手形割引とは?利息や極度枠の計算方法は?審査方法は?元銀行員に聞いてみた

資金調達方法のひとつに、手形割引という方法があります。

これは、まだ支払期日が来ていない手形を担保として、銀行から融資を受ける方法のことです。

しかし、手形割引を手形の買い取りと混同している人は少なくありません。

これを、融資の一種として正しく知っておくと、資金繰りに活用するときに役立つはずです。

本稿では、手形割引の正しい知識をお伝えするべく、元銀行員に話を聞いてみました。

手形割引とは?

資金調達の際に、最も優先的に利用すべき方法は銀行融資です。

しかし、一般的な方法ではなかなか融資を受けられない会社もあり、そのような会社では売掛債権をファクタリングによって現金化したり、手形割引業者や銀行に手形を割り引いてもらったりすることで資金を調達します。

このように、手形割引を利用する際には、手形を現金化するというイメージが強く、またそのように解説されることも珍しくありません。

しかし、手形割引も融資の一種であり、銀行は短期融資のひとつだと考えます。

銀行が1年以内の短期融資を出す場合には、手形貸付、当座貸越、そして手形割引によって対応するのです。

手形割引について、銀行の考え方を正しく知るために、筆者は元銀行員に手形割引について聞いてみることにしました。

―――手形割引とは、どんな融資形態でしょうか。

売上代金の支払いは、現金で取引しないならば、売掛債権によって取引することになりますね。

売掛金を支払期日に振り込むか、約束手形を振り出しておいて、支払期日に代金が支払われるという形です。

売掛金も約束手形も、どちらも売掛債権ですが、このうち約束手形を担保として融資を受けるのが手形割引です。

―――手形を担保に融資ということですが、これを手形の買い取りのように勘違いしている経営者も多いと思います。

多いですね。

ファクタリングのように、売掛債権の譲渡・買い取りと同じ認識をしてしまうのだと思います。

だから、手形割引をしても「融資を受けている」という自覚がない経営者や経理担当者が結構います。

―――そのような勘違いは、何か問題がありますか?

あります。手形割引を活用しきれないというのもそうですし、銀行との関係悪化につながることもあると思います。

手形割引を手形の買い取りと勘違いしていると、銀行が手形割引に応じられないとき、銀行から理不尽な対応を受けたと感じる経営者が多いんです。

手形割引を手形の買い取りと考えているから、「手形を持ち込んだのに、なぜか買ってくれなかった」という不満も生まれます。

しかし、手形割引はあくまでも融資ですから、審査に通らなければ融資できないんです。

勘違いしている経営者の中には、手形割引を受けられなかったことで、銀行の対応が悪いと怒るような人もいます。

融資担当者から理不尽な対応を受けたと、支店長などにクレームをつける人もいますが、そんなことをしていては銀行との関係は悪化してしまうわね。

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利息の計算方法は?

―――なるほど。融資として認識するかどうかで、利息の認識も変わってきそうですね。

そうですね。

融資と考えるなら、利息が発生して当然ですから、融資する資金から利息を前取り(あらかじめ融資金から差し引くこと)するのも納得がいきます。

しかし手形の買い取りと考えていたら、差し引かれた金額は利息ではなく、手形割引の手数料と考えます。

ファクタリングの際の手数料と同じような認識です。

本来は利息ですから、融資実行日と手形の支払期日によって差し引かれる利息は変わります。

これを手数料として考えていると、そうはいきません。

融資実行日から支払期日までの期間が長くて利息が大きくなっているのに、「今回は手数料が高い。なんでだろう」などと不満を持つことになるよ。

勘違いから不満を持たれるのは、銀行にとっては不本意です。

会社としても、資金調達コストを正確に把握するために、手形割引は短期融資であって、利息が差し引かれているということを知るべきでしょう。

―――利息計算は、どのように行うのでしょうか。

利息は、手形の金額と金利と割引日数をかけあわせ、365日で割って計算します。

(支払利息=手形金額×金利×割引日数÷365日)

割引日数とは、手形を振り出した日から手形の支払期日までの日数です。

会社は、手形割引をすることで支払期日を待たずに資金を調達することができますが、これは支払期日までの間、銀行が立て替えているようなものです。

だからこそ、その日数分の利息をもらうのです。

例えば、額面1000万円の手形を割り引くとしましょう。

金利は2%、融資実行日が4月20日で手形の決済期日が5月31日であったとすれば、割引日数は41日間です。

これを計算すると、22467円の利息になります(1000万円×2%×41日間÷365日=22467円)

手形割引を実行するとき、この利息は前取りしますから、会社には1000万円の額面から22467円を差し引いた額が融資されることになります。

極度額とは?

―――極度額を設定する手形割引もありますが、これは通常の手形割引とどう違いますか?

極度枠を設定している手形割引は、あらかじめ設定しておいた極度枠までならば、簡単な手続きで手形割引ができるようにするものです。

そうでない場合、手形を割り引くたびに融資審査を行うため、会社も銀行も面倒です。

そこで、よく手形割引を利用する会社には極度枠を設定して、その範囲内で簡単に手形割引をできるようにしておくのです。

―――極度枠はどのように決められるのですか?

