中小企業では、外部からの影響を受けることも多く、安定して黒字を維持することが難しいものです。
しっかり経営しているつもりでも、赤字に陥ってしまうことがあります。
赤字になったときに非常に困るのが、銀行からの融資を受けにくくなることです。
銀行からの評価が落ちる可能性は極めて高く、融資交渉は難航します。
その中で融資を引き出し、資金繰りを安定させるかどうかに、会社の存亡がかかっていると言えます。
本稿で、赤字の時の融資交渉を学んでいきましょう。
赤字は融資にどう影響するか?
銀行から融資をスムーズに引き出すにあたって、黒字であることは重要な条件とされています。
黒字は絶対条件とする考え方もあるほどです。
しかし、これはあくまでも「融資を“スムーズに”引き出すための条件」です。
赤字に転落した会社で、融資がスムーズに引き出せなくなるのは事実です。
しかし、融資交渉をうまく進めることによって、融資を引き出せる可能性は残っています。
もちろん、一口に赤字と言っても、会社によって状況は色々です。
一時的な赤字に陥っただけの会社と、慢性的な業績不振の後に赤字に転落した会社、あるいは二期以上の連続赤字の会社では、交渉の難しさは大きく異なるはずです。
また、悪材料が赤字だけの会社と、赤字以外にも複数の悪材料がある会社でも、融資交渉の難易度は異なります。
特に知っておきたいのは、赤字の他にも、融資交渉にマイナスとなる悪材料は色々あるということです。
これは、債務者区分に大きく影響することからも、融資交渉を知る上では欠かせない要素です。
赤字のもたらす債務者区分への影響
債務者区分は、良いものから順に挙げていくと、
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
に分けられています。
最も良い「正常先」になるためには、業況が順調(軽微な減収減益、横ばいで安定、増収増益)であること、財務内容に問題がないことが条件となります。
したがって、赤字に陥った会社は、正常先の維持が難しくなります。
もちろん、金融庁の方針では、個々の会社の状況に応じて債務者区分を決めるべきとしており、赤字に転落しても正常先を維持できる場合もあります。
しかし、赤字によって基本的には正常先に当てはまらないものです。
要注意先に区分されるのは、業績と財務に注意を要する会社です。
業績が低調を続けている、赤字に転落した、債務超過状態になった、3ヶ月未満の延滞を起こしているなどの状態です。
これらのいずれかの要素を持っている会社は、正常先に当てはまらなくなり、要注意先以下の区分となります。
そして、業績と財務に関する問題が深刻になるにつれて、債務者区分は悪化していき、融資を受けることも難しくなります。
例えば、一期だけの赤字でも3ヶ月以上の延滞があれば要管理先に区分されますし、二期連続赤字に加えて少しでも延滞があれば破綻懸念先に分類されます。
債務超過は赤字と同レベルの問題とみなされ、融資に大きくマイナスとなります。
しかし、逆に考えるならば、赤字“だけ”の状態であれば、まだ救いようがあります。
赤字に陥っただけの状態であり、債務超過ではなく、延滞をしたこともなく、黒字転換や赤字縮小などの業績回復の見込みをきちんと説明できる会社ならば、融資を引き出せる可能性は充分にあるのです。
もし、先が見えない深刻な赤字であるとか、赤字以外の問題も多く抱えている会社では、融資を受けることは難しくなります。
その場合には、融資を受けるのではなくリスケジュールを進めて、立て直しを図っていくこととなります。

