※本記事はプロモーションを含みます。順調な経営のためには、色々な知識が必要となります。
中でも、会社の資金繰りをうまく回していったり、銀行交渉のための計画を作成したりするにあたって、財務の仕組みをきちんと理解しておくことが重要です。
損益計算書や貸借対照表のそれぞれのいみを、別個になんとなく理解している人は多いと思います。
しかし、財務の仕組みを理解するためには、その知識では不十分です。
本稿では、誰でも財務の基本的な仕組みを理解できるように、易しく解説していきます。
財務を理解するための流れ
財務の仕組みを理解すると言えば、簿記の知識が必要だと考える人もいると思いますが、日商簿記検定に合格するための知識は必要ありません。
もちろん、あるに越したことはないと思いますが、簿記の知識はあくまでも会計処理のための知識という側面が強く、簿記だけの知識で財務を理解しようとすれば、見方に偏りが生じることもあります。
偏った見方をせずにバランスよく理解するためには、
- 損益計算書と貸借対照表の関係を理解する
- 損益計算書を理解する
- 貸借対照表を理解する
- 安定性の考え方を理解する
という流れで理解していくのが良いでしょう。
銀行が融資判断をする際には、その会社がきちんと返済できる財務状況にあるかどうかを知るために、決算書を分析していきます。
決算書を構成する損益計算書と貸借対照表を分析していくわけですが、この二つについてしっかり理解していくと、財務の仕組みがわかってきます。
損益計算書と貸借対照表の関係、それぞれ個別の見方、それをもとにした安定性の考え方を学んでいくことで、財務の仕組みを理解していきましょう。
損益計算書と貸借対照表の関係を理解する
まず、損益計算書と貸借対照表の関係を理解するところから始めましょう。
そもそも企業活動とは何かと言えば、それは
「自己資金や融資や出資などによって調達した資金を運用し、利益を出していく活動」
のことです。では、利益とは何かと言えば、それは
「調達した資金を運用して得た収入から、かかった費用を差し引いたもの」
のことです。この企業活動の結果としての業績を表すのが損益計算書であり、財務状況を表すのが貸借対照表です。
会社を設立するシーンを考える
企業活動の基本を踏まえて、損益計算書と貸借対照表の関係を理解するには、会社を設立するシーンをイメージするのが分かりやすいです。
会社の設立は、事業に必要な資金を準備するところから始まります。
自分の貯金で自己資金を準備し、足りない部分は身近な人からの支援(出資)を募ります。
それでも足りない資金は、日本政策金融公庫を始めとした金融機関からの融資によって調達します。
資金調達に成功したら、その資金で事業に必要な環境を整えます。
営業活動や出荷に必要な車両を購入したり、調理器具や事務用品などを買いそろえたり、商品や原材料を仕入れたりします。
事業環境を整えるにあたって購入したものは、全て会社の資産となります。
資産を全て揃えたら、事業開始の準備は整い、いよいよ会社を設立だ!
しかし、設立した瞬間の会社は、まだ事業のための資産を揃えただけの状態であり、営業を開始したわけではありません。
どこかに商品を販売して売上を回収するという段階ではなく、売上や費用は発生していない状態です。
既に述べた通り、企業活動とは「調達資金を運用して利益を出す活動」であり、利益とは「活動によって得た収入からかかった費用を差し引いたもの」です。
つまり、会社を設立した直後は、損益と呼べるものは全く発生しておらず、損益計算書も存在しません。
この時点では、資産内容を表す貸借対照表が存在しているだけです。
その後、利益を得るための活動が開始されると、販売によって売上が発生し、人件費や光熱費などの費用も発生し、代金を回収して費用を差し引いた分が利益となり、損益が計算されるようになります。
経済活動を繰り返して1年が経過すると、会社は決算を行うよ!