極度枠は、会社の平均月商と手形比率、手形サイトから決められます(極度枠=平均月商×手形比率×手形サイト)。

平均月商はわかりますね。

年商を12か月で割ったものです。

手形比率とは、会社の売上における現金と手形の比率のことです。

手形サイトは、手形の振出日から支払期日までの期間のことで、利息計算をしたときの割引日数とは異なります。

―――手形比率は、会社の売上における現金と手形の比率ということですが、売上代金は現金や手形だけではなく、売掛金の振り込みや小切手といった形もあると思います。

そうかもしれませんが、銀行ではもっとシンプルに考えて、手形以外は現金と考えます。

そして、手形が売上の何割を占めているかを示すのが、手形比率というものです。

例えば、年商1億2000万円の会社があって、売上の半分を手形で回収していたとすれば、手形比率は50%となります。

したがって、平均月商に換算すると1000万円、手形比率は50%、手形サイトは2か月であるとすれば、この会社の極度額は、

1000万円×50%×2か月=1000万円

となります。

1000万円の範囲内であれば、手軽に手形割引が可能です。

―――極度枠が不足して困る、ということにはならないのでしょうか。

資金繰りが正常に回っているならば、問題ないと思います。

なぜならば、極度枠の計算式がそのように作られているからです。

平均月商が1000万円の会社で、手形の比率が50%であったならば、その会社が毎月抱える手形は500万円になりますね。

そして手形サイトが2か月であれば、極度枠の範囲内に収まるはずです。

手形サイトが2か月ということは、例えば振出日が4月1日、支払期日が5月31日という形です。

4月1日に発生した500万円の手形を4月20日に割り引いたら、手形割引による借入残高は500万円、極度枠は500万円になります。

次に、振出日が5月1日、支払期日が6月30日の500万円の手形を、5月20日に割り引いたとします。

すると、手形割引による借入残高は1000万円で、極度枠はすべて使い切ってしまいます。

しかし、5月31日は4月20日に割り引いた手形の支払期日です。

すると、借入残高は500万円に減って、極度枠は500万円に復活します。

6月もまた500万円までの手形割引ができるというわけです。

つまり、月商と手形比率と手形サイトから決めているからこそ、限度枠内で繰り返し手形割引ができるようになっているのです。

―――月商や手形比率や手形サイトに変化があれば、極度枠も変えてもらえるのですか?

そのような場合には、銀行に交渉してみるのが良いでしょう。

極度枠は、あくまでも実績値から計算していますから、月商・手形比率・手形サイトはすべて前期決算の数字を用いています。

ですから、もし変化があった場合には、それを銀行員に伝えてみてください。

「今期は前期よりも売上が伸びているから、極度枠を増やしてほしい」などと伝えれば、検討してくれるはずだよ。

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手形割引の審査とは?

―――手形割引の審査は、通常の融資の審査とどう違いますか?

普通の融資では、その会社の業績や財務から考えて、きちんと返済できる状態にあるかどうかを審査します。

また、融資した資金がどう使われるのか、それによって利益につながるのか、返済原資はどこに求められ、きちんと返済していけるのかといったことも重要です。

手形割引でも、返済できる財務状態にあるかどうかを見ていきます。

手形割引では、支払期日に支払われた売上が返済に充てられますが、もし支払期日に手形が落ちずに不渡りとなった場合には、割引を依頼した会社が手形を買い戻す必要があります。

このため、手形割引の審査では、その会社が手形を買い戻せる財務状態であるかどうかを審査します。

返済力を見られるという意味では、通常の融資と共通しているといえますが、通常の融資ほど厳しい財務分析をされるというわけではありません。

また、手形の振出人が審査の対象になることは、通常の融資と大きく異なる点です。

通常融資では、取引先の信用状況について厳しくみられることはありません。

しかし、手形割引の場合には、振出人が支払期日にきちんと支払えるかどうかがポイントとなります。

もし、振出人が支払期日通りに支払う能力がないならば、そのような手形を割り引いてしまうと、銀行は割引を依頼した会社に買い戻しを求めることになります。

それだけの手間もかかりますし、買い戻しがスムーズに進まないリスクも負うことになります。

だからこそ、振出人の信用調査は必須事項なのです。

―――振出人の信用は、どのように調査するのですか?

振出人と銀行の関係によっても、調査方法は変わります。

振出人が銀行と何らかの取引がある場合、特に銀行から融資している場合などがそうですが、そうであれば銀行は振出人の情報をある程度つかんでいます。

融資していたならば、その会社の業績や財務などはある程度分かっています。

融資していないとしても、例えば取引口座に利用していたとすれば、その会社のお金の動きはある程度分かりますよね。

ですから、その場合には取引をしている視点の融資課に確認を取って、信用状況を調べます。

それと、足元の信用状況に変化があるかもしれませんから、信用調査会社からデータを取り寄せます。

―――信用調査会社とは?

