本シリーズでは、「どんな社長に貸したくないと思うか?」というテーマで、元銀行員にインタビューをしています。
これまで、話ができない社長、自己中心的な社長、社員との関係が悪い社長が挙げられてきましたが、ほかにはどのような社長が嫌われるのでしょうか。
本稿では、貸したくないと思われる社長のタイプとして、「ケチな社長」の問題点について聞いていきます。
ケチな社長には貸したくない?
―――ほかには、どんな社長に貸したくないと考えるのでしょうか。
元銀行員:「ケチな社長」というのも、銀行員から嫌われると思います。これも、自己中心と言えばそうなのですが。
―――ケチ、ですか。出ていくお金に厳しいという意味では好印象になりそうな気もしますが。
元銀行員:「ケチ」と「コスト意識が高い」のは違います。「ケチ」というのは出すべきお金を惜しむことで、「コスト意識が高い」というのは費用対効果の高い出費は惜しまず、費用対効果の低い出費は惜しむということです。
また、自己中心的かどうかもポイントですね。
「ケチ」は、自分のことや自社のことだけを考えて、他人や他社のことを考えずに、とにかくお金を惜しみます。
―――なるほど、「ケチ」と「質素倹約」の違いに似ている気がしますね。
元銀行員:そうですね。社長の性格にも色々で、お金への感覚もそれぞれ違います。
惜しむことなくバンバン使う社長もいますし、ケチな社長もいます。
これはバランスの問題で、どんぶり勘定によってお金をどんどん使うならば、資金繰り的にはマイナスです。ケチすぎるのもやはり問題です。要はバランスですね。

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無茶な金利交渉で嫌われる
―――ケチな社長が嫌われるのはなぜでしょうか。
元銀行員:それは、ケチな社長は銀行にとって良いお客さんになりにくいからです。
銀行の設定する融資条件は、会社と状況を見ながら、これまでの取引も考えたうえで決めているものです。
銀行の採算性はもちろん考えますけど、法外な金利を要求することはありません。
会社は融資で資金繰りが回って、利益にもつながって、それが元金と利息になって・・・という流れで、会社と銀行のどちらにとってもメリットがあるように考えています。
しかし、ケチな社長にはここが分からないんですね。
ケチですから、利息はできるだけ払いたくないと考えて、金利の引き下げを要求してきます。
「もう一声」といった感じでしつこく引き下げを狙ってきたり、「何%以下でなければ借りない」というように無茶な引き下げを要求してきたりします。
採算性が悪くなりますから、これは銀行にとって面白くないことです。
―――金利交渉は、あくまでも常識の範囲内でやることが大切なのですね。
元銀行員:常識外れの交渉は、もはや交渉ではありませんよ。妥協点をお互いに探っていくのが交渉です。
無理な要求をしているだけなら、交渉は成り立ちません。
常識外れということでは、いったん話がまとまった後で金利の引き下げを要求してくる社長もいますね。
いったんはその条件を呑みこんだのに、あとでドケチ根性が沸き起こってくるのでしょう。
融資実行までの流れは、会社と銀行で話がまとまった後、融資担当者が稟議書を書いて、支店内で回覧して、支店長決済や本部決済がおりて融資が認可され、融資実行という流れになります。
担当者としては、稟議書が書きあがってから回覧に流した後に、「やっぱり金利を下げてほしい」などと言われても、どうしようもありません。
まさか上席者に向かって「金利の引き下げを要求されましたので、再度検討して稟議書を作り直します。そしたらまた回覧お願いします」などとは言えませんからね。
銀行員は忙しいんです。それも、年々忙しくなっています。
忙しい中で条件をまとめて、稟議書を作ったというのに、条件に文句をつけられてしまえば「なんて面倒な社長なんだ」としか思いませんし、怒ってしまう銀行員も多いはずです。
―――金利交渉をするならば、リミットはどう考えるべきでしょうか。
元銀行員:申し込み段階ですね。希望する金利条件があるならば、融資を申し込むときに伝えておくべきです。
社長に知っておいてほしいのですが、面談などを通してある程度条件のすり合わせも行い、銀行が融資実行のために動き始めたならば、そこでさらに交渉したところで銀行が条件を見直すことは困難です。
そんな交渉をしても金利は低くなりませんし、担当者や支店長の機嫌を損ねて融資謝絶になることもあります。
得なことはひとつもありませんから、ケチならばこのような交渉はしないほうが賢いでしょう。

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早期返済で信用を失う
―――金利の引き下げは、融資交渉の一環と考えている社長は多いと思います。
元銀行員:単に金利の引き下げを図るだけならば、融資交渉の一環と言えなくもないでしょう。無理な引き下げを要求していないならば、銀行も検討してみるのが普通です。
ですから、無茶な引き下げでなければ、まだ許容範囲と言えるでしょう。しかし、ケチな社長の厄介なところはそれだけじゃないんです。ケチだから、
利息を払うのがもったいないと考えて、期日前に前倒しで返済したがることも多いんですよ。
銀行の都合は考えないで、なんでも自分のケチな心が満足するように行動するんです。当然のような顔で金利の引き下げを要求してきますし、前倒しでの返済も何ら悪いとは思っていないようです。
銀行には、その会社とはどんな融資契約になっていて、その通りに返済されればどれくらいの利息収入がある、という計算があるわけです。
しかし、前倒しで返済されてしまうと、事前に計画していた数字が狂ってしまいます。
これでは、銀行員が不快になるのも無理はないですよね。銀行にも数字があるんですから。
それに、銀行が信用を重んじることは周知の事実でしょう。
融資契約で、毎月いくらずつ、何か月かけて返済するという契約を結んでおきながら、お金に余裕があればどんどん前倒しで返済していくならば、それは約束を破っているといえます。
ケチな社長は、銀行にとって信用がないんです。
―――つまり、銀行にとっては信用面でも、採算性でも問題があるということですね。
元銀行員:そういうことです。会社と銀行が信用関係において取引していく必要があるのに、ケチな社長は自社のことしか考えず、それによって採算性も低くなりますし、信用でも疑問が出てきます。
契約通りに返してくれないならば、最初から貸さないと考えてもおかしくありませんよね。
それがお得意様であるならば一考の余地があるかもしれませんけども、そうでなければ銀行から借りたい会社はいくらでもあるわけですし、信用も採算性もある会社に貸そうと考えるのが普通でしょう。

