資金調達の比較

銀行融資の審査の仕組み|格付け・債務者区分・稟議で見られるポイント

最終更新 公開 約17分で読めます 執筆:アンドファクタリング運営事務局

広告なし・一次情報にもとづく解説です。編集方針

この記事の要点

  • 銀行融資の審査とは、金融機関が借り手の返済可能性を、決算書などの財務情報と、事業の実態・将来性の両面から判断する手続きである。
  • 金融検査マニュアルは2019年12月18日に廃止されたが、金融庁は同日公表の文書で、信用格付に基づいて債務者区分を行う現状の実務を否定せず、それを出発点とする考え方を示している。
  • 債務者区分は正常先・要注意先(うち要管理先)・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先に分かれ、区分に応じて金融機関が積む貸倒引当金の計算方法が変わる。
  • 金融庁が2026年5月18日に公表した文書は、融資審査では事業性(事業の実態や将来性)を理解して返済可能性を評価することが必要だとし、事業計画は形式にとらわれず、行動・備え・根拠を共有できるものが重要だとしている。
  • 日本銀行の短観(2026年9月調査)では中小企業の貸出態度判断DIは12で、国内銀行の新規貸出約定平均金利は2026年8月に1.782%である。
早わかり表
審査で判断すること返済可能性(財務情報+事業の実態・将来性)
金融検査マニュアル2019年12月18日に廃止。債務者区分の枠組みは実務の出発点として存続
債務者区分正常先/要注意先(うち要管理先)/破綻懸念先/実質破綻先/破綻先
格付けの方法財務情報のスコアリングを第一次評価とし、定性情報で補正する方法などがある(金融庁資料)
2026年の新制度事業性融資推進法(企業価値担保権)が2026年5月25日に施行
貸出態度判断DI(中小企業)12(日銀短観2026年9月調査、「緩い」−「厳しい」)
国内銀行の新規貸出金利1.782%(2026年8月、日本銀行)
目次
  1. 銀行融資の審査では何を判断している?
  2. 金融検査マニュアルの廃止で審査は変わった?
  3. 債務者区分とは?5つの区分と定義
  4. 信用格付けとは?債務者区分との関係
  5. 決算書はどう見られる?公的資料で確認できる着眼点
  6. 資金使途と返済財源はなぜ重視される?
  7. 稟議とは?融資が決まるまでの流れ
  8. 経営者個人はどこまで見られる?経営者保証と信用情報
  9. 審査に通りにくいのはどんなとき?
  10. 銀行融資とファクタリングはどう使い分ける?

銀行融資の審査とは、金融機関が「この会社は約束どおり返済できるか」を、決算書などの財務情報と、事業の実態・将来性の両面から判断する手続きです。審査の中身は各金融機関の内部規程で決まり、細かい基準は公表されていません。この記事では、金融庁などの公表資料で確認できる範囲に限って、信用格付け・債務者区分・稟議の仕組みと、決算書の見られ方を説明します。

融資とファクタリングのコストの違いは「ファクタリングと融資・ビジネスローンの違い」で、公的融資との使い分けは「日本政策金融公庫・保証協会付き融資とファクタリングの使い分け」で比較しています。

銀行融資の審査では何を判断している?

銀行融資の審査で判断しているのは、突き詰めると「返済可能性」です。金融庁の資料では、返済可能性は担保・保証からの回収可能性だけでなく、将来のキャッシュフロー(現金の出入り)に基づいて評価することが重視されています[1]。

金融庁が2019年12月に公表した文書は、金融機関が信用リスクを判断する材料の例として、次のような情報を挙げています[1]。

情報の種類 金融庁資料に挙げられている例 借り手が用意できるもの
個社の定量情報 実態のBS(貸借対照表)・PL(損益計算書)、支払状況、条件変更の有無 決算書、試算表、借入金明細、資金繰り表
個社の定性情報 事業の将来性、代表者の資質等 事業計画、受注・取引先の状況、経営者の説明
過去の実績 貸倒実績、倒産件数、倒産時の回収実績 (金融機関側のデータ)
足元・将来の情報 特定の地域・産業の状況、経済情勢、マクロ指標の予測 業界動向を踏まえた見通しの説明

