ファクタリングとインボイス制度|適格請求書は誰が発行するか
このテーマの基本:ファクタリングの仕訳と勘定科目【2社間・3社間・個人事業主の仕訳例】
広告なし・一次情報にもとづく解説です。編集方針
この記事の要点
- ファクタリングで売掛金を譲渡しても、元の売上のインボイス(適格請求書)を発行する義務を負うのは、商品やサービスを提供した売主(利用者)のままである。
- ファクタリング会社が受け取る買取手数料(金銭債権の買取差益)は消費税が非課税で、インボイスの交付義務は課税資産の譲渡等にだけ生じるため、ファクタリング会社には手数料についてのインボイスの交付義務がない。
- 3社間ファクタリングで売掛先の支払先がファクタリング会社に変わっても、売掛先が仕入税額控除に使うのは売主が発行したインボイスであり、債権譲渡のためにインボイスを出し直す必要はない。
- インボイス登録をしていない免税事業者もファクタリングは使えるが、売掛先が免税事業者からの仕入れで控除できる割合は、2026年10月1日以後の仕入れから80%が70%に下がったため、価格交渉を通じて売掛金の額に影響する可能性がある。
- 事務手数料・司法書士報酬など買取差益とは別名目の費用は、課税か非課税かが名目ごとに異なるため、請求書の消費税表示と登録番号を確認し、税理士に相談するのが安全である。
| 元の売上のインボイス | 売主(利用者)が発行。ファクタリング後も変わらない |
|---|---|
| 買取手数料のインボイス | 交付義務なし(金銭債権の買取差益は非課税) |
| 根拠条文 | 消費税法57条の4第1項(交付義務)、施行令9条1項4号・基本通達6-3-1(10)(非課税) |
| 3社間で支払先が変わったら | インボイスの出し直しは不要。売掛先は売主のインボイスで控除する |
| 免税事業者の利用 | 利用できる。売掛先の控除割合は2026年10月1日以後の仕入れから70%(9月30日までは80%) |
| 別名目の費用 | 事務手数料などは名目ごとに確認。司法書士報酬は課税仕入れ |
| 制度の開始日 | 2023年10月1日(施行済み。免税事業者からの仕入れの経過措置は2026年10月1日に70%へ縮小) |
目次
ファクタリングで売掛金を売っても、元の売上のインボイス(適格請求書)を発行するのは、商品やサービスを提供した売主(利用者)のままです。ファクタリング会社の買取手数料(差益)は消費税が非課税なので、ファクタリング会社には手数料についてのインボイスの交付義務がありません[1][6]。この記事では、2社間・3社間・注文書ファクタリングの場合分け、免税事業者の注意点、2026年10月1日に見直された経過措置(控除割合80%→70%)を、条文と国税庁の資料で整理します。
この記事は2026年10月22日時点の法令と国税庁の公表資料にもとづく一般的な説明です。個別の取引の税務判断は、契約書と請求書をそろえて税理士に確認してください。
ファクタリングとインボイスの関係は?結論を表で確認
ファクタリングに関わる書類のうち、インボイスの交付義務がかかるのは「売主が売掛先に出す元の売上の請求書」だけです。ファクタリング会社の買取明細書や、債権譲渡の通知書は、インボイスではありません。
| 書類 | 作る人 | 受け取る人 | インボイスとの関係 |
|---|---|---|---|
| 元の売上の請求書(適格請求書) | 売主(利用者) | 売掛先 | 売掛先の仕入税額控除に必要。売主が登録事業者なら交付義務あり |
| 返品・値引きの適格返還請求書 | 売主(利用者) | 売掛先 | 売主が登録事業者なら交付義務あり(57条の4第3項) |
| 買取明細書・精算書 | ファクタリング会社 | 売主 | 買取差益は非課税。交付義務なし |
| 事務手数料などの請求書 | ファクタリング会社 | 売主 | 課税される費用なら、登録事業者はインボイスを交付しうる |
| 債権譲渡通知書・承諾書 | 売主またはファクタリング会社 | 売掛先 | 支払先の変更を伝える書類。インボイスではない |
交付義務の根拠は、消費税法57条の4第1項です。この条文は、適格請求書発行事業者が「課税資産の譲渡等」を行った場合に、相手方の求めに応じてインボイスを交付する義務を定めています[1]。売掛金の譲渡は非課税取引なので、この条文の交付義務はかかりません。
インボイス制度とは?2026年10月時点の基本
インボイス制度は2023年10月1日に始まった施行済みの制度です。一定の事項を記載した帳簿とインボイスの保存が、仕入税額控除の要件になりました[3]。
登録・交付・保存の3つのルール
国税庁のタックスアンサーNo.6498は、制度の要点を次のように説明しています[3]。
- インボイスは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ交付できない