まず、1年間の総売上から総経費を差し引いて、1年間の総利益を確認します。
この利益によって納税額が確定し、利益から税金を差し引いたものが翌期に向けて会社に留保されるお金となります。上場企業が株主に対して配当金を支払うのも、このタイミングです。
このような損益の状況をまとめた資料が、損益計算書です。
設立直後の1年前は、設立にあたって調達した資金で資産を揃えただけの状態でした。
そこへ、1年間の事業の結果として得られた利益が資産に加わり、第二期の事業で運用される資産が増えることになります(黒字の場合)。
このような変化は、貸借対照表に反映されます。
以上のことから、一般に「決算書」と呼ばれるものは、
- 会社が1年間を通じて取り組んできた営業活動の結果を表す「損益計算書」
- 企業活動の結果として、次の期に引き継がれる資産内容を示す「貸借対照表」
から成り立っていることが分かります。
毎年毎年、会社はこれを繰り返していき、衰退したり成長したりしていくのです。
損益計算書と貸借対照表の関係をこのように理解しておくと、財務の仕組みを理解しやすくなります。
時間のレンジの違いに注目
注目すべきは、損益計算書と貸借対照表は時間のレンジが異なるということです。
損益計算書は、1年間の営業活動の結果を表しているものであり、時間のレンジは1年間に限定されています。
しかし、貸借対照表は次の期に引き継がれる資産内容、つまり翌期開始時点での資産内容を表しているものです。
今期の貸借対照表と翌期の貸借対照表は、今期の内部留保によって繋がれ、翌期の内部留保は翌々期へと繋がれます。
これにより、貸借対照表は設立から現在までの活動の結果が示されており、時間のレンジは損益計算書よりもずっと広いものと言えます。
本来は一体だが別々にする必要がある
しかしながら、別の見方をするならば、損益計算書と貸借対照表の違いはこれだけとも言えます。
損益計算書と貸借対照表のどちらにおいても、最終的な利益は同額が計上されており、どちらか一方の資料だけを見ても、利益を知ることは可能です。
この意味において、両者は一体のものだと言えます。
損益計算書は、この利益を算出する根拠となる色々な要素を、性質ごとに並べ替えているのです。
最終的な利益すなわちその会社の収益力は、その会社の返済力に直結する数字です。
したがって、返済力を大な判断基準と捉えている銀行融資では、損益計算書と貸借対照表のどちらかだけを見てもよさそうなものです。
これはなぜかと言えば、決算内容は程度の差はあれども化粧されるものであり、会社の事態を正確に把握して正しい融資判断をするためには、化粧されていない素顔を知る必要があるからです。
そのため、最終的な利益だけで判断することはできず、もっと細かい要素まで見ていく必要があるのです。
最終的な利益だけではなく、そこに至った中身を詳しく見ていくと、素顔が見えてきます。
一口に利益といっても、それだけで収益力が分かるわけではありません。返済力の根拠となる収益力とは、その会社の事業における稼ぐ力のことです。
事業で得た利益は収益力と返済力の源泉となりますが、最終的な利益にはそれ以外の利益、例えば資産の売却や保険の返戻金なども含まれることがあります。
事業以外の特別収入は、利益ではあるものの収益力・返済力としては考えにくい性質の利益であり、銀行の判断ではこれを考慮する必要があります。
また、売上から差し引かれる費用の性質も色々です。
事業のために必要となった費用もあれば、事業とは無関係の費用もあります。
事故や災害によって特別損失が発生することもありますし、売却した資産の売却損が計上されることもあります。
事業と無関係の費用については、収益力とは切り離して考える必要があります。
このように、会社で発生している収入や費用は色々な性質を持っています。単純に「収入や収益力・返済力を詳しく知ることはできません。
だからこそ、会社の活動報告である決算書では、損益計算書と貸借対照表の両方を作成することが求められるのです。
損益計算書の中身
損益計算書で、収入と費用を性質によって整理する意味を知るためには、それぞれの項目を銀行員がどのように見ているか、いくつか例を知っておくのが良いと思います。
損益計算書を分析するとき、銀行員は以下のようなポイントに注目しています。
売上高が急増している
→合理的な増加要因が不明な場合、架空売り上げの計上や押込み販売の疑いあり。
期末棚卸が増加している
→過去の棚卸勘定と比較してみて、明らかに増加している場合には、不良在庫や架空在庫が疑われる。利益の水増しや赤字隠しの可能性もある。
