多くの場合、中小企業が銀行に融資を依頼すると、保証協会付き融資ならば融資できると持ち掛けられることでしょう。
なぜ銀行は保証協会をつけることを好むのかを知らず、なんとなく保証協会を利用している経営者も多いと思います。
しかし、銀行が保証協会を好むことには、明確な理由があります。
それを知れば、銀行との交渉に役立つ知識を得ることができます。
本稿では、銀行が保証協会を好む本当の理由について迫っていきます。
銀行が信用保証協会を好む理由
多くの中小企業では、銀行に融資を依頼した際、信用保証協会の保証を付けた上での融資を提案されると思います。
信用保証協会をつけない「プロパー融資」が出ることは容易ではなく、多くの場合は保証協会付き融資で借りることになるでしょう。
多くの経営者は、なぜ保証協会付き融資になるのかを考えることなく、借りられるならばありがたいと考えてしまうのです。
それにより、金利の他に保証料を支払い、割高な調達コストで資金調達を行っています。
信用保証協会を利用するにしても、なぜ銀行がそのように保証協会を好むのかを知る必要があります。
銀行が保証協会を好む理由を知れば、銀行との交渉に役立つ知識もたくさん得られるからです。
「彼を知り己を知れば百戦して危うからず」といいますが、相手が好む理由を知れば、交渉に役立てることができます。
さて、銀行が保証協会を好む理由には、以下の4つが挙げられます。
- 銀行の保険として役立つから
- 銀行員の個人成績に反映されるから
- 銀行の利益保全に役立つから
- 融資を断る理由として便利だから
では、これらの理由について見ていきましょう。

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銀行の保険として役立つから
銀行が保証協会付き融資を好む最大の理由は、保証協会付き融資ならば、保証協会が融資を保証してくれるからです。
つまり、万が一貸し倒れになった際には、保証協会が代位弁済をしてくれるため、銀行にとっての保険になるのです。
例えば、ある会社に対し、銀行が1000万円を融資したとしましょう。
これが貸し倒れになってしまったならば、銀行が頑張って回収を図ってもどうにもならないことも多く、民間のサービサーに数十万円で債権を売却することになります。
つまり、担保などをとっていなければ、900万円以上は貸し倒れる可能性が高いです。
しかし、保証協会付き融資ならば、保証協会が代位弁済をしてくれます。
銀行と保証協会が貸し倒れを共有する「責任共有制度」を利用していた場合でも、銀行が受け持つ貸し倒れは、融資残高の20%に過ぎません。
つまり、900万円の貸し倒れが発生した場合、その20%に当たる180万円の損失に抑えることができるのです。
銀行は、この保険効果を狙って、中小企業に保証協会付き融資を勧めます。

貸し倒れの際に代位弁済をしてもらったら借金はチャラになるというのであれば、会社にとっても保険効果があると言えるでしょう。
しかし、保証協会が代位弁済したものに関しては、保証協会から会社へと請求されることになります。
たまに、保証協会付き融資を受ける際に保証料を支払ったことで、万が一の貸し倒れの際には借金を肩代わりしてもらえると勘違いしている人もいるのですが、借金は全く減らないということを知っておいてください。

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銀行員の個人成績に反映されるから
次に大きな理由は、銀行員にとってもメリットがあるからです。
保険効果という絶大な効果がある保証協会付き融資は、銀行にとって非常に好ましいものです。
ですから、銀行としても銀行員に対し、なるだけ保証協会付き融資を出すように奨励します。
もちろん、明確に「プロパー融資よりも保証協会付き融資を出せ」と指示するわけではないのでしょうが、銀行員のボーナス・昇進などに関わる成績には、保証協会付き融資がかなり絡んでいます。

このポイントは、「1年以上のプロパー融資は100万円につき100点」などと決まっているのですが、「保証協会付き融資ならば1.5倍のポイントになる」などの仕組みになっているのです。
つまり、銀行員が多くのボーナスをもらったり、早く出世したいと思えば、プロパー融資よりも保証協会付き融資を出した方が手っ取り早いと言えます。
だからこそ、銀行員は融資希望をした会社に対し、保証協会付き融資を提案することが多いのです。
銀行は、保証協会付き融資を強烈に進めてきます。
その第一の理由は保険効果があるからです。
しかし、そのほかにも銀行内の評価制度の中で、保証協会付き融資を出すように銀行員をけしかけているからこそ、保証協会付き融資を利用させられるという側面もかなりあると言えます。
銀行の利益保全に役立つから
保証協会付き融資を利用すれば、上記のように絶大な効果が得られます。
銀行にとっても、銀行員にとってもメリットがありますから、保証協会付き融資を勧めないはずがありません。
しかし、銀行にとっては保険効果以外にも、利益保全効果があります。
利益保全効果について知るためには、銀行の「貸倒引当金」という仕組みについて理解しておく必要があります。
銀行は、プロパー融資を出した場合には、融資先の信用状況に応じて、融資額の数割をプールしておく必要があります。
これは、万が一貸し倒れになった時に備えて積み立てておくお金であり、これを貸倒引当金と言います。

