貸し渋りのメカニズムを理解していないと、銀行交渉に差し支えるかも?

銀行との付き合いを考えていく中で、多くの経営者が「銀行から貸し渋られるような状況は避けなければならない」と考えていると思います。また、貸し渋りをする銀行に対して、よくない感情を抱く人も多いでしょう。

しかし、貸し渋りは誤解されやすいものでもあります。

貸し渋りの仕組みをよく理解していなければ、銀行が貸し渋っていないものを貸し渋りと考えたり、貸し渋りを受けたときに対処できなかったり、色々な問題が起きてきます。

そこで本稿では、勘違いされることが多い貸し渋りの仕組みについて、詳しく解説していきます。

銀行融資の重要性

ほとんどの会社は、銀行からの融資を受けなければ資金繰りが成り立ちません。

このため、いかにスムーズに融資を引き出せるか、好条件で融資を受けられるかということが、経営に大きく影響します。

もし、融資を受けられないとなれば、会社の資金繰りは行き詰る可能性が高いです。

事業というものは、現金商売ではないかぎり掛け取引を行うものであり、入金よりも支払いのほうが先行するのが普通です。

この仕組みが資金繰りにどう影響するのか、具体的な数字をみてみるとよくわかります。

 

手元資金が200の会社を例にして考えてみましょう。

この会社は、販売するための仕入れ値150で商品を仕入れ、その支払いは2か月後の契約になっています(手元資金は50に)。

仕入れた商品は右から左へ売るわけにはいきません。すでに販売が決まっている取引先に対しても、納入までいくらかの期限があるでしょうし、これから販売見込み先に営業をかけていくこともあります。

需要拡大を見込んでやや多めに仕入れていることもあるでしょう。

つまり、150で仕入れた商品が、売れることなく倉庫に保管されている期限が発生することとなります。

すべての商品を300の価格で販売したとしても、それを首尾よく回収して150の粗利益を得るためには、それなりの時間を要します。

仕入先への支払い猶予は2か月間ですが、支払期日までにすべての商品を売り切って代金を回収しているということは考えにくいです。

現金商売であったり、売掛金回収期間が極端に短いなどの特殊な例を除けば、まだ売上代金を回収していないタイミングで支払い期日を迎えることになります

 

仕入れ後、手元資金は50になっており、まだ売上代金は回収していませんから、仕入先に150の代金を支払うためには100の資金不足となります。

このように、ほとんどの事業において、事業によって得られる収益よりも、事業のために必要となった費用の支払いのほうが先行し、基本的に資金が不足した状態となります。

 

このとき、不足している資金を何らかの方法によって調達し、期日通りに支払う必要があるよ!

それができなければ、支払うための資金がない状況になり、仕入先に支払いを待ってもらうこととなり、信用は大きく損なわれます

もし、資金不足によって手形を決済できなければ、倒産の危機さえ出てきます

そうならないためにも、資金繰りの状況をしっかりと把握しておき、資金不足が発生しそうな場合には銀行に融資を依頼し、不足分を調達しておかなければなりません。

このように考えれば、会社にとって銀行融資がどれほど重要なものであるかがよくわかるでしょう。

銀行融資が受けられない状況は、会社にとって致命的と言っても過言ではありません。

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貸し渋りとは?

健全な経営のためには、銀行から必要な資金をスムーズに借り入れることが重要です。

そのような環境を作るためにも、日ごろから業績と財務の安定性を高めるように経営をすすめ、資金繰りもしっかりとコントロールして資金不足を未然に防ぐことが大切です。

このような会社であれば、銀行は貸し倒れリスクが低い会社とみなし、比較的簡単に融資してくれることが多くなります。

しかし、中小企業のほとんどは業績や財務に何らかの問題を抱えているものであり、融資交渉が難しくなったり、融資を受けられなくなってしまうこともあるものです。

特に怖いのが、銀行の「貸し渋り」というものです。

銀行が融資を渋ることであり、会社の資金繰りを破綻させかねない影響を持っています。

貸し渋りは誤解されやすい

とはいえ、貸し渋りは誤解されやすいものでもあります。

まず、貸し渋りというと、なにやら銀行が悪いという印象を持ってしまう人が多いようです。

例えば、

「銀行は、会社に融資を出すことで金融の円滑化に貢献する使命を帯びている。それなのに、融資を渋るとはけしからんことだ。」

「銀行が融資するかどうかによって、会社の命運が左右される。場合よっては、社長が首をくくったり、社員が路頭に迷ったりするかもしれない。それなのに貸し渋るなんて、銀行には血も涙もないのか」

