ファクタリング契約書のチェックポイント|危険な条項11例と確認方法
このテーマの基本:ファクタリングの審査基準|見られる項目・落ちる理由・通過のための準備
広告なし・一次情報にもとづく解説です。編集方針
この記事の要点
- ファクタリング契約書で最優先に確認すべきなのは、売掛先が払わなかったときに利用者が債権を買い戻す、または自己資金で支払う定めがないかで、金融庁はこうした取引を貸金業に該当するおそれがある例として挙げている。
- 契約書にノンリコース(償還請求権なし)と書かれていても、売掛先に支払停止や破産原因がないことを利用者に表明保証させる条項があれば、実質的に債務の保証を求めるのに等しいとして金銭消費貸借と判断された裁判例(東京地裁令和4年3月4日判決)がある。
- 日本貸金業協会は、償還請求権、通帳やキャッシュカードの預かり、代表者や家族の保証、手形・小切手の差入れ、契約書の写しを渡さないことなどを、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高いケースとして挙げている。
- ファクタリング契約書(債権譲渡に関する契約書)は印紙税の第15号文書で、記載された契約金額が1万円以上か記載がない場合の印紙税は200円である(国税庁、令和8年4月1日現在法令等)。
- 売掛債権の譲渡は消費税の非課税取引で、債権譲渡登記を使えるのは法人に限られるため、個人事業主の契約書に登記の定めがあれば制度上できない手続きが書かれていることになる。
| 最優先で読む条項 | 償還請求権・買戻し、回収不能時の支払い、表明保証、保証人 |
|---|---|
| 危険なサイン(日本貸金業協会) | 償還請求権、通帳・キャッシュカードの預かり、保証人、手形・小切手の差入れ、契約書の写しを渡さない |
| 契約書の表題 | 「売買」「債権譲渡」であることが定められているか(金融庁リーフレット) |
| 印紙税 | 第15号文書。契約金額1万円以上または記載なしで200円 |
| 消費税 | 売掛債権の譲渡と買取差益は非課税(消費税法施行令9条1項4号、基本通達6-3-1) |
| 債権譲渡登記 | 法人のみ利用可。登録免許税は1件7,500円(債権5,000個以下) |
目次
ファクタリング契約書で最優先に確認すべきなのは、売掛先が払わなかったときに利用者が債権を買い戻す、または自分のお金で支払う定めがないかです。金融庁は、こうした取引を、契約書で売買と定めていても貸金業に該当するおそれがある例として挙げています[1]。次に、表明保証・保証人・違約金・通知の条項で、実質的に同じ負担を負わされていないかを確かめます。この記事では、危険な条項の例と何が問題か、どう確認するかを表で整理し、印紙・登記・消費税の扱いもあわせて解説します。
ファクタリング契約書には何が書かれているか
ファクタリング契約書は、どの債権を、いくらで、いつ売り、売掛先からの回収を誰がどう行うかを定めた書面です。法律で決まった書式はないため、条項の名前や順番は会社ごとに違いますが、確認すべき項目は共通しています。
| 条項 | 定める内容 | 最低限の確認点 |
|---|---|---|
| 目的・対象債権 | 売る債権(売掛先、請求書番号、額面、支払期日) | 請求書・基本契約と一致しているか |
| 譲渡代金・手数料 | 買取額、手数料の率と金額、支払日 | 手数料の総額と、手元に入る金額が明記されているか |
| 対抗要件 | 売掛先への通知・承諾、債権譲渡登記を行うか、いつ行うか | 通知や登記を留保する場合、その条件は何か |
| 回収方法 | 3社間なら売掛先が業者に直接支払う。2社間なら利用者が回収して業者に渡す | 回収できなかったときの扱いが書かれているか |
| 表明保証 | 利用者が事実として保証する事項(債権の実在、二重譲渡がないことなど) | 売掛先の支払能力まで保証させていないか |
| 償還請求権・買戻し | 売掛先が払わないときに利用者が支払う・買い戻す定め | 定めがないか、あるなら業者の登録と契約の性質を確認 |
| 違約金・損害賠償 | 利用者が約束を守らなかったときの支払い | 金額・率が過大でないか |
| 解除・費用負担・管轄 | 解除の条件、登記費用などの負担者、紛争時の裁判所 | 費用の内訳と金額が書かれているか |
2社間と3社間の違いは2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いで解説しています。どちらの形でも、上の8項目は読み飛ばさないでください。