人件費が急増している
→役員報酬が急増しているならば、経営者の個人的な懐具合に異変があったのかもしれない。
利益と納税額のバランスがおかしい
→利益操作されている可能性が高い。
ほんの一例に過ぎませんが、このような見方によって融資判断や与信管理に役立てています。
単に、最終的な利益だけではわからない会社の実態が見えてくることがあるのです。
このように、損益計算書と貸借対照表は、根っこの部分では一体のものなのですが、あえて二種類の資料に分けて会社の情報を詳しく伝えていくものなのです。
財務の基本構造を箱で理解する
以上のことを踏まえて、財務の構造を理解していきましょう。
財務の基本構造は「箱」で考えるのがおすすめです。
財務の基本構造を正しく理解できない人は、これを勘定科目と金額で考えてしまうことが多いのですが、箱で考えて構造を掴み、その後で数字を見ていく方が分かりやすいです。
財務の基本構造を箱で考える方法を簡単に説明してみましょう。
会社が設立された直後は、営業活動を行っていないため損益計算書は存在しません。つまり財務は、
【貸借対照表】 【損益計算書】
となっています。
そこから1年間事業を行い、利益が発生すると損益計算書の作成も可能となります。すなわち、
【貸借対照表】 【損益計算書】
となります。
貸借対照表の利益は、その期の最終的な利益を翌期に繰り越すものであり、損益計算書の利益と一致します。
したがって、貸借対照表と損益計算書は本来一体のものと見ることもでき、
とも考えることができます。
これが、貸借対照表と損益計算書の関係であり、別々にも一体にも見ることができると分かるでしょう。
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損益計算書の理解を深める
さて、損益計算書と貸借対照表の関係について解説してきて、それぞれについて基本的なことが分かったと思います。
しかし、財務の仕組みをもっとよく知るためには、損益計算書と貸借対照表のそれぞれについて、理解を深めていく必要があります。
まずは、損益計算書の理解を深めていきましょう。
収入と費用を整理する
損益計算書は、会社も1年間の事業の中で発生した収入と費用について、性格別に並べ替えたものです。
このように書くと簡単そうですが、実際に損益計算書を作成する場合には、性格別に間違いなく整理していく必要があります。
会社によっては、内容を良く見せるためにおかしな整理をすることもありますし、意図せず間違った整理をしてしまうこともあります。
それでは、会社の実態がよくわからない損益計算書になってしまいます。
損益計算書を融資判断に利用する銀行員は、正しい内容であるかどうかを慎重に検証していく必要があります。
この整理の基本的な流れ知っておくと、損益計算書を理解する助けになるよ!
売上総利益(粗利益)
売上総利益は、会社の直接的な営業活動から得られる利益のことです。例えば、50円で仕入れた商品を100円で販売すれば、差額の50円が売上総利益となります。
営業利益
営業利益という言葉もよく聞くと思いますが、これは売上総利益とどう違うのでしょうか。
これは、売上総利益から営業活動にかかった費用を差し引いたものです。
単に売上総利益を見る場合と比較すると、営業利益のほう事業からの収益をより正確に表していることが分かります。
上記のように50円の売上総利益を得られているとしても、他に色々な費用がかかっています。
営業活動を行う従業員の人件費もかかりますし、納入のための運送費もかかります。営業や運送で使う車のガソリン代もかかります。
このように、色々な費用をかけて初めて事業が成り立つのです。
もし、営業活動のために30円の費用が掛かっていたならば、売上総利益から営業費用を差し引いた20円が営業利益となります。
経常利益
一方で、事業とは直接関係のない収入や費用も発生しているものです。
例えば、資金は全て会社の金庫に置いておくのではなく、銀行に預けておくのが普通です。
銀行に預けておけば、利息をもらうことができます。この利息収入は事業から直接得られた収入ではありません。
逆に、足りないお金は銀行から借りることになりますが、その場合には元金を返済するだけではなく利息も支払います。
この時の支払利息は、営業活動によって発生したものではありません。
このように、本業以外からも様々な収入や費用が発生しています。
これを考慮して計算した利益が経常利益です。
営業利益は、会社が本業から稼ぐ力であり、非常に重要な指標と言えます。
