銀行と新規取引を始める場合や、自社の業績や財務状態がそれほど良くない状況で融資を依頼する場合には、信用保証協会の保証を求められるのが普通です。
このような融資では、通常の融資よりも貸し倒れリスクが高いため、信用保証協会の保証をつけることによってリスクヘッジを図るのです。
しかし、銀行から言われるままに信用保証協会を使うのではなく、できるだけ賢く使う必要があります。
そのために、信用保証協会と接触を図ることによって、賢い利用が可能となったり、保証審査がスムーズになることがあります。
本稿では、信用保証協会との接触方法や、その注意点について解説していきます。
信用保証協会とは?
信用保証協会保証付融資とは、信用保証協会の保証を受けることによって銀行から融資を受ける方法のことです。
保証協会の保証を受けることで、会社が返済不能になったときには保証協会が代位弁済してくれるため、銀行の貸し倒れリスクが抑えられます。
これにより、銀行は本来ならば融資しにくい会社にも、融資を出せるようになるのです。

もしくは、これから融資を受けようと考えていて、銀行から保証付融資を提案されたという人もいると思います。
多くの経営者は、保証付融資を提案された時、あまり深く考えることなく受け入れてしまうものです。
経営者としては、ともかく融資を受けなければ資金繰りが回らなくなるのですから、条件付きにしろ融資が受けられればありがたいと考えるのです。
また、銀行との新規取引の場合や、会社の状況がプロパー融資を引き出せない場合には、保証付融資を受けるほかありません。
保証付融資の問題点
信用保証協会を利用して融資を受けることが、必ずしも悪いとは限りません。
しかし、銀行の言われるままに保証付融資を受け入れるのは、あまり良いことではありません。
何の疑問も持たずに保証付融資を受け入れているならば、いつまでたってもプロパー融資を引き出すことはできません。
保証付融資の保証枠には上限があるのですから、いずれはプロパー融資を受けるように「脱保証協会」の努力をしていくべきです。
また、保証付融資では、保証協会に支払う保証料も発生することから、プロパー融資に比べて資金調達コストが割高になってしまうという問題もあります。
したがって、保証付融資を利用するにあたっては、できるだけよい条件で保証を受けることを考えなければなりません。
そのためには、経営者自ら保証協会を訪ねてみることで、良い結果につながることがあります。
また、保証審査がなかなか進まず、資金繰りが切羽詰まっているような状況でも、保証協会を訪問してみることで、審査がスムーズになることがあります。
保証協会への訪問はしても良い
さて、信用保証協会を訪問すると言えば、「そんなこと、考えたこともなかった」という人が非常に多いのではないかと思います。
何しろ、信用保証協会を利用して融資を受ける場合、その窓口となるのは銀行であり、会社と保証協会には何ら直接的な接点がないからです。
銀行や銀行員によっては、会社と保証協会の接点を断つためか、保証協会に訪問してはいけないなどと注意することもあるようです。
しかし、会社と保証協会が接点をもってはいけないなどという決まりは一切ありません。

すなわち、
「ご相談・お問い合わせはお近くの信用保証協会へどうそ」
と記載があり、会社と信用保証協会が接点を持っても良いということが明記されています。
ならば、なぜ銀行は会社と信用保証協会の接触を嫌うのでしょうか。
この理由として第一に考えられるのは、銀行と保証協会が代理委託契約を結んでいることです。
この契約により、保証付融資の案内を銀行に任せることによって、保証協会の負担が減ります。
このため、銀行は会社と保証協会の接触を嫌っているというよりは、接触を勧めないという側面があります。
次に、銀行が保証付融資の案内をした後に、会社が保証協会と接触したことで、銀行と保証協会の案内が異なる場合があります。
保証協会の案内は、保証制度全体を背景とした案内となる一方、銀行の案内はより狭い範囲内での案内になることが多いのです。
例えば、保証協会で10通りの保証を提供しているならば、保証協会はそのすべてを案内できるのに対し、銀行はそのうちの1つの保証制度だけを案内するといったことがよくあります。
銀行と保証協会との案内に差が生じることで、融資交渉が複雑になることを嫌うため、銀行は会社と保証協会の接触を嫌うのです。
つまり、「保証協会とのやり取りは銀行でやりますから、社長は余計なことをしないでください」ということです。

