受取支払条件、資金繰り表などが資料となります。

設備資金なら見積書や売買契約書、図面、工事請負契約書などの資料によって吟味していきます。

とまぁ、ざっとこんな流れで考えていきます。

―――今のお話だと、資金使途の判断では理由を聞いてみて、類型に当てはめて考えていくことになりますが、これはどんなタイプの資金使途かということですよね。

それぞれのタイプによって銀行の判断、見方も変わってくると思うのですが、それぞれについてお話いただけますか?

元銀行員:タイプについては、運転資金、一時資金、滞貨資金、赤字資金、貿易関連資金、投融資資金、設備資金といった分け方ができると思います。

銀行員時代の経験から言えば、運転資金が一番力を入れて教えられました

次いで重要とされるのが設備資金、その他の資金についても一応は教えられます。

でも、一番大切なのは運転資金で、「融資は運転資金に始まり運転資金に終わる」と言われるくらいです。

運転資金自体、かなり深い見方をするものですし、資金使途のタイプについて解説しようとすると結構長くなりますよ。

―――大丈夫です。ぜひお聞かせください(第2部へ)。

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まとめ

第1部では、銀行員が考える資金使途の重要性について話していただきました。

また、その重要性を踏まえて、審査の流れについても見てきました。

筆者はこれまで、資金使途について解説するとき、「資金使途を知ることで利益につながるかどうかが分かり、返済についても予測できるため、資金使途が重視される」と解説してきました。

しかし、銀行員の話を聞いてみると、資金使途によって将来的な返済状況まで見据え、取引先がつぶれるような状況にならないよう、返済条件を決めていることが分かりました。

返済条件を正しく設定する手掛かりにもなるのですから、資金使途の重要性がうかがい知れます。

第2部からは、銀行員が資金使途のタイプをどのように捉えているかに迫っていきます。

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