会計・税務

個人事業主のファクタリング|確定申告での売上計上と手数料の経費処理

最終更新 公開 約15分で読めます 執筆:アンドファクタリング運営事務局

広告なし・一次情報にもとづく解説です。編集方針

この記事の要点

  • 個人事業主がファクタリングを使っても、売上は所得税法36条と国税庁の所得税基本通達36-8により、商品の引渡しや役務の完了の日に請求額の全額で計上し、ファクタリングの入金日に計上するのではない。
  • ファクタリングの手数料(売却損)は、所得税法37条の「所得を生ずべき業務について生じた費用」として事業所得の必要経費に入れるのが基本で、売掛金は所得税基本通達33-1により譲渡所得の対象資産から除かれている。
  • 手取り額だけを売上として記帳すると、所得の額は同じでも売上高が過少になり、消費税の免税点(基準期間の課税売上高1,000万円)の判定を誤るおそれがある。
  • 年をまたぐ場合は、売上は納品した年、手数料はファクタリングで売った年の所得に入れるのが原則である。
  • 債権譲渡登記の譲渡人は法人に限られるため、個人事業主のファクタリングは登記をしない2社間か、売掛先に通知・承諾を求める3社間で行われる。
早わかり表
売上の計上時期引渡しの日・役務完了の日(所得税基本通達36-8)
売上の金額請求額の全額。手取り額ではない
手数料の扱い事業所得の必要経費(所得税法37条)が基本
譲渡所得になるかならない。金銭債権は譲渡所得の対象資産から除外(通達33-1)
決算書の科目経費欄の空欄に「売上債権売却損」などを設けるか、支払手数料など
消費税手数料は非課税。売掛金の譲渡代金は課税売上高に含めない
債権譲渡登記個人事業主は利用できない(譲渡人は法人のみ)
目次
  1. 個人事業主がファクタリングを使ったときの確定申告の結論
  2. 売上はいつ計上する?ファクタリングの入金日ではない
  3. ファクタリング手数料は経費になる?科目と決算書の書き方
  4. 仕訳例(青色申告・白色申告)
  5. 手取り額だけを売上にしてはいけない理由
  6. 消費税の課税事業者が注意すること
  7. 年をまたぐ・償還請求権付き・何度も使うなど迷いやすいケース
  8. 確定申告前のチェックリストと保存する書類

個人事業主がファクタリングを使っても、確定申告では売上を納品や役務完了の日に請求額の全額で計上し、手数料(売却損)を事業所得の必要経費として扱うのが基本です。ファクタリングの入金日や手取り額で売上を計上するのではありません[2]。この記事では、所得税法と国税庁の通達をもとに、年をまたぐ場合の仕訳、決算書の書き方、消費税の注意点を解説します。

国税庁によると、令和7年分(2025年分)の確定申告で主な所得が事業所得の人は386.1万人でした[9]。この記事は2026年10月22日時点の法令・通達にもとづく一般的な考え方です。個別の申告は税理士や税務署に確認してください。

個人事業主がファクタリングを使ったときの確定申告の結論

ファクタリングを使っても、確定申告のやり方は大きく変わりません。変わるのは、手数料を必要経費として追加で計上することと、売掛金が年末に残らないことの2点です。

項目 確定申告での扱い 根拠
売上の計上時期 引渡しの日・役務完了の日(入金日ではない) 所得税法36条、所得税基本通達36-8[1][2]
売上の金額 請求額の全額(手数料を差し引かない) 所得税法36条「収入すべき金額」[1]
手数料(売却損) 事業所得の必要経費に入れるのが基本 所得税法37条[1]
譲渡所得になるか ならない(金銭債権は譲渡所得の対象資産から除外) 所得税基本通達33-1[3]
消費税 手数料は非課税。売掛金の譲渡代金は課税売上高に入れない 消費税法施行令9条1項4号・48条2項2号[6]