このうち借り手が働きかけられるのは、上2行の「個社の情報」です。金融庁は2016年9月に公表した「金融仲介機能のベンチマーク」でも、企業から「金融機関は、相変わらず担保・保証に依存しているなど対応は変わっていない」という声があることを示し、事業の理解に基づく融資を金融機関に促しています[18]。

金融検査マニュアルの廃止で審査は変わった?

金融検査マニュアルは2019年12月18日に廃止されました[2]。ただし、審査の土台にある債務者区分の枠組みはなくなっておらず、金融庁は「現状の実務を否定せず、現在の債務者区分を出発点」とする考え方を示しています[1]。

金融庁は廃止と同時に公表した文書で、マニュアル時代の検査について、金融機関の裁量の余地が少ない一律の基準(検査マニュアル別表)で、借り手が実質債務超過かどうか、担保・保証で保全されているかを重視してきたと説明しています[1]。その結果として「担保・保証への過度な依存、貸出先の事業の理解・目利き力の低下」といった影響が生じたと整理しています[1]。

廃止後の考え方は、次の3点にまとめられます。

  1. 融資方針から自己査定・償却・引当までを、各金融機関の経営理念と整合的に一貫させる[3]
  2. 担保・保証からの回収可能性だけでなく、将来のキャッシュフローに基づく返済可能性に着目する取組みを妨げない[1]
  3. 過去の貸倒実績だけでなく、足元や将来の情報も引当(将来の損失への備え)に反映できるようにする[1]

さらに2026年5月25日には「事業性融資の推進等に関する法律」が施行され、会社の総財産を一体として担保にする企業価値担保権が使えるようになりました[5]。同法は「事業性融資」を、不動産担保や個人保証によらない会社への貸付けと定義しています[4]。

債務者区分とは?5つの区分と定義

債務者区分とは、金融機関が自己査定(保有する貸出金の健全性を自ら評価する作業)で、借り手を返済能力に応じて分類する区分です。金融庁の資料では、正常先・要注意先(うち要管理先)・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先に分けられています[1]。

債務者区分 金融庁資料の定義(要旨) 貸倒引当金の見積り方
正常先 業況が良好で、財務内容にも特段の問題がない債務者 区分ごとに過去の実績等から予想損失率を求めて集合的に計算(一般貸倒引当金)
要注意先 金利減免・棚上げなど貸出条件に問題がある、延滞など履行状況に問題がある、業況が低調・不安定、財務内容に問題があるなど、今後の管理に注意を要する債務者 同上
うち要管理先 要注意先のうち、債権の全部または一部が「3カ月以上延滞債権」または「貸出条件緩和債権」である債務者 同上(大口先はDCF法の適用もある)
破綻懸念先 経営破綻の状況にはないが経営難で、経営改善計画等の進捗が芳しくなく、今後経営破綻に陥る可能性が大きい債務者 担保・保証で回収できない部分について個別に回収不能見込額を見積もる(個別貸倒引当金)
実質破綻先 法的・形式的な破綻の事実はないが、深刻な経営難で再建の見通しがなく、実質的に破綻している債務者 同上。回収不能部分は引当または償却
破綻先 破産、清算、民事再生、会社更生、手形交換所の取引停止処分などで、法的・形式的に経営破綻している債務者 同上

出典:金融庁の2019年12月の文書の別紙「自己査定・償却・引当の現状の枠組み」[1]

区分が下がるほど、金融機関はその貸出に対して個別に損失を見積もる必要が出てきます。このため区分は融資判断と無関係ではありません。ただし「どの区分なら新規融資をしない」といった対応関係を定めた公的なルールはなく、判断は各金融機関に委ねられています。

では、中小企業の区分は決算書だけで決まる?

