銀行から融資を受ける時には、その銀行と会社の日常的な取引も審査の対象となります。
銀行と会社が普段から色々な取引をしており、会社が銀行の収益にもたらす影響が大きいほど、融資も有利に進む可能性が高まるのです。
本稿は、銀行が日常的な取引をどのように考え、融資にどのような影響を与えるかを解説していきます。
日常取引の影響
銀行から融資を受けるには、これまで取引のなかった銀行に飛び込みで申し込むのではなく、既に取引がある銀行に申し込むのが普通です。
そこで、融資を申し込む銀行と、日常的にどのような取引をしているのかということが影響してきます。

ひとつは融資を行なうことによって利息収入を得ること、そしてもうひとつは日常の取引で得られる様々な手数料です。
利息や手数料によって銀行にもたらす利益が大きい会社ならば、それだけ深い付き合いということになり、融資の相談もしやすくなるものです。
このことから、銀行は融資審査にあたって、その会社とどれくらい深い付き合いであるのかを見ることになります。
もちろん、いくら深い付き合いであろうとも、決算書の内容が悪ければ、銀行は融資を拒むものです。
しかし、財務内容や業績が多少悪い状態で融資を申し込んだ時、その会社が普段から深い付き合いをしていれば、将来的な経営計画などを示すことによって、融資を受けられる可能性も出てきます。
実際に元銀行員に話を聞いてみても、日常的な取引がプラスになることはよくあると言っていました。
日常的に深い付き合いがある会社の融資申し込みに対しては、稟議書にその旨の情報も必ず盛り込み、審査に通過させるように図ることも多いのです。
このことから、銀行との日常的な取引が多ければ、融資審査にあたってのプラス材料になります。
これによって審査結果が覆るようなインパクトは持ちませんが、多少は融資を有利に進めるための要素になります。
そのため、日常から心がけておいた方が良いでしょう。

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意外に大切な預金額
銀行と会社の取引のうち、代表的なものは預金です。
銀行の主な収入源のひとつは利息収入であり、利息は低金利で預かったお金が原資となるのです。
銀行は低金利でできるだけ多く預かり、高金利でできるだけ多く貸し付けることが重要となります。
そのため、銀行に対してどれくらいの預金をしているかということが、日常取引の中でも重要となります。
銀行がその会社に対して、どれくらいの金利でどれだけの融資を行なっており、一方でどれくらいの金利でどれだけの預金を行なっているのかを見て、その会社との取引採算を見ています。

実効金利で見る方法は原始的な方法で、長く使われてきた方法ですが、最近では本支店方式が主流になりつつあります。
では、それぞれの方法を見ていきましょう。
実効金利はこう見る
実効金利とは、銀行が受け取る実質的な利息率のことです。
融資を行い、元金と一緒に受け取る利息が銀行の収入になるわけですが、同時に銀行は会社から受ける預金によっても利益を出していきます。
それを踏まえて実効金利を算出し、取引する会社の採算を見ていくのです。
実効金利を算出するための計算式は次のとおりです。
(融資額×融資利率-預金額×預金利率)÷(融資額-預金額)=実効金利

銀行はA社に対し、融資利率2%で3000万円の融資をしています。
一方、預金金利0.01%で1000万円の預金を受けていたならば、実効金利は以下の通りになります。
(3000万円×2%-1000万円×0.01%)÷(3000万円-1000万円)=0.02995
このように、実効金利は約3%になることが分かります。
これは、銀行はその会社に融資を出し、またお金を預けてもらうことによって、約3%の利息収入を得ていると考えることができるのです。
しかしながら、実効金利で考えた場合には、具体的に融資からいくら儲かり、預金からいくら儲かったかを知ることはできません。

また、預金額が融資額を上回った場合には、上記の計算式の分母がマイナスになってしまい、実効金利もマイナスになるというおかしな結果になります。
しかし、実際に預金額が融資額を上回るケースもあるわけで、より正確に取引採算を計算するために、本支店方式が用いられるようになっています。
本支店方式
本支店方式とは、実効金利で見えてこない部分を見るために、最近主流となりつつある方法です。
本支店方式の計算方法は、実効金利よりもやや複雑で、次のように算出します。
{融資額×(融資利率-本支店レート)}+{預金額×(本支店レート-預金金利)}÷融資額
本支店レートとは、その銀行と本店と支店の間で資金を移動させる際の利率のことです。
同じ銀行内で資金を移動させるため、本来ならば利息など不要なのですが、各支店の独立性を高めるために利息を付けているのです。
つまり本支店方式とは、銀行の支店が本店から資金を借りて銀行に融資し、また一方で会社から受けた預金をそのまま本部に預けるという考え方を踏まえて、取引採算を算出する方法です。
本支店レートを見ると、取引採算をより具体的に見ることができます。

