財務の視点・顧客の視点の限界
これまで、財務の視点によって、業績における問題点や改善の方針を考え、そこに顧客の視点を加えることで売上の維持や向上、顧客満足度の改善などを図ってきました。
これによって、一定の業績改善効果が表れることも少なくありません。
しかし、それで黒字転換が実現するとはいいがたいでしょう。
財務の視点と顧客の視点での取り組みは、業績向上のための大きな力にはなりにくいからです。
財務の視点で業績改善を図ったとき、売上アップとコストダウンを中心に考えてきました。
また、それが逆効果を生み出さないために、顧客視点での取り組みを考えてきました。
つまり、これらの取り組みは業績改善のための方針であり、基本的な姿勢といえるものです。
したがって、これによって売上や限界利益が劇的にアップするということにはなりにくいのです。
というのも、赤字の会社には、財務的な問題、集客や顧客満足度での問題だけではなく、社内業務にも大きな問題が潜んでいることが非常に多いからです。
管理会計によって数字の問題を特定し、そこに顧客視点を掛け合わせても、社内の業務で様々な非効率が起こっていたとすれば、赤字はいつまでたっても改善されません。

そこで、財務の視点・顧客の視点に続く第三の柱として、業務プロセスの視点が必要となるわ。
業務プロセスの視点とは?
業務プロセスというと、真っ先に思い浮かぶのが「業務の流れ」のイメージです。
つまり、業務プロセスの視点で業績改善を図るということは、
- 業務の流れの中で生じている無駄な工程を削減する。例えば、三重チェックが行われている工程を二重チェックに変更することにより、労働時間や労働力当たりの生産量を改善し、売上増加につなげる
- 製造工程のうち、ミスが起こりやすい工程に人員を割いてミスを防ぐ。これにより、返品やクレームの頻度を減らし、無駄の削減と売上増加につなげる
- 自社で顧客管理に利用しているシステムを改善し、短時間で顧客情報の入力・変更を可能とすることで生産性をアップさせる
- A→Bという流れの作業で、Bの作業に当たる従業員がAの工程が終わるまで待たなければならず、無駄が発生している。製造工程を見直すことで無駄を省き、売上高を高める
などの改善策が良く知られています。
これを、「業務フローの見直し」などとも言い、業務改善では欠かせないポイントとなります。
どのような業態でも、フローの改善を図ることによって、長期的に見ればある程度の業績改善効果が得られるものです。
しかし、業務プロセスが含む意味は広く、業務フローのほかにも色々な改善が含まれています。
例えば製造業では、
- 製造の際に消費する原材料の無駄を省く
- より効率の良い原材料へと変更する
という改善によって、変動費を削減して限界利益率を高めることができます。
飲食店やスーパーでも、
- 調理工程や仕入れを見直して廃棄する食材を減らす
- 調理場や売り場の設備の稼働率を高めて、各設備の収益への貢献度を高める
という改善をすれば、収益を高めていくことができます。
業務フローはしっかり構築されていても、このような無駄が発生している会社は資金繰りが厳しくなります。
そのため、業務プロセスの改善では業務フローの無駄だけではなく、色々な無駄を削減する姿勢で取り組むことが重要です。
このため、業務プロセスの視点業務プロセスの視点で業績改善を図るときには、業務フローの改善のほかにも、
- 無駄の生まれにくい商品を企画する
- 仕入計画を見直す(販売予測から適正な仕入れを図る)
- 在庫管理を見直す
などの改善を図っていくことになります。

