中小企業で経営者が担う役割は大きい。融資稟議でも重く見られる理由とは

銀行融資を受けるにあたり、会社の業績や財務状況がカギになると考えている人は多いと思います。

もちろん、それは必要不可欠な要素ですが、それだけで融資を受けられるというものでもありません。

中小企業の経営を左右する要素は業績や財務だけではないからです。

特に、中小企業の経営を大きく左右する要素として、経営者の資質や手腕が挙げられます。

経営への影響が非常に大きいことから、融資稟議でも経営者は重要な判断材料と考えられています。

では、融資稟議では、経営者をどのように評価していくのでしょうか。

融資担当者の稟議の重要性

銀行から融資を受ける際、銀行内では複数の人によって融資の可否が検討されます。

これを稟議制度といい、融資を審査する際には全ての銀行で稟議が行われています。

複数の人が稟議に加わり、支店長や本部によって最終的な判断が下されることとなりますが、その出発点は融資担当者が作る稟議書にあります。

稟議に加わる人々は、その稟議書を根拠に融資の可否を判断していくこととなるため、融資担当者がどのような稟議書を作成するかによって、融資結果は大きく左右されると言えます。

このため、融資を円滑に受けることで安定した資金繰りを図るためには、経営者は融資担当者がどのような見方によって稟議書を作っているのかを知ることが重要です。

それを知り、良い評価を受けられるように会社側から工夫していくことによって、融資担当者が融資を出しても良いというスタンスで稟議書を作ることにつながります。

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融資担当者が稟議を作っていくにあたり、経営者の観察は欠かせない要素なのね。

では、なぜ融資担当者は経営者に着目する必要があるのでしょうか。

以下で詳しく見ていきましょう。

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属性調査

会社から融資を申し込まれた時、融資担当者が真っ先に確認するのは、債務者の属性です。

ここで言う債務者とは、新規融資によって債務者となる会社、既に融資しており債務者となっている会社の両方を指します。

また、中小企業では会社と経営者を一体とみなすため、経営者を指す意味も含んでいます。

融資を判断する際、最も基本的かつ重要な判断基準は「債務者がきちんと返済できるかどうか?」という点にあります。

きちんと返済できる相手であれば、利息収入によって利益を上げることが銀行の事業なのですから、融資したいと考えるのが普通です。

しかし、それ以前に必ず行われる調査があります。

それは、債務者の属性調査です。

債務者の属性を調べることによって、

債務者がきちんと返済できるかどうか?

という以前に、

貸しても良い相手かどうか?

ということを調査するのです。

いくら返済力がある相手でも、それだけで融資することはできません。

業績や財務内容が非常に良い会社でも、取引を絶対に回避すべき相手もいるのです。

いくつか例を挙げると、反社会勢力や違法性がある会社などが代表的な例です。

現在、反社会勢力を排除する動きは非常に強くなっており、暴力団や総会屋、右翼団体といった反社会勢力に対して、銀行が資金を供給するわけにはいきません。

また、許認可が必要な事業であるにもかかわらず、無許可で営業しているような会社に対しても、銀行が融資することはできません。

このほかにも、社会的に好ましくない事業を営んでいる会社であれば、銀行は融資しないものです。

例えば、マルチ商法をしている会社や、闇金業者には融資することはありませんし、性風俗店も同様です。

性風俗店に関しては、社会的に好ましくないと言い切ることが難しいものの、グレーゾーン以下の業界に属する会社であれば、基本的に融資を拒否することで、銀行の公共性を保つようにしているのです。

もちろん、融資を希望する会社が上記のような会社でなかったとしても、このような公序良俗に反する会社と密接な関係にある会社や、その会社の経営者が接点を持っていたりする場合には、融資を拒否する理由となります。