危険な条項の一覧:条項例・問題点・確認方法
危険な条項は、売掛先の不払いリスクを利用者に戻すものと、支払いを強制する手段を業者に与えるものの2種類に分けられます。次の表は、金融庁・日本貸金業協会の注意喚起と裁判例をもとに、注意すべき条項を並べたものです。
| 条項例(一般的な文言の例示) | 何が問題か | 確認方法 |
|---|---|---|
| 「売掛先から支払期日に入金がない場合、売主は直ちに本債権を買い戻す」 | 不払いリスクが利用者に残り、金融庁が貸金業に該当するおそれがある例に挙げる構造[1] | 「買戻し」「償還」「回収不能」で契約書を検索する |
| 「売主は回収業務を受託し、回収の成否にかかわらず期日に譲渡債権額を支払う」 | 売主自身の資金で支払う定めと同じで、金融庁の例示に当たる[1] | 回収できなかったときの扱いが「業者の負担」と書かれているか |
| 「売主は、売掛先に支払停止・破産手続開始の原因がないことを表明し保証する」 | 実質的に債務の保証と同じとして、金銭消費貸借と判断された裁判例がある(東京地裁令和4年3月4日判決、金融庁が紹介)[1] | 表明保証の対象が「債権の実在」か「売掛先の支払能力」かを区別する |
| 「売主の代表者は、本契約に基づく売主の一切の債務を連帯して保証する」 | 売買には不要な担保。日本貸金業協会は代表者や家族の保証をヤミ金融の可能性が高いケースに挙げる[3] | 保証の範囲が支払いそのものに及ぶか |
| 「売主は、強制執行認諾文言付き公正証書の作成に必要な委任状を買主に交付する」 | 債権額以上を支払う旨の公正証書で貸付けと判断された例がある(東京高裁令和3年7月1日判決、金融庁が紹介)[1]。貸付けなら委任状の取得は貸金業法20条で禁止[5] | 公正証書・委任状という言葉がないか |
| 「売主は、売掛金の入金口座の通帳・銀行印・キャッシュカードを買主に預ける」 | 日本貸金業協会がヤミ金融の可能性が高いケースに挙げる[3] | 預ける物の定めがないか。求められたら契約しない |
| 「売主は、担保として小切手・約束手形を差し入れる」 | 不払いに備えた担保で、業者がリスクを負っていないことを示す[3] | 差入れの定めがないか |
| 「売主は、発行済株式を譲渡担保とし、役員変更登記の委任状を交付する」 | 返済が滞ったときに会社の経営権を奪える状態になる。日本貸金業協会が挙げるケース[3] | 株式・登記委任状・印鑑証明書の提出を求める定めがないか |
| 「売主が支払いを遅延した場合、買主は売掛先その他の関係者に本契約の内容を通知できる」 | 通知を支払い強制の材料にし、発覚を避けるため買い戻さざるを得ない構造は、札幌高裁令和4年7月7日判決(金融庁が紹介)で公序良俗違反とされた要素[1] | 通知の時期と目的が「対抗要件のため」か「督促のため」か |
| 「支払いが遅れた場合、違約金として譲渡債権額の◯%と、日割りの遅延損害金を支払う」 | 貸付けと判断されれば、違約金は賠償額の予定とみなされ上限を超える部分は無効(利息制限法4条)[7] | 違約金の率と計算方法、手数料と合わせた総額 |
| 表題が「金銭消費貸借契約書」、または契約書に「売買」の文言がない | 金融庁リーフレットが被害が疑われる例に挙げる(契約書に売買契約であることが定められていない)[2] | 表題と第1条(目的)を読む |
どれか1つでも当てはまる場合は、署名する前に業者に説明を求め、書面で回答をもらってください。当てはまる項目が複数あれば、悪質なファクタリング業者の見分け方で危険度を確かめ、契約前に弁護士に相談することをおすすめします。
償還請求権・買戻しの条項はどう読むか
償還請求権(リコース)とは、売掛先が払わなかったときに、業者が利用者に代金の返還や支払いを求められる権利のことです。この権利や買戻しの約束がある契約では、売掛先の不払いリスクが利用者に残ります。
金融庁が貸金業に該当するおそれがある例に挙げるのは、譲渡債権の回収が売主に委託され、集金できなかった場合の定めです[1]。具体的には、「売主が債権を買い戻すこととされている」もの、または「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」ものです[1]。貸付けと判断されれば、手数料は名目を問わず利息とみなされます(出資法5条の4第4項、利息制限法3条)[6][7]。
「償還請求権」という言葉がなければ安心か?