信用保証協会は、会社からの問い合わせを全く拒否しておらず、分からないことがあれば教えてくれます。
信用保証協会と接触するメリット
したがって、信用保証協会の保証付融資を受けるにあたり、銀行からの説明で分からない部分や、納得できない部分があれば、保証協会に聞いてみれば良いのです。
もちろん、経営者自ら保証協会を訪問し、色々聞いてみるのも良いと思います。むしろ、電話で聞くよりも分かりやすいでしょう。
上記の通り、銀行から受ける保証付融資の案内は、会社が十分なメリットを享受できないことが多いです。
信用保証協会が提供するA~Jの10通りの保証制度のうち、自社にとってはEという保証制度が最も適しているにもかかわらず、銀行はAという保証制度しか勧めないようなことがあるからです。
このような場合、会社が保証協会を訪ねて案内を受ければ、自社に最も合う保証制度が他にあるのだと分かります。
他にも、銀行と保証協会のやり取りがどのような経緯で進んでいるかを知ることもできますから、誤った情報が伝えられている場合には訂正することもできます。
銀行が会社と保証協会の接触を嫌っているのだから、そのようなことをすれば融資にマイナスになるのでは?と思うかもしれません。
しかし、保証協会を訪問したことで融資に不利になることはありません。
保証協会が会社との接触を拒否していない以上、それを理由に良くない事態に見舞われるということはないのです。

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
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訪問すべきタイミングは計3回+α
保証協会と接触するにあたっては、銀行に融資を申し込む前と後の2回、そして保証を断られた時の1回、合計で3回がおすすめです。
そのほか、必要に応じて+αの訪問を検討します。
1回目は知識を得るために
保証付融資しか受けられない会社ならば、融資を申し込む前の段階で、なんとなく保証付融資になりそうだと分かると思います。
例えば、初めて融資を申し込む銀行であれば保証付融資を勧められるでしょうし、会社の業績が悪い場合などもそうです。

そうすることで、その保証協会が提供している保証について、詳しい説明を受けることができます。
自社に適した保証制度についても理解できるでしょう。
こうして保証制度の知識を持っていれば、銀行の言いなりになることもありません。
銀行から提案された保証が自社に適していない場合には、「それよりも、こちらの保証を利用したいのですが」などと持ち掛けることで、より良い保証を利用することができます。
これが1回目の訪問です。
2回目はスムーズな融資のために
次に、銀行に融資を申し込んでみて、案の定「保証付融資」を提案されたならば、その後で保証協会を訪問します。
もし、プロパー融資を受けられたならば2回目の訪問はありません。
銀行で融資を申し込み、必要書類を提出し、銀行を通して保証協会への保証を申請します。
その後、3週間ほど経過しても銀行から何の連絡もなかった場合には、保証協会に2回目の訪問をしてみましょう。
なぜ3週間を目安とするのかと言えば、銀行と保証協会の間で交渉がうまくいっていない可能性が高いからです。
会社が銀行を通して保証を申請した時、保証協会から銀行に対する回答は2週間程度で行われるのが普通です。
保証を許可する場合も、拒否する場合も、必ず2週間程度で連絡があります。

