銀行に提出する書類のうち、最も重要な資料は決算書です。
決算書は貸借対照表と損益計算書から成り立ち、この中には、経営者がぜひ確認しておくべきチェックポイントがあります。
また、決算書の提出時期によっては必要となる、試算表についても知っておくのが良いでしょう。
本稿では、誰にでも簡単にできる、決算書のチェックポイントを紹介していきます。
貸借対照表のチェックポイント
貸借対照表とは、会社の財務状態を資産の部と負債および資本の部にまとめた表です。
「バランスシート」や「B/S」と呼ばれることもあります。
では、貸借対照表のチェックポイントから見ていきましょう。
純資産(自己資本)
純資産とは、会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額であり、会社が自由に使えるお金のことです。
このため、負債を他人資本と言うのに対し、純資産を自己資本とも言います。
純資産は、大きければ多いほど財務体質が良いとされます。
逆に、純資産がマイナスになると、それは自己資本より他人資本の方が大きいということです。
すなわち自己資本全てを以ってしても借金を返済できないという事です。
もっと言えば会社の不動産・在庫・機械・車両など全て売っても借金を返済できない状態です。
これを債務超過といい、債務超過の会社は融資を受けるのが非常に困難になります。

純資産が大きく、自己資本比率の高い会社は、潰れにくい会社であると見なされ、融資を受けやすくなります。
自己資本比率は、40%以上あれば非常に融資を受けやすくなるため、これを目指すのが良いでしょう。
自己資本比率を算出するためには、自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100です。
流動資産・当座資産・流動負債
貸借対照表の資産の部には流動資産という項目があり、負債の部には流動負債という項目があります。
流動資産とは、1年以内に現金化できる資産のことを言います。
既に現金として持っている現預金、数ヶ月後に販売予定の棚卸資産、数ヶ月後に回収予定の売掛金や受取手形などがこれに当ります。
このうち、売掛金や受取手形だけを指して、当座資産とも言います。
流動負債とは、1年以内に支払わなければならない負債のことです。
1年以内に返済予定の短期借入金や、数ヶ月後に支払わなければならない買掛金や支払手形などが含まれています。
流動資産と流動負債を使った、流動比率という指標があります。
これは、流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100という計算式によって算出されます。
これが100%以上(流動資産の方が多い状態)であり、なおかつ大きいほど評価されやすいです。

というのも、当座資産が大きいということは、売掛金や受取手形が大きいということです。
それを詳しく見てみると、回収サイトが長かったり、不良債権が含まれていたりする可能性があります。
また、当座資産が大きければ大きいほど売掛金回収遅延や回収不能のリスクも高くなるからです。
したがって、次のように取り組みをし、流動資産は大きく、当座資産の割合は小さいという状態を目指していく必要があります。
- 普段から回収サイトを短縮する
- 可能ならば一部を前受金で支払ってもらう
- 不良債権発生防止のための与信管理を徹底する
固定資産・固定負債・固定比率
固定資産とは、会社の所有する不動産、車両、設備などのことであり。
長期間にわたって使用される資産のことです。
固定負債は、決算日から1年以上が経過した債務です。
固定資産を自己資本で割った指標として、固定比率というものがあります。
これは、自己資本における固定資産の割合を示す指標であり、固定比率が大きい場合には、設備投資が過剰になっている疑いがあるため、融資の際にマイナスになる可能性があります。
固定比率を算出するには、固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100という計算式を用います。
償還年数
その他に注目しておきたいものとして、償還年数があります。
償還年数とは、会社が負債を全額返済するまでに何年かかるかという指標です。
償還年数は、償還年数=有利子負債÷(営業利益+減価償却費)で計算します。
会社が利益の中から負債を返済していき、それが何年で完了するかということです。
一般に、償還年数は5年以内が望ましいとされており、長くなればなるほど融資は厳しくなるでしょう。
なぜならば、償還年数が長いということは、借入が大きすぎる、あるいは利益が少なすぎる状態です。
そのような会社に融資してしまうと、融資したお金を回収するまでに長い時間がかかってしまい、全額を回収するまでの間に会社の経営が傾くリスクも高まるからです。