もし、そのような経営者や会社に融資してしまうと、社会に思わぬ不利益を招いてしまう可能性がありますし、銀行は色々な批判も受けることになるでしょう。

信用を重んじる銀行としては、そのような批判は受けるべきではありませんし、信用を失って預金が集まりにくくなってしまうと、銀行の融資業務にも支障を来すこととなります。

銀行は、返済力のない会社に融資しないことで貸し倒れリスクを避けると同時に、属性に大きな問題がある会社や経営者に融資しないことによって、社会的な批判を受けるリスクも避けているのです。

したがって、新規融資の希望を受けた場合には、債務者の属性調査をかなり慎重に行うのが普通です。

既に取引のある会社ならば、債務者属性に問題がないとわかっているのに対し、新規の融資先は銀行にとって未知の存在だからです。

もちろん、既存の融資先についても、定期的な属性調査が行われることもあります。

会社は日々変化しており、いつのまにか融資すべきではない属性を持ってしまうことも考えられるためです。

例えば、既存の融資先が追加融資を希望してきたとき、前回の融資から今回の融資希望に至るまでの間に、新たな役員が加わっていたとすればどうでしょうか。

他にも、株主構成が変わっていたらどうでしょうか。

このような場合、銀行は新たな役員や株主に反社会勢力が紛れ込んでいないかどうかを調査し、問題があれば融資を断るという判断をします。

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このように、銀行の融資稟議では、必ず属性調査が行われるんだ。

業績や財務、それによって期待される返済力だけで判断されるわけではないのです。

経営者自身がクリーンであることは、融資を受けるための必須の要素だと言えるでしょう。

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実態把握

債務者の属性に問題がないと分かれば、いよいよ債務者の実態を把握し、複数の観点から返済力を量ることで稟議を進めていきます。

属性に問題があるならば、そもそも稟議以前の問題と言えますから、ここからが稟議で最も重要なポイントだと言えるでしょう。

債務者の返済力を知るためには、返済力をもたらす会社のヒト・モノ・カネの三つの要素をそれぞれ把握していくこととなります。

融資担当者は、必ずこの三つから実態把握を行うのです。

返済力とは、銀行と契約した融資条件で十分に返済していける能力のことを指しています。

このため、ヒト・モノ・カネの要素のうち、最も大切な要素はカネだと考える経営者は多いものですし、融資担当者の中にもそのように考える担当者はいます。

しかし、カネの要素だけではなく、ヒトとモノの要素にも目を向けるべきというのが、融資稟議のスタンダードな考え方ですから、経営者も三つの要素全てに目を向ける必要があります。

特に中小企業では、株主などに配慮して決算書を作る必要がなく、銀行には化粧された決算書が提出されることも非常に多いものです。

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このため融資担当者は、決算書から見て取れるカネの要素だけでは中小企業の融資は判断できないと考え、モノとヒトの要素にも着目するんだな。

そこで、融資担当者がカネ以外の要素をどのように見ていくかを考えるにあたり、経営者がどう見られているのかを知ることが重要です。

ヒトの要素の中でも経営者はかなり重点的に評価の対象となり、稟議の判断に用いられるからです。

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ヒトの分析

「ヒト・モノ・カネ」というように、経営資源の筆頭に挙げられるヒトの要素ですが、中小企業で見られるヒトの要素といえば、すなわち経営者のことです。

もちろん、ヒトの要素には経営者だけではなく、従業員や役員なども含まれますし、経営者以外のヒトも経営に大きく影響します。

しかし、特に中小企業への融資稟議という観点から考えた場合、やはり経営者が最重要となります。

経営規模が小さい中小企業では、会社=経営者といった見方もされるほど、経営者の存在は大きなものであり、業績も経営者の手腕に左右されることが多いです。

会社の規模が巨大であれば、経営者の手腕が凡庸であっても、有能な従業員を揃えることで順調な経営を続けられる可能性も高いです。

しかし、中小企業においては、そもそも有能な従業員を揃えることが難しいため、経営者自身の手腕によって会社を率いていく必要があります。

経営者の手腕が凡庸であれば、競争に負けて倒産に至る可能性も高いです。

実際、大企業ならば、有能な社長が引退して無能な社長が後を継いだとしても、たちまち倒産してしまうことはほとんどありません。

しかし、中小企業では、有能な社長が引退して無能な息子が継いだところ、それまで順調だった経営が数年のうちに傾いて倒産してしまったというようなケースがいくらでもあります。