そこで、経営者は保証協会を訪問し、それまでの経緯を伝えて、どうなっているかを確認してみるのです。
保証協会と銀行の連絡がどうなっているかを確認するにあたって、わざわざ保証協会を訪問するのではなく、銀行に聞いてみてはどうか?と考える人も多いと思います。
銀行が窓口となっているのですから、ある意味それが普通です。
しかし、3週間たっても何の連絡もないような場合には、銀行に聞いても埒が明かないことが多いです。
そもそも、なぜこんなにも時間がかかっているのかと言えば、
- 銀行と保証協会の間で行き違いが起こっている
- 銀行が書類を提出していない
- 銀行が融資を渋っている
などの理由がほとんどです。
銀行員の手違いで行き違いが起こっている場合には、銀行側の落ち度を隠すためにも、適当な言い訳をされてしまうことでしょう。
したがって、銀行に連絡を入れたとしても正確な様子はわかりません。
銀行員が忙殺されて書類の提出を忘れているなどの場合には、いくら待っていても融資は実行されません。
この場合にも、銀行の落ち度を隠すために言い訳をされ、なんら状況の把握には役立たないでしょう。
銀行が融資を渋っている場合には、会社から銀行に連絡を入れると、実際には保証協会となんの連絡もしていないにもかかわらず、「じつは保証が通らないんです」などと言われることがあります。

申請から3週間経過しても何の音沙汰もないという異常な状況のなかで、銀行に連絡を入れると、このようにはぐらかされたり、融資できないと言い渡されたりすることがあります。
そうならないためにも、融資後3週間を目安に、保証協会に2回目の訪問をするのです。
そうすれば、銀行員の間違いで連絡がうまくいっていないならば、その状況を正確に把握することができます。
融資拒否のために、銀行が保証協会と何ら連絡を取り合っていないならば、その実態も良くわかるでしょう。
銀行に連絡するならば、その後です。
銀行側の問題点を踏まえた上で銀行に連絡をし、「保証協会を訪問したところ、このような状況だと聞かされたのですが・・・」などと伝えれば、銀行は早急に動かざるを得なくなります。
あくまでも、融資を実行するのは銀行ですから、銀行の手違いを糾弾してはいけません。
そのようなことをして銀行を追い込めば、関係が悪化して融資も引き出しにくくなるので、やんわりと注意して、保証協会との適切なやり取りを促すのがポイントです。
3回目は保証を断られた時
3回目に訪問すべきは、保証を拒否されてしまった時です。
保証を拒否されてしまえば、融資は受けられず、資金繰りにも困ってしまいます。
拒否されたことをそのまま受け入れてしまったのでは、会社が困るばかりです。
もちろん、拒否されても仕方ない理由があるならば、そのまま受け入れるべきなのかもしれません。
しかし、拒否されることはないだろうと思っていたのに拒否された場合、例えば、
- 新規取引の銀行のため保証付融資を利用した。業績も財務状態も悪くないのに、保証を拒否されてしまった
- 継続取引の銀行だが、銀行がプロパー融資を出してくれないので保証付融資を利用した。
- 会社の状況が悪いわけではなく、返済も滞りなく続けているのに、なぜか保証を断られた
などの場合です。
このように、保証を受けられて当然なのに保証を受けられなかった場合には、銀行と保証協会の間でやり取りがうまくいかずに保証を受けられなかった可能性があります。

若手の銀行員ならば、経験が浅いという問題があるかもしれません。
逆に、それなりに経験を重ねているはずの年齢(40歳以上)であるにもかかわらず、末席の融資担当者として働いている人にも注意です。
そのような年齢の人は、普通ならばある程度昇進しているのが普通ですから、能力不足のためにその地位にとどまっている可能性があります。
能力不足の銀行員が担当した場合、銀行から保証協会に対する情報の伝達が正しく行われないことがあります。
その結果、信用保証協会が誤った情報をもとに保証審査を行い、保証しないという結論を出しているかもしれないのです。
したがって、本来ならば保証を受けられて当然という会社ならば、保証を断られてもそのまま受け入れるのではなく、保証協会を訪問して確認をとってみてください。