決算書だけでは決まりません。金融庁の資料は、中小・零細企業の債務者区分について、財務状況のみならず、技術力、販売力、成長性、代表者等の役員への報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案して判断すると明記しています[1]。

たとえば、会社が赤字でも、代表者が役員報酬を減らして会社に資金を入れている、あるいは代表者個人に十分な資産がある、といった事情は判断材料になりえます。また、十分な資本的性質が認められる借入金(資本性借入金)は、負債ではなく資本とみなすことができるとされています[1]。

では、区分を上げるには何が必要?

区分を上げる代表的な方法は、実現可能性のある経営改善計画をつくることです。金融庁の資料では、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画(合実計画)で破綻懸念先から要注意先へ、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)で要管理先からその他要注意先へ、区分を上げる扱いが示されています[1]。

計画づくりには公的な支援があります。中小企業庁の経営改善計画策定支援(405事業)では、認定経営革新等支援機関(国が認定した税理士などの専門家)に支払う計画策定費用の2/3(通常枠の上限200万円)を中小企業活性化協議会が負担します[13]。

信用格付けとは?債務者区分との関係

信用格付けとは、金融機関が借り手の信用力を細かい段階で評価したものです。金融庁の資料では、自己査定は「原則として、信用格付を行い、信用格付に基づき債務者区分を行った上で」債権を分類すると説明されています[1]。つまり格付けが先にあり、それを5つの債務者区分に対応させる関係です。

格付けの具体的な段階数や基準は各金融機関が独自に定めており、公表されていません。一方で、格付けの付け方の一般的な類型は、金融庁の2026年5月の文書に整理されています[3]。

方法 内容(金融庁資料の要旨) 特徴
エキスパートジャッジメント 審査担当者の専門的判断による方法 データの蓄積がない新しい取組でも実施しやすいが、組織内で判断をそろえにくい
スコアカード 評価基準を組織内で明文化する方法 上下2つの中間
モデル 数理モデルに基づくスコアリングによる方法 判断をそろえやすいが、データの蓄積と数理的な素養が必要

同じ文書が引用する金融庁の2025年7月の考え方では、多くの金融機関の与信管理システムでは、実務上の制約から「第一次評価としては、もっぱら外形的な現象、財務情報に基づいて債務者区分・格付が判定される」場合が多いとされています[3]。業界団体の信用リスクデータベースを使ったスコアリングモデルで、表面の財務数値による格付けを行ってきた金融機関の例も紹介されています[3]。

公的な制度でも、決算書をモデルで評価する仕組みが使われています。たとえば東京信用保証協会の保証料率表では、9つの料率区分を、直前の決算書をもとに一般社団法人CRD協会のリスク評価モデルで判定するとしています[17]。

決算書はどう見られる?公的資料で確認できる着眼点

決算書の見方は金融機関ごとに違い、非公表です。公的に確認できる目安として、経済産業省が企業と金融機関・支援機関の「対話」のために公開しているローカルベンチマーク(ロカベン)の財務6指標があります[6]。経済産業省は、ロカベンを事業性評価や事業計画策定の場で活用できると案内しています[7]。

指標 計算式(ロカベンシート2022年度版) 何がわかるか
①売上増加率 (最新期売上高÷前期売上高−1)×100 事業の成長性
②営業利益率 営業利益÷最新期売上高×100 本業の収益性
③労働生産性 営業利益÷従業員数 1人あたりの稼ぐ力
④EBITDA有利子負債倍率 (借入金−現金・預金)÷(営業利益+減価償却費) 借入金を本業の現金収入で何年分で返せるか
⑤営業運転資本回転期間 (売上債権+棚卸資産−買入債務)÷(売上高÷12) 商売に寝ている資金が月商の何か月分か
⑥自己資本比率 純資産÷負債・純資産合計×100 財務の安全性

出典:経済産業省 ローカルベンチマーク(ロカベン)シート[6]