個人事業主向けのファクタリングの選び方や注意点は、個人事業主・フリーランスのファクタリングで解説しています。

チェックポイント:確定申告の前に、その年にファクタリングで売った請求書の一覧(請求書番号・額面・手数料・入金日)を作っておくと、売上と経費の計上漏れを防げます。

売上はいつ計上する?ファクタリングの入金日ではない

売上は、商品を引き渡した日や役務の提供を完了した日に、請求額の全額で計上します。ファクタリングで入金された日ではありません。

根拠:所得税法36条と所得税基本通達36-8

所得税法36条1項は、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額を「その年において収入すべき金額」としています[1]。国税庁の所得税基本通達36-8は、事業所得の総収入金額の収入すべき時期を、取引の種類ごとに示しています[2]。

取引の種類 収入すべき時期(所得税基本通達36-8) ファクタリングでよくある例
棚卸資産の販売 引渡しがあった日 商品の卸売、部品の販売
請負(物の引渡しが必要) 目的物の全部を完成して引き渡した日 建設工事、印刷物の制作
請負(物の引渡しが不要) 約した役務の提供を完了した日 清掃、保守作業
人的役務の提供(請負以外) 役務の提供を完了した日。期間などに応じて報酬を受け取る特約があれば、その収入すべき事由が生じた日 デザイン、コンサルティング、運送

棚卸資産の引渡しの日は、出荷日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日など、取引に応じて合理的と認められる日のうち、継続して収入に計上している日によるとされています(通達36-8の2)[2]。

では、請求書を出した日と作業が終わった日が違う場合は?

売上の日は、請求書の発行日ではなく、引渡しや役務完了の日です[2]。たとえば、保守作業(物の引渡しが不要な請負)を2026年12月28日に完了し、請求書を2027年1月5日に出した場合、売上は2026年分に入ります。その請求書をファクタリングで売るのが2027年1月でも、売上の年は変わりません。手数料だけが2027年分の必要経費になります。

具体例:12月に納品し、1月にファクタリングした場合

日付 出来事 どの年の所得に入るか
2025年12月20日 商品を納品(請求額110万円) 2025年分の売上110万円
2026年1月15日 売掛金をファクタリングで売る(手数料11万円) 2026年分の必要経費11万円
2026年2月28日 売掛先がファクタリング会社(3社間)または自分(2社間)に支払う 所得には影響しない

手数料11万円(10%)は計算のための仮定です。

では、現金主義を選んでいる場合は?

青色申告の承認を受けた小規模事業者は、一定の要件のもとで、収入した金額と支出した費用の額で所得を計算する方法(いわゆる現金主義)を選べます(所得税法67条)[1]。現金主義の場合に、ファクタリングの入金をどう扱うかは、国税庁の資料で確認できませんでした。現金主義を選んでいる人は、ファクタリングを使う前に税務署か税理士に確認してください。

チェックポイント:年末に納品した請求書をファクタリングで売る予定があるときは、納品書・請求書の日付を確認し、その年の売上に入っているかを見ます。

ファクタリング手数料は経費になる?科目と決算書の書き方

ファクタリングの手数料(売却損)は、事業所得の必要経費に入れるのが基本の考え方です。事業の売掛金を売ることで生じた、業務についての費用だからです。

根拠:所得税法37条と所得税基本通達33-1

所得税法37条1項は、事業所得の必要経費を、総収入金額を得るため直接に要した費用の額と、その年の「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」の額としています[1]。

また、所得税基本通達33-1は、譲渡所得の基因となる資産から「金銭債権」を除いています[3]。売掛金は金銭債権なので、売ったときの差額は譲渡所得の損失ではありません。事業所得の計算の中で扱います。

科目の選び方

科目の例 決算書での書き方 向いているケース
売上債権売却損 経費欄の空欄に科目名を書いて記載 ファクタリングを継続して使い、内容を明確にしたい
支払手数料 既存の行(会計ソフトの科目)に含める 利用が年1〜2回で、金額が小さい
手形売却損 会計ソフトの既存科目を使う 手形割引と同じ科目にまとめたい

国税庁の「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」は、経費を給料賃金、外注工賃、減価償却費、貸倒金、地代家賃、利子割引料、その他の経費に区分して記帳するとし、その他の経費の空欄には取引の実態に応じて経費項目を設けて記載できると説明しています[4]。弥生の個人事業主向けソフトの初期設定では、経費に「利子割引料」「手形売却損」「支払手数料」が用意されています[12]。freeeのヘルプは、既存科目なら「支払手数料」、明確にしたい場合は「売上債権売却損」などを作成できると説明しています[11]。

では、青色申告決算書にはどう表れる?