銀行員に原因があり、本来ならば保証を受けられるべきであったとしても、訪問によって保証を受けられるようになるとは考えにくいです。
しかし、その場で保証を承諾される可能性がないとしても、本来ならば審査に通っており、保証を受けられるはずだったと分かることにメリットがあります。
もし、銀行員の能力不足によって保証を受けられなかったとわかれば、銀行に説明して担当者を変えてもらい、再度融資をお願いすればいいのです。
能力に問題のない銀行員が担当し、しっかりと業務をこなしてくれるならば、保証付融資が下りる可能性が高いです。
+αの訪問
さて、最後に+αの訪問ですが、これは保証協会に相談がある場合の訪問です。
特に、担保によって保証枠を引き上げたい場合などには、積極的に訪問して相談してみるのが良いでしょう。
信用保証協会の保証制度では、担保なしで保証を受ける場合、保証枠は8000万円が上限となっています。

もちろん、2億円まで枠が広がると言っても、会社の売上や利益も考慮しながら保証枠を決定するため、担保をつければ必ず2億円まで保証されるというわけではありません。
しかし、限られた枠で保証を受ける必要があるのですから、できるだけその枠は広げておきたいものです。
そこで、担保を使うことで保証枠を広げていくのですが、その際には担保資産の資料などを持参して保証協会を訪問し、どれくらいの担保価値があるかを相談してみましょう。
つまり、会社の資産背景を保証協会に伝えることによって、だいたいどれくらい保証枠が広がりそうか、といった大まかな話をするのです。
例えば、
「うちにはこのような資産があります。今後も、必要に応じて保証をお願いすることがあると思いますが、担保付きでの保証を希望することもあるかもしれません。
参考までに、これらの資産についてご意見をお聞かせください」
といった感じで相談してみるのが良いでしょう。
すぐに保証付融資を受けようと考えていなかったとしても、折を見てこのような相談をしておけば、いざ融資を検討する際の参考になります。
事前に確認を取っておけば、「担保があれば、保証付融資でこれくらい融資が受けられそうだ」ということが分かります。
急にまとまったお金が必要になり、有担保での保証付融資を依頼したところ、思ったほど担保価値がなくて資金繰りに困ることも考えられます。
事前に保証協会に相談し、担保価値や保証上限について把握しておけば、そのような心配もありません。

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保証協会に訪問してどうするの?
さて、保証協会に訪問してもよいこと、そして訪問すべきタイミングが分かったところで、何を持参するのか、それによって何を確認するのかと言ったことを学んでいきましょう。
持参すべきもの
保証協会に訪問する際、手ぶらで行っても意味がありません。
融資に先立って訪問し、保証制度について説明を受けるにしろ、融資を申し込んだ後に確認の意味で訪問するにしろ、会社の状況が分かる資料を持参すべきです。
そのために持参すべき資料は次の5点です。
- 決算書
- 事業計画書
- 資金繰り予定表
- 損益予定表
- 合計残高試算表
決算書と事業計画書くらいは準備していく人が多いでしょうが、十分な備えのためにはこれらを揃えたほうが良いでしょう。
まず、融資申請前にこれらの資料を持参して説明を受ければ、会社のことが良くわかり、それを踏まえて保証制度の説明を受けることができます。

融資申請後や保証を拒否された際に訪問するときも、情報がきちんと伝達されているのかということを確認するためには、これらの資料がなければ話が進みにくいです。
経営者自ら会社情報を持参し、銀行から伝達されている内容と照らし合わせることで、情報伝達のトラブルが明らかになるかもしれません。
保証協会で確認すべきこと
融資申し込み後の訪問では、銀行と保証協会との情報伝達が正しく行なわれているかを確認します。
3週間以上経過しても音沙汰がない場合、保証協会に連絡を入れて訪問し、事実確認を行います。