融資先のランクが下がれば、より多くのお金を積み立てる必要が生じ、ランクが上がれば積み立てるお金は少なくなります。
このランクのことを、自己査定と言います。
自己査定には、融資先の状況に応じて、通常先、要注意先、要管理先、破たん懸念先などに分けられます。
通常先や要注意先ならば無担保融資額の数%を積み立てるだけでいいのですが、要管理先になると無担保融資額の20%以上、破綻懸念先になると無担保融資額の70%以上の貸倒引当金を積むことになります。
融資先の自己査定が下がるタイミングは、決算内容が悪かったとき、返済が滞ったときなど、色々あります。
このようなことが起こると、万が一の貸し倒れの確率が高まるため、より多くの貸倒引当金を積み立てることとなります。
もちろん、貸倒引当金として積み立てたお金は、他の用途に流用するわけにはいかず、ただただプールされているだけのお金です。
銀行としては、お金をそのように遊ばせておくのではなく、有望な融資先を見つけ貸し出し、利息収入を得たほうが良いと考えるのは当然のことです。

利息や手数料などから得て来た利益を、貸倒引当金としてプールし、活用できないとなれば、これほど効率の悪い利益の使い方もありません。
例えば、金利3%で1000万円の融資を出したとしましょう。
融資当初は正常先に認定しており、貸倒引当金も数%で済んでいました。
しかし、融資後まもなく要管理先まで自己査定が落ちて得しまい、20%の貸倒引当金をプールしなければならなくなりました。
つまり、3%の利益(1000万円×3%=30万円)のために、20%の現金(1000万円×20%=200万円)をプールする必要が生じたのです。
その後、破綻懸念先まで自己査定が下がれば、70%もの現金をプールする必要が生じ、効率はさらに悪化します。
このように、融資先の信用度が下がるということは、銀行の利益から捻出する貸倒引当金が多くなるということであり、銀行の利益を食いつぶすことになってしまいます。
しかし、保証協会付き融資ならば、この心配はありません。
万が一の際にも保証協会の保証がありますから、自己査定が下がりにくくなり、貸倒引当金のプールも少なくて済みます。
これにより、銀行は利益をより活用できるようになり、大きなメリットが得られることになります。
つまり、保証協会付き融資には、銀行の利益を保全する効果があるのです。

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融資を断る口実として便利だから
その他のメリットとして、会社に対して融資を断る口実に役立つということです。
通常、企業が融資を打診した際には、以下のような流れで融資が行われます。
- 銀行は会社に対し、資金使途、返済手段、担保条件などを尋ねた上で、保証協会付き融資を提案する。
- 会社が受け入れると、稟議が行われる。
- 稟議でOKが出たら、保証協会に提出する「信用保証委託申込書」が銀行から会社に渡される。
- 会社が記入して銀行に戻すと、銀行は「信用保証依頼書」に所見を書き込み、信用保証委託申込書に添付し、保証協会に送る。
- 保証協会の審査が始まる。
- 問題がなければ、保証協会から銀行に「信用保証書」が贈られる。
- 銀行は信用保証書を得たことを踏まえ、再度稟議を行う。
- 稟議で問題がなければ、融資が実行される。
このように、保証協会付き融資では、たくさんの書類のやり取りが行われます。
これだけ書類のやり取りが多いと、忙しい銀行員のことですから、時に書類を送り忘れていたり、書類を紛失してしまったりすることがあります。
このような場合、まさか「送り忘れていたのでもう少し待ってください」、「書類を紛失したので、もう一度信用保証委託申込書を書いてください」などということはできません。
そこでどうするかというと、会社に対して「信用保証協会の審査に落ちてしまい、融資が出せなくなりました」などと言って、保証協会を口実にするのです。