これが、会社にイノベーションを起こすことにつながり、赤字から黒字へ転換するための爆発力も期待できるんだ。
また、広義でとらえるならば、業務プロセスの視点と顧客の視点には関連する点が多いことにも注目すべきです。
例えば、飲食店で業務プロセスの改善を図るにあたって、ホールで立っているだけのスタッフに仕事を与えたとしましょう。
このスタッフは、ただホールで手持ち無沙汰に立っているだけに見えるかもしれませんが、顧客が何か困ったときにすぐ対応することができるため、顧客満足度に貢献しているかもしれません。
その場合、業務プロセスを改善したつもりが、実際には顧客の不便につながる可能性があります。
財務の視点で考えるとき、顧客の視点を必ず忘れてはならないと書きました。
それと同じように、業務プロセスの視点で考えるときにも、顧客の視点を忘れてはならないのです。
業務プロセス改善でイノベーションを起こす
ここまでの解説からもわかる通り、業務プロセスの視点では無駄を省いて生産性を高めることを目指しています。
経営者の皆さんもそうですし、従業員一人ひとりもそうだと思いますが、毎日の仕事はだいたい決まった流れで行っているものです。
業務フローはある程度確定されており、それに従って業務を行っているのですから、仕事の内容もやり方も変わらないのが当然なのです。
そのように毎日繰り返している仕事を再検討し、新しい見方で考え、新しい方法で取り組み、新しい価値を見出すのが業務プロセスの視点です。
これが、赤字に苦しむ会社にイノベーションをもたらします。
イノベーションというと、なにやら大変な変革を起こすイメージがあると思います。
馬で移動していた社会から鉄道で移動する社会へ、ガラケーが当たり前の社会からスマホの社会へといったイメージを抱く人もいるでしょう。
しかし、イノベーションを起こす単位は色々で、世界的なイノベーションもあれば、小さな店舗や会社でのイノベーションもあります。
しかし、どのようなイノベーションでも共通するのは、イノベーションには、
- 商品やサービスによって顧客満足度を高めること
- 仕事の生産性を上げること
の二つのポイントがあるということです。
商品やサービスによって顧客満足度を高めることについては、第4回の顧客の視点を理解している人にはピンとくると思います。
顧客の視点に立った商品やサービスを提供できていないならば、業務プロセスを改善することで、顧客の満足度を高めるのです。
ここでしっかりと理解しておきたいのは、後者の
「業務プロセスの視点から、仕事の生産性を上げる」
ということです。
この点をしっかりと理解すれば、業績改善の大きな推進力となります。
では、具体的にどのような取り組みをしていくのでしょうか。
スーパーA店のケースを見ながら考えていきましょう。

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生産性の向上とは?
生産性の向上で最もわかりやすいのが、製造や調理の過程で生じる無駄を省くことです。
これは、飲食店を例にするとわかりやすいと思います。
調理して提供される食材の中には、「捨てるところがない」などと言われるものがあります。
例えばクジラがそうですが、身の部分だけを食べるのでは無駄が多すぎます。
ほかにも、内臓や皮も食べられますし、骨やひげは工芸品にすることができます。
油は燃料にすることができ、一頭まるごと活用とすることができます。
このクジラの調理では、身の部分を使っただけの場合と、すべてを調理その他で活用した場合とを比較すれば、生産性に各段の違いがあることが分かるでしょう。
管理会計の観点から業績改善を図るには、コスト削減が欠かせません。
コスト削減とは、無駄をなくすことであり、調理の際に捨てる部分を減らすこと、廃棄される食品を減らすことなどがコスト削減となります。
製造業における原材料、飲食業における食材、スーパーにおける仕入れ商品は、損益計算書の変動費にあたり、限界利益に直接影響します。
この部分で無駄を省いて変動費を下げることができれば、限界利益は高まります。
コストを削減する際には、人件費や経費の無駄を省くだけではなく、原材料や食材などの変動費が売上に貢献する割合を高めることも非常に重要なことです。
歩留まり率とは?
原材料や食材といった変動費の利用効率を「歩留まり率」といいます。
聞きなれない言葉だと思った人もいると思いますが、定義は難しくありません。
歩留まり率をもっとわかりやすく言えば、
「材料のうち何割が完成品になったか?」
ということです。
例えば、クジラ一頭を利用するとき、身の部分を利用するだけならば、歩留まり率は60%くらいでしょう。
しかし、頭も、皮も、内臓も調理し、骨や油も活用するならば、歩留まり率は100%近くになります。
多くの事業において、このように歩留まり率を高める努力をすれば、材料比率は低くなります。
歩留まり率を高める考え方は、多くの業種で可能です。製造業では、原材料のロスを減らす工夫をすればよいでしょうし、建築業者でも資材のロスを減らす工夫があると思います。
飲食店A店にしても同じです。飲食店では食材を扱っているだけに、活用できるものを捨ててしまったり、期限切れの食品を廃棄することがあります。