しかし、営業活動で稼ぐ力があっても、借りすぎによる支払利息の負担が収益を圧迫することもあるのですから、営業利益よりも経常利益の方が、会社の実力を正しく表すこととなります。
特別損益
会社の業績は色々な影響を受けて変化するものであり、経済環境の変化や自然災害や流行の変化などによって左右されます。
突発的な事象によって発生した損益は、特別損益として計上されることになります。
経常利益まで計算し、特別損益も考慮して残った利益が税引き前利益です。
税務署は、税引き前利益に対して税金を課し、会社はそれを支払います。配当金の支払いがある会社は、配当金も支払います。
そして残った最終的な利益が内部留保に加算され、翌期に繰り越されることとなります。
このような内容を記載することで、会社の1年間の成績を報告するのが損益計算書です。
損益計算書と粉飾
銀行が融資判断の際に注目する収益力は、あくまでも本質的な稼ぐ力です。
本業でどれくらい稼いでいるのかが重要であり、その期に限って発生した特別な損益は基本的に重視しません。
会社によっては、決算内容を良いものに見せかけようとして、色々な粉飾をすることがあります。
特別収益を本業への収益に加算したり、本業の費用を特別損失に振り替えたり、期末在庫を増やして原価を下げることで粗利を増やしたりすることがあるのです。
損益計算書を理解しているからこそ、このような悪知恵も働くといえますが、銀行員はそれを見抜いて正しく融資をするプロですから、粉飾がバレてしまう可能性は高いです。
粉飾がバレると、銀行の印象は非常に悪くなり、融資も拒否されることでしょう。損益計算書を理解しても、正しい知識として利用するように心がけてください。
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貸借対照表の理解を深める
次に、貸借対照表の理解を深めていきましょう。
すでに書いた通り、損益計算書の内容は1年間の活動に限定されているのに対して、貸借対照表には創業から現在までの歴史が詰まっています。
1年間の事業活動を通して、最終的に残った利益を内部留保として翌期に持ち越し、運用して更なる利益を得て、それがまた翌期に持ち越され・・・という流れを繰り返した結果、その蓄積が貸借対照表に反映されています。
貸借対照表の仕組みを理解するときに重要となる考え方が、「ワンイヤールール」と「流動性の原則」です。
ワンイヤールールとは?
ワンイヤールール(One Year Rule)とは、直訳すれば「1年間ルール」ということです。
その名の通り、1年区切りで考えていく考え方です。何を1年区切りで考えるのかというと、
- 資産が現金にかわるタイミング
- 負債を返済するタイミング
を1年区切りで考えます。
これを聞いて、流動資産と固定資産の違い、流動負債と固定負債の違いにピンと来た人もいるかもしれません。
その通り、貸借対照表の資産の部と負債の部のそれぞれの内容は、それがワンイヤールールから見てどうかという見方によって整理されています。
ワンイヤールールを知るために、これらの区別を簡単に確認しておこう!
流動資産
流動資産は、1年以内に現金化される資産のことです。
既に現金化されている現預金のほか、数ヶ月以内に回収される売掛金や受取手形などです。
実際には、売掛金の回収が遅れて1年以上滞留することもありますが、基本的には1年以内に現金化されるため流動資産と考えます。
固定資産
固定資産は、長期にわたって保有しており、1年以内に現金化されない資産です。
土地や建物などの不動産、投資有価証券などがこれに当ります。
実際には、不動産を数ヶ月後に売却するなどして1年以内に現金化されることがありますが、基本的には長期の保有となるため固定資産と考えます。
繰延資産
繰延資産も重要な項目ですが、これはワンイヤールールの適用外です。
本来は費用に分類されるものでありながら、その効果が長期にわたって現れるものであるため、資産に分類されます。
実際にはすでに支出されているものですから、1年以内に現金化されたり、長期にわたって保有したりする資産とは異なります。
流動・固定といった概念には当てはまりませんが、理解しておくべき項目です。
流動負債
流動負債は、1年以内に支払わなければならない負債のことです。
短期借入金や買掛金、支払手形などがこれに当ります。
実際には、リスケをしたり、取引先に支払いを待ってもらったりすることで、1年以上にわたって滞留することがありますが、基本的には1年以内に支払うべきものと考えます。