銀行から申請が通っているものの、情報がうまく伝達されずに3週間という時間が経過していた場合には、自社から情報を提供したほうが確実だからです。
また、保証を拒否された場合に訪問するときも、正しくない情報によって保証を拒否されている可能性があるため、資料は持参します。
このとき経営者は、単に書類を提出するのではなく、口頭で説明したほうが良いでしょう。
もちろん、書類をわざわざ提出するのですから、一応は目を通してもらえると思います。
しかし、その書類で分かりにくいところがあったり、会社の状況が資料に充分に表れていないと感じていたりするならば問題です。
資料作成の当事者である経営者が分かりにくいと感じているのですから、保証協会の担当者も同じように感じる可能性が高いからです。
銀行側から誤って伝えられているものを訂正しようと考えているのですから、正しく伝わらなければ意味がありません。

会社が運転資金の融資を希望し、銀行に対してその内訳などを細かく説明していたとしても、銀行は保証協会に対して、単に「運転資金」などと伝えている可能性があります。
たとえ会社から資料を提出したとしても、銀行から誤って伝えられているならば、保証協会も誤った視点で資料を読みます。
そうなると、せっかく資料を提出しても、誤った認識を正すことができません。
そこで、資料を提出すると同時に、特に説明すべきと思う箇所については口頭で説明し、誤りをきちんと正すことが大切なのです。
銀行員を過信しない
銀行といえば真面目なイメージが強いものですし、保守的で厳格な組織でもあります。
このため、銀行の一部である銀行員の全てに対しても、間違いのない仕事をしてくれるに違いないというイメージを抱きがちです。
しかし、銀行員も人間ですから、過信することなく、能力の優劣もあれば間違いもあると考えるべきです。
保証協会に正しく伝達すべき「A」という会社情報を、間違って「B」として伝えることもあります。
保証協会は「B」という情報をもとに審査した結果、保証はできないという結論に達してしまうかもしれません。
そこで、会社自ら保証協会に問い合わせ、きちんと「A」という情報が伝わっていることを確認するのです。
資料を揃えて保証協会を訪問するためには、それなりに手間もかかります。
しかし、それによって情報の食い違いを正せば、保証をスムーズに受けられるのですから、手間をかける価値は十分にあります。

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自社のアピールもしてみよう
保証協会を訪問すれば、銀行と保証協会の情報伝達ミスを正すと同時に、自社をアピールすることにもつながります。
銀行から保証協会への連絡は、ほとんどの場合事務的に行われるだけで、会社のアピールなどはできないのが普通です。
そこで、せっかく保証協会を訪問するならば、アピールすることも意識しておきましょう。

口頭で説明するのは、あくまでも上記の提出資料について補足説明する場合だけです。
アピールポイントを口頭で説明すると、あたかも保証を依頼しているような形となってしまい、疎まれる可能性があります(保証を依頼してはいけない理由は後述)。
そこで、提出資料の中でアピールし、「保証してもよい」という判断を引き出していくわけですが、その際には
- 業界についての説明を通してアピールする
- 数字によって会社の実力をアピールする
という方法が良いでしょう。
業界からアピールする方法
まず前提として、保証協会は会社経営に疎いと考えてください。
保証協会のスタッフは、保証業務のプロではありますが、それはある意味事務的な作業のプロということであり、実際の経営についてはほとんど知識がないものです。
当然、保証申請をした会社が属する業界のことも良く知りませんし、間違った先入観を抱いていることもあります。
したがって、自社が成長産業を事業としているなど、業界の動向が審査にプラスになりそうな場合には、積極的に業界のレポートなどを提示してアピールすることが効果的です。

- 業界全体に勢いがあること
- 自社も同業他社も順調に成長していること
- その中でも自社が優位な立場に立っていること(他社との差異)
- 今後も順調な成長が期待できること
などを説明すれば、良い審査結果を引き出せると思います。
また、自社が斜陽産業を事業としている場合などには、業界の動向が審査にマイナスの影響を与えるかもしれません。
そのような場合にも、業界のレポートを作ってアピールするのが得策です。
斜陽産業に属している場合、業界そのもののネガティブな印象から、自社の業績や財務内容には関係なく、審査に落ちてしまう可能性があります。
そこで、業界の動向や同業他社の状況を踏まえ上で
- 自社の業績は決して悪くないこと
- 他社と差別化を図っていること
- 斜陽産業において独自の地位を築いており将来的にも問題はないこと
などをアピールするのです。
例えば、斜陽産業に属していたとしても、
- 複数の大企業と長い間取引をしていて業績が安定していること
- 多くの固定客がいて業績が安定していること
などをアピールできれば、急激に業績が悪化して返済不能になることは考えにくく、良いイメージを持ってもらえる可能性があります。