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損益計算書のチェックポイント
損益計算書とは、会社の科目別の収益と費用を記載し、当期の純損益が分かるようにしたものです。
「PL」と呼ばれることもあります。
損益計算書のポイントは、主に売上と利益にあります。
売上と利益の伸び方は?
損益計算書で最も注目されるのは、売上と利益です。
銀行によっては、会社の成長性を見るために、損益計算書を3期分提出するように求め、売上と利益の増減率を見ることもあります。
ここで問題となるのが、売上と利益の伸び方です。
売上も利益も同じように伸びていれば、増収増益ですから何も問題ありません。
また、売上が減少することは一般的には好ましくありません。
しかし、その中で利益が増加して減収増益になっていたとすれば、経費の削減や利益率の向上に努めた結果、経営の効率化に成功したということですから、評価の対象になります。
しかし、売上が増加して利益が減少する、つまり増収減益になっていたならばどうでしょうか。
これは、経費が無駄に発生したり、仕入れや販売での条件が悪化したりして利益を圧迫している可能性が高く、銀行融資を受けることはかなり厳しくなります。
以上のことをよりよく理解するためには、売上高・営業利益・経常利益について、もう少し掘り下げてみるのが良いでしょう。
売上高
銀行が最初に確認するのは売上高で、その増減を確認します。
返済の原資は利益とは言いますが、利益は売上に含まれるものですから、元をただせば返済原資は売上にあるともいえるのです。
したがって、売上を前期と今期で比較したり、過去3期分の推移を見たりして、会社の売上が上昇傾向にあるか、下降傾向にあるかを見ていきます。
上昇傾向ならば基本的に問題ありません。
しかし下降傾向の場合には、どのように対策するかを聞かれるため、対策打ち出せなければ融資が難しくなります。
このように、売上高の推移は銀行にとって大きな関心事であり、質問されることも多いものです。

営業利益・経常利益
営業利益とは、本業での利益のことです、営業利益を見ることによって、その会社の収益力を見ることができます。
つまり、営業利益が出ていない会社は、事業を続けるほどに赤字になっていく会社ということです。
経常利益は、営業利益に加え、財務活動や投資活動の損益を加味したものです。
これが、最終的な返済する力ということになりますから、融資の際には特に重視されます。
経常利益が赤字の会社は融資を受けられないという理由も、ここにあります。
貸借対照表と損益計算書における上記のポイントは、融資審査の際に銀行が注目すべきポイントです。
簡単にチェックできる項目ですから、会計の知識がない人でもチェックしておくようにしましょう。

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試算表の考え方
試算表とは、総勘定元帳を集計した表であり、これを見ることで総勘定元帳の合計額や残高が分かるようになっています。
このことから、月ごとの決算書のようなものだと言われることもあります。
融資を申し込む時期が決算から3ヶ月以上経過している場合には、試算表を提出する必要があります。
融資を申し込むにあたって、試算表は当たり前に利用される資料ですから、銀行に希望される以前に、自ら提出するのが良いでしょう。
もし、融資の申し込みの際に試算表を要求され、作っていないことが分かると、「試算表を普段から作っていない=資金繰りへの意識が低い」とみなされ、印象が非常に悪くなります。
試算表は最新の決算書
試算表は、月ごとの決算書のようなものです。
当月はまだ当月の資金繰りの途中でしょうから、前月の試算表が出来上がっていれば、その試算表が会社の経営状態を示す最新の決算書ということになります。
したがって、前期の決算書ではそれなりであったものが、最新の試算表から業績がよいと判断されれば、融資に非常にプラスになります。
逆に、前期の決算書ではそれほど悪くない内容が、最新の試算表では悪いと認識された場合、大きくマイナスとなり、融資を受けられなくなる可能性もあります。
もちろん、最新の試算表の内容が悪かったとしても、その理由が一過性のものであればフォローが利きます。
したがって、融資を依頼する時点での最終の試算表の内容が悪いならば、しっかりと説明できるように準備しておくことが大切です。
自主的に提出しよう
銀行は、融資先の業績を常に気にしています。
もし業績が急に悪化し、貸し倒れになるとすれば、銀行が大きな被害を受けることになるからです。
しかし、銀行の担当者はたくさんの融資先を担当していますから、それぞれの会社を訪問して、最新の試算表を提出するように求めることは不可能です。
そこで重要となるのが、自社から自主的に試算表を提出することです。
そうすることで、ごまかしの利かない関係を作っているということになりますから、銀行は会社を信用することになります。
したがって、銀行はそのような会社をプラスに評価します。
さらに、銀行を毎月訪問していると、いずれ課長や支店長といった上席者と面会の機会を得られることもあります。
そのようにして銀行とパイプを作っておくと、たくさんの融資先の中の一社ではなく、特別な一社と認識されることになり、銀行と良い関係を築く上でも役立ちます。