といった印象です。

国内外で非常に景気が悪い時など、銀行は貸し渋ることが難しくなります。

これによって会社が相次いで倒産するようになると、マスコミは貸し渋っている銀行を叩くことも多いですから、そこから悪い印象を抱いている人もいると思います。

また、融資を受けられずに倒産した会社では、「あのとき、銀行が貸してくれていれば倒産しなかったかもしれない」と考え、銀行を悪者扱いすることもよくあります。

 

しかし、貸し渋りだと言われている状況を見ても、銀行にとってもやむにやまれない事情があるのだ。

そこで貸し渋らなければ、銀行の経営は破綻し、国内の金融網は混乱し、事態の深刻化を招くかもしれないのです。

また、経営者やマスコミが貸し渋りだと決めつけていても、なんら貸し渋りではないことも多いです。

実際に「銀行の冷酷非情な貸し渋りを受けて倒産した」というケースを見てみると、その会社が融資を受けられなくて当然といえるようなケースもあります。

無責任なマスコミは、これを「銀行が貸し渋りをしたから、この会社のような悲劇が生まれている!」などと騒ぎ立てます。

しかし、経営者本人が貸し渋られたと思っていても、マスコミが貸し渋りであったと騒いでも、それは決して貸し渋りではないのです。

貸し渋りが起こる理由

融資交渉とは、銀行の考え方をうまくくみ取りながら交渉していくものです。

融資を受けにくい場合にも、それが本当に貸し渋りなのかどうかを適切に把握することができなければ、正しく交渉することも不可能です。

このため、まずは貸し渋りとは何なのかについて正しく学んでいきましょう。

貸し渋りとは、広い意味で考えるならば、融資の態度が厳しいことによって会社の資金調達が困難になる状況のことです。

会社の経営状況が悪いならば、貸し渋られても納得がいくと思います。

しかし、会社の経営状況に関係なく融資態度を厳しくすることもあるのが「貸し渋り」というものです。

 

経営状態がいいのに融資を受けられないとなると、自社だけ差別的に貸し渋られているような気もしますから、理不尽に感じられるかもしれません。

しかし、

 経営状況に関係なく、特定の会社を「差別して融資しない」
経営状況に関係なく、多くの会社に「融資が困難になる」

というのが本当のところです。

なぜ融資が困難になるのかと言えば、自己資本比率規制というものがあるからです。

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自己資本比率規制の影響

銀行が方針を転換し、貸し渋りをせざるを得なくなるケースとして顕著なのが、銀行の自己資本比率が下がってしまうということです。

自己資本比率は、どの会社でも経営状況の参考にされる指標ですが、特に銀行においては「自己資本比率規制(BIS規制)」という国際的な規制を受けています。

この規制によって、

  • 海外にも営業拠点がある銀行は、最低でも8%の自己資本比率
  • 日本国内だけで営業している銀行は、最低でも4%の自己資本比率

を維持することが求められており、これを下回った銀行は銀行業務から撤退させられることとなります。

したがって、この基準を世界中の銀行が守っています。

リスク・アセットとは

さて、銀行における自己資本比率は、自己資本÷リスク・アセットという計算式によって求めます。

リスク・アセットは聞きなれない言葉かもしれませんが、これはリスク資産とも呼ばれるものです。

つまり、収益に不確実性のある資産を、リスクを加味したうえで算出した資産のことです。

 

例えば、株式には価値がありますが、価格は常に変動しており、価値が下がってしまう可能性があります。

また、会社に資金を融資すれば債権という資産が得られますが、これは回収不能になれば価値がゼロになってしまいます。

したがって、銀行が自己資本比率を算出する際には、このようなリスクを考慮したうえで、算出する必要があります

 

リスク・アセットを計算する際のリスク・ウェイト(リスクに応じた掛け目)は、その資産によって異なりますが、リスクの低いものは掛け目も低く、リスクの高いものは掛け目も高くなっています。

日本国債や信用格付けが高い優良企業の債権はリスクが非常に低いため、掛け目は20%に設定されています。

しかし、株式は多くのリスクがありますから、掛け目は250%となっています

ほかにも、信用格付けの低い会社の債権は、最大で150%の掛け目となっています。

 

リスク・アセットの簡単な計算例を見てみよう!

