銀行が融資を判断するとき、最も重視する要素は返済能力です。
融資した資金を、約束通りに返済してくれるかどうかによって、融資判断は大きく変わります。
もちろん、返済能力がない会社に対して、銀行は融資を渋ります。
しかし、それでも融資が必要という会社は非常に多いことでしょう。
では、どのように交渉すれば融資を受けられるのでしょうか。
本稿では、調達余力を手掛かりに交渉していく方法について、元銀行員に話を聞いてみました。
調達余力とは?
これは間違いないでしょうか。
間違いありません。
返済能力は融資判断の原点と言っていいでしょう。
なんて言ったって、貸したものをしっかり回収して、そこで融資は完結するんですからね。
そうですね。
だから、金融庁の指導でもそうですが、返済能力がないというだけで見捨てるな、融資できる理由をどこからか見つけろ、といわれますね。
返済能力は重要ですが、それがないから絶対に融資を受けられないというわけでもありません。
もちろんです。
ですから、返済能力はあまり見込めないながらも、融資できる理由を見つけていくんです。
例えば、資金調達余力、簡単に調達余力とも言いますけれど、これで融資が出ることがあります。
調達余力とは、その会社があとどれくらい資金を調達できるかということです。
返済がないということは、安定して返済していける利益が出せていないということですよね。
そんな状況でも、極端な話、資金繰りが続くうちは倒産しません。
どれだけ赤字でも、資金が続けば会社は回っていきます。
その資金を今後どれだけ調達できるか、どれだけ資金繰りを回していけるか、これが調達余力です。
ところが、そうでもないんです。
例えば、返済力がない会社が貸してくれと言ってきたとしましょう。
業績が悪くて返せない、ならば貸せない、これが普通でしょう?
でも、その会社がまだまだ資金を調達できるならどうでしょうか。
信用保証協会の保証枠が何千万円もあるとか、担保余力が何千万円もあるとか、預金が何千万円もあるとか。
ほかには、他行がどう動いているかですね。
返済力がない会社に融資するのは基本的に難しいけれども、複数の銀行で分担して支援できるならば、かなり検討しやすくなりますよね。
つまり、他行が積極的に支援している、他行からまだまだ資金を調達できそうだ、ということも調達余力とみなせます。
そういう場合には、業績は悪くて返済能力にも乏しいが、まだまだ調達余力はあるし、資金繰りには問題がなさそうだから貸し倒れリスクも低い、融資してもいいと考えるわけです。
それだけとは言いませんが、稟議を通すための大きな材料になることは確かです。

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調達余力で融資が出た具体例
E社という中小企業がいい例になるでしょう。
E社は、ここまで話したような「返済力が乏しい会社」でした。
大手メーカーと取引していて、一時期は業績も好調だったのですが、その大手に依存しすぎていましてね。
大手の業績が落ちて、取引が減少して、E社の業績も低迷したというパターンです。
好調だったころは返済力もあって、設備投資などもやっていたんです。
そこで業績が落ちたものですから、借入金負担が返済力に見合わなくなって、資金繰りがかなり厳しくなりました。
ついに手元資金だけで返済を続けることが難しくなって、準主力だったウチに年間返済額相当の融資をお願いしてきたんです。
はい。融資しても、それを利益から返済していくだけの返済力は到底見込めません。
しかし、支援を断れば資金繰りは確実に破綻することもわかっています。
付き合いが浅い会社であるとか、新規にお願いしてきた会社であったなら、ほとんどの銀行は簡単に断ってしまうでしょうね。
しかし、私は融資するべきだと考えました。

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まず、準主力行として融資シェアは大きいですから、破綻させるわけにはいきません。
それに、E社の業歴は長いですし、販路は確立されています。
今は業績も低迷していて、返済力も乏しいですが、営業基盤はかなり固かったので、苦しい時期を耐えれば回復していく見込みは十分あると思いました。
返済力が乏しいからといって、融資をスパッと断ったり、リスケを選ばせたりするほうが、銀行のリスクは高いと思ったんですね。
そうです。
これは、社長にはぜひ知っておいてほしい考え方です。
会社の状況が悪いと、融資なんて受けられないだろうとネガティブになる社長が多いですよね。
「こんな危ない会社に融資したくないのはわかっていますが、なんとかお願いします」
という感じです。
でも、そういう交渉は絶対うまくいきませんよ。
それよりも、改善計画などをしっかりと立てて、
「今はこんな状況ですが、回復の見通しは立っています。融資するよりも、融資しないほうがリスクが高いですよ」
といった前向きな態度で交渉すれば、融資が出やすくなります。

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そうしてください。
E社の話に戻りますけれども、E社にはさっきも話した「調達余力」が十分にあったんです。
これも大きな理由でした。
E社の希望融資額は3000万円です。
これに対して、まず信用保証協会の保証枠が見込めました。
E社はかなり長期にわたって保証協会を利用していましたから、保証協会からの信用もあって、数千万円の保証ならば認められやすい状況だったんです。
次に担保ですが、E社は工場と不動産、社長個人にも自宅不動産がありました。
これは、すでにウチを含めたいくつかの銀行に担保に入っていました。
ウチが担保として取っていたのは工場で、以前の融資で担保評価いっぱいに融資を出していたんですが、返済がかなり進んでいたので担保余力が見込めました。
他行も問題なく支援していることが分かりましたから、この意味でも調達余力は問題ありません。
むしろ、他行は結構積極的に支援しているようでしたから、安心材料になりましたね。
保証余力と担保余力、他行の支援を考え合わせると、E社の希望する3000万円は十分に出せると判断しました。
稟議書にもそのように記載して、融資しても問題ないことを強調し、無事に融資実行となりました。
そうです。
返済力が不足しているというマイナスポイントを、一気に払しょくできることもあります。
ただ、返済力がなくて、業績回復の見込みもなくて、調達余力があるだけというならば、少し厳しいかもしれませんね。
当分、資金繰りは回るかもしれませんが、いずれ回らなくなるということですから。
あくまでも、今は返済力がないけれども、業績回復のための努力はしていて、見通しも立っていて、なおかつ調達余力があるという場合、融資が出やすくなると考えてください。

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まとめ
銀行は、融資審査の際に返済能力を重視し、返済能力がない会社には融資しないのが普通です。
返済できない相手に貸せば、貸し倒れに陥るリスクが極めて高いためです。
しかし、今は返済できない状態であり、苦しい時期が続いている会社であっても、具体的な改善に取り組んでおり、今後も資金繰りを回していくための調達余力が十分にあるならば、融資を受けられる可能性が高まります。
中小企業は、業績悪化によって返済力が乏しくなることが多いです。
普段から健全な財務体質を作ることを心掛け、調達余力を増やしておき、いざというときに備えておくと良いでしょう。
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