会社の信用にかかわる情報を調査し、蓄積している会社のことです。

帝国データバンクとか、東京商工リサーチといった会社が有名ですね。

信用調査会社からデータを取り寄せれば、その会社の信用情報が分かります。

もちろん、信用調査会社にデータがない会社もありますから、その場合には手形の振出銀行に信用調査書を送ったり、電話を掛けたりして情報を集めます。

振出人と銀行に取引がなければ、信用調査会社や手形振出銀行の情報から信用調査を進めていきます。

―――では、振出人の信用と割引を依頼した会社の財務状況が、審査の対象になるということですね?

そういうことです。

このどちらかに問題があれば、手形割引による融資はできなくなります。

―――割引を拒否することで、割引を依頼した会社と振出人の間でトラブルになることはありませんか?

もちろんあると思いますが、銀行はそうならないように、あるいはなったとしても巻き込まれないように十分に注意しています。

手形割引ができないとき、銀行員はよく「総合的に判断して、今回の割引はできません」などと伝えるのですが、この「総合的な判断」とは、

  • 「振出人の信用力」
  • 「割引を依頼した会社の財務状況」

の二点です。

このどちらかに問題があるわけですが、どちらに問題があるかを銀行員が伝えることはできません。

もし、振出人・手形に信用がないから割引できないと伝えると、割引を依頼した会社が振出人に「銀行がこんなことを言っていたが、どういうことだ。支払いは大丈夫なのか」などと詰め寄ってトラブルになる可能性があります。

となると、銀行は振出人の信用を傷つけたことになって、トラブルに巻き込まれてしまいます。

銀行のような信用第一でやっている企業にとって、守秘義務違反は重大な問題です。

また、振出人の信用力に問題がなく、割引を依頼した会社の財務状況に問題があって断る場合にも、それを伝えることはありません。どちらも伝えずに断ることによって、振出人の信用力の問題も濁すことができますからね。

―――割引を断られた経営者は、その点を知っておくとよさそうですね。

そうです。自社の財務状況に問題があれば、自社の財務に問題がある、もしくは自社の財務にも振出人の信用にも問題があることになります。

しかし、自社の財務に問題がないのに割引できなかったならば、振出人の信用に問題があった可能性が高いです。

振出人の支払い能力が低いとなれば、自社の貸し倒れリスクも高くなりますから、慎重な取引を意識する、必要に応じて取引を見直していくなど、与信管理に役立てていくことができますね。

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手形自体に問題があるかも

―――なるほど、銀行の手形割引の対応を与信管理に活かせるというのは役立つ情報です。

といっても、自社の財務内容に問題がなく、振出人の信用力にも問題がなく、しかし割引できないということもあります。

手形に不備があった場合がそうです。

―――どんな不備があるのでしょうか。

手形の金額があっていない、割印がない、振出日が記入されていない、支払期日が記入されていない、受取人と第一裏書人が違う、手形の金額が間違った漢数字で書かれている、といった間違いがあります。

特に多い間違いは、金額を漢数字で書いているとき、漢数字の壱や弐といった漢字は普段使いませんから、それが間違っているというものです。

「拾(じゅう)」が「捨てる」になっていたり。

あとは振出日が書かれていない手形も多いように思います。

―――手形に間違いがあったら、どうすればよいのでしょうか。

手形を訂正することについては、特にきまりがあるわけではありませんから、二本線で消して変更前の情報を抹消して、振出人の印鑑を押したうえで訂正することになります。

振出人の印鑑を必ず押すという決まりもないのですが、振出人の印鑑を押して訂正されていなければ、手形が書き換えられてしまうこともあります。

したがって、実務上は二本線と振出人の印鑑によって訂正・抹消することになります。

手形の記載にミスを見つけたからといって、受取人が勝手に訂正することはできません。

手形の記載を訂正・抹消することで、他人の権利や義務に影響がある場合には、その他人の同意を得てから訂正しなければなりません。

ですから、手形にミスを見つけて割引できない可能性があるならば、振出人にミスを指摘して、訂正に協力してもらうようにしましょう。

ただし、手形金額だけは訂正してはいけないことになっていますから、手形金額にミスがあった場合には、手形を新しく作り直すことになります。

―――振出日を記入していないなど、空欄がある場合も振出人の同意のもとに書き加えることになるのでしょうか。

単に記入忘れの個所があれば、振出人の同意を得なくとも、受取人が記入していいことになっています。

これは「白地補充権」といって、手形法という法律で認められています。

もちろん、空欄には勝手に追記できるからと言って、本来の条件と異なる内容を書くのは認められません。

それは補充権の濫用といって、裁判沙汰になりかねない問題です。

そうでなければ、受取人が振出日などを記入して、銀行に割引を依頼すればよいでしょう。

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まとめ

手形割引について、銀行員から正しい知識を聞き取っていきました。

これによって、手形割引はあくまでも短期融資の一種であり、利息計算や極度枠の計算が行われており、審査もしっかりと行われていることが分かったと思います。

手形取引をしている会社にとって、手形割引は重要な資金調達方法の一つとなります。

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ぜひ正しい知識を身に着け、活用してほしい!

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