言葉がなくても、同じ効果を持つ条項があれば実質は同じです。「回収の成否にかかわらず支払う」「売掛先の支払遅延時は売主が立て替える」「未回収額を違約金として支払う」などの定めは、償還請求権と同じく不払いリスクを利用者に戻します。金融庁は、貸金業に当たるかどうかはノンリコース規定の有無などの形式だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるとしています[1]。
「売主は売掛先の資力を担保しない」と書いてあれば大丈夫か?
この一文だけでは判断できません。金融庁が紹介する名古屋地裁令和3年7月16日判決は、売主が債務者の資力を担保しないと規定されていた契約でも、貸付けに当たると判断しました[1]。理由は、債権の性質と、譲渡日から支払日までの期間の短さから、売掛先が払わない可能性が極めて低かったことです[1]。業者が実際には不払いリスクをほとんど負っていない取引は、条項の文言と関係なく実態で評価されます。
償還請求権の有無による契約の違いは、償還請求権(ノンリコース)とはで詳しく解説しています。
表明保証・保証の条項はどう読むか
表明保証とは、契約の前提となる事実が正しいことを、当事者が相手に約束する条項です。ファクタリングでは、利用者が債権について事実を保証するのは一般的ですが、保証の対象が売掛先の支払能力にまで及ぶと問題になります。
| 表明保証の対象 | 評価 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 債権が実在し、請求書の金額が正しい | 債権の売買で通常求められる事項 | 存在しない債権は売れない |
| 同じ債権を他に譲渡していない(二重譲渡がない) | 債権の売買で通常求められる事項 | 二重譲渡は譲受人同士の優劣の問題を生む |
| 売掛先との間に、支払いを拒む理由(抗弁)となる事情がない | 裁判例では、他の保証事項と合わせて問題にされた | 東京地裁令和4年3月4日判決(金融庁が紹介)[1] |
| 売掛先が支払停止の状態になく、破産手続開始の原因がない | 実質的に債務の保証を求めるのに等しいとされた | 同上[1] |
| 代表者・家族による支払いの保証 | 売買には不要。ヤミ金融の可能性が高いケース | 日本貸金業協会[3] |
債権の実在や二重譲渡がないことの表明保証が、裁判例でどう評価されるかは、金融庁の紹介には含まれていません[1]。契約書に表明保証の条項があれば、何を保証させられているのかを1項目ずつ読み、「売掛先の支払能力」にかかわる項目がないかを確認してください。
売買(真正なファクタリング)と判断された契約の特徴は?