この会社は売上が20%伸びていますが、営業運転資本が月商2か月分あるため、売上が増えるほど運転資金の借入需要も増えます。運転資金の計算方法は「運転資金とは|計算式と不足したときの調達方法」で詳しく解説しています。

計算した数字は、何と比べればよい?業種別の基準値

ロカベンシート(2022年度版)には、⑤営業運転資本回転期間について、業種と事業規模ごとの基準値(中央値)が収録されています[6]。自社の数字は、全業種の平均ではなく同じ業種の基準値と比べます。

業種(ロカベンの分類) 中規模事業者 小規模事業者
建設業 1.2か月 0.8か月
製造業(金属製品) 2.2か月 1.7か月
製造業(一般・電気機械器具) 2.5か月 2.0か月
製造業(食料品・飼料・飲料) 1.8か月 1.6か月
卸売業(食料品) 0.7か月 0.8か月
卸売業(その他) 1.0か月 0.9か月
小売業 0.9か月 1.1か月
飲食業 0.1か月 0.1か月
運輸業 1.0か月 1.0か月
医療業 0.3か月 0.3か月
事業サービス業 1.1か月 1.0か月
広告・調査・情報サービス業 1.2か月 1.0か月
専門サービス業 1.1か月 0.8か月

出典:経済産業省 ローカルベンチマーク(ロカベン)シート(2022年度版)の「営業運転資本回転期間基準値」の中央値を、小数第2位で四捨五入[6]。基準値の元データの時点と母集団は、シート上では確認できませんでした。

上の計算例の会社(営業運転資本回転期間2.0か月)は、金属製品製造業の中規模事業者(2.2か月)なら基準値の範囲内ですが、卸売業(その他)の中規模事業者(1.0か月)なら基準値の2倍です。同じ2.0か月でも、業種が違えば金融機関への説明の重さが変わります。業種別の見方は「運転資金とは」で詳しく扱っています。

では、ファクタリングを使うと決算書の見え方は変わる?

変わります。売掛金を売ると売掛金が減って現金が増え、手数料は費用(売上債権売却損など)になります。借入金は増えないため、④や⑥の指標の計算にも影響します。どのように見えるかは「ファクタリングを使うと決算書はどう見える?」で解説しています。

では、個人事業主や創業直後で決算書がない場合は?

個人事業主は、確定申告書と、青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)が決算書の役割を果たします。信用保証協会の保証申込みでも、主な提出書類として「確定申告書(決算書)」が挙げられています[19]。

創業直後で決算書がない場合の扱いは、公的な保証制度で具体的に確認できます。東京信用保証協会の料率表では、直前の決算で貸借対照表がない場合、9つの料率区分のうち中間の「区分5」を適用するとしています[17]。創業者向けには、創業関連保証など合計で最大3,500万円までの保証制度があり[20]、創業予定者や創業後5年未満の法人などが経営者保証なしで使える「スタートアップ創出促進保証」も2023年3月15日に始まっています(保証限度額3,500万円)[21]。創業期の資金調達は「創業・開業したばかりでもファクタリングは使える?」でも解説しています。

資金使途と返済財源はなぜ重視される?

資金使途(借りたお金を何に使うか)と返済財源(何のお金で返すか)が一致していることは、返済可能性の説明そのものだからです。金融庁は、バブル期以前には「運転資金、設備資金等の資金使途や返済財源に着目し、将来のキャッシュフローを重視した融資」が行われていたとの指摘を紹介しています[1]。2026年5月の文書も、資金使途に見合った返済計画・融資手法を選ぶことを求めています[3]。

資金使途 典型的な返済財源 説明に使う資料
経常運転資金(仕入・人件費の立替え) 売掛金の回収 売掛金・在庫・買掛金の残高、回転期間
増加運転資金(売上増加に伴う立替え増) 増えた売上の回収 受注書、見積書、売上計画
季節資金・つなぎ資金 特定の入金(工事代金、補助金など) 契約書、交付決定通知
設備資金 設備が生む利益と減価償却費 見積書、投資計画、収支計画
赤字補塡 将来の黒字化 経営改善計画