保証協会は、不動産業や建設業、飲食業などに対して保証を出しにくい体質がありますが、それはその業種が保証に好ましくない、返済不能に陥りやすい業種だからです。
その場合にも、業界のレポートを作って経営が安定しにくい事実を受け入れ、その上で、「しかし、自社はそうではありません」というアピールをするのです。
以上のように、業界や業種の簡易レポートを提出してアピールする方法は、銀行交渉でもよく用いられる方法ですが、保証協会との接触の際にも役立つ方法です。
数字からアピールする方法
もう一つの方法は、数字からアピールする方法です。
保証協会の体質として、あくまでも事務的に保証審査を進めていく傾向があります。
そのため、数字を伴わないアピールは効果がほとんどなく、経営者の責任感やリーダーシップといった定性的な要素はプラスになりません(非常識、無責任などはもちろん嫌われます)。

例えば責任感を説明したいならば、これまで受けてきた融資を遅れることなく返済し続けてきたことなどがアピールになるでしょう。
もちろん、自社の順調な業績推移を数字で説明すれば、業界の動向とは無関係に自社がしっかり業績を伸ばしていることを納得してくれるでしょう。
保証してもよいと考える可能性が高いです。
提出資料を作成し、数字を記載していく際には、このようなアピールにつながることを意識しましょう。
保証協会を訪問した際のNG行動
さて、保証協会を訪問する意味やメリットについて解説してきましたが、最後に保証協会でのNG行動を確認しておきましょう。
やってしまいがちなミスでありながら、それによって保証審査に大きくマイナスになることもあるため、十分に確認しておいてください。
アポなしで訪問してはいけない
まず、アポを取ってから訪問することが大切です。
保証協会は公的機関ですから、市役所に訪問するように、アポを取ることもなくふらりと訪ねてもよいと考えるかもしれませんが、それではいけません。
そもそも、保証協会を訪問する理由は、保証制度について分からないことを質問したり、銀行との連絡を確認したり、担保について意見を聞いたりと、多分に「相談」としての意味合いを帯びています。
相談は、相談する側と相談に応じる側の両者が揃って成り立つものです。
担当者が席を外しているなどの理由から、保証協会側に相談を受ける準備がなければ、せっかく訪問しても意味がありません。

保証協会にアポをとる際には、その目的に応じて以下のように連絡するのが良いでしょう。
融資制度の説明を求める場合
「保証付融資を検討しているのですが、保証協会さんの保証制度についてよく理解したうえで融資を申し込みたいと思っています。
自社の状況も踏まえて、保証制度についてご説明いただければありがたいのですが、お伺いしてもよろしいでしょうか」
銀行と保証協会の伝達に疑いがある場合
「銀行さんに保証付融資を申し込んでから、昨日で3週間が経過しています。
しかし、銀行さんからは連絡がなく、こちらから連絡をしたところ、『保証協会とのやり取りに時間がかかっている』などと言われるばかりで、正確なところが分かりません。
資金繰りの関係もあるため、現在の状況を正確に把握できればと思っています。保証審査の結果にかかわらず、審査状況がどうなっているのかをお聞かせいただければありがたいのですが・・・」
- 銀行から保証の申請が届いていなかった場合、銀行に問いただして早急に動いてもらう。
- 銀行から保証の申請が行われていたものの、情報の伝達がうまくいっていなかった場合には、「現状把握のために、一度お伺いしたいと思うのですが」などと伝えて訪問し、資料を提出する。
受けられるはずの保証が拒否された場合
「今回、保証を受けられなかったことについては、仕方がないと思っています。
次回の融資では確実に審査に通るべく、今回の審査結果も踏まえて保証制度について理解を深めたいのですが、一度お伺いしてもよろしいでしょうか」
担保などの相談をする場合
「現在、保証付融資を受けているのですが、今後も保証をお願いすることがあると思います。
その時には有担保での融資なども利用したいと思っているのですが、有担保の場合の保証制度について詳しく知りたく、一度お伺いできればと思っております」