金融庁が「貸金業に該当しない」と判断された例として紹介する2件の裁判例では、売掛先の不払いリスクが実際に業者へ移っていたことが決め手になっています[1]。危険な条項がないかを確かめた後は、次の特徴がそろっているかを裏側から確認すると、契約の性質を判断しやすくなります。
| 裁判例(金融庁が紹介) | 売買と判断された主な事情 | 契約書で対応する確認点 |
|---|---|---|
| 東京地裁 令和2年9月18日判決 | 償還請求権がなく、買戻しも予定されていない | 「償還」「買戻し」「回収不能時の支払い」の定めがない |
| 同上 | 対抗要件(通知・登記)の具備が業者の判断で可能だった | 通知・登記を業者がいつでも行える定めになっている |
| 同上 | 手数料が、担保目的を推認させるほど大幅ではない | 手数料と諸費用の合計が、債権額に比べて著しく高くない |
| 東京高裁 令和4年6月15日判決 | 売主が回収不能額の責任を負うとされていない | 回収できなかった額を売主が補う定めがない |
| 同上 | 債務者の無資力リスクが業者に移転していた | 売掛先が倒産したときの損失を業者が負うと読める |
出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で紹介されている裁判例の要旨[1]。事件番号は金融庁のページに記載がなく、当サイトでは確認していません。
ただし、これらは個別の事件についての判断で、同じ特徴があれば必ず売買と認められるという基準ではありません。金融庁は、貸金業に当たるかどうかは形式だけでなく経済的側面や実態に照らして判断されるとしています[1]。表明保証の範囲(前の節)や回収の実態によって評価は変わるため、判断に迷う契約は署名前に弁護士に相談してください。
回収方法・通知・登記の条項はどう読むか
回収方法と対抗要件の条項は、売掛先に譲渡を知らせるかどうかと、2社間で利用者が回収したお金をどう扱うかを決めます。これらの条項自体は危険なサインではありませんが、支払いを強制する材料として使われていないかを確認します。
債権譲渡を売掛先に主張するには、利用者から売掛先への通知か売掛先の承諾が必要で、売掛先以外の第三者に主張するには確定日付のある証書が必要です(民法467条)[4]。法人が金銭債権を譲渡して債権譲渡登記をすると、売掛先以外の第三者との関係では、確定日付のある通知があったものとみなされます(動産債権譲渡特例法4条1項)[13]。
2社間ファクタリングでは、利用者が売掛先から入金を受け、期日までに業者に渡す「回収委託」の条項が入るのが一般的です。受け取った売掛金は業者のお金として預かっている状態なので、期日に渡せないと利用者の責任が問題になります。通知・承諾の手続きは債権譲渡通知とはで解説しています。
手数料・費用・違約金の条項はどう読むか
費用の条項では、手数料の率だけでなく、差し引かれる金額の合計と、手元に入る金額を確認します。手数料以外の名目で差し引かれる費用があると、実際の負担は手数料率より大きくなります。
| 費用の項目 | 確認すること | 公的な根拠 |
|---|---|---|
| 手数料(買取差益) | 率と金額の両方が書かれているか | ― |
| 消費税 | 売掛金など金銭債権の譲渡と、買取差益は非課税 | 消費税法施行令9条1項4号[11]、消費税法基本通達6-3-1(10)[12] |
| 印紙税 | 紙の債権譲渡契約書は第15号文書。契約金額1万円以上または記載なしで200円、1万円未満は非課税 | 国税庁 No.7141[10] |
| 登録免許税(登記する場合) | 1件7,500円(債権5,000個以下)。5,000個超は15,000円 | 法務省[9] |
| 事務手数料・調査料など | 名目と金額、手数料との合計 | 貸付けと判断されれば名目を問わず利息とみなされる[6][7] |
| 違約金・遅延損害金 | 率と計算の基礎(債権額か、未払額か) | 貸付けなら違約金は賠償額の予定とみなされる(利息制限法4条2項)[7] |
手数料以外の名目で受け取る金銭の消費税の区分は、当サイトでは国税庁の個別の回答を確認できていません。請求書に消費税が上乗せされていたら、何に対する消費税かを業者に確認してください。費用全体の内訳はファクタリング手数料以外にかかる費用で解説しています。