以上のように、赤字は正常先からの転落を意味しており、融資交渉を難しくする要素だが、交渉の余地は十分に残されているのだ。
なぜ赤字が危険視されるのか
では、どうして赤字はそれほど危険視されるのでしょうか。
それは、以下のような理由から、銀行が融資に積極的になりにくいためです。
返済ができないかもしれない
銀行が融資を判断する際には、「きちんと返済されるかどうか」が最も重要なポイントとなります。
きちんと返済されるということは、元本は安全に回収することができ、利息収入も得ることができ、全てが丸く収まります。
この時の返済原資は、利益から見込むのが原則です。
業績が赤字になっているということは、利益が出ていないということですから、安全であるとは言い切れなくなります。
融資判断の原則から外れるため、融資が出にくくなるのです。
財務的にも危ないかもしれない
また、赤字になった場合には、利益から資金繰りを回していくことができません。
仕入先への支払いや、銀行への返済や、その他の色々な支払いを、利益の中から支出できないのです。
そうなると、利益以外の資金から支払いを行い、赤字分を補填する必要があります。
銀行から赤字補填資金を借り入れたり、手元資金を取り崩したり、資産を売却して資金を調達したりして、赤字分を補填していきます。
手元資金や資産の売却によって対応した場合には、会社の資産は目減りし、財務状態の悪化を招きます。
赤字補填資金を借り入れた場合にも、赤字で苦しいところに返済負担がのしかかることになり、資金繰りを悪化させる要因となります。
これも、赤字が嫌われる理由です。
将来的に危ないかもしれない
そして、将来的に倒産する懸念もあります。
赤字の会社は稼げない会社であり、稼げない分をどこで補填する必要があり、その状況が続けば確実に弱体化していきます。
改善の見込みがなければ、いずれ倒産に至り、破産によって債務の整理をすることになります。
そうなれば、銀行は融資したお金のほとんどを回収できなくなる可能性があります。
これも、大きな理由の一つとなっています。

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交渉のポイントは?
以上のように、交渉の余地があるとはいえ、交渉しにくいのは間違いない状態です。
そこでうまく交渉していくためには、銀行が赤字を嫌う理由に応じて対策を図る必要があります。
銀行は、上記の点を不安視しています。
したがって、融資交渉の際には上記の点にどのように対処していくかを説明し、銀行に安心を与えていくことが大切です。
返済ができないかもしれない→返済には問題ない
返済できないかもしれないという不安については、返済には問題ないことをしっかりと説明していくことが必要です。
一時的な赤字であると力説
考えられる対策には色々ありますが、まず、その赤字があくまでも一時的なものであるならば、それを説明することが重要でしょう。
例えば、食品などを取り扱っている会社では、主力商品の産地が自然災害などに見舞われることで仕入れができなくなり、売上が激減し、赤字に転落することがあります。
このような会社が融資を申し込むならば、災害の影響をどのようにカバーしていくかを説明することがポイントです。
例えば、
- 前期は災害によって売上が激減したが、産地の復興は着実に進んでおり、今期中には従来の〇%程度まで仕入れが回復する。黒字回復が見込まれる
- 前期は売上が下がったが、早急に仕入れルートを開拓し、徐々に売上につながってきている。今期は収支がトントンくらいになる可能性があるが、来期は従来の業績にかなり近づくと思う
などの説明をするのです。
このような説明を受けると、銀行は「赤字は一時的なもので、短期間のうちに利益が出るようになる。そこからの返済も見込める」と考え、融資を出す可能性が高まります。
赤字対策を具体的に説明
もちろん、一時的な赤字転落ではなく、あまり良くない状況が続いて、ついに赤字になったというケースもあるでしょう。
そのような会社は、良くない傾向が続くうちに財務的にも良くない影響が出ている可能性が高く、融資交渉が一層困難となります。
しかし、ここでも返済に問題があると思われるわけにはいきません。
今後の計画や実際の取り組みを説明し、安心を与えていく必要があります。
例えば、
大手取引先であるA社の受注が年々減少し、ついに赤字となった。新規の顧客開拓に取り組んでいるが、A社の減少分をカバーできるほどではない。しかし、A社の受注減は徐々に落ち着いてきており、新規顧客開拓も着実に進んでいる。計画上では、今後3年で黒字回復の予定である。
といった説明です。
このような会社では、具体的な数値を盛り込んだ計画を作って説明したほうが、交渉が上手くいくことが多くなります。
会社の状況によって小さな違いはあるでしょうが、基本的には返済に問題ないことを説明することで、融資を受けられる可能性が高まります。
財務的にも危ないかもしれない→財務的にも問題ない
財務的な問題については、決算書やその他の資料から、銀行はかなり把握していると思います。
したがって、財務的に問題ないと説明するとき、誇張した表現や嘘は却って逆効果となります。
ここで大切なのは、財務の安定につながる要素をしっかりとアピールすることです。
例えば、
- 赤字の状況ではあるが、手元資金は月商3ヶ月分を確保しており、資金繰りは当面問題ない
- 赤字ではあるが、経営者個人に担保となる資産があり、いざというときは資金調達に使うことができる
- 手元資金や担保資産には乏しいが、支援を了解してくれている銀行が複数見られ、すぐに資金繰りに行き詰ることはない
- 財務の負担を軽くするために、与信管理の徹底や業務改善に取り組んでおり、徐々にプラスの影響が出てきている
など、自社が持っている材料は惜しみなく開示して、安心を与えていくことが重要です。
また、交渉テクニックの一つとして、支援が望みにくい銀行に預けている預金を、支援を依頼する銀行の口座に移すという方法もあります。
相当量の預金を入れることができれば、銀行はそこからの返済を期待することができるため、流動保全として捉えることができます。
また、口座のお金の動きをチェックすることで、会社の資金繰り状況を予測することができるため、経営状況を把握するのにも役立ちます。
手元資金がない会社には向いていない方法ですが、手元資金のある会社は検討してみる価値があります。
将来的に危ないかもしれない→将来的にも問題ない
これは、返済に問題ないことを説明することと似ています。
しかし、将来的にも問題ないことを説明するためには、業績と財務の両面での説明が必要となります。
いくら業績に回復の見込みがあっても、回復するまで資金繰りが続かなければ倒産します。
また、いくら財務的に問題がなくても、いつまでも業績が回復しなければ、いずれは倒産します。
したがって、業績回復の見込みを説明し、さらにそれに伴う財務の安全性についても説明し、将来的にきっと立ち直っていくこと、そして将来的に良い付き合いが見込めることを納得してもらいましょう。