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このように、中小企業においては経営者の役割が非常に大きいものなのね。

融資の判断基準は返済力の有無ですが、返済は長期にわたるものであるため、現在における返済力はもちろんのこと、将来的な返済力も求められます。

中小企業にとって経営者の影響は非常に大きく、将来的な経営にも影響を与える要素なのです。

ですから、融資担当者が実態把握に取り組む際には、経営者を理解するように努める必要があります。

具体的には、以下のような方法で分析が行われます。

経営者を分析する方法

融資担当者が経営者を分析する目的は、

  • 経営者の人柄
  • 考え方
  • 性格

などを把握していくためです。

そのためには、まず決算書からそれらを推し量った上で、面談の際に確認していくという流れとなります。

決して、提出資料だけから判断したり、面談だけから判断したりすることはないため、一方が悪くても一方でカバーできれば問題ないというものではありません。

決算書からの類推

まず、決算書から類推していくことが、ヒトの分析の第一歩です。

決算書から経営者の人柄、考え方、性格などが判断できるのだろうかと疑問に思う人も多いと思うのですが、決算書には経営者の内面が非常によく表れているものです。

例えば、経営者が真面目な性格の人物であるならば、無駄のない決算書が作成されるケースが非常に多いです。

逆に、経営者が不真面目な人物であれば、決算書には多くの無駄が見られます。

ここで言う「決算書における無駄」とは、本来決算書に盛り込まれるべきではない項目、つまり事業に関係のない項目が紛れ込んでいることを指します。

銀行が中小企業を見る時、会社と経営者は一体とみなすのが普通ですが、真面目な経営者は会社と経営者個人を明確に分けて考えることができます。

会社の資産と経営者個人の資産を混同することがなく、決算書を読めばそのことがよく分かります。

経営者の個人的な費用とも捉えられる、事業性が曖昧な項目が紛れ込んでいないのです。

しかし、不真面目な経営者は会社と経営者個人の資産を混同しがちです。

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会社の資産を個人で流用したり、個人的な出費を会社の経費として計上したりすることが非常に多いんだ。

中小企業の多くは、株主などの第三者からの評価を気にする必要もなく、組織が小さいために経営者の権力が非常に強いことから、経営者の不真面目・わがままが通りやすい環境にあります。