日本政策金融公庫の調査では、2025年に借入をした小企業の最大の借入の資金使途は、「日常的な仕入・経費支払」が52.2%、「売上増加に伴う仕入・経費支払」が18.6%、「赤字補塡」が13.2%でした[12]。資金需要の中心は運転資金です。

金融庁の資料では、要注意先に対する貸出でも「正常な運転資金と認められる債権」は、回収の危険性が低い債権(非分類)として扱われると説明されています[1]。売上債権と在庫の裏付けがある運転資金は、それだけ説明しやすい資金使途だということです。

稟議とは?融資が決まるまでの流れ

稟議とは、担当者が作成した融資の案について、決裁権限を持つ上位者や審査部門の承認を得る、金融機関内部の手続きです。決裁権限の金額や稟議書の様式は各金融機関の内部規程で決まっており、公表されていません。

一般的な流れは次のとおりです。提出書類や順序は金融機関によって異なります。

  1. 相談・申込み:資金使途、金額、希望の期間と実行日を伝える
  2. 資料の提出:決算書(2〜3期分)、直近の試算表、借入金の一覧、資金繰り表、事業計画など
  3. 面談・実態の把握:事業内容、取引先、今後の見通しを説明する
  4. 審査・稟議:担当者が案を作り、内部の承認を得る(信用保証協会の保証を付ける場合は、協会の保証審査も並行する)
  5. 契約・実行:金銭消費貸借契約、担保・保証の契約を結び、入金される
  6. 期中管理:決算書や試算表を定期的に提出し、計画との差を確認する

金融庁の2026年5月の文書は、融資審査で使う事業計画について「形式に囚われる必要はなく」、第三者が作成したものや細かすぎるものである必要はないとしています[3]。重要なのは、次の3点について金融機関と共通理解を持てることです[3]。

  • A)事業者がどのような行動をとる予定で、それが事業見通しの達成にどの程度寄与するか
  • B)想定どおりに行動できない・結果が出ない場合の備えは何か
  • C)見通しを支える、または疑義を生じさせうる情報(過去の計画の達成度など)は何か

経営者個人はどこまで見られる?経営者保証と信用情報

中小企業の審査では、会社と経営者個人の関係も判断材料になります。金融庁の資料は、代表者等の役員報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力を総合的に勘案するとしています[1]。

経営者保証については、2013年12月9日に「経営者保証に関するガイドライン」が公表され[9]、経営者保証を求めない融資の要件として、①法人と個人の資産の分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性の確保が示されています[8]。さらに「経営者保証改革プログラム」により、2023年4月から、金融機関が個人保証を求める場合には、次の2点を個別具体的に説明し、その結果を記録することが求められています[8]。

  • どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか
  • どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか

同プログラムでは、「金融機関から経営者保証に関する適切な説明がない」といった相談を受け付ける専用窓口を金融庁に設けることも示されています[8]。

経営者個人の借入れや返済の状況は、個人信用情報機関に登録されています。全国銀行協会が設置・運営する全国銀行個人信用情報センターは、本人が自分の登録情報の開示を請求できる手続きを設けています[14]。自分の情報を事前に確認しておくと、説明の準備ができます。

反社会的勢力との関係は、どの金融機関でも取引を断られる理由になります。政府(犯罪対策閣僚会議幹事会)は2007年6月19日の指針で、企業に反社会的勢力との関係遮断を求めています[15]。

審査に通りにくいのはどんなとき?