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最後のチェックを
では、決算書を提出する前に、最後のチェックを行ないましょう。
銀行名と支店名のチェック
まずは、提出前に決算書をはじめとしたすべての書類をチェックし、銀行名と支店名をチェックしましょう。
そのくらいのことは間違えないと思ってチェックしない人も多いでしょうが、銀行の統廃合によって銀行名や支店名が変わっていたのに、それを知らなかった、あるいはつい古い名称で資料を作成してしまったというミスがあります。
融資を申し込むということは、「貸してほしい」と頼むだけではいけません。
「自社に貸しませんか?(そうすれば元金は問題なく回収でき、利息も稼げますよ)」と売り込むことが大切であり、だからこそ決算書その他の資料でアピールしていくのです。
そんな中で、相手の名前を間違えていたということになれば、どんなに良い資料を作っていても台無しです。
税理士に依頼すれば数字は正確ですが、それ以外が正確であるかどうかということは、経営者自ら確認すべきなのです。
借入金の表記は区別されているか?
借入金にはいくつかの種類があります。
中でも、役員や株主などからの借入金と、銀行からの借入金は区別するべきです。
前者を「役員長期借入金」、後者を「長期借入金」として区別するのです。
役員や株主からの借入金は、短期間で返済を求められるものではないため、資本とみなすように金融庁から銀行に指導がなされています。

なぜならば、一緒にした借入金から、役員長期借入金を差し引けば負債が小さくなり、さらに役員長期借入金を資本に繰り入れれば、自己資本が厚くなり、自己資本比率が高まり、銀行からの評価が高まるからです。
したがって、借入金は区別すべきものをきちんと区別し、評価アップにつなげることが大切です。
経常利益が赤字ではないか
経常利益とは、上記の通り、営業利益に財務活動や投資活動での損益を加味したものです。
これが会社全体での収益力となります。
経常利益が黒字の会社は、基本的には稼ぐ力があると見なされます。
しかし、中小企業の中には、節税のために役員報酬を大きくし、経常利益がマイナスになっているケースが多いです。
経常利益が赤字の会社は融資が非常に厳しくなるため、注意が必要です。
資料は豊富に
最後に、資料は豊富にしておくべきです。
銀行から資料の指定をされるとすれば、それは最低限の資料に過ぎません。
最低限の資料とは、銀行が融資審査のために最低限必要なものということであり、その資料だけでは会社の特徴やアピールポイントが伝わらない可能性が高いです。
したがって、自社の事業内容を分かりやすくまとめた資料を提出することが重要です。
自社のパンフレットがあるならば、そのような資料も自社をアピールするのに役に立ちます。
銀行としても、稟議書に盛り込める内容が増えるため、稟議書が書きやすくなり、積極的に、融資審査を進めてくれる可能性が高まります。
また、後で追加資料を求められると、提出から確認までに時間がかかり、場合によっては追加資料の提出が複数回に渡って、審査が遅れることもあります。
このため、最初から資料を充実させておくということは、審査をスピーディに進めるうえでも役立ちます。

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まとめ
本稿では、基本的なことについて書いたため、既に知っている情報も多かったかもしれません。
しかし、銀行融資とは、なにも奇をてらったことが必要なわけではありませんし、特別に際立ったことが必要なのでもありません。
基本的なことに忠実に、銀行が求める情報を的確に提出し、その内容に問題がなければ、融資を受けることができるのです。
したがって、今一度基本に立ち返り、自社の決算書の内容を見直してみるということは、有益なことだと思います。