固定負債
支払期日が1年以上先になっており、長期にわたって抱える負債のことです。
長期借入金や社債、退職給与引当金などがこれに当ります。
長期借入金などは、毎月分割で返済していくものですが、完済には1年以上の期間を要することから、固定負債であると考えます。
以上のように、繰延資産という特殊な資産もありますが、資産の部・負債の部の両方において、ワンイヤールールをもとに流動・固定のいずれかに分けていきます。
なお、資産の部と負債の部の他に「純資産の部」というものもありますが、これは返済しなくても良い自己資本のことです。
流動性の原則
ワンイヤールールと同じく重要なのが、流動性の原則です。
ワンイヤールールでは、流動資産・負債、固定資産・負債などを分類しましたが、まだ整理するには至っていません。機能的とはいいがたい状態です。
資産では、換金性の早い科目から遅い科目へと並べていきます。
流動性が最も高い(というより既に現金化済みである)のは現金・預金です。
次に受取手形、売掛金、有価証券、棚卸資産といった順で流動性が低くなっていきますが、その順番に並べて整理していきます。
負債の部では、支払期限の早い科目から遅い科目へと並べていきます。
支払手形、買掛金、短期借入金といった流れで整理します。
ワンイヤールールによって分類したものを、このように整理しておくと、会社の財務状況が非常に分かりやすくなります。
支払能力や担保力を知ることにも役立つため、流動性の原則によって整理されているのです。
貸借対照表のキモ
以上を簿記の知識で見ていくと借方と貸方がどうなっている、借方と貸方は互いに一致していなければならない、などの見方をするのですが、実際の経営では不要な見方です。
大切なことは、
「負債と自己資によって資産が作られており、左側には資産、右側には負債と資本がある。これは、ワンイヤールールと流動性の原則によって整理された結果である」
ということです。
この見方が分かると、貸借対照表をいくらか読めるようになります。
もちろん、銀行員の財務分析のように深く読むことは難しいでしょうが、おかしくなっている項目がなんとなく見えてくるようになり、「経営が厳しい」と感じている原因を特定する役に立ちます。
ある程度の慣れが必要ですが、簿記の知識で見ようとするよりも、シンプルで実用的な見方ができると思います。
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安定性の考え方を理解する
ここで、「なぜ財務の仕組みを理解しようとしているのか」という根本に立ち返ってみましょう。
銀行交渉に役立てたい、自社の問題点が分かるようになりたい、決算書が読めるようになりたいなど、色々な理由はあると思うのですが、結局のところ「会社の安定性を高めたい」ということだと思います。
では、「会社の安定性が高い」とは一体どういう意味なのでしょうか。
ここが分からなければ、「安定性を高めよう!」と思っていても、目指すべきところがあやふやで心もとないです。
財務の安定=資金繰りの安定
まずは、事業と利益の関係をしっかり理解するのが良いでしょう。
すでに述べた通り、事業とは調達資金を運用して利益を出すことであり、利益とは事業によって得られた収益からかかった費用を差し引いたものです。
これだけを考えると、経営とはすなわち利益を出すことと思う人もいるでしょう。
それもある意味で間違いではないのですが、実際には利益を追い求めるだけで経営が成り立つわけではありません。
利益を出すためには、調達した資金をしっかり運用していく必要があるわけですが、この「しっかり」というのは資金を効率的に使っていくだけではなく、収入や費用をしっかり把握しつつ、資金繰りをコントロールしていくということでもあります。
企業経営で安定を欠きやすいものといえば資金繰りであり、売掛金の回収がうまくいかずに計画が狂ったり、最初から特に計画を立てずに利益だけを考えて経営すれば、資金繰りは破綻する可能性が高いです。
したがって、事業と利益の関係を正しく捉えるためには、資金繰りについて理解することも大切です。
会社が安定しているというのは、いわば資金繰りが安定しており、収入と費用のバランスも良く取れており、会社が問題なく安定的に回っていく状態をいうのです。
最も安定な状態とは
会社(財務)の安定性・安全性という視点だけから考えてみると、最も安定性・安全性が高い会社とは、必要な資産をすべて自己資金だけで賄っている状態だといえます。