- 登録番号は、法人番号を持つ課税事業者なら「T+法人番号」、それ以外は「T+13桁の数字」
- 登録事業者は、取引の相手方(課税事業者に限る)の求めに応じてインボイスを交付し、その写しを保存する義務を負う
インボイスと帳簿の保存期間は、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です[4]。ファクタリングの審査に請求書の写しを出す場合も、原本と写しの保存は売主の義務として続きます。
インボイスに書く6つの事項
売主が売掛先に交付するインボイスには、次の6項目を記載します[4]。消費税法57条の4第1項の各号と同じ内容です[1]。
| 記載事項 | ファクタリングで確認したい点 |
|---|---|
| ①発行者の氏名・名称と登録番号 | 売主の名称。ファクタリング会社の名称は入らない |
| ②取引年月日 | 納品日・役務の完了日。ファクタリングの契約日ではない |
| ③取引内容(軽減税率の対象ならその旨) | 何を売ったか。売掛金の実在を示す根拠にもなる |
| ④税率ごとに区分した対価の合計額と適用税率 | 売掛金の額面の根拠 |
| ⑤税率ごとに区分した消費税額等 | 元の売上の消費税。売主が申告・納付する |
| ⑥交付を受ける事業者の氏名・名称 | 売掛先の名称 |
登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで検索できます[10]。取引先から届いた請求書の登録番号が正しいかは、このサイトで確認します。
では、売掛先が免税事業者の場合は?
売掛先が免税事業者の場合、売主には、求めに応じてインボイスを交付する法律上の義務はありません。57条の4第1項は、交付を求める相手方から「消費税を納める義務が免除される事業者」を除いているからです[1]。売掛先が課税事業者かどうかで交付義務が変わるだけで、売掛金を売れるかどうかには影響しません。
法人の登録番号は「T+法人番号」なので、ファクタリング会社や売掛先が登録事業者なら、公表サイトの登録番号から法人番号も分かります[3]。ファクタリング会社の法人番号の開示状況は、ファクタリング事業者の透明性調査で集計しています。
売掛金を譲渡したら、インボイスは誰が発行する?
売掛金を譲渡した後も、元の売上のインボイスを発行するのは売主です。インボイスの交付義務は「課税資産の譲渡等を行った」事業者にかかり、商品を納品した、あるいは役務を提供したのは売主だからです[1]。
ファクタリングは、すでに発生した売掛金(代金を受け取る権利)を売る取引です。金融庁も、ファクタリングを「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しています[8]。売上の取引そのものを引き継ぐわけではないため、ファクタリング会社が売主に代わってインボイスを発行することはありません。
2社間ファクタリングの場合
2社間ファクタリングでは、売掛先は債権譲渡を知らないまま、支払期日に売主へ代金を払います。売主が発行したインボイスはそのまま有効で、売掛先の側では何も変わりません。売主は、ファクタリングの前後でインボイスの発行も写しの保存も通常どおり行います。
注文書ファクタリングの場合
注文書ファクタリングは、納品前の注文書(発注書)の段階で将来の売掛金を売る取引です。インボイスの②取引年月日は納品や役務完了の日なので、インボイスは納品後に売主が発行します。注文書の段階でファクタリング会社がインボイスを出すことはありません。仕組みは注文書ファクタリングとはで解説しています。
チェックポイント:ファクタリングに出す請求書が、売掛先に交付したインボイスと同じ内容(金額・日付・登録番号)になっているかを確認します。内容が違う請求書を出すと、売掛金の実在性を疑われる原因になります。
ファクタリング会社はインボイスを発行する?手数料と別名目の費用
買取手数料(買取差益)について、ファクタリング会社にインボイスの交付義務はありません。金銭債権の買取差益は非課税で、非課税取引には57条の4の交付義務が生じないからです[1][6]。
非課税の根拠
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 消費税法6条1項・別表第二第2号 | 有価証券その他これに類するもので政令で定めるものの譲渡は非課税[1] |
| 消費税法施行令9条1項4号 | 売掛金その他の金銭債権は、有価証券に類するものに含まれる[2] |
| 消費税法基本通達6-3-1(10) | 金銭債権の買取又は立替払に係る差益は非課税[6] |
| タックスアンサーNo.6201 | 非課税取引の例に「金銭債権などの譲渡」を挙げる[7] |
利用者から見ると、買取手数料は非課税の費用なので、もともと仕入税額控除の対象になりません。買取明細書に登録番号がなくても、控除額は変わりません。
では、事務手数料や登記費用は?
