手形を使って行われる不正行為にはいくつかの種類がありますが、中でも融通手形はその代表的なものです。
しかし、銀行が融通手形を疑うことは簡単であり、それによって銀行との信頼関係が壊れてしまうこともあります。
本稿では、融通手形の基礎知識と、銀行から簡単に疑われる理由について解説していきます。
融通手形とは?
受取手形は、架空の手形を計上する粉飾があまり起きません。なぜならば、融資の審査などで手形の現物を見せるように言われたとき、粉飾がばれてしまうからです。
そのリスクを負うよりは、架空の売掛金を計上したほうが弁解しやすいため、架空の受取手形よりも架空の売掛金によって粉飾するのが普通です。
しかし、全く粉飾が起きないわけではありません。手形における粉飾の最たるものが、「融通手形」というものです。

「融通」とは、なんとなくうまくやってのけること、臨機応変に処理していくこと、お金をうまくやりくりすることなどを意味するよ!

「ちょっとお金を融通してくれませんか」というように、お金を貸し借りする際にも使うのだ!
「融通手形」というのも、お金をやりくりするために、うまい具合に振り出された手形のことです。
融通手形の振出人
このような無理な相談が通るのですから、相手先の会社はかなり親密な会社でなければ成り立ちません。
例えば関係会社、同業者、親密な仕入先などに融通手形の振り出しを依頼するのです。
関係会社ならば、融通手形の振り出しに最も都合が良いでしょう。自社より力が弱い関係会社ならば、多少の無理も通ります。
同業者も、同業のよしみで融通手形を振り出すことがあります。
親密な仕入先も、関係に傷をつけたくないと考えて、融通手形の振り出しに応じることがあります。
ほかにも、このような近い関係にある相手先に対し、融通手形を割り引いて調達した資金のうち、いくらかを手数料として支払う約束で、融通手形を振り出してもらうことも良くあります。

もし貴社が、新型コロナウイルスで売上が低迷しているなら、この人達が救済してくれるゾ!
融通手形はバレる?
しかし、このような特殊な流れで振り出されるのですから、融通手形はかなり特徴的な手形とも言えます。
まず関係会社ですが、関係会社は融通手形を振り出すのに最も都合が良い相手です。
もちろん、関係会社の間で取引をして相乗効果を期待することもあるため、全ての手形が融通手形とは言えません。
しかし、融通手形が発生しやすい環境であることは間違いありませんから、銀行が疑いを抱くのも無理はありません。
もし、実際に融通手形であるならば、すぐにバレてしまうでしょう。
次に同業者ですが、同業者間で手形の振り出しが行われる場合、怪しい場合が多くなります。
このように、取引関係になりにくい同業者間で手形が振り出されていれば、融通手形の可能性を疑うことができます。

親密な仕入先からの融通手形は、特に分かりやすいわ。
普通、自社が商品を買う相手なのですから、自社から手形を振り出すことはあっても、仕入先から手形を受け取ることは不自然です。
もちろん、融資手形であることを隠すために、「値引き分を手形で受け取った」、「返品分を手形で受け取った」などと理由をつけることが多いのですが、これもやはり不自然です。
値引きや返品を行う場合、そこでわざわざ印紙代を支払って手形を振り出せば無駄なコストがかかりますから、次回以降の取引で相殺するのが普通だからです。

半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携するなど、この資金調達方法がすごい。

大手企業ともパートナー提携していて非常に安心よ♪
OLTAのサイトはこちらから→ https://www.olta.co.jp/
融通手形の特定は難しい
とはいえ、関係会社や同業者、仕入先などから振り出されており、それが疑わしいものであっても、それだけで融通手形だと断定することはできないものです。
もちろん、このような疑わしい相手先以外で、融通手形が振り出されている可能性もあります。
この時、銀行は当座預金の異動照会を確認することで、融通手形を発見します。
口座情報を確認してみたときに、50万円や100万円といったキリのいい手形がよく決済されているならば、融通手形の可能性を疑います。
普通の商売では、端数までしっかり請求するのが普通ですから、端数のない金額が頻繁に決済されるのは不自然です。

取引の実態がない融通手形だからこそ、端数がないと考えることができるよ!
ところが、それを知っている会社では、わざと端数をつけることによって銀行から怪しまれないようにすることがあります。
このため、受取手形に融通手形が含まれていたり、融通手形の割引を申し込まれたとき、銀行がそれを融通手形であると断定することは難しいものがあります。
そこで銀行は、融通手形を特定することはあまりしません。
それよりも、融通手形かもしれないと疑い、融資審査や与信管理の参考にするために、その会社の資金繰り状況がどうなっているかに注意します。
資金繰りが非常に厳しい会社であれば、資金調達のために融通手形に手を出す可能性は高まります。
この時、なおかつ融通手形を疑われるような兆候があれば、その手形は割引に応じませんし、貸借対照表に計上されている資産にも疑い目を向けます。

銀行から、「これは融通手形ですよね?」などと言ってくることはないよ!
したがって、融通手形の可能性があると思えば、銀行は何も言わずに黙って疑い、取引に慎重になっていきます。
今後、まともな受取手形を使った場合にも、手形割引の利用が困難になるかもしれませんし、そのほかの融資交渉でも、「融通手形の疑いがある会社」という前提で交渉する必要があるため、交渉がかなり困難になってしまいます。
融通手形は、何ら根本的な解決にはつながらず、銀行との関係が悪化するリスクもあるのですから、融通手形を使うのは馬鹿げています。
それよりも、融通手形を使わなくてもいいように、経営改善を図ったほうが賢明です。

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
資金調達プロに関する関連記事はこちら
まとめ
融通手形の特定は難しいため、「うまくやれば、バレることはないだろう」と考える人もいます。
しかし、融通手形の特定は難しくとも、融通手形を疑うことは簡単です。
もし、融通手形に手を出すならば、銀行から疑われて信用を損なう可能性が高いです。また、取引の実態がないのですから、根本的な解決にはなりません。
むしろ、融通手形を頼んだ相手には高い謝礼を払うことも多いのですから、資金繰りに悪影響を与えます。
このように、融通手形を使ってもいいことは一つもないので、決して利用してはならないのです。
コメント