この無駄を減らすことができれば、歩留まり率は高まるね。
コスト削減は値上げ以上に効果的
コストを削減して歩留まり率を高めることは、業績改善に非常に大きな成果をもたらします。
業績改善というと、値上げによる売上アップを考える人も多いと思いますが、それではうまくいかないことが多いです。
これは第4回でも詳しく述べました。
それに比べて、コスト削減は非常に大きな効果が見込めます。
このことは、値上げとコスト削減の効果を実際の数字で比較するとよくわかります。
例えば、500円で販売しているメニューがあったとします。
この時、メニューのクオリティや量などは一切変えることなく、価格を50円値上げした場合と、仕入れ計画を見直して廃棄ロスを減らし、コストを25円削減した場合を比較してみましょう。
前者は50円の値上げであり、値上げによって限界利益が50円増えます。
後者は25円のコスト削減ですから、限界利益は25円増えます。
商品ひとつあたりの効果を単純に考えてみると、値上げのほうがコスト削減より2倍の効果があるように見えます。
しかし、どちらが業績改善に効果的であるかを具体的に計算してみると、25円のコスト削減のほうが効果は大きくなります。
なぜならば、コスト削減に取り組んだ場合のほうが、限界利益率が改善するからです。
500円のメニューの値上げとコスト削減の効果について、限界利益率で考えてみましょう。
原材料費は30%(500円×30%=150円)とします。
【本来の限界利益率】
もともと500円で提供していた時、限界利益率は以下の通りになります。
(500円-150円)÷500円=0.7(限界利益率70 %)
【50円の値上げをした場合の限界利益率】
50円の値上げをすると、商品価格は550円となります。この時、限界利益率は、
(550円-150円)÷550円=0.727(限界利益率72.7%)
となります。
【25円のコスト削減をした場合の限界利益率】
25円のコスト削減をすると、商品価格はそのままですが、本来150円かかっていた仕入れ値が125円になります。この時、限界利益率は、
(500円-125円)÷500円=0.75(限界利益率75%)
となります。
以上の比較から、
- 50円の値上げをした場合→限界利益率は2.7%アップ
- 25円のコスト削減をした場合→限界利益率は5%アップ
となることが分かります。

値上げをしたほうが限界利益では儲かりますが、コスト削減のほうが限界利益率では儲かるんだ。
ここで疑問となるのが、限界利益が大きくなる「値上げ」と、限界利益率が大きくなる「コスト削減」では、どちらのほうが業績改善効果が大きいかということです。
これを知るためには、どちらも同じ売上高として計算してみるとよくわかります。
売上高10万円で考えてみましょう。
【50円の値上げをした場合】
50円の値上げをした場合の限界利益率は72.7%でしたから、10万円分を売ったときの限界利益は、
限界利益=10万円×72.7%=7万2700円
となります。
【25円のコスト削減をした場合】
次に、25円のコスト削減をした場合の限界利益は75%でしたから、10万円分を売ったときの限界利益は、
限界利益=10万円×75%=7万5000円
となります。
この計算からも明らかなように、値上げによって限界利益を高めるよりも、コスト削減によって限界利益率を高めるほうが、業績改善への貢献度は高いことが分かります。
もっとも、これは原材料費がどれくらいであるか、値上げやコスト削減の幅がどれくらいであるかによっても変わるため、一概にコスト削減のほうが効果的とは言い切れません。
それでも、業績改善のためには、この観点が欠かせません。
売上を伸ばそうとすると、ついつい値上げをしたくなるものですが、コスト削減のほうが大きな効果を得られる場合がよくあります。
売上を伸ばすことは難しいのに対し、無駄があるほどコスト削減は簡単ですから、業績改善のためにはコスト削減に注力したほうが効果的と言えます。
大切なのは販売量への影響
値上げをした場合とコスト削減をした場合を比較すると、両者の販売数量が異なることが分かります。
値上げした場合には、
販売量=10万円÷550円=181.8個
であり、コスト削減をした場合には、
販売量=10万円÷500円=200個
となり、コスト削減をした場合のほうがたくさん売れていることが分かります。
メニューのクオリティや量に変化がなく、値段だけ上がっているならば、販売量は少なくなって当然です。
しかし、その「当然」というところがポイントです。
値上げにしろ、コスト削減にしろ、どちらも会社の利益を伸ばすために行われるものです。
しかし、この両者が業績に与える影響は大きく異なります。
なぜならば、値上げとコスト削減では、その後に売れる数に大きな差が出るからです。
第4回の内容と重複しますが、値上げをすれば、客は値上げ分だけの満足を求めます。
商品のクオリティや量が変わっていなければ、販売数が減るのは当然のことです。
このため、値上げによる好影響と悪影響の両方が発生し、改善効果が得られにくくなります。
しかし、業務プロセスの視点から無駄を省いてコスト削減をした場合、単に無駄がなくなっただけのことで、顧客には支払うお金も満足度も変化はなく、販売量が落ちることもありません。
コスト削減分の好影響だけが得られるため、改善効果もすぐに表れます。
このため、コスト削減は値上げ以上の業績改善効果が期待できるのです。
なお、このとき、コスト削減に伴って顧客満足度が低下すると意味がありませんから、顧客視点での満足度の維持・向上、業務プロセス視点でのコスト削減のバランスを考えながら取り組むことが大切です。