買取差益とは別の名目で請求される費用は、課税か非課税かが名目ごとに違います。司法書士の報酬や振込手数料は、非課税取引の一覧に含まれない役務の対価なので、課税仕入れとして扱います[7]。これらを仕入税額控除するには、司法書士などが発行したインボイスの保存が必要です(消費税法30条7項)[1]。
「事務手数料」「審査料」などを買取差益に含めるか、課税される役務の対価とみるかは、国税庁の個別の解説を確認できませんでした。請求書に「税別」「消費税」の表示や登録番号があるかを見て、税区分は税理士に確認してください。費用の種類と相場はファクタリング手数料以外にかかる費用、消費税の詳しい扱いはファクタリング手数料に消費税はかかる?で解説しています。
| 費用の例 | 消費税の区分 | インボイスの要否(利用者が控除する場合) |
|---|---|---|
| 買取手数料(買取差益) | 非課税 | 不要(控除対象外) |
| 債権譲渡登記の登録免許税 | 税金の納付で課税仕入れに当たらない | 不要(控除対象外) |
| 司法書士の報酬 | 課税 | 必要 |
| 振込手数料 | 課税 | 必要 |
| 事務手数料・審査料など | 名目ごとに確認(国税庁の個別解説は未確認) | 課税なら必要 |
では、手形割引やでんさいの割引は?
約束手形の割引でも、インボイスの扱いはファクタリングと同じです。国税庁のタックスアンサーNo.6201は、約束手形などの「支払手段の譲渡」を非課税取引に挙げ[7]、消費税法基本通達6-3-1(9)は「手形の割引料」を非課税としています[6]。非課税なので、銀行や手形割引業者に割引料のインボイスの交付義務はありません。
でんさい(電子記録債権)は、電子記録債権法2条1項で「金銭債権」と定義されています[12]。売掛金と同じ金銭債権なので、割引や譲渡の差益の扱いはファクタリングと同じ考え方で整理できます。ただし、でんさいの割引で銀行が別に受け取る事務手数料などは名目ごとの確認が必要です。手形・でんさいとの比較はファクタリングと手形割引の違いで解説しています。
3社間ファクタリングでインボイスはどう扱う?
3社間ファクタリングで売掛先の支払先がファクタリング会社に変わっても、インボイスを出し直す必要はありません。売掛先が仕入税額控除に使うのは、取引の相手方である売主が発行したインボイスです[1][3]。
3社間ファクタリングは、売掛先に債権譲渡を通知するか、売掛先の承諾を得て行います。民法467条1項は、譲渡人からの通知か債務者の承諾がなければ、債権譲渡を債務者に対抗できないと定めています[9]。この通知や承諾は「誰に払うか」を変える手続きで、「誰から買ったか」を変えるものではありません。
売掛先の帳簿はどうなる?
売掛先から見ると、仕入れの相手は売主で、代金の支払先だけがファクタリング会社に変わります。売掛先は、売主のインボイスと帳簿を保存すれば、通常どおり仕入税額控除を受けられます。支払先がファクタリング会社であることは、帳簿の支払記録で説明できます。
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 売掛先への通知・承諾 | しない | する(民法467条) |
| 売掛先の支払先 | 売主 | ファクタリング会社 |
| 元の売上のインボイスの発行者 | 売主 | 売主(変わらない) |
| 売掛先の仕入税額控除に使う書類 | 売主のインボイス | 売主のインボイス |
| ファクタリング会社のインボイス交付義務 | なし(差益は非課税) | なし(差益は非課税) |
チェックポイント:3社間の通知書に、どの請求書(インボイスの番号・日付・金額)の代金を譲渡したかを特定して書くと、売掛先の支払先の切り替えと消し込みがスムーズになります。通知書の書き方は債権譲渡通知とはで解説しています。
免税事業者(インボイス未登録)でもファクタリングは使える?