売掛先との契約(譲渡制限特約)も確認する
ファクタリング契約書と一緒に、売掛先との基本契約書に譲渡制限特約(債権の譲渡を禁止・制限する条項)がないかも確認します。特約があっても、譲渡の原因となる契約(ファクタリング契約など)が2020年4月1日以降にされた場合、債権の譲渡は効力を妨げられません(民法466条2項)[4]。
ただし、特約を知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人に対しては、売掛先は支払いを拒み、譲渡人(利用者)に支払うことで対抗できます(民法466条3項)[4]。業者が特約を知ったうえで買い取った場合は、売掛先から直接回収できないことになりえます。
契約書に特約の有無を確認する条項があれば、基本契約書を見直して正確に答えてください。特約の扱いは譲渡禁止特約がある売掛金もファクタリングできる?で解説しています。
署名する前にやること(6つの手順)
契約書は、署名する前に全文を受け取り、持ち帰って読める状態にすることが出発点です。申込みから入金までのファクタリングの流れの7ステップでは、契約書の確認は「ステップ5:債権譲渡契約を結ぶ」に当たります。次の手順で確認してください。
- 署名前に契約書の全文をもらう。 当日その場での署名を求められたら、いったん持ち帰れるか尋ねます。
- 表題と第1条を読む。 「売買」「債権譲渡」と書かれているか、「金銭消費貸借」ではないかを確認します[2]。
- 危険な条項の表と照らし合わせる。 「買戻し」「償還」「回収不能」「保証」「公正証書」「通帳」で検索します。
- 費用を合計する。 手数料と、それ以外の名目の費用を足し、手元に入る金額を計算します。
- 控えを受け取れるか確認する。 日本貸金業協会は、契約書の写し・領収書などを渡さないことをヤミ金融の可能性が高いケースに挙げています[3]。
- 不明な点を書面で質問する。 回答が口頭だけなら、その内容をメールで送り返して記録に残します。
ひな形・テンプレートを使うときの注意
ファクタリング契約書の公的なひな形はありません。契約書は通常ファクタリング会社が用意するため、利用者がひな形を使う場面は、取引先と直接3社間の合意書を作る場合などに限られます。
インターネットで配布されているひな形は、作成者も前提とする取引も様々です。使う場合は、次の3点を確認してください。
- この記事の「ファクタリング契約書には何が書かれているか」の8項目がすべて入っているか
- 償還請求権・買戻しの定めが、自分の意図どおりになっているか
- 対抗要件(通知・承諾・登記)の方法が、自分の立場(法人か個人事業主か)で使えるものか[8] 個別の条項が自分の取引で有効かどうかの判断は、弁護士に相談してください。
よくある質問
Qファクタリング契約書で一番確認すべき条項はどれですか?
A売掛先が払わなかったときに、利用者が債権を買い戻す、または自分のお金で支払う定めがないかを最初に確認します。金融庁は、回収を売主に任せ、回収できなければ売主が買い戻すなどの取引を、貸金業に該当するおそれがある例に挙げています。「償還」「買戻し」「回収不能」「保証」という言葉で契約書を探してください。
Qノンリコースと書いてあれば安全ですか?
Aノンリコースと書いてあるだけでは安全とはいえません。東京地裁令和4年3月4日判決は、ノンリコース規定があっても、売掛先に不払いの兆候がないことを売主に表明保証させていた契約を、金銭消費貸借に当たると判断しました。表明保証の条項が、債権の実在だけでなく売掛先の支払能力まで保証させていないかを確認してください。
Q債権の売買と認められやすい契約書にはどんな特徴がありますか?
A金融庁が「貸金業に該当しない」例として紹介する東京地裁令和2年9月18日判決と東京高裁令和4年6月15日判決では、償還請求権や買戻しの予定がなく、回収不能額を売主が負わず、売掛先の無資力リスクが業者に移っていたことが重視されました。東京地裁の判決では、通知・登記を業者の判断で行えたことや、手数料が担保目的を推認させるほど大幅でないことも考慮されています。ただし判断は契約の実態で行われるため、これらの特徴があれば必ず売買と認められるわけではありません。
Qファクタリング契約書に印紙は必要ですか?