【計算例①】

1億円の日本国債、1億円の株式、掛け目50%相当の会社への債権が1億円ある場合、

日本国債は掛け目20%で2000万円
株式は掛け目250%で2億5000万円
債権は掛け目50%で5000万円

⇒リスク・アセットは合計3億2000万円

計算例①からわかるのは、リスク・アセットが自己資本比率を有するということです。

リスク・アセットは、自己資本比率の計算式の分母ですから、

  • リスクが高い資産をたくさん保有している銀行ほど、リスク・アセットが大きくなるため自己資本比率は低くなる
  • リスクが低い資産をたくさん保有している銀行ほど、リスク・アセットが小さくなるため自己資本比率は高くなる

ということがわかります。

自己資本比率維持のために貸し渋る

このような計算を踏まえて、銀行は自己資本比率規制で、自己資本÷リスク・アセット≧8%(国内金融機関は4%)を絶対に維持しなければなりません。

実際、平常時はどの銀行でも10%程度の自己資本比率を維持しているのが普通です。

これを知れば、サブプライムローン問題のような国際的な金融危機が起こったとき、貸し渋りが発生する理由もわかるでしょう。

国際的な金融危機が発生して不況に陥ると、株式の評価額は暴落しますし、債券の格付けも下がります。

株価が下がれば、分母のリスク・アセットが低くなって自己資本比率が高まるようにも見えますが、この場合には分子である自己資本も評価減の影響を受けるため、株価による自己資本比率への影響はありません。

 

問題となるのが、融資先の会社の経営悪化よ!

不況時には多くの会社が業績や財務に影響を受け、決算内容も悪くなるものです。

このため、融資先の会社の信用格付けが下がり、リスク・アセットにおける債権の掛け目が大きくなってしまいます。

計算例①では、リスク・アセットは3億2000万円の計算となっていますが、不況によって融資先の信用格付けが下がった場合はどうなるでしょうか。

【計算例②】

1億円の日本国債、1億円の株式、掛け目100%相当の会社への債権が1億円ある場合、

日本国債は掛け目20%で2000万円
株式は掛け目250%で2億5000万円
債権は掛け目100%で1億円

⇒リスク・アセットは合計3億7000万円

計算例②では、リスク・アセットだけを単純に考えるため株式の価値減少を考慮していませんが、このように不況時にはリスク・アセットの数値が大きくなり、自己資本比率の低下につながることが分かります。

 

不況時に、株式や債券の価値が減少することについては、銀行ができる対処には限界があります。

しかし、会社への債権は銀行の融資次第でかなりコントロールすることができます。

このため、不況時に起こる自己資本比率の低下を防ぐために、銀行は企業への融資に厳しくなります。

つまり、貸し渋りを始めるということです。

格付けが下がりそうな会社には融資しなければ、自己資本比率の低下を防ぐことができます。

これが、不況時に銀行が貸し渋るようになり、融資を受けにくくなる仕組みです。

例外もある

もっとも、自己資本比率の低下を防ぐために貸し渋りが起こるのは、不況時だけとは限りません

銀行の経営が何らかの理由によって悪化し、自己資本比率が大きく下がる可能性が出てくれば、景気にかかわらず貸し渋ることとなります。

例えば、融資実績をとにかく伸ばそうと考えて、審査書類を改ざんすることで、融資を出しにくい融資先にも積極的に融資を出している銀行があったとします。スルガ銀行不正融資問題のようなケースです。

この時、審査書類の改ざんにより、融資先を実態よりも良く見せかけて審査しているのですから、信用格付けも実態より良いものとなります。

 

しかし、何らかのきっかけで不正融資が露見してしまうと、融資の内容について厳しく調査が行われることになります。

当然、融資先の実態に基づいて正しく信用格付けが行われるため、リスク・アセットにおける債権の掛け目が急激に大きくなり、自己資本比率の低下につながります。

このような場合にも、銀行は自己資本比率規制を割り込まないためにも、信用格付けが低い会社への融資は拒否せざるを得なくなります

例外中の例外ではありますが、このような流れで貸し渋りが起こることもあるのです。

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利益保全の観点から

ただし、自己資本比率規制以外の理由からも、貸し渋りが起こることがあります。

それは、金融庁が銀行に課している「貸倒引当金」というシステムによるものであり、これが銀行の経営に大きく影響するためです。

貸倒引当金とは、債権が貸し倒れになった場合、その損失によって経営が破綻しないために、備えとして積み立てておく資金のことです。

一般の会社でも、売掛債権が貸し倒れになった場合に備えて貸倒引当金を積み立てます。

銀行は融資業務を行っており、莫大な債権を抱えていることから、一般企業以上に貸倒引当金の存在が大きなものとなります。

また、銀行には預金者の預金を守る使命がありますから、無計画に融資を行って貸し倒れによる損失をたくさん受け、経営が破綻し、預金を守れないという事態を避けなければなりません。