さらに、銀行に対し、将来的に良い付き合いができそうだと思わせることができれば、かなり上出来よ!
将来的に問題がない、むしろ将来性があると思えば、銀行はこの機に積極的に融資し、自行の融資シェアを伸ばし、他行よりも深い付き合いをしていこうと考えるかもしれません。
赤字でありながら融資を引き出しやすくなるため、そうなることを目指して交渉することがポイントです。
その他のポイント
以上のポイントを踏まえて、交渉相手の選び方も知っておく必要があります。
赤字という大きなマイナスからの出発となりますから、融資に消極的になる可能性がある銀行と交渉しても、上手くいかない可能性が高いです。
したがって、融資に積極的になる、何らかの理由がある銀行を優先的に交渉するべきです。

最も交渉しやすいのがメインバンクだ!
メインバンクは、取引している銀行の中でも、最も融資量が多いのが普通であり、融資以外の取引も多いことと思います。
つまり、もし会社が倒産した場合、債権者の中で最も被害を受けるのはメインバンクということです。
貸し倒れ額が多いだけではなく、融資以外の取引で得られていた収益も失うことになります。
また、メインバンクが支援を拒否すれば、準主力以下の銀行は、「メインバンクが見放した」とみなします。
メインバンクが支援しない会社を、準主力以下の銀行が支援する可能性は非常に低いのです。
このため、メインバンクが融資を拒否すると、その会社は他の銀行からも融資を受けることが難しくなり、資金繰りは回らなくなり、倒産する可能性が非常に高くなります。
つまり、メインバンクが融資を拒否するということは、メインバンクがその会社に引導を渡すようなものなのです。
そうなれば、メインバンクが多額の貸し倒れや収益機会の損失を被ることになるのですから、できるだけ支援したいと考える理由が分かると思います。
したがって、取引している銀行の中でも、最も支援を受けられる可能性が高い銀行はメインバンクといえます。
赤字を抱えた会社だからこそ、メインバンクからの融資を検討するのが良いでしょう。
もちろん、メインバンクと同じように、融資する合理的な理由がある銀行ならば、それも検討してみる価値があります。
多額の融資を行っており、融資外取引もたくさん抱えている準主力行なども、交渉次第では融資を引き出せる可能性があるでしょう。

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実際の交渉の様子
ここからは、赤字を抱えた会社が、実際に交渉する様子を見ていきましょう。
ここでは、以下のような会社(以下、B社)を例とします。
- 建築資材の製造業者
- 業歴は長く、販売先には大手企業も複数抱えている
- 販売シェアが大きかった大手取引先からの受注が減少し、3期連続の減収減益の後、前期は赤字に転落
- 安定期の手元資金はあるものの、万が一の備えとしておきたいので、メインバンクに運転資金の融資を依頼
メインバンクとしては、今後の業績がどのようになっていくかが、判断のポイントとなります。
それが見えてくれば、メインバンクとしての支援もやりやすくなるでしょう。
このため、融資交渉の対話では、融資担当者は今後の業績を見極めることに焦点を当てます。
したがって、今後の業績で安心を与えられるような対話ができれば、融資実行の可能性も高まります。
では、対話の例を見てみましょう。