ファクタリングを使った年も、売上は請求額の全額で書き、手数料は経費欄に別に書きます。年末までに売った売掛金は、貸借対照表の期末の売掛金から外れます。次の表は仮定の数字による例です。

決算書の欄 記載する金額(仮定の例) 考え方
売上(収入)金額 1,200万円 ファクタリングした請求書も請求額の全額で含める
経費(空欄に「売上債権売却損」) 36万円 その年に売った請求書の手数料の合計
貸借対照表の売掛金(期末) 100万円 年末の未入金150万円のうち、12月に売った50万円を除く

チェックポイント:ファクタリングの手数料を「雑費」にまとめると、金額が大きい年に内容が分かりにくくなります。年間の合計額が大きい場合は、独立した科目を設けます。

では、手数料が経費になれば負担はなくなる?

手数料が経費になっても、負担はなくなりません。経費に入れると事業所得が減り、その分の所得税と住民税が減るだけで、手数料として出ていったお金の大半は戻りません。

仕訳例(青色申告・白色申告)

青色申告でも白色申告でも、仕訳の形は同じです。売上は納品時に全額で計上し、ファクタリングの時点で売掛金を減らして、差額を売上債権売却損などで計上します。

2社間ファクタリングの仕訳例(年をまたぐ場合)

額面55万円(税込)の売掛金を、手数料10%と仮定して2社間ファクタリングで売った例です。

日付 場面 借方 金額 貸方 金額
2025年12月25日 納品 売掛金 550,000 売上高 550,000
2026年1月10日 譲渡・入金 普通預金 495,000 売掛金 550,000
売上債権売却損 55,000
2026年2月28日 売掛先から回収 普通預金 550,000 預り金 550,000
2026年2月28日 ファクタリング会社へ送金 預り金 550,000 普通預金 550,000

この例は、消費税の免税事業者や税込経理を前提に、売上高を税込で計上しています。2025年分の申告では売上55万円と年末の売掛金55万円、2026年分の申告では売却損5万5,000円が計上されます。2社間の回収金を「預り金」で処理する理由は、ファクタリングの仕訳と勘定科目で解説しています。

私用の口座に入金された場合

ファクタリング会社からの入金を私用の口座で受けた場合は、「事業主貸」を使います。国税庁の手引きは、「事業主借」を家計用の現金を事業用に充てるような場合に使う勘定科目と説明しています[4]。事業のお金が私用に回った場合は、その逆の「事業主貸」です。

場面 借方 金額 貸方 金額
私用口座に入金 事業主貸 495,000 売掛金 550,000
売上債権売却損 55,000

白色申告の簡易な記帳で注意すること

国税庁の手引きは、白色申告者の簡易な記帳として、納品書控・請求書控で内容を確認できる掛売上は、日々の記載を省略し、現実に代金を受け取った時に現金売上として記載できる方法を示しています(年末に売掛金の残高を記載する)[4]。この方法でファクタリングの入金額(手取り額)を売上として記載すると、売上が手数料の分だけ少なくなります。

記載のしかた 売上帳 経費帳 評価
手取り額49万5,000円だけを売上に記載 495,000円 なし 売上高が過少になる
請求額55万円を売上、手数料を経費に記載 550,000円 売却損55,000円 売上高と経費がそれぞれ正しい

チェックポイント:簡易な記帳でも、ファクタリングした請求書は「請求額」と「手数料」を分けて記載します。買取明細書を請求書控と一緒に保存しておきます。

手取り額だけを売上にしてはいけない理由

手取り額だけを売上にすると、所得の額は同じでも売上高が過少になります。売上高は、消費税の納税義務の判定や、インボイス登録後の申告の基礎になるため、請求額の全額で計上する必要があります。