A紙の債権譲渡契約書は印紙税の第15号文書に当たり、記載された契約金額が1万円以上、または契約金額の記載がない場合は200円の印紙が必要です(国税庁、令和8年4月1日現在法令等)。契約金額が1万円未満なら非課税です。電子契約の扱いは[ファクタリング契約書に印紙は必要?](/accounting/stamp-duty/)で解説しています。
Q契約書の控えをもらえないのですが、問題ありますか?
A日本貸金業協会は、契約書の写しや領収書などの書類が渡されないことを、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高いケースの1つに挙げています。控えがないと、契約内容と支払額を後から証明できません。控えを渡さない業者とは契約しないでください。
Q契約書に代表者の連帯保証の条項があります。普通ですか?
A債権の売買であれば、売掛先の不払いリスクは買い取った業者が負うため、代表者や家族の保証は本来必要ありません。日本貸金業協会は、金銭消費貸借契約を結ばせて代表者や家族を保証人にすることを、ヤミ金融の可能性が高いケースに挙げています。保証の対象が何か(債権の実在か、支払いそのものか)を確認し、支払いの保証なら契約前に弁護士に相談してください。
Qファクタリング契約書のひな形・テンプレートはありますか?
Aファクタリング契約書の公的なひな形はなく、契約書は通常、ファクタリング会社が用意します。インターネットのひな形を使う場合も、償還請求権・買戻しの有無、表明保証の範囲、回収方法、手数料の総額、対抗要件(通知・承諾・登記)の定めを、この記事の表で1つずつ確認してください。
Q契約書に「支払いが遅れたら取引先に通知する」とあります。問題ですか?
A債権の譲受人が売掛先に通知すること自体は、民法467条の対抗要件を備える手続きです。ただし、通知を支払いを強制する材料にし、利用者が発覚を避けるために買い戻さざるを得ない構造は、札幌高裁令和4年7月7日判決(金融庁が紹介)で貸金規制の潜脱として公序良俗に反し無効とされた要素です。通知の時期と目的がどう書かれているかを確認してください。
出典・参考資料
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 金融庁「事業者向けリーフレット「その資金調達 大丈夫ですか?」(表面)」
- 日本貸金業協会「「ファクタリング」を装ったヤミ金融にご注意ください」(2017年12月4日)
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「貸金業法」
- e-Gov法令検索「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」
- e-Gov法令検索「利息制限法」
- 法務省「債権譲渡登記制度」
- 法務省「債権譲渡登記制度(登録免許税)」
- 国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」(令和8年4月1日現在法令等)
- e-Gov法令検索「消費税法施行令」
- 国税庁「消費税法基本通達 第6章第3節 利子を対価とする貸付金等関係」
- e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」
- 法務省「債権譲渡登記制度(登記事項証明書等の交付請求)」
出典のURLと内容は2026年10月22日時点で確認しています。
この記事の更新履歴
- 公開
- 金融庁が紹介する裁判例のうち、売買と判断された2件(東京地裁令和2年9月18日判決・東京高裁令和4年6月15日判決)の特徴を表にした節と、ノンリコースでも債権の性質と期間の短さから貸付けとされた名古屋地裁令和3年7月16日判決の説明を追加。印紙税(第15号文書200円)を国税庁No.7141の原文で再確認。契約全体の流れへの導線を追加し、長い文を分割
内容の誤りや古くなった情報にお気づきの場合は、お問い合わせからご連絡ください。確認のうえ訂正し、この欄に記録します。
この記事を引用するとき
記事・図表・データは、出典を明記していただければ引用できます(引用のルール)。出典は次のように記載してください。
アンドファクタリング「ファクタリング契約書のチェックポイント|危険な条項11例と確認方法」(https://factoring.co.jp/screening/contract-review/、2026年10月22日更新)