担当者:資料を拝見しましたが、業績悪化は深刻なようですね。受注が減少しているようで。

経営者:はい。販売シェアが大きかった、大手からの受注が年々減少してきました。

担当者:減少の原因はどこにあるのでしょうか。

経営者:それは、業界全体の需要減にあると思います。2~3年前までは不動産投資も盛り上がっていましたし、リフォームやリノベーション、その他の需要で好調を続けてきました。大手からの受注も伸びました。しかし、徐々に下火になるにつれて受注が減っています。

担当者:受注の回復見込みはどうですか?

経営者:業界全体の動向によって減少しているので、大手からの受注をすぐに回復させるのは難しいと考えています。

担当者:そうですか。今後、どのような対応を考えているのでしょうか。

経営者:当たり前の対応ではありますが、社員にも当社の現状をしっかりと伝え、危機感をもって仕事に当るように言っています。これにより、ピリッとした雰囲気になっていますから、長期的には効果が出てくると思います。
また、私も積極的に動くことで、受注は少しずつ増えています。小規模の取引ではありますが、細かい取引も積み重ねていって、売上にしていきたいです。
大手からの受注は、短期間での回復は見込めないのですが、だんだんと落ち着いてきています。少なくとも、今後さらに減少して業績悪化ということはないと思います。

担当者:なるほど。大手からの受注減にストップがかかれば、他の取引によって業績回復が可能ですね。

経営者:それを見込んでやっているところです。

担当者:わかりました。当行としても、長年のお取引先ですから、今回の融資にはぜひ対応させていただきたいと思っています。ところで、手元資金は使わずに確保しておくおつもりでしょうか。

経営者:そうです。業績回復を進めていくうちに、大きな取引のチャンスもあると思いますが、その時に手元資金が薄いと、積極的に取引しにくくなってしまいます。そのため、手元資金には手を付けず、融資でカバーできればと思っています。

担当者:分かりました。ぜひ対応させていただきたいと思います。稟議にとりかかりますので、宜しくお願い致します。
B社では、取引の長いメインバンクに依頼しています。
融資担当者は、メインバンクとして長く取引を続けており、これまで信用も積み重ねている会社だからこそ、社長の見通しについても理解を示し、融資対応したいと考えています。
このことからも、赤字の会社の融資交渉では、支援が見込める相手を選んで交渉すること、そして業績の見通しをポジティブに説明することが非常に重要だと分かるでしょう。
上司との協議でも今後の見通しがカギ
さて、経営者と面談したのち、融資担当者は上司と協議をし、稟議の基本的な方針を固め、稟議書を作り、支店内で稟議を進めていくこととなります。
この上司との協議の様子を見ても、赤字の会社に対する銀行の見方がよく表れています。

担当者「B社から、運転資金の申し入れがありました。受注減によって業績が悪化し、前期は赤字となっています。」

上司:業績が悪化していたから気になっていたが、ついに赤字か。社長は何と話してた?」

担当者:まず、受注減は徐々に落ち着いてきているとのことです。したがって、業績悪化もそろそろ底打ちかと思います。営業活動には力を入れているようで、小規模な取引が徐々に増えています。」

上司:なるほど。そういう流れなら、いずれ回復するな。

担当者:そうだと思います。

上司:うん。B社の社長とは私も面識があるけど、真面目な人だからね。あの人がそのように話しているなら、大きな間違いはないと思うけど。いくらを希望してるの?」

担当者:2000万円です。

上司:たしか担保はなかったね。」

担当者:しかし、手元資金があります。

上司:どれくらい?