公表資料から読み取れる「審査に通りにくい状態」は、返済可能性を説明する材料が欠けている状態です。債務者区分の定義に照らすと、延滞、返済条件の変更(金利減免・棚上げ)、実質債務超過、経営改善計画の未達は、区分を下げる要因として明記されています[1]。

状態 債務者区分の定義との関係 対応の方向
返済が3か月以上延滞している 要管理先の要件(3カ月以上延滞債権)[1] 延滞の解消、条件変更の正式な協議
返済条件を変更(リスケ)している 貸出条件緩和債権は要管理先の要件[1] 実抜計画・合実計画の策定
業況が低調・財務内容に問題がある 要注意先の定義[1] 原因と改善策の説明
経営改善計画の進捗が芳しくない 破綻懸念先の定義[1] 計画の見直し、専門家の支援(405事業)[13]
決算書・試算表を出せない 返済能力を判断する資料がない 会計の整備、確定申告

資金調達の環境も確認しておきましょう。日本銀行の短観(2026年9月調査)では、中小企業の金融機関の貸出態度判断DI(「緩い」−「厳しい」)は12で、前回の6月調査と同じプラスでした[10]。一方、借入金利水準判断DI(「上昇」−「低下」)は6月調査の61から9月調査で70に上がり、2026年12月までの予測は74です[10]。国内銀行の新規貸出約定平均金利は2026年8月に1.782%、信用金庫は2.254%でした[11]。日本政策金融公庫の調査では、2025年に前年より借入金利が「上がった」と答えた小企業は57.9%です[12]。

返済条件を変更している会社や、債務超過の会社の資金繰りは「債務超過・返済条件の変更(リスケ)中の会社のファクタリング」、税金の滞納がある場合は「赤字決算・税金滞納でもファクタリングは使える?」で解説しています。

銀行融資とファクタリングはどう使い分ける?

銀行融資は「返済を約束して借りる」方法、ファクタリングは「売掛金を売って代金を受け取る」方法です。金融庁はファクタリングを、法的には「債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しています[16]。審査の中心も、融資は借り手の返済可能性、ファクタリングは売掛先の支払能力と債権の実在性という違いがあります。

比べる点 銀行融資 ファクタリング
法的な性質 金銭消費貸借(借入れ) 債権の売買(債権譲渡)[16]
審査の中心 借り手の返済可能性(財務+事業性) 売掛先の信用力と債権の実在性
必要な書類 決算書、試算表、事業計画など 請求書、契約書、入金実績の通帳など
コスト 金利(国内銀行の新規平均1.782%、2026年8月)[11] 手数料(年率換算すると融資より高くなることが多い)
資金化できる額 返済能力に応じた金額 売掛金の額面が上限
決算書上の扱い 借入金が増える 売掛金が減り、現金が増える

ファクタリングの審査で見られる点は「ファクタリングの審査基準」、手数料の水準は「ファクタリング手数料の相場」で解説しています。

金融庁は、形式上は債権譲渡契約でも、売主が買戻しを求められるなど経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあるとしています[16]。銀行融資を断られた直後は、条件の悪い契約でも受け入れてしまいがちなので注意してください。融資・ファクタリング以外の手段も含めた比較は「資金調達の方法一覧」にまとめています。

よくある質問

Q銀行融資の審査では何を見られますか?

A銀行融資の審査では、借り手が約束どおり返済できるかを判断します。金融庁の資料では、決算書などの定量情報に加え、事業の将来性や代表者の資質などの定性情報も信用リスクの判断材料として挙げられています。資金使途と返済財源が合っているかも重視されます。

Q銀行の格付けと債務者区分は同じものですか?

A同じではありません。金融庁の資料では、自己査定は原則として信用格付を行い、その信用格付に基づいて債務者区分を行うと説明されています。格付けは金融機関ごとの細かい段階評価で、債務者区分は正常先から破綻先までの5区分(要注意先の中に要管理先)です。

Q金融検査マニュアルが廃止されて、債務者区分はなくなりましたか?

Aなくなっていません。金融検査マニュアルは2019年12月18日に廃止されましたが、金融庁は同日公表の文書で、マニュアル別表に基づいて定着している現状の実務を否定せず、現在の債務者区分を出発点とする考え方を示しています。

Q赤字決算だと銀行融資は受けられませんか?