中小企業では、それに流されてしまう経営者も決して少なくありません。

不真面目な経営者であれば、決算書の項目には事業性の曖昧な項目が色々と計上されているものです。

ゴルフ会員権、リゾート施設の会員権などが代表的なものですが、それ以外にも経営者の個人的な飲食費用が経費として計上されることで、接待費が大きすぎる場合もあります。

このように、決算書を見ればその経営者の性格が色々と把握できるものです。

面談による確認

決算書からの類推は確実ではありませんから、次に面談を行います。

融資担当者の類推を面談によって確認していくのです。

決算書で類推し、面談で確認していくといえば、融資担当者が経営者を品定めしているようにも感じられ、「融資担当者ごときにわかってたまるか」と思う人もいると思います。

しかし、そのように融資担当者を見下す意識を持つのは好ましくありません。

融資担当者は、面談によって経営者の内面を見定めようとしているのです。

分析対象である経営者が、分析している自分を見下しているという雰囲気を感じ取れば、内面的に問題がありそうだという印象を持ってしまっても不思議ではありません。

不快に感じないとしても、なんとなく付き合いにくそうな経営者だと感じたり、考えていることに共感できないと感じたりする可能性もあります。

上司の判断

決算書と面談から経営者の内面を評価したら、最後に経営者を上司に引き合わせることもあります。

融資担当者だけの判断で終わることもありますが、複数の人からの評価によって、より正しく把握しようという考えから、支店長や融資担当役席とも面談することがあるのです。

この時、融資担当者と上司の意見が一致すれば、融資担当者は自信をもって稟議を進めていくことができます。

融資担当者と上司が、どちらも内面的に問題があると見なした場合には、融資を受けることは困難となります。

逆の場合には、融資実行に大きく前進することとなります。

融資担当者の視点

経営者を把握するにあたって、融資担当者は上記のような分析手法を用いますが、面談での評価は融資担当者の感じ方によって変わるものでもありますから、画一的な基準はないと言えます。

しかし、融資担当者は稟議のために経営者と面会するのですから、必ず評価しなければならないいくつかのポイントがあります。

それは、経営責任者としてどうであるかという評価であり、主に以下の点について観察されています。

指導力・統率力

まず、会社を率いる経営者としての統率力が重視されます。

会社をまとめあげて引っ張っていく力があるかどうか、従業員を指導していく力があるかどうかといった点です。

経営者は、最終的な経営判断をする存在です。

経営判断が悪ければ経営は悪化するのですから、経営を大きく左右する要素と言えます。

しかし、経営者の統率力が乏しく、会社がまとまっておらず、従業員も従わないならば、良い経営判断をしても意味がありません。当然、経営が上手くいくはずはなく、返済力にも響いてくるでしょう。

経営者の統率力が高ければ、経営判断を下したとき、その良し悪しは別としても、従業員は納得して業務に邁進していくことができます。

これを見極める必要があるため、融資担当者は経営者と従業員のやり取りを注意深く観察しています。

  • 従業員が経営者に対して緊張感を抱いているか
  • 経営者の指示に素直に従っているか
  • 従業員は経営者にどのような言葉遣いであるか

などを観察することで、経営者の統率力をかなりの程度まで判断することが可能です。

銀行交渉の色々な場面で、このような点について見られていると考えておきましょう。

決断力・実行力

経営者に求められる資質として、決断力や実行力も欠かせないものです。

会社経営では、経営者は決断を求められるシーンがいくらでもありますし、非常に大きな決断を迫られることもあります。

この時、思い切った決断に踏み切ってチャンスを掴めるのか、いつまでも煮え切らない態度でチャンスを逃してしまうのかによって、経営は大きく左右されます。

もちろん、決断だけでは役に立たず、決断した内容をしっかりと実行していくための実行力も必要です。

これを評価するにあたって、融資担当者は経営者との会話から把握することに努めます。

融資担当者との面談時に、会社の現状や経営上の問題点、従業員の指導方針などを聞かれることがあるかもしれませんが、それも会話の中から決断力や実行力を量ろうとしているためです。