担当者:約8000万円で、月商の約3ヶ月分相当です。

上司:それだけあれば、すぐに回らなくなることはないだろうね。

担当者:この手元資金は今後のために取っておきたいとのことです。社長の性格から考えて、早めに資金調達に動いたのだと思います。

上司:そうだろうと思う。よし、主力行として支援の方向でいこう。稟議をあげてくれ。
融資担当者以外は、会社の現状や経営者の様子について、直接的にはあまり知らないのが普通です。
そのため、融資担当者から情報を聞き、客観的に問題点に触れ、稟議の方針を検討していきます。
ここでも、赤字であることを真っ先に気にして、経営者が現状や見通しについてどのように考えているかを聞いています。
それにより、業績の見通しはそれほど悪くないこと、手元資金が確保されていること、メインバンクとして支援すべき立場にあることから、基本的に融資しようという結論に達しています。
もし、融資担当者との面談の際に、今後の業績についてポジティブな説明ができていなかったとすれば、融資担当者から上司に良い情報が伝わらず、稟議も慎重になった可能性が高いです。
上司の態度からも、赤字の会社の融資交渉では、今後の見通しをしっかり説明し、納得してもらうことがカギといえます。

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稟議書にはどう書かれる?
赤字という不利な条件を抱えていても、相手を良く選んで融資交渉に臨み、今後の見通しをしっかり説明することができれば、稟議は有利に進む可能性は高まります。
実際、稟議の重要資料となる稟議書も、以下のような内容になることが多いです。
概況
業歴20年の建築資材製造業者。業界全体が不景気の傾向にあり、主要顧客からの受注が減少。3期連続での減収減益であり、前期は赤字で業績は厳しい。
ただし、赤字転落は創業以来初めてのことであり、過去の蓄積は相当に有していることから、信用不安の懸念はないものと思料。
早期の業績回復は期待できないが、新規取引先の獲得に一定の実績が見られ、主要顧客からの受注減にも歯止めがかかりつつある状況。
資金使途
経常運転資金。赤字により手元資金が減少。このため、本件により資金繰り安定を図るもの。
融資条件
証貸、金額20百万円、期間3年の分割返済、利率2.125%。
保全
全額無担保扱い許容。手元資金は相応の水準を有しており、懸念ないものと思料。
資金調達余力
会社および代表者に見るべき資産なし。マル保は他行にて30百万円利用中。足元の業績から保証余力は期待できないが、返済の進捗によって余力は発生してくるものと思料。
狙い
当行主力先。業績悪化により、資金繰り安定のため今回の申し出となったもの。
取引振りは当行に集約されている先柄でもあり、本件主力行として支援いたしたい。

稟議書の概況欄には、会社の置かれている状況が記載される!
稟議にあたる人に会社の状況を簡潔に伝えるものですが、ここの内容によって、その会社が融資依頼に至った経緯も分かるようになっています。
B社の場合、ここ数年で業績が悪化し、前期は赤字になっている状況が記載されており、これが融資の申し入れにつながったことが分かります。
ただし、会社の現状といっても、良い状況もあれば悪い状況もあるものです。
銀行が融資に積極的に応じたいと考えている場合には、現状の悪い部分について記載すると同時に、良い部分についても記載します。
この記載があるかどうかによって、稟議の様子は大きく変わります。
経営者がしっかりと融資担当者に説明していることで、好材料が稟議書に記載できるようになります。
融資担当者も、融資したくない会社でなければ、稟議がスムーズに進むような稟議書を作りたいと考えています。
稟議書は「本件主力行として支援いたしたい」と締めくくられていますが、融資担当者は「支援しましょうよ」と支店内に働きかけているのです。
その働きかけが実を結ぶためには、稟議にあたる人が「融資してもいいだろう」と思うように説得していく必要がありますから、好材料があれば稟議書に取り上げていくのです。
たとえ赤字の会社であっても、銀行の考え方や稟議の仕組みをうまく活かして交渉していけば、融資は実行されやすくなります。
それにつけても、融資交渉では業績の改善策と、今後の見通しをしっかり説明することが大切なのです。

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まとめ
赤字を抱えている会社は、銀行からの融資を危ぶまれるのが普通です。
しかし、財務基盤が不安定であり、外部からの影響を受けやすい中小企業では、赤字を避けられないこともあります。
だからこそ、赤字になったときの銀行交渉をいかにうまくやり遂げるかによって、会社の安定性は大きく左右されることになります。
赤字に陥らないように資金繰りをするのはもちろんのこと、もし赤字になったときもしっかり資金繰りを回せるように、当サイトで銀行交渉の要諦を学んでほしいと思います。
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