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資産の活用
コスト削減と同時に重要なのが、資産の活用です。
赤字の会社では、多くの業態において、資産を十分に活用できていないことが多いのです。
資産には色々なものがあります。
仕入れた原材料や食材も資産ですから、歩留まり率を高めることも資産の活用と言えます。
それは上記の通りですが、ここで特に強調したいのは設備の活用です。
設備をできるだけ休ませずに活用すると、稼働率が上がります。
うまく活用すれば、その設備からもたらされる儲けが大きくなります。
すでにある設備の稼働率を高めるのですから、新たに設備を導入する必要もありませんし、赤字の会社にも取り組みやすいと言えます。
設備の稼働率を上げることで、なぜ収益力が高まるのでしょうか。
それは、稼働率が上がれば固定費を下げることができるからです。
これは、具体的な数字で見てみるとよくわかります。
例えば、ある工場では、製品Aを作るための機械の稼働率は50%であり、毎月1万個を生産していました。
この設備の維持のためには、機械のオペレーターの人件費、減価償却費、機械が故障したときの修理費、保険料などをまとめて、毎月500万円の固定費がかかります。
つまり、製品1個あたりの固定費は500円になることが分かります。
もし、この機械の稼働率を100%に引き上げると、毎月の生産量は2万個となり、製品1個あたりの固定費は250円に下がります。

このように、設備の稼働率を高めると固定費を下げることができるわ。
固定費が下がれば利益率は高まり、業績改善効果があるのです。
稼働率アップの具体例
飲食店A店の例でも考えてみましょう。
A店ではゆで麺機を導入して麺類を提供しています。
このゆで麺機で調理される麺類は、ランチタイムに需要が高まるため、その時間にかぎって稼働させています。
営業時間は11:00~23:00の12時間であり、稼働させるのは11:00~14:00の3時間であり、ゆで麺機の稼働率は25%です。
したがって、ゆで麺機の固定費の75%は一切収益につながっていないことが分かります。
もちろん、稼働率が低いことには、それなりの理由があると思います。
例えば、こだわりの麺類を提供しているから、麺やスープを作れる人材が限られており、手間もかかるため、需要の低いタイミングではあえて提供していないのかもしれません。
しかし、ゆで麺機には毎月50万円の固定費がかかっており、その50万円は麺類を売ることでしか回収できません。
500円の麺メニューが1日30杯、毎月900杯売れているとすれば売上高は45万円であり、この時点で5万円の赤字になっています。
そのうえ、原材料費もかかっています。
原材料費が30%とすれば1杯あたりの限界利益は350円、月の限界利益は31.5万円となり、全体では18.5万円の赤字になっていることが分かります。
今の状態では、ゆで麺機によって麺類の提供している限り、毎月18.5万円のマイナスが出続けるのです。
これをまとめてみると、
【現状】
- 固定費:50万円
- 稼働率:25%
- 販売数:900杯
- 限界利益:31.5万円
- 貢献利益:-18.5万円
という状況です。
この状況は、稼働率アップによって改善可能です。
原材料は変更せず、麺やスープは前もって仕込んでおき、ゆで方もマニュアル化することで固定費も据え置くとします。
その上で、ランチタイム以外でも麺類の需要が高まるように戦略を立て、稼働率を高めて販売数を伸ばすことができれば、赤字を縮小していくことができます。
ゆで麺機からの赤字をなくすためには、18.5万円の赤字をなくすために稼働率をどこまで高める必要があるでしょうか。
稼働率ごとの全体の変化を簡単な表にすると、以下のようになります。
毎月の稼働率 | 25% | 40% | 50% | 75% | 100% |
毎月の固定費(円) | 500000 | 500000 | 500000 | 500000 | 500000 |
1個当たりの価格(円) | 500 | 500 | 500 | 500 | 500 |
毎月の販売量(個) | 900 | 1440 | 1800 | 2700 | 3600 |
限界利益率 | 70% | 70% | 70% | 70% | 70% |
1個当たりの限界利益(円) | 350 | 350 | 350 | 350 | 350 |
毎月の限界利益(円) | 315000 | 504000 | 630000 | 945000 | 1260000 |
毎月の売上(円) | 450000 | 720000 | 900000 | 1350000 | 1800000 |
毎月の貢献利益(円) | -185000 | 4000 | 130000 | 445000 | 760000 |
この表の通り、貢献利益がほぼプラスマイナスゼロになるのが、稼働率約40%の時です。
したがって、少なくとも現在の稼働時間3時間・稼働率25%の状況から、稼働時間4