このような会話の際、経営者は日頃から考えていることを話すと思います。

もし、決断力や実行力が高い経営者ならば、例えば、

このような問題点があるから、このような決断によって対処してきた。

そして現状はこうなった。今は別の問題もあるが、それについてはこのような対策を実行している。

従業員の教育には・・・を意識していて、それも実を結んでいる

といった話をすることになるでしょう。

話の内容から決断と実行が窺われ、しかも誇張がないと感じられるならば、融資担当者はプラスに捉えます。

「この経営者ならば一緒に仕事がしたい、取引したい」と思われるのです。

逆に、決断力や実行力に乏しい経営者ならば、決断と実行を感じさせることができず、

  • どうも曖昧だな
  • ぬるいな
  • 芯が感じられないな

といった印象を与えることとなります。

責任感

指導力・統率力、実行力・決断力といった要素は、経営手腕として評価すべき大切なポイントですが、責任感という要素も欠かせません。

責任感の有無は、経営手腕とは直接的に関係ない要素ですが、きちんと返済してもらえるかどうかを重視する銀行にとっては非常に重要な要素です。

約束の元金と利息を、約束した期日に支払い、返済期限をきちんと守るということは、責任感がなければできないことです。

責任感が強い、あるいは常識程度に持っている経営者ならば、約束通りに支払っていくことが期待できるのですが、責任感がない経営者は問題です。

責任感がない経営者は、少しくらい遅れてもいいと考えて返済を遅らせてしまったり、どうしても返済が遅れてしまうときに説明責任を果たさなかったりします。

そのため、銀行にとっては非常に厄介な債務者となってしまいます。

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融資担当者は、日頃のやり取りから経営者の責任感を量っていくんだ。

例えば、

  • 電話連絡が取れなかった場合に後できちんと折り返してくるかどうか
  • 約束していた資料を期日までにきちんと提出してくれるかどうか
  • アポを取ったときなどに時間を守れるかどうか

といった点から量っていくのです。

返済さえきちんとできていれば、責任感があると思われるとは限りません。

普段のやり取りの中で、責任感を感じさせない言動が多ければ、

この社長は、今は問題ないかもしれないが、いざ返済が難しくなった時に危ないかもしれない

などと判断されることもあります。

健康面

最後に、面談の際には経営者の健康面にも留意します。

繰り返す通り、中小企業における経営者の役割は非常に大きいため、

  • 健康面に問題があってあまり出勤していない
  • いつ引退してもおかしくない

などの場合には、融資担当者は危険視します。

経営形態

経営者の人柄や資質が融資稟議にどのような影響をあたえるか、詳しく見てきました。

融資担当者は、これらの経営者の人柄や資質に関する情報を活用していくために、会社の組織形態も把握していきます。

中小企業によくみられる組織形態のうち、融資担当者が気を付ける特徴には、同族経営とワンマン経営の二つがあります。

同族経営

同族経営は、中小企業に非常に多い組織形態です。

小規模な会社では、同族で経営を仕切っていくことによって、安定した経営が可能となります。

しかし、同族でない人材を活躍する機会が制限されてしまい、優秀な人材を十分に活かせないというデメリットもあります。

このため、同族経営の会社を評価するにあたり、融資担当者は、

  • 優秀な人材を十分に活用できていないのではないか
  • 同族以外の人材が活躍できないことで、士気の低下が起こっていないか

といった点について観察していきます。

また、同族経営は安定感がある一方で、極端に安定感を欠く状況に陥ることがあります。

経営に携わる同族間で確執がある場合、経営状況が非常に悪くなる可能性が高いのです。

実際に、それまでは業績・財務ともに優秀だった会社が、創業者の死去によってたちまち内紛状態に陥り、倒産に至るケースもあります。

したがって、同族間の内紛が起こりそうな兆候が見られないか、あるいは実際に内紛状態にあるならばどのような状況であるかについても、融資担当者はチェックしていくこととなります。

ワンマン経営

ワンマン経営も、中小企業の組織形態ではよくみられるものです。

ワンマン経営の会社では、経営者の意見が絶対であるため、意思決定が非常にスピーディという特徴があります。

この意思決定の速さによってチャンスを掴み、会社の成長に役立つことも多いです。

このため、ワンマン経営の会社で、なおかつ経営者の能力が高い場合には、プラス評価につながると言えます。

しかし、ワンマン経営では経営者が何でも決めてしまうため、間違った方向に進んでいるときに修正が利かなくなってしまいます。

ワンマン経営の会社では、従業員や役員が全てイエスマンとなり、経営者に意見を述べられる人物がいないことが多いです。

そのような会社ではワンマン経営が命取りになる危険性があります。

当然ながら、ワンマン経営でありながら、経営者の能力が低い場合などには、間違いなくマイナス評価となります。

ワンマン経営の会社では、経営者に手腕があることが前提条件です。

そのほか、ワンマンな経営者に意見を述べられる側近がいるかどうか、異なる意見をぶつけられたときに経営者が検討する器量があるかどうかといったことも、評価の対象になります。