つまり、貸借対照表を見た時、普通は右側に資産、左側に負債と自己資本という形で記載されていますが、右側に資産、左側には自己資本という記載になればよいのです。
この状態は、全ての資産を自己資金でまかなっている状態であり、債務はゼロで債権者もいないという状態です。
億万長者が遊び感覚で会社を立ち上げ、自分のお金だけで経営を全て回していくというならばあり得ますが、そのような会社は例外中の例外であり、ほとんどの会社が何らかの負債を抱えています。
このため経営者は、負債を抱えながら経営している中で、より安全性の高い状態を目指す必要があります。
現実的に目指すことができて安全性が高いといえるのは、固定資産を自己資金と長期負債で賄っている状態です。つまり、
【財務状態A】
という状態です。
なぜこの状態が、安全性が高いといえるのでしょうか。それを知るために、
【財務状態B】
という財務状態と比較しながら考えてみます。
安定性が低い場合
まず、負債Aと負債Bがどちらも短期負債であった場合を考えてみましょう。
この場合、固定資産を自己資本と短期負債でまかなっていることとなります。
負債Aと負債Bの合計は流動資産を超えているため、負債Aの返済資金はどこからか調達してくる必要があります。
しかし、銀行などが融資してくれなかった場合、固定資産を売却して返済に充てるほかありません。
売却しても問題ない固定資産ならばいいのですが、そうでなかったとすれば事業に必要な資産を失うこととなり、経営の継続は困難となります。
安定性が高い場合
では、負債Aが長期負債、負債Bが短期負債であった場合にはどうでしょうか。
この場合、財務状態Aと変わらない内容となり、安定性は高いといえます。
負債Aは長期負債であり、期限の利益(金銭貸借契約で決められた期限までは返済しなくてよいとするもの)が守られている以上、事業の継続を揺るがすような事態には陥りません。
短期負債である負債Bの支払いは、流動資産でまかなえるので問題ありません。
支払期日が到来すれば、その日までに売掛金を回収して現預金から支払ったり、手形の割引や裏書譲渡によって対応することも可能です。
安定性がどちらとも言えない場合
では、負債Aと負債Bがどちらも長期負債であればどうでしょうか。
この場合には、固定長期適合率(固定資産÷(自己資本+固定負債)×100)が100%を大きく下回ることとなります。
一般的に、固定長期適合率は100%以下であるべきとされていますが、大きく下回った場合には、一概に良い状態とは言えなくなります。
もちろん、固定長期適合率は低ければ低いほどいいとされています。
色々な費用を長期で借入れることができれば、月々の返済額は小さくなり、資金繰りへの影響も小さくなります。
しかし、全ての借入れを長期負債で賄った結果、年間の返済額が年間のキャッシュフローを上回ってしまうことがあります。
そのような場合、返済のための資金を借り入れる必要があり、資金繰りが忙しくなってしまうのです。
以上のことから、
- 固定資産の一部を短期負債でまかなっている状態
- 長期負債の割合が高くても、返済負担が大きすぎる状態
を避けていれば、安全性は高いといえるでしょう。
このように、財務の仕組みを理解していると、会社の財務や資金繰りが安定しているとはどういうことかについても分かります。
この知識を活かせば、自社の財務がどうなっているかを見てみて、改善すべき点を探っていくこともできるのです。
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まとめ
本稿では、財務の仕組みを丁寧に解説してきました。
損益計算書と貸借対照表の根本的な性質を知り、箱で見ることによって両者の関係を理解し、さらに両者を別々に見た場合の知識も深め、安定性の考え方へと進みました。
これにより、財務とは何であるか、その仕組みが分かったことと思います。
もっとも、銀行員はもっと深い見方をしますし、しっかりとした資金繰り計画を立てたり、銀行交渉に使う経営計画を作成したりするためには、この知識だけでは不十分でしょう。
しかし、財務の仕組みを知らなければ、銀行員の見方や計画の立て方を理解することも不可能ですから、まずは財務の基本的な仕組みを理解しなければなりません。
本稿を読んでいただければ、当サイトの他の記事への理解も深まることと思います。
誰でも簡単に理解できるように財務の仕組みを解説してみました。
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