インボイス登録をしていない免税事業者も、ファクタリングは使えます。売掛金の譲渡は非課税の債権の売買で、インボイス登録の有無を利用条件とする法令の定めはありません[1][2]。
注意すべきは、ファクタリングそのものより、売掛先との取引条件です。売掛先は、免税事業者からの仕入れについて、インボイスがないため原則として仕入税額控除を受けられません[3]。経過措置により、一定の割合だけ控除できます。
経過措置の控除割合(2026年10月1日に80%から70%へ)
免税事業者からの仕入れの経過措置は、2026年10月1日以後の課税仕入れから控除割合が70%になりました。国税庁によると、令和8年度税制改正で経過措置の適用期限が2年延長され、控除できる割合が次のように見直されています[5][11]。
| 期間(課税仕入れを行った日) | 売掛先が控除できる割合 | 2026年10月22日時点 |
|---|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% | 終了 |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% | 適用中 |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% | 未到来 |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% | 未到来 |
| 2031年10月1日以降 | 控除できない | 未到来 |
改正前の予定では、2026年10月1日から3年間は50%、その後は控除不可とされていました[5]。改正で70%の期間が加わったため、2026年10月以後の売掛先の負担増は、改正前の予定より小さくなっています。
あわせて、1つの登録事業者以外の相手からの課税仕入れ(税込み)が、その年または事業年度で1億円を超える場合、その超えた部分には経過措置を使えなくなりました(改正前は10億円)。この上限は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます[5][11]。たとえば12月決算の法人や個人事業者なら2027年1月1日に始まる課税期間から、3月決算の法人なら2027年4月1日に始まる課税期間からです。
売掛先が経過措置を使うための書類
売掛先が経過措置で控除するには、免税事業者から受け取る請求書等と帳簿の両方を保存する必要があります。国税庁は、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨(「80%控除」「7・5・3割控除」など)を記載した帳簿の保存を求めています[11]。
免税事業者の売主が出す請求書は、インボイスではなくても、取引年月日・取引内容・対価の額・相手方の名称などの記載がそろっていれば、売掛先の経過措置の根拠になります。ファクタリングの審査に出す請求書と、売掛先に送った請求書が同じものであれば、記載の不足にも気づきやすくなります。どの日付の仕入れとして80%と70%のどちらを使うかは売掛先の判断なので、境目の2026年9月〜10月の取引は売掛先の税理士の確認に委ねます。
ファクタリングで資金化できるのは、売掛金の額面までです。取引条件の見直しで額面が下がれば、買取額も下がります。免税事業者のまま取引を続けるか、登録するかは、売上規模や取引先の構成で判断が分かれるため、税理士に相談してください。個人事業主のファクタリングは個人事業主・フリーランスのファクタリングで解説しています。
返品・値引きがあったときのインボイスは?
ファクタリングした売掛金で返品・値引きが起きた場合も、適格返還請求書(返還インボイス)を交付するのは売主です。消費税法57条の4第3項は、売上げに係る対価の返還等を行う適格請求書発行事業者に、適格返還請求書の交付を義務づけています[1]。
売上の当事者は売主なので、売掛金を譲渡した後でも、返品・値引きの消費税の処理は売主が行います。一方、ファクタリング会社との間では、譲渡した売掛金の額が減った分をどう精算するかが問題になります。この精算は、消費税ではなく契約書の定め(償還請求権や表明保証の条項)で決まります。
| 場面 | 消費税の処理(売主) | ファクタリング会社との関係 |
|---|---|---|
| 譲渡後に一部返品 | 適格返還請求書を交付し、売上の対価の返還等として処理 | 契約書の定めにより、差額を精算する場合がある |
| 譲渡後に値引き | 同上 | 同上 |
| インボイスの記載に誤り | 修正したインボイスを交付(57条の4第4項)[1] | 金額が変わる場合は精算の対象になりうる |
契約書の条項の読み方はファクタリング契約書のチェックポイントで解説しています。
「インボイスファクタリング」とインボイス制度は関係ある?