このほか、銀行はできるだけ融資を断りたくないものです。
融資を率直に断ってしまうと、そこでゴネようとする経営者、逆切れする経営者などもおり、銀行員はそれを非常に恐れています。
そのようなうるさい客をうまく追い払うために、
「信用保証協会から審査がきましたが、保証はできないとのことでした」
などということがあります。
このように、信用保証協会は、銀行が融資を断る口実として利用されることがかなりあるようです。
銀行としては、保証協会付き融資を提案していれば、保険効果や利益保全効果が得られ、さらに面倒な客を追い払うのにも便利だという、一石三鳥の効果が得られるというわけです。

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銀行が嫌う保証免責事項
以上の4つからわかるように、銀行は保証協会を利用することで、様々なメリットを享受することができます。
しかし、銀行と保証協会とのかかわりの中で、銀行が一つだけ非常に嫌うものがあります。
それは、保証協会が保証にあたって設ける「保証免責事項」です。
会社が信用保証協会に保証をお願いするとき、銀行を通じて信用保証委託申込書を提出します。
この申込書には、希望する保証額や資金使途などを記入しています。
保証協会は、この申込書の内容を審査し、問題がなければ保証するわけです。
しかし、保証協会が認識している申込内容と、実際の融資の様子が異なっている場合、「例えば保証額を満額融資していなかった、返済期間が違っていた、資金使途が違っていた」などの場合には、保証免責事項が発動します。

このような事実が発覚した場合には、保証協会は保証を免責することができる、つまり保証契約を解除することができるのです。
そうなれば、万が一の場合にも一切の保証が受けられなくなりますから、銀行は大変困ったことになります。
もっとも、銀行はこれを非常に嫌いますから、銀行の手続きの違いで保証額を満額融資していなかったとか、返済期間が間違っていたとかのミスは起こらないでしょう。
しかし、資金使途違反は十分に起こり得ます。
これは、設備資金として融資したはずのお金が運転資金になっていたなどのケースが良く見られます。
この場合にも、保証協会は保証免責事項を理由に、保証を解除します。
このような事態になってしまうと、いわゆる免責事故を起こしたということで、銀行員の出世には大きな影響が出るでしょう。
万が一の場合には銀行は大きな損害を被ることになってしまいます。
しかし注意したいのは、銀行が資金使途違反を吹っかけてくる場合があるということです。
これは、「旧債務振り替え」という形で行われます。
旧債務とはもともとの債務のことです。

利益保全にも良くない影響を与えるから、銀行は何とかしたいと思っているのよ!
そこで、プロパー融資を保証協会付き融資で振り替えるのですが、これを旧債務振り替えと言います。
これは、以下のような流れで行われます。
- 仮に、元々プロパー融資で3000万円融資していた会社があったとする。
- 銀行はこの会社に対し、5000万円の保証協会付き融資を持ち掛ける。
- 会社はこれを呑み、保証協会付き融資で、運転資金として5000万円を借りる。
- 融資を受けた5000万円のうち、3000万円はプロパー融資の返済に充て、2000万円を運転資金とする。
このような方法によって、銀行は保険と利益保全の効果がなかったプロパー融資を、保険と利益保全の効果のある保証協会付き融資にすり替えてしまうのです。
しかし、これがもし保証協会にばれてしまったら、保証免責事項に該当し、保証契約は解除されます。
運転資金として5000万円借りたのに、3000万円を借金返済に使っているため、資金使途違反になるからです。
このような話を銀行員が持ち掛けてきた場合には、断るようにしましょう。
そもそも、プロパー融資を受けられているということは、会社の財務内容や業績がそれなりに評価されているのです。
それを、銀行にメリットが大きいという理由だけで保証協会付き融資に乗り換え、高い保証料を支払って資金調達する必要はありません。
また、一度保証協会付き融資に乗り換えてしまうと、今後はプロパー融資を使えなくなる可能性が高くなります。
旧債務振り替えは、保証免責事項に該当するだけではないのです。
銀行にとってはプラスになっても、会社にとってプラスになることはありませんから、断るようにしてください。
まとめ
本稿によって、銀行が保証協会付き融資を使いたいと考える理由が、良くわかったと思います。
保証協会を利用すれば、会社にとっては融資を受けやすくなるというメリットがありますが、その代わりに保証料も支払いますから、きちんと対価は払っています。
しかし銀行は、保証料は会社に払わせておきながら、銀行は何も支払うことなく、保証協会を保険としています。
銀行員の出世に有利に働き、銀行の利益を保全する効果まであるのです。
なぜ銀行が保証協会を好むか、それはこのようにメリットが大きいからです。
会社としてはメリットが少なく、むしろ調達コストが大きくなることですから、財務内容と業績の改善に務め、プロパー融資を引くべきなのです。