資金繰りには、一般的な方向性があり、それは多くの業種で共通するものです。
しかし、資金繰りをラクにするための複数の方法のうち、業種ごとにより入れる方法や方針は異なるものです。
したがって、業種ごとの資金繰りのポイントを押さえることで、資金繰りの考え方が良くわかります。
業種ごとに異なる資金繰り
通常、資金繰りのポイントを解説するときには、一般論で述べていくものです。
当サイトでも、そのように説明してきました。
しかし、より詳しく解説するならば、業種ごとに資金繰りのポイントは異なります。
なぜならば、業種によって色々な違いがあるからです。
業種によって、売上の回収は異なりますし、変動費と固定費の比率も異なります。
在庫保管の基準も異なりますし、粗利率も違います。
融資を受ける目的も、資金使途も、必要となる資金量も異なります。
このように色々な違いがあるため、資金繰りのポイントも変わって当然です。
したがって本稿では、代表的な複数の業種について、資金繰りのポイントを解説していきます。

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小売業の場合
まず、小売業から見ていきましょう。
小売業は、他の業種と比べて、顕著な違いがあります。
それは、売上の回収方法です。
小売業者は、製造業者や卸売業者から仕入れを行い、最終消費者に販売します。
販売の対象が個人の消費者であるため、売上の回収が現金で即座に行われるのです。
ただし、クレジットカード払いでは即座に回収とはなりません。
売上を現金で回収するということは、多くの業種で資金繰りを圧迫している「回収サイト」が存在しないということであり、非常に大きなメリットになります。
なにしろ、回収サイトは存在しないにもかかわらず、仕入れは掛買いすることができれば、「回収サイトよりも支払いサイトのほうが長い」という、非常に好ましい状態に持っていくことができます。
回収サイトよりも支払いサイトのほうが長ければ、回収した売上によって支払いが可能となりますから、金融機関から運転資金を借り入れる必要もなくなります。
したがって、小売業の会社が銀行から融資を受けるのは、新規出店などのために必要となる設備資金が一般的です。
小売業の短所
このような特徴だけを見ると、小売業は非常にラクな商売に思えるかもしれません。
しかし、得てして長所と短所は表裏一体で、小売業のこのような強みも、時には弱みになることがあります。
消費者に販売するということは、回収サイトが存在しないというメリットをもたらします。
しかし、買ってくれる消費者の人数や客単価は、いつも一定しているわけではありませんから、売上の予測が非常に難しいです。
長期にわたって経営を続けて来た小売業者ならば、過去の傾向から、仕入れるべき商品や販売量をある程度までは予測できます。

流行の影響
また、多くの小売業は、その時の流行に大きく影響されます。
流行の商品を揃え、大きく売り上げを伸ばすことができたために、もっとたくさん仕入れたところ、翌月には流行が過ぎ去って大量の売れ残りを出した、などということがよくあります。
気候の影響
もちろん、流行だけではなく、その年の気候などにも影響されます。
例年より暑い年と涼しい年とでは、売れる商品や売れる量が大きく変化します。
雨の日や雪の日には店舗を外出する人が減りますから、売上も落ち込みます。
資金繰りが複雑になることも
このほか、多くの店舗を展開していくにつれて、資金繰りが複雑になるのも短所です。
店舗ごとに取り扱う商品が異なるならば、お店ごとに資金繰りを管理していく必要があります。
これは、取り扱う商品が異なるということは、客層や原価率などが大きく異なるからです。
大きく異なる店舗同士の資金繰りを一緒に管理し、平均化してしまうと、資金繰りが悪い店舗の状況を把握することができず、改善も困難になります。
資金繰りのポイント
これらことから、小売業の資金繰りのポイントは、以下の通りとなります。
売上予測はシビアに

過去データから売上を予測するときには、下限データを参考にし、最悪の事態を想定しておくことが重要です。
過去の平均値を売上予測にするならば、それはやや見通しが甘いと言えます。
楽観的な予測を立ててしまうと、しばしば下方修正が起きてしまい、資金繰りに頭を悩ませることになります。
シビアな予測に立って資金繰りを計画することで、資金ショートを防いでいくのです。
また、小売業では、常にいくらかの現金があるため、「まだ大丈夫、まだ大丈夫」と考え、危機感を持ちにくい傾向があります。
これも、最悪のケースを前提に予測しておくことで、「これだけお金があってもまだ安心できないぞ」という緊張感をもって、資金繰りをしていくことができます。
在庫コントロールをしっかりと
シビアな売上予測を立てると同時に、在庫コントロールも非常に重要です。
食品を取り扱う小売業では、毎日のように棚卸をしている会社も多いと思います。