消費税の免税点の判定を誤る

基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、原則として消費税の納税義務が免除されます(消費税法9条1項。適格請求書発行事業者を除く)[5]。課税売上高は、課税資産の譲渡等の対価の額で計算します(消費税法9条2項・28条1項)[5]。

誤判定に気づかないと、本来必要な消費税の申告をしないことになります。インボイスの登録を受けている人(適格請求書発行事業者)は、売上高にかかわらず課税事業者です[5]。

所得税でも売上高の記載は大切

所得税では、売上から手数料を差し引いても、所得の額は同じになります。それでも、決算書の売上高は取引先ごとの売上や前年比の比較に使われます。融資の審査や補助金の申請で決算書を出すとき、売上高が実態より少ないと説明が必要になります。

チェックポイント:年間の売上高を、請求書控の合計額と照合します。ファクタリングを使った年は、両者の差が手数料の合計と一致しないか確認します。一致する場合は、手取り額で記帳している可能性があります。

消費税の課税事業者が注意すること

消費税の課税事業者は、ファクタリングの手数料を課税仕入れにしないことと、売掛金の譲渡代金を課税売上割合の計算に入れないことに注意します。

項目 扱い 根拠
手数料(買取差益) 非課税。仕入税額控除の対象外 基本通達6-3-1(10)[7]
売掛金の譲渡代金 課税売上高・総売上高のどちらにも入れない 施行令48条2項2号[6]
元の売上の消費税 ファクタリング後も自分が納める 消費税法5条[5]

簡易課税・2割特例・3割特例なら?

簡易課税制度、2割特例、3割特例は、売上の消費税額をもとに納付税額を計算するため、ファクタリングの手数料は納付税額に影響しません[8]。国税庁によると、2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までです[8]。個人事業者の課税期間は暦年なので、2割特例を使えるのは2026年分の申告(2027年に提出)が最後になります。インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった個人事業者には、2027年分・2028年分の申告で納付税額を売上税額の3割とできる「3割特例」が設けられました[8]。3割特例の対象は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の個人事業者などで、法人は使えません[8]。

申告する年分 使える特例(インボイス登録で課税事業者になった個人事業者) 状態(2026年10月22日時点)
2023年分〜2026年分 2割特例(2023年分は10月1日以後の期間が対象) 2026年分の申告が最後
2027年分・2028年分 3割特例(基準期間の課税売上高1,000万円以下など) 未到来
2029年分以後 一般課税か簡易課税 未到来

国税庁は、2割特例・3割特例の適用を受けた翌年に簡易課税に移る場合、その年の申告期限までに簡易課税制度選択届出書を出せばよい移行措置も設けています[8]。どの方式が有利かは売上と経費の構成で変わるため、税理士に確認してください。

消費税の詳しい扱いはファクタリング手数料に消費税はかかる?、インボイスとの関係はファクタリングとインボイス制度で解説しています。

年をまたぐ・償還請求権付き・何度も使うなど迷いやすいケース

迷いやすいケースも、「売上は納品した年、手数料は売った年」という原則で整理できます。償還請求権付きの契約や、給与を対象にした取引は、原則とは別の注意が必要です。

ケース 確定申告での扱い
12月納品・1月にファクタリング 売上は12月の年、手数料は1月の年
12月にファクタリング・1月に売掛先が支払う 売上も手数料も12月の年。売掛先の支払いは所得に影響しない
2社間で12月に回収・1月に送金 年末に預り金(負債)が残る。所得には影響しない
同じ取引先の請求書を毎月ファクタリング 毎年の手数料合計を必要経費に。科目は毎年同じにする
償還請求権付きで、売掛先の不払いにより買い戻した 買い戻した債権の扱いを税理士と確認する
償還請求権なしで売った後に、売掛先が倒産した 売掛金は譲渡済みなので、自分の貸倒金は計上しない

償還請求権付きの契約は税理士に確認する

償還請求権(リコース)付きの契約は、会計上の処理(売却か借入れか)の判断が必要になります。金融庁は、契約書に債権譲渡と書かれていても、売主が買い戻すことになっているものなどは、経済的に貸付けと同様の機能を持つとして貸金業に当たるおそれがあるとしています[14]。償還請求権の見方は償還請求権(ノンリコース)とはを確認してください。

給与はファクタリングの対象にならない

個人の給与(賃金)を買い取る「給与ファクタリング」は、事業の売掛金のファクタリングとは別物です。最高裁判所第三小法廷 令和5年(2023年)2月20日決定は、給与ファクタリングの金銭の交付を、貸金業法と出資法の「貸付け」に当たると判断しました[13]。確定申告の経費の問題ではなく、利用すべきでない取引です。詳しくは給料ファクタリング(給与ファクタリング)は違法で解説しています。

では、売った売掛金の売掛先が倒産したら?