その際には、運転免許書など顔写真付きの本人確認書類を必ず持参してください。
保証申請の状況を確認したい場合などには、個人情報保護法の関係から、本人と確認できなければ相談を受けることができないからです。
保証を依頼してはいけない
最も間違いやすいことなのですが、保証協会を訪問し、保証を依頼してはいけません。
保証制度について相談をしたり、保証申請の状況について確認したりするとき、
- 「この保証制度を利用しようと思いますので、保証をお願いします」
- 「お伺いしたところ、銀行とのやり取りがうまくいっていないようですね。当社の資料を提出いたしますので、資料の内容も検討いただき、ぜひ保証をお願いします」
- 「資金使途にはかくかくしかじかを予定しております。ぜひ、保証いただければ幸いです」
などと言ってしまうことがあります。
もちろん、保証をスムーズに引き出すために訪問しているのですし、保証をお願いしたい気持ちもあるでしょうが、保証を依頼するのはNGです。
あくまでも、保証協会を訪問する理由は、保証制度について理解を深めたり、会社の実情を伝えることで情報伝達をスムーズにしたりすることです。
保証協会は、申請の内容や会社の情報をもとに、良くも悪くも事務的に保証審査を行うだけです。
そこで保証を依頼すれば、道理をわきまえない経営者、非常識な社長などの印象を与えてしまう可能性があります。

例えば、保証協会に相談するにあたって、菓子折りを持って行くような経営者がいますが、それは絶対に避けるべきです。
経営者としては、何ら特別な意図があるわけでもなく、「お忙しいところを、どうも・・・」という気持ちで菓子折りを持って行くだけかもしれません。
しかし、保証協会は公的機関であり、そこで働く人達は公務員のようなものですから、たとえ菓子折りにせよ「ワイロ的なもの」に対して敏感です。
マイナスイメージになるばかりですから、NGと考えてください。
審査に文句をつける
どのような状況にせよ、保証協会の審査に文句をつけることはNGです。
例えば、保証審査がなかなか進まず、3週間以上が経過して保証協会に連絡を入れ、訪問したとします。
確かに、保証協会の審査は遅れているかもしれませんし、それによって自社の資金繰りに悪影響をもたらしているかもしれません。
しかし、保証協会の審査が遅いなどと文句をつけるのは筋違いです。
保証協会は、公務員らしく事務的に保証審査をしており、会社によって審査を遅らせたり、早くしたりすることはありません。
情報の伝達がうまくいっていなかったとしても、それは銀行が悪いのかもしれません。

書類ベースで審査をするのですから、多少文句をつけたくらいでは審査にマイナスになることはないでしょう。
しかし、あまりにも激しく責めたり、しつこく責めたりすれば、それによって保証協会との関係が悪化する可能性もあります。
同様に、審査に落ちた後で保証協会を訪問する場合にも、審査結果に文句をつけるようなことは、百害あって一利なしです。

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
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まとめ
経営者が保証協会を訪問することは、一般的ではありません。
銀行がそれを推奨することもありませんし、銀行が窓口となっている以上、あくまでも交渉するのは銀行だけと考えるのが普通です。
しかし、保証協会を訪問することには意味があります。
それによって保証制度をよく知り、効果的に利用することにつながります。
銀行の落ち度によって審査が進まない、あるいはマイナス方向に進んでいる場合にも、流れを正せる可能性があります。
保証協会を訪問する際の注意点もよくわきまえて、必要に応じて保証協会を訪問してほしいと思います。
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