「インボイスファクタリング」は、請求書(売掛金)を売るファクタリングを指す呼び方で、2023年に始まったインボイス制度とは直接の関係がありません。英語のinvoice factoring(請求書の買取)に由来する言葉です。
検索すると、「インボイスファクタリング」「請求書ファクタリング」「請求書買取」が同じ意味で使われています。どの呼び方でも、取引の中身は売掛金の譲渡です。インボイス制度の登録番号の有無とは関係なく、請求書の対象になる売掛金を売る取引を指します。請求書買取の仕組みは請求書ファクタリング(請求書買取)とはで解説しています。
インボイス制度で変わったこと・変わらないこと
| 項目 | インボイス制度で変わったか | 内容 |
|---|---|---|
| 売掛金の譲渡・買取差益の消費税 | 変わらない | 非課税のまま(別表第二第2号・施行令9条1項4号・基本通達6-3-1(10)) |
| 元の売上の請求書 | 変わった | 売主が登録事業者なら、6つの記載事項を満たすインボイスを交付 |
| 売掛先の仕入税額控除 | 変わった | インボイスの保存が要件。免税事業者からの仕入れは経過措置の割合だけ控除 |
| ファクタリング会社の手数料の請求書 | 変わらない | 差益は非課税で、インボイスの交付義務なし |
| 別名目の課税費用 | 変わった | 利用者が控除するにはインボイスの保存が必要 |
2割特例・3割特例・簡易課税とファクタリングの関係は?
2割特例・3割特例・簡易課税のどれを使っていても、ファクタリングの買取手数料は納付税額に影響しません。これらの方式は、売上の消費税額をもとに納付税額を計算するからです[3][5]。
国税庁によると、インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった事業者の2割特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間が対象です[3]。2026年9月30日を含む課税期間が最後で、個人事業者なら2026年分の申告(2027年に提出)までです。令和8年度税制改正で、インボイス登録で課税事業者になった個人事業者には、2027年分と2028年分に納付税額を売上税額の3割とする3割特例が設けられました[5]。法人は3割特例を使えません[5]。
| 方式 | 納付税額の計算 | ファクタリングの影響 |
|---|---|---|
| 一般課税 | 売上の消費税 − 課税仕入れの消費税 | 買取手数料は非課税で控除対象外。課税売上割合の計算で売掛金の譲渡額を分母に入れない点に注意 |
| 簡易課税 | 売上の消費税 − 売上の消費税 × みなし仕入率 | 影響なし |
| 2割特例(2026年9月30日を含む課税期間まで) | 売上の消費税 × 2割 | 影響なし |
| 3割特例(個人・2027〜2028年分) | 売上の消費税 × 3割 | 影響なし |
では、売上の消費税はいくらで計算する?
どの方式でも、元の売上の消費税は売主が申告・納付します。ファクタリングで受け取った額は手数料を引いた額ですが、売上の消費税は、インボイスに書いた対価の額(元の売上)で計算します。売掛金の譲渡は非課税の別取引なので、手数料を差し引かれても売上の消費税は減りません[1][6]。
免税事業者の売主は消費税の申告をしないため、この計算は不要です。ただし、売上を手取り額(99万円)で記帳すると、基準期間の課税売上高を小さく見積もり、2年後の納税義務の判定を誤るおそれがあります。売上は額面(元の売上)で記帳します。
課税売上割合の計算はファクタリング手数料に消費税はかかる?、仕訳はファクタリングの仕訳と勘定科目で解説しています。
インボイス対応のチェックリスト
ファクタリングを使う前後で、インボイスに関して確認することは、売主の請求書・ファクタリング会社の費用・売掛先との取引条件の3点に集約されます。
インボイス制度の登録や経過措置の最新情報は、国税庁のインボイス制度特設サイトで確認できます[5]。個別の判断は、顧問の税理士に契約書と請求書を見せて相談してください。ファクタリングの全体像はファクタリングとはで確認できます。
よくある質問
Qファクタリングを使うと、インボイスは誰が発行しますか?
A元の売上のインボイス(適格請求書)は、商品やサービスを提供した売主(ファクタリングの利用者)が発行します。消費税法57条の4第1項の交付義務は、課税資産の譲渡等を行った適格請求書発行事業者に課されるためです。売掛金をファクタリング会社に譲渡しても、売上の当事者は変わりません。
Qファクタリング会社はインボイスを発行しますか?