上記のように、小売業は流行の影響をダイレクトに受けます。
これは、売れ残り発生のリスクが常にあるということです。
したがって、世間の流行や短いスパンでの売上推移を把握しながら、棚卸によって在庫を確認し、コントロールしていくことが非常に重要です。
出店の際の注意

小売業では、回収サイトが存在せず、運転資金の必要がないため、銀行からの融資は基本的に新規出店のための設備投資のために受けるものです。
設備投資のための融資ですから、当然借入額も大きくなります。
そのため、減価償却期間と返済年数が一致しており、できるだけ長期の返済にすることができなければ、資金繰りが非常に厳しくなります。
例えば、本来ならば法定耐用年数10年の設備に投資するために、1億円の融資を受けたとします。
これを、法定耐用年数いっぱいの10年間で返済していくならば、毎月の元金返済は約83万円となります。
しかし、銀行が返済期間を5年に指定してきたならばどうでしょうか。
毎月の元金返済は2倍に膨れ、資金繰りを大きく圧迫することになります。

銀行に対して資金繰り表を提示し、返済期間を10年ならば無理なく返済が可能であるものの、返済期間が5年ならばいずれ資金繰りがショートすることを示すのが効果的です。
論理的に説明することができれば、銀行も納得し、受け入れてくれる可能性があります。
資金がショートすれば、回収に苦労するのは銀行です。
ならば、資金ショートの可能性が高い返済条件よりも、確実に回収できる返済条件をのんだ方が、銀行にとってもメリットがあります。
シビアに資金繰りしていけない経営者は、銀行の返済条件が厳しい場合でも、見切り発車で融資を受けてしまうことがあります。
そうならないように気をつければ、資金ショートのリスクを低くすることができます。
小売業のポイントまとめ
- 現金で回収するため、運転資金の必要がなく、資金繰りが回りやすい
- 流行や天候などの影響を受けやすいため、売上予測はシビアに立てる
- 店舗ごとに資金繰りを把握する
- 在庫の管理をこまめに行い、在庫をコントロールする
- 設備資金を借り入れる際には、返済期間をできるだけ長期にする

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卸売業の場合
次に、卸売業を見ていきましょう。
卸売業の特徴は、必ず仕入れを伴うことです。
仕入れた商品を売って売上がはじめて発生するため、売上の回収よりも仕入れの支払いの方が先になります。
このため、運転資金が必ず必要になります。
卸売業の短所
卸売業の短所は、上記の通り、売上回収よりも支払いが先行することです。
このほかにも、在庫を確保しておかなければならないのも短所です。
注文が入ってから仕入れをしていたのでは間に合いませんから、常に一定の在庫を確保しておき、注文の都度出荷していくことが重要です。
卸売業では、在庫のコントロールは、資金繰りにダイレクトに影響してきます。
また、卸売業は多くの場合、利益率が低いものです。
したがって、過剰な在庫を抱えてしまうと、処分のための値引きや在庫管理費が、少ない利益をさらに圧迫することになります。
卸売業が倒産するケースを見ても、仕入れが管理できていないケースが非常に多いです。
資金繰りのポイント
以上のことを踏まえ、卸売業の資金繰りのポイントは以下の通りとなります。
仕入れと在庫のコントロールを適切に
仕入れと在庫のコントロールを適切に行うためには、仕入れ責任者を一人に絞ることが重要です。
一番悪いのは、複数が仕入れを担当し、経営者が仕入れと在庫の状況を把握できていないケースです。
仕入れ責任者を一人に絞り、なおかつ能力の高い社員を仕入れ担当に据えることが大切です。
必要な仕入れを見極め、余剰在庫を出さないようにできる人物が仕入れを担当するのが好ましいです。
いくら仕入れ責任者を一人に絞っても、その担当者が「万が一のために在庫は豊富にしておこう」などと考え、余剰在庫を作ってしまうような人物であれば、一人に絞っても効果は出ません。

最低ロット数を調整する
過剰在庫を作らないためもう一つ重要なのは、最低ロット数を調整することです。
例えば、自社で取り扱う商品のうち、顧客からの注文は1個単位で行われるものの、仕入れは100個単位の商品があったとします。
このとき、「1年かけて売りきろう」などと考え、100個購入する会社は多いです。
このような方針で仕入れを行ない、うまく100個売りきることができればいいのですが、いずれ売れ残りが発生します。
最初の100個を売り切ったとしても、次の100個、また次の100個と永遠に売り切れるとは限らず、いずれはあまりが出ることになります。
それが、やがて資金繰りを圧迫することになります。
したがって、最低ロット数を調整するために、取引先と交渉することが大切です。
たとえば、割高になってもいいので10個単位で仕入れるとか、10個単位で売ってくれなければいっそのこと仕入れないなどの工夫によって、不要な在庫が出ないように気をつけることが大切です。
倉庫を縮小する
過剰な在庫を産まないために、倉庫を縮小することも重要です。
倉庫が無駄に大きければ、まだまだ仕入れる余裕があるように錯覚しがちです。
しかし、倉庫をできるだけ狭くしておくと、本当に必要な仕入れを検討し、無駄のない仕入れをしていくことができます。