償還請求権のない契約で売った売掛金は、譲渡した時点で自分の資産ではなくなっています。所得税法51条2項は、事業の遂行上生じた売掛金などの貸倒れによる損失を必要経費に入れると定めています[1]。しかし、すでに売った売掛金は自分の帳簿に残っていないため、売掛先が倒産しても、自分の側で貸倒金を計上する対象はありません。償還請求権付きの契約で買戻しを求められた場合は、扱いを税理士に確認してください。

では、確定申告書がなくてもファクタリングは使える?

確定申告書があるかどうかは、ファクタリングの法律上の要件ではありません。ファクタリングは売掛金を売る取引で、申込みに必要な書類は各社が定めているため、確定申告をまだしていない開業1年目の人が使えるかどうかは会社ごとに確認します。ただし、事業所得がある人は、ファクタリングの利用とは関係なく翌年に確定申告が必要です。書類の条件は決算書・確定申告書がなくてもファクタリングは使える?、開業直後の利用は創業・開業したばかりでもファクタリングは使える?で解説しています。

個人事業主は債権譲渡登記を使えない

法務省によると、債権譲渡登記の譲渡人は法人に限られています[10]。個人事業主のファクタリングは、登記をしない2社間か、売掛先に通知・承諾を求める3社間で行われます。個人事業主が第三者への対抗要件を備えるには、確定日付のある通知か売掛先の承諾が必要で(民法467条2項)[15]、その時点で売掛先に知られます。そのため、個人事業主の経費に登録免許税(債権譲渡登記の費用)が入ることは通常ありません。建設業の個人事業主の注意点は一人親方・職人のファクタリングで解説しています。

確定申告前のチェックリストと保存する書類

ファクタリングを使った年の確定申告では、売上・経費・消費税の3つを確認し、根拠の書類を帳簿と一緒に保存します。

保存しておく書類

書類 何の根拠になるか
ファクタリング契約書 譲渡日・手数料・償還請求権の有無
買取明細書・精算書 額面・入金額・手数料・その他費用の内訳
譲渡した請求書の控え・納品書控 売上の計上日と金額
通帳の入金・送金の記録 入金日、2社間の回収と送金
債権譲渡通知書・承諾書の控え(3社間) 売掛先への通知・承諾の事実

これらの書類は、税務調査で経費の中身を説明するときにも使います。記帳の方法に迷う場合は、税務署の記帳説明会や税理士に相談してください。

では、1年分の手数料はどう集計する?

1年分の手数料は、ファクタリングで売った請求書ごとに1行ずつ記録して集計します。次の表は、手数料8%と仮定した記録の例です。

譲渡日 売掛先 額面 手数料 入金額 売上の計上日
2026年3月10日 A社 330,000 26,400 303,600 2026年2月28日
2026年7月15日 B社 550,000 44,000 506,000 2026年6月30日
合計 880,000 70,400 809,600

手数料の合計7万400円が、帳簿の売上債権売却損(または支払手数料)の年間合計と一致するかを確かめます。額面の合計88万円は、売上の計上日の年の売上にすでに含まれているはずです。入金額の合計を売上に足していないかも、この表で確認できます。

よくある質問

Q個人事業主がファクタリングを使ったら確定申告は必要ですか?

Aファクタリングを使ったかどうかで確定申告の要否は変わりません。事業所得があれば、通常どおり確定申告で売上と経費を計上します。ファクタリングの手数料は、事業所得の必要経費に入れるのが基本です。

Qファクタリングの手数料は経費になりますか?