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ケチな社長は会社を大きくできない
―――金利は値切らず、契約通りに返済するもののケチである、という社長ならばどうでしょうか。
元銀行員:基本的には問題ありませんが、やはりバランスでしょうね。コスト意識が高いのは良いことですが、どうでもいいところでケチになるような社長は、どうしても印象が悪くなります。
銀行との付き合いではそれほど問題がなかったとしても、社内外の人に対してケチさ全開という社長もいますからね。
例えば、節約節約とやかましく言われて、社員がのびのびと業務に取り組めず、うんざりしているような会社ならばどうでしょうか。
必要な投資を先送りしてしまったり、社員の働きにきちんとお金で報いてあげなかったりすることもあるでしょうね。
そんな会社では、本来ならば伸びるべきものも伸びなくなってしまう可能性がありますよね。
ほかにも、取引先に対してケチになって、仕入れ先に値下げを要求して嫌われたり、臨機応変に値下げ販売をできずに新規顧客の開拓が難航したり、過剰在庫を売りさばけなかったり、色々な問題が出てきます。
ですから、ケチな社長が率いている会社の中には、銀行との取引で問題がなかったとしても、長期的に見ると経営が心配になるような会社もあります。
―――そのような会社への対応は、融資謝絶なのでしょうか。
元銀行員:銀行との取引で問題がなければ、融資謝絶にはなりにくいと思います。しかし、多額の融資は出ないというのが正直なところです。
ケチな社長の会社は大きく成長していくことが難しいですから、積極的に融資しておけば採算性が高まっていくというものでもありません。
会社がなかなか成長しなければ、必要となる資金の規模もそれほど大きくはありませんから、銀行も小規模な融資にそれなりに対応していく感じになります。
やはり、会社はお金をしっかり借りて、しっかり使って、しっかり稼いで、しっかり成長していくことが大切です。
ケチすぎてはだめなんです。使うべきところにドンとお金を使える社長は好かれますよ。会社を成長させていける人が多いですからね。
嘘のある会社だと思われる
―――社長たちは、たまにケチすぎないかチェックしてみる必要がありそうですね。
元銀行員:ぜひそうしてみてください。変なところでケチになっていると、銀行員から嫌われますよ(笑)
場合によっては、ケチであることによって嘘のある会社だと思われることもありますから。
―――嘘のある会社とは、どういうことでしょうか。
元銀行員:中小企業は、地域に密着して経営している会社が多いですよね。
そのような会社の経営理念には、「我々は、事業を通して地域社会に貢献する」といった意味の理念が掲げられていることがよくあります。
経営理念は、それによって会社の方向性を示すことができますし、会社の理念を社員に浸透させる役にも立ちますから、経営理念を持っていることは良いことだと思います。
しかし、銀行の立場を考えない交渉をしている会社が、このような経営理念を掲げているならば、疑わしいとしか言えません。
地銀や信金・信組といった地域金融機関は、地域の金融を担うという使命を帯びています。銀行だって、事業を通して地域社会に貢献しているわけです。
地域社会に貢献するという経営理念を持っているならば、自社にも取引先にもメリットのある取引をして、みんなで栄えて地域経済を活性化していく必要があるでしょう。
それなのに、銀行相手になるとケチになって無茶な交渉をするんです。
そんな社長が掲げている経営理念なんて、お飾りと言われてもしかたないでしょう。
経営理念は、その会社がどういう姿勢で経営していくかを表すものです。
つまり、政治で言えばイデオロギー、宗教で言えば教義に相当するもので、「私たちは、こんな会社です」と主張するものです。
そこに嘘があるような会社は、信用できませんよね。口だけの会社、嘘のある会社というイメージを持たれてしまうと、せっかく事業計画を作って提示しても、銀行員はどこか疑いの目で見て、心の底から信じてくれなくなるかもしれません。
もちろん、経営理念に疑問があるから融資はできない、といった短絡的な判断にはならないでしょうが、何らかのマイナスになる可能性はあるでしょう。
ケチな社長は、こういった部分でも思わぬマイナスを招いているかもしれません。
銀行員には嫌われる、良くないイメージも持たれるかもしれない、いいことはありませんから注意してください。

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まとめ
ケチすぎる社長も、銀行員が貸したくないと考えるようです。
ケチさゆえに銀行に無理な交渉をしたり、面倒をかけたり、信用を失ったりしてしまうのですから、銀行が貸したくないと考えることも納得がいきます。
また、場合によっては疑いの目で見られることもあるようです。
コストを削減して利益率をアップすることは大切ですが、極端にケチになってしまうと、色々とマイナスの影響が出てしまいます。
そうならないように、バランス感のあるコスト意識を身に着けたいものです。
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