回収・支払サイトの調整
販売より仕入れが先行するため、売上の回収よりも支払いのほうが早くなりがちです。
これは仕方ないとしても、売上の回収と支払いの間隔をできるだけ縮めることによって、資金繰りが回りやすくなります。
このため、支払いを少しでも遅らせる、回収を少しでも早くする、販売の一部を現金で回収するなどの工夫をしていきましょう。
利益が少ないため、卸売業は値引きに敏感です。
しかし、いくらか値引きをすることで回収サイトを早めたり、一部を現金で回収したりできれば、結果的には運転資金が減り、金融機関からの借入が減り、利息の負担が減ります。
このように考えると、多少の値引きは可能になりますし、値引きによって却って利益を増やせる可能性もあります。
卸売業のポイントまとめ
- 仕入れと在庫のコントロールを徹底する
- 有能な社員一人に仕入れを担当させる
- 仕入ロットを調整する
- 倉庫を縮小する
- 回収サイトと支払いサイトを調整し、運転資金を圧縮する

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製造業の場合
製造業の特徴は、商品を製造して売るため、他の業種よりも原価率が重要になるということです。
他の業種でも原価率は考慮しますが、取り扱う商品を製造するところを担う製造業では、原価率の重要性が他の業種より大きくなるのです。
したがって、製造業の資金繰りのポイントは、原価率を正しく把握することです。
そのためには、以下の点に従ってチェックしてみてください。
製品ごとに売上を分けているか?
資金繰り表の売上区分は、全ての製品や複数の製品をひとまとめにしていないでしょうか。
もしそのような状態になっていれば、仕入原価の予測が困難になり、資金繰りを回していく上で障害になります。
したがって、資金繰り表の売上区分は、製品ごとに分けるようにしてください。
変動費と固定費を正しく分けているか?
製造原価も、変動費と固定費で分けるべきです。
例えば、変動費に組み込むべき工場の機械のリース代や、工場での水道光熱費を固定費に組み込んでしまうと、正しい原価率が分からなくなります。

工場に勤務しているスタッフの人件費が毎月一定になっているとすれば、それは何らかの間違いがあります。
製品の受注状況は、色々な条件によって変わるものであり、受注が増加すれば、スタッフの休日出勤や残業が増え、人件費も増えるものです。
もし一定になっているとすれば、原価率を正しく把握することができません。
修繕費を考慮しているか
製造業は、機械を稼働させなければ事業が成り立たないため、定期的にメンテナンスが必要となります。
したがって、修繕費も考慮したうえで原価率を考えなければなりません。
その他のポイント
その他のポイントとしては、銀行融資への注意と、保険への注意があります。
返済は計画的に
製造業が銀行から融資を受ける場合、それが工場の設備投資のためならば、かなり巨額の融資を受けることになります。
このような設備投資の際には、返済期間も長期になるのが普通です。
しかし、返済期間が長くなるということは、返済期間中に経営状況が悪化する可能性もあるということです。
借り入れた当初は問題なく返済できていたとしても、いつしか返済が困難になることがあります。
当初の計画での返済が、資金繰りを大きく圧迫しているような場合には、銀行に資金繰り表を提示しつつ、リスケジュールを相談しなければなりません。
保険は重要
製造業では、保険の重要性が他の業種よりも大きくなります。
なぜならば、工場作業員の事故やケガのリスクが高いからです。
そのため、損害保険や生命保険に加入する必要があります。
製造業のポイントまとめ
製造業の資金繰りのポイントは、以下の通りです。
- 変動費と固定費を正しく分けることで、原価率を把握する
- 製造工程における無駄を省く
- 設備資金の融資は、資金繰りを圧迫しすぎないように返済していく

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まとめ
本稿では、主要な三つの業種について、資金繰りのポイントを解説してきました。
これ以外の業種でも、考え方を応用することによって、資金繰りのポイントが見えてくることと思います。
一般的な資金繰りの方法を鵜呑みにするのではなく、自分の業種の特徴や長所・短所を踏まえて資金繰りをしていけば、資金繰りはもっと楽になっていくことと思います。