A事業の売掛金を売ったときの手数料(売却損)は、所得税法37条の「所得を生ずべき業務について生じた費用」として、事業所得の必要経費に入れるのが基本の考え方です。売掛金は譲渡所得の対象資産から除かれているため、譲渡所得の損失にはなりません。個別の判断は税理士や税務署に確認してください。

Qファクタリングの入金は売上として申告しますか?

Aファクタリングの入金は売上として申告しません。売上は、商品の引渡しや役務の完了の日に、請求額の全額ですでに計上しているからです。入金額を売上に加えると、同じ売上を二重に申告することになります。

Q12月に納品して1月にファクタリングした場合、どの年の売上ですか?

A12月に納品した売上は、その年(12月の年)の売上です。所得税基本通達36-8は、棚卸資産の販売は引渡しの日、役務の提供は完了の日を収入すべき時期としています。1月にファクタリングで売った手数料は、翌年の必要経費になります。

Q青色申告決算書のどこにファクタリング手数料を書きますか?

A青色申告決算書の経費欄の空欄に「売上債権売却損」などの科目を設けて記載するか、会計ソフトで設定した科目(支払手数料など)に含めて記載します。国税庁の記帳の手引きは、その他の経費の空欄に取引の実態に応じた経費項目を設けて記載できると説明しています。どの科目にするかは継続して同じにします。

Q手取り額だけを売上にしても所得は同じでは?

A所得の額は同じでも、売上高が過少になる点が問題です。消費税の免税点は基準期間の課税売上高1,000万円で判定するため、手取り額で記帳すると判定を誤るおそれがあります。売上は請求額の全額で計上し、手数料は経費として別に計上してください。

Qファクタリングで売った売掛金の売掛先が倒産したら、貸倒れとして経費にできますか?

A償還請求権のない契約で売った売掛金は、譲渡した時点で自分の資産ではなくなっているため、自分の側で貸倒金を計上する対象はありません。所得税法51条2項の貸倒損失は、自分が持っている事業上の売掛金などの貸倒れが対象です。償還請求権付きの契約で買戻しを求められた場合は、税理士に確認してください。

Q個人事業主は債権譲渡登記を使えますか?

A個人事業主は債権譲渡登記を使えません。法務省によると、債権譲渡登記の譲渡人は法人に限られています。そのため、個人事業主のファクタリングは、登記をしない2社間か、売掛先に通知・承諾を求める3社間で行われます。

出典・参考資料

  1. e-Gov法令検索「所得税法」
  2. 国税庁「所得税基本通達36-8(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)」
  3. 国税庁「所得税基本通達33-1(譲渡所得の基因となる資産の範囲)」
  4. 国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」
  5. e-Gov法令検索「消費税法」
  6. e-Gov法令検索「消費税法施行令」
  7. 国税庁「消費税法基本通達 第6章第3節 利子を対価とする貸付金等関係」
  8. 国税庁「インボイス制度特設サイト 令和8年度税制改正特集」
  9. 国税庁「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」(2026年5月)
  10. 法務省「第1 債権譲渡登記制度とは?」
  11. freee ヘルプセンター「即日入金の取引登録方法について」(2026年9月8日更新)
  12. 弥生「科目設定 個人/一般(やよいの青色申告の初期勘定科目)」
  13. 裁判所「最高裁判所第三小法廷 令和5年2月20日決定(令和4年(あ)第288号)」
  14. 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
  15. e-Gov法令検索「民法」

出典のURLと内容は2026年10月22日時点で確認しています。

この記事の更新履歴

  •  公開
  •  2割特例は個人事業者なら2026年分の申告が最後であることと、2割特例・3割特例の年分別の表、簡易課税への移行措置を追加(国税庁 令和8年度税制改正特集)。確定申告書がない場合の案内を追加。基準日を2026年10月22日に更新

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この記事を引用するとき

記事・図表・データは、出典を明記していただければ引用できます(引用のルール)。出典は次のように記載してください。

アンドファクタリング「個人事業主のファクタリング|確定申告での売上計上と手数料の経費処理」(https://factoring.co.jp/accounting/tax-return/、2026年10月22日更新)