銀行はB社に対し、融資利率2%で3000万円の融資をしており、本支店レートは0.5%です。
一方、預金金利0.01%で1000万円の預金を受けています。
つまり、0.5%の金利で本店から資金を借り、それを2%の金利でB社に貸し付けます。
その一方でB社から支店には1000万円の預金を受け、そのまま本部に金利0.5%で預け入れます。
この場合の取引採算は、以下の通りになります。
{3000万円×(2%-0.5%)}+{1000万円×(0.5%-0.01%)}÷3000万円≒1.7%
となり、この会社との取引採算が1.7%であることが分かります。
本支店方式では、分母がマイナスになってしまう事態も避けられますから、あらゆる会社に対して取引採算を計算するのに役立ちます。
さらに、この計算式を分解してみると、より詳細に取引内容を計算することができます。
本支店方式の計算式のうち、{融資額×(融資利率-本支店レート)}の部分は融資によって儲かる金額。
「預金額×(本支店レート-預金金利)」の部分は預金によって儲かる金額を表します。
このケースでは、融資によって45万円儲かり、預金によって4.9万円儲かり、合計49.9万円儲かることが分かります。
このように、本支店方式では、具体的に融資と預金でそれぞれどれくらい儲かり、その結果取引採算はどれくらいであるかを知ることができます。
預金額は大きければ大きいほど良い
融資を受ける銀行が、取引採算を計算するときに。実行金利と本支店方式のどちらを用いているかはケースバイケースです。
融資量でも預金量でも、それが大きければ大きいほど銀行が儲かることが分かります。
つまり、融資を申し込む銀行に対して、会社が預けているお金が大きければ大きいほど、銀行の収益への貢献度は高いということです。

銀行員が作成する稟議書でも、その会社がたくさんの預金をしていて、そこからあがる収益は無視できないものだと記載してくれる可能性は高いです。
銀行との取引において、「預金額を増やしてほしい」と依頼されたり、「当座預金と普通預金の平均残高を〇万円以上に保って欲しい」と依頼されたりすることがありますが、これは融資額と融資金利を踏まえた上で、取引採算を一定以上に保つためです。

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手数料
融資と預金による収入以外にも、様々な取引によって生じる手数料も銀行の大切な収入源になります。
会社が銀行を利用する理由は、融資と預金だけではありません。
振込、手形取立、外国為替、貸金庫、インターネットバンキングなど、色々な用途で利用しており、その際には手数料が発生します。
これらの手数料の多くは少額ですが、それらを積み重ねると結構大きな金額になってくるため、銀行がこれを無視することは決してありません。
銀行は、各種手数料による収入も記録し、取引先企業の情報として保管しています。
その会社に融資を出せば、付き合いはより深くなり、より多くの用途で利用してもらい、手数料収入が増えることを期待できます。
このような関係が確立されていれば、融資審査の際の多少のマイナスを補填することができます。
振替口座への指定
公共料金や保険料金など、様々な料金の支払いの振替口座にしておくことによっても、銀行は手数料収入を得ることができます。
そのため、銀行はできるだけ多くの振り替えに利用してほしいと考えています。
また、振り替えへの利用頻度が高い口座は、預金残高も高く保たなければならなくなります。
このため、色々な用途で振替口座に指定しておくということは、引落手数料が増えること、預金残高が増えることの二つの理由によって、取引採算が良くなるのです。
その他の取引
その他の取引も充実させた方が好ましいです。
まず、グループ全体の収益への貢献度が挙げられます。
銀行には色々な関係会社があり、グループでリース会社や証券会社や保険代理店と関係していることがあります。
機会があれば、それらの関係会社も積極的に活用することによって、銀行との関係を深めていくことができます。
他にも、自社に関係会社の取引や、従業員の取引も銀行に紹介することでも、銀行と良好な関係を築き、融資を通すために役立ちます。
銀行は、関係会社からの預金や手数料からの収入を得られます。
また従業員の給与振込口座に利用してもらったり、住宅ローンの際にも紹介してもらったりすれば、その会社の実質的な取引採算を高く評価するようになります。

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まとめ
銀行が会社の融資の際、日常の取引をどう評価していくかということが、良くわかったと思います。
銀行は、その会社との取引をトータルで判断しています。
単に融資のことだけを考えるのではなく、預金や各種手数料、関連会社や従業員の紹介なども含めた、総合的な取引採算を高めることを意識して取引しておくと、融資を有利に進めることができるのです。