この意味でも、銀行は貸倒引当金を正確に積み立てていく必要があります。

貸倒引当金は、銀行が稼いだ利益の中から積み立てていくものです。

リスクを負いながら会社に融資して、元金とともにいくらかの金利収入を稼いだり、手数料収入を稼いだりした中から積み立てるのです。

 

会計の観点からいえば、実際に貸し倒れが起こっていないうちから、債権のリスクに応じて、あらかじめ貸し倒れを費用として借方に計上しておき、それと同時に貸方に計上されるのが貸倒引当金です。

あらかじめ費用として見込んで積み立てていのですから、その費用はもともと利益であっても、引当金として拘束されてしまうことになります。

本来ならば、その儲けをさらに融資その他に運用して収益を上げていくことができるものの、貸倒引当金として積み立てることによって儲けが活用できなくなるのです。

引き当ての割合は自己査定で決まる

貸倒引当金の積立額は、融資先の債務者区分よって異なります。

これを自己査定とも言いますが、銀行が融資先の経営状態を判断し、金融庁のマニュアルを基準に債務者区分に当てはめていきます。

債務者区分については、ここでは詳しく説明しませんが、会社の業績や財務内容、それまでの返済の様子から、信用度の高い順に、

通常先>要注意先>要管理先>破綻懸念先>実質破綻先>破綻先

に区分されます。

そして、銀行は融資した会社の債務者区分に応じて、正常先ならば融資額の0.2~0.3%、要注意先ならば数%、要管理先ならば20%、破綻懸念先ならば50~70%、実質破綻先や破綻先ならば100%といった貸倒引当金を積み立てる必要があります。

つまり、同じ1億円を融資するにしても、正常先の会社ならば20~30万円の貸倒引当金を積み立てるだけで良いのですが、要注意先ならば数百万円の積み立て、要管理先ならば2000万円程度の積み立て破綻懸念先ならば5000~7000万円の積み立て、それ以上ならば1億円の積み立てとなり、銀行が拘束される利益の量は大きくなっていきます。

利益保全のために貸し渋る

貸倒引当金が銀行の経営を圧迫する様子は、具体的な数字を見てみればよくわかるよ!

例えば、要管理先の会社に年利3%で5000万円を融資する場合を考えてみましょう。

この時に得られる年間の利息収入は150万円です。

しかし、要管理先の引き当ての割合は20%程度ですから、5000万円の融資では1000万円の貸倒引当金を積む必要があります。

150万円の利益を得るために、1000万円を利益の中から積み立てるのです。

 

皆さんの事業に当てはめて考えてみると、資金効率が悪いことが分かると思います。

1000万円分の商品を仕入れて在庫に保管し(1000万円の資金を拘束され)、徐々に販売して数か月のうちに150万円の利益を得るという商売でさえ、運転資金が不足して銀行から融資を受けなければならないのです。

これに対して、銀行は150万円の利益を回収するのに1年を要します。

さらに、その利益をもたらしてくれる5000万円の貸付金は、100%返済される保証もありません

 

また、融資期間中にその会社の信用格付けが下がれば、貸倒引当金の額は大きくなります。

破綻懸念先にランクが下がり、70%の貸倒引当金を積み立てることになれば、5000万円の融資に対し3500万円の引当金を積み立て、年間150万円の利息収入のために3500万円の資金を拘束されることとなります。

このことから、銀行は利益を守って効率よく資金を運営していくためにも、信用格付けの低い会社や、信用格付けが落ちる可能性がある会社には貸し渋りを行います

経営状態が悪い会社は、貸し渋られても当然だということが分かるね。

経営者の中には、「銀行はただお金を貸して、回収して、利息で食えるんだから楽な商売だな」と思っている人もいることでしょうが、銀行経営は決してそのような甘いものではないのです。

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まとめ

確かに、貸し渋りが起きることはありますし、それによって資金繰りに打撃を受ける可能性もあります。

しかし、それは必要に迫られてやっていることです。

貸し渋りをよく理解せずに、貸し渋りでないものまで貸し渋りと捉えたり、貸し渋りが起こってもしかたない状況で銀行を叩いたりしているだけでは、資金繰りには何の役にも立ちません。

健全な資金繰りのためには、貸し渋りについて正しい知識を持ち、貸し渋りに対応できる柔軟性が必要なのです。

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