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もちろん、同族経営とワンマン経営のいずれにも当てはまらない中小企業ならば、特に組織形態をみられないというわけでもないわ。

同族経営でもなく、ワンマン経営でもないということは、一族主導での経営、あるいはワンマン社長主導での経営が行われないということであり、そのような特殊な牽引力にたよらずに経営していける組織力が求められます。

したがって、融資担当者は組織として十分に機能しているかどうかをチェックする必要があるのです。

従業員の見られ方

経営者が会社におけるヒトの要素の全てではなく、従業員も大切な経営資源です。

経営者の影響力は非常に大きいものですが、実際に多くの業務をこなしていくのは従業員であるため、従業員も経営に影響する要素です。

また、従業員を見ることによって、間接的に経営の経営能力を見ることもできるため、その意味でも従業員の評価が必要です。

融資担当者が従業員を評価するとき、主に以下の点をチェックしていくこととなります。

平均年齢

従業員の平均年齢をチェックすれば、会社の状況を把握するのに役立ちます。

平均年齢が高く、従業員が高齢化している会社であれば、ベテランが多く揃っているため経営の安定性が高くなります。

その反面、定年退職に近い従業員が多いということでもあり、10年後、20年後の会社を担う人材がいないという、危険な状態とも言えます。

また、若い従業員があまり雇用されない会社では、若い世代の視点や知識が入ってこないために会社の体質が古くなりがちです。

技術の進歩は目覚ましく、また流行の移ろいもスピーディな現代において、体質が古い会社は競争で不利になる可能性が高いです。

このため、平均年齢の高い会社では、若い人材の確保や教育がきちんとできているかどうかを詳しくチェックされることとなります。

逆に、平均年齢が低い会社も問題です。

そのような会社では、若い人が集まってフレッシュであるという良さもあるのですが、経験や技術が豊富なベテランが少なく、若手の育成がうまく進まない可能性があります。

また、長く勤める従業員が少ないために、若い従業員が多くなっている可能性もあります。

その場合には、従業員が定着しない何らかの理由がある可能性が高いです。

長く勤める従業員が少なければ、貢献度の高いベテランが残らないということでもありますから、好ましくないことだと言えます。

したがって、平均年齢が低い会社ならば、平均年齢がなぜ低いのかをチェックされることとなります。

最も好ましいのは、従業員の年齢構成にバランスが取れていることです。

高齢のベテランもいれば、フレッシュな若手もおり、また中堅層もおり、年齢や経験や知識が異なる様々な人が交わっている会社が好ましいのです。

定着率

上記の通り、従業員の平均年齢が低い会社では、社内に何らかの問題がある可能性が高いです。

融資担当者がチェックしてみて、平均年齢の低さが定着率の悪さにあると判明した場合、その理由を考えていくこととなります。

例えば、筆者が知っているある会社は、定着率が非常に悪く、せっかく新卒の社員を採用しても、約半分が1年以内に辞めてしまうというありさまでした。

なぜそれほど定着率が悪いのかと言えば、経営者のワンマン気質がひどく、しかも気質や手腕に問題が多かったために、我慢できずに辞めていく従業員が非常に多かったのです。

このような会社では、人材を教育しても次から次に辞めていくため、教育するだけ無駄という状態になってしまいます。

そのため、最低限の教育だけを施し、人材を使い捨てにしながら、なんとか経営を続けていくだけの経営に陥ります。

会社の現状維持だけで精一杯であり、更なる成長などとても不可能です。

融資担当者が、定着率の悪さから深刻な原因を見出したならば、融資稟議には大きなマイナスになることでしょう。

経理担当者の動向

このほか、融資担当者が気を付けるのは経理担当者の動向です。

会社の経理担当者が、長年勤めてきたベテランであり、今後も会社の資金繰りをしっかりと管理しているならば、何ら問題ありません。

しかし、融資担当者が経理担当の従業員についてチェックした時、最近経理部門の部長や課長などが退職したという情報をキャッチすることがあります。

資金繰りを熟知している経理担当者は貴重な人材であり、新しい人材に入れ替えると資金繰りに混乱をもたらす可能性もあるため、普通ならば熟練の経理担当者を解雇することはあり得ません。