A赤字だけで一律に決まるという公的なルールはありません。金融庁の資料では、中小・零細企業の債務者区分は財務状況だけでなく、技術力、販売力、成長性、代表者の収入や資産、保証能力なども総合的に勘案して判断するとされています。赤字の原因と改善の見通しを説明できるかが重要です。

Q稟議とは何ですか?どのくらい時間がかかりますか?

A稟議とは、担当者が作成した融資の案について、決裁権限を持つ上位者や審査部門の承認を得る金融機関内部の手続きです。決裁権限や稟議書の様式、所要日数は各金融機関の内部規程で決まっており、公表されていません。急ぐ場合は、申込み時に希望の実行日を伝えて見通しを確認することが確実です。

Q経営者保証は必ず求められますか?

A必ずではありません。金融庁は2023年4月から、金融機関が経営者保証を求める場合に、どの部分が不十分なために保証が必要か、どう改善すれば保証の変更・解除の可能性が高まるかを個別具体的に説明するよう求めています。法人と個人の資産の分離などの要件を満たせば、保証なしの融資を相談できます。

Q銀行融資を断られたらファクタリングを使うべきですか?

A資金不足の原因によります。売掛金の入金待ちで一時的に資金が足りない場合、ファクタリングは売掛金を売って資金化する方法として選択肢になりますが、年率に換算したコストは融資より高くなることが多いです。赤字が続いている場合は、経営改善計画の策定支援など根本的な対策も並行して検討してください。

出典・参考資料

  1. 金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方(別紙:自己査定・償却・引当の現状の枠組みを含む)」(2019年12月)
  2. 金融庁「基本方針・ディスカッションペーパー一覧(金融検査マニュアル関係〈令和元年12月18日廃止〉)」
  3. 金融庁「事業者と金融機関の信頼関係に基づく事業性融資に関する基本的な考え方」(2026年5月18日)
  4. e-Gov法令検索「事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号)」
  5. 金融庁「企業価値担保権 制度概要」
  6. 経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート(2022年度版)」
  7. 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」(2026年1月16日更新)
  8. 経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」(2022年12月23日)
  9. 金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」
  10. 日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)要旨 2026年9月」(2026年10月1日)
  11. 日本銀行「貸出約定平均金利の推移(2026年8月分)」(2026年10月2日)
  12. 日本政策金融公庫「小企業の借入に関する調査」(2026年2月26日)
  13. 中小企業庁「経営改善計画策定支援」
  14. 全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター」
  15. 法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」
  16. 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
  17. 東京信用保証協会「信用保証料率表(2026年6月23日版)」
  18. 金融庁「金融仲介機能のベンチマークについて」(2016年9月)
  19. 全国信用保証協会連合会「信用保証のお申込の流れ(お申込時の主な提出書類)」
  20. 全国信用保証協会連合会「よくあるご質問」
  21. 中小企業庁「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。」(2025年2月3日更新)

出典のURLと内容は2026年10月22日時点で確認しています。

この記事の更新履歴

  •  公開(旧サイトの銀行融資実務の記事群を統合し、金融庁・経済産業省などの公表資料にもとづいて全面的に書き直し)
  •  日銀短観を2026年9月調査に更新(中小企業の貸出態度判断DI 12、借入金利水準判断DI 61→70、12月予測74)。新規貸出約定平均金利を2026年8月分(国内銀行1.782%・信用金庫2.254%)に更新。訂正:創業時の経営者保証を求めない保証制度の記述が、計画段階の資料(経営者保証改革プログラム)を出典にしていたため、中小企業庁の公表にもとづき「スタートアップ創出促進保証(2023年3月15日開始、対象は創業後5年未満の法人など、限度額3,500万円)」に修正し出典を差し替え

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アンドファクタリング「銀行融資の審査の仕組み|格付け・債務者区分・稟議で見られるポイント」(https://factoring.co.jp/compare/bank-loan-screening/、2026年10月22日更新)