A買取手数料(買取差益)について、ファクタリング会社にインボイスの交付義務はありません。金銭債権の買取差益は消費税が非課税で(消費税法基本通達6-3-1(10))、交付義務は課税資産の譲渡等に対してだけ生じるからです。ただし、事務手数料など別名目で課税される費用があれば、登録事業者がその費用についてインボイスを交付することはあります。
Q3社間ファクタリングで支払先が変わったら、インボイスを出し直す必要がありますか?
A出し直す必要はありません。3社間では売掛先がファクタリング会社に代金を払いますが、売掛先が仕入税額控除に使うのは、取引の相手方である売主が発行したインボイスです。支払先の変更は債権譲渡通知などで伝えるもので、インボイスの記載事項(売主の名称・登録番号など)を変えるものではありません。
Qインボイス登録をしていない免税事業者でもファクタリングは使えますか?
A使えます。インボイス登録の有無を利用条件とする法令の定めはありません。ただし、売掛先が免税事業者からの仕入れで控除できる消費税は、2026年9月30日までの仕入れが80%で、2026年10月1日以後の仕入れから70%に下がりました。売掛先から値下げを求められると売掛金の額が変わるため、見積もりの前に取引条件を確認しておきます。
Qファクタリング手数料の請求書に登録番号がないのは問題ですか?
A買取手数料(差益)は非課税なので、登録番号がなくても仕入税額控除の問題は生じません。非課税の費用はもともと仕入税額控除の対象外だからです。一方、「税別」と書かれた事務手数料などがある場合は、課税仕入れとして控除するためにインボイスが必要なので、登録番号の有無を確認します。
Qファクタリングした売掛金で返品や値引きがあったら、誰が返還インボイスを出しますか?
A売主(利用者)が出します。消費税法57条の4第3項は、売上げに係る対価の返還等を行う適格請求書発行事業者に、適格返還請求書の交付を義務づけています。売上の当事者は売主なので、売掛金を譲渡した後でも返品・値引きの処理は売主が行います。ファクタリング会社との精算は契約書の定めに従います。
Q「インボイスファクタリング」とインボイス制度は関係がありますか?
A直接の関係はありません。「インボイスファクタリング」は英語のinvoice factoring(請求書の買取)に由来する呼び方で、請求書(売掛金)を売るファクタリングそのものを指します。2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)とは別の言葉です。
Qインボイス制度でファクタリングの消費税の扱いは変わりましたか?
A変わっていません。売掛金の譲渡と買取差益が非課税である根拠(消費税法別表第二第2号、施行令9条1項4号、基本通達6-3-1(10))は、インボイス制度の前後で同じです。インボイス制度で変わったのは、課税仕入れの控除にインボイスの保存が必要になった点です。
出典・参考資料
- e-Gov法令検索「消費税法」
- e-Gov法令検索「消費税法施行令」
- 国税庁「タックスアンサーNo.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「タックスアンサーNo.6625 適格請求書等の記載事項」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「インボイス制度特設サイト 令和8年度税制改正特集」
- 国税庁「消費税法基本通達 第6章第3節 利子を対価とする貸付金等関係」
- 国税庁「タックスアンサーNo.6201 非課税となる取引」(令和8年4月1日現在法令等)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- e-Gov法令検索「民法」
- 国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集(3割特例・7・5・3割控除)印刷用PDF」(2026年4月)
- e-Gov法令検索「電子記録債権法」
出典のURLと内容は2026年10月22日時点で確認しています。
この記事の更新履歴
- 公開
- 訂正:免税事業者からの仕入れの経過措置(80%→70%)を「2026年10月1日から変わる」の未来形から施行済みの書き方に修正(国税庁 令和8年度税制改正特集で再確認)。改正前の50%予定との違い、1億円上限の適用開始の例、経過措置に必要な帳簿記載、2割特例の最終課税期間、手形割引・でんさいとインボイスの節を追加
内容の誤りや古くなった情報にお気づきの場合は、お問い合わせからご連絡ください。確認のうえ訂正し、この欄に記録します。
この記事を引用するとき
記事・図表・データは、出典を明記していただければ引用できます(引用のルール)。出典は次のように記載してください。
アンドファクタリング「ファクタリングとインボイス制度|適格請求書は誰が発行するか」(https://factoring.co.jp/accounting/invoice-system/、2026年10月22日更新)