そこで、なぜ退職したのかを調査することになるわけですが、場合によっては非常に悪い状況が明らかになることもあります。

例えば、表面上はうまくいっているように見えても、内実は資金繰りが破綻寸前の会社がありますが、経理担当者はその状況をよく知っているため、早いうちから転職活動を始め、転職のために退職するということがあります。

他には、経理担当者が会社のお金を横領して退職させられたというケースもあります。

このように、経理部門での人事、特に退職については、融資担当者が敏感になる部分だと言えます。

労使関係

最後に、融資担当者が労使関係をどう見るかについて書いておきましょう。

労使関係も、経営を把握するための大切な要素です。

労使間のトラブルは経営に間違いなくマイナスになるものですから、労使関係も融資担当者がチェックする対象となります。

最も好ましいのは、会社と労働者が運命共同体として一体化していることであり、高度経済成長期にはそのような会社がたくさんありました。

しかし、現代ではそのような関係は大きく崩れています。

最近では働き方改革などの影響もあって、労働に対する考え方や働き方が多様化したことで、この傾向に拍車がかかっています。

当然、会社と労働者の関係が親密ではない疎遠なものになったことで、労使トラブルが起きやすい環境になっています。

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ストライキなどの眼に見えるトラブルが起きることは非常に少なくなっているものの、目に見えにくい形でのトラブルが起きやすくなっているぞ。

労使関係が悪いことで起こる目に見えにくいトラブルには、色々なものがあります。

例えば、労使関係が疎遠であることによって、従業員が意欲的に働かなくなったり、責任感を持たずに取り組んだり、積極的に改善を図ることがなくなったりといった問題が起きてきます。

当然ながら、生産性はなかなか上がらず、責任感のない仕事がミスを生んだり、顧客からの信用損失につながったりする可能性もあり、経営に大きなマイナスをもたらすのです。

融資担当者は、労使関係をしっかりとチェックし、労使関係に何らかのゆがみがないかチェックしていきます。

ヒトの要素に対する上記のような観察は、複数の手段で行っていきます。

経営者の人柄や資質については、決算書からの類推や面談での印象などが大切ですが、組織形態や従業員についてチェックするためには、決算書と面談だけでは不十分です。

そこで、融資担当者は会社を訪問してチェックすることもあります。

実際に会社を訪問して観察すれば、職場の整理整頓が行き届いているか、従業員は意欲的に働いているか、従業員の教育は行き届いているか、経営者とどのように接しているかなどを目で見て、肌で感じることができます。

それが、経営状態を的確に把握するのに役立つのです。

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まとめ

銀行の融資稟議では、会社の経営資源のうちヒトの要素についてもしっかりとチェックして行きます。

特に重視されるのが経営者の資質や手腕であり、この点で問題があると評価されれば、融資を受けにくくなってしまいます。

経営者の資質や手腕は、一朝一夕に培われるものではありません。

したがって、現時点でこの点に問題がある会社は、すぐに改善することは難しいでしょう。

しかし、改善の意識を持つことは決して無駄にはなりませんし、融資にプラスになるはずです。

また、将来的に後継者が経営者となったとき、経営者の資質や手腕が問題視されることがないように、今のうちからしっかりと教育していくこともできます。

融資稟議で良い評価を受けられるように、経営者としての在り方を考え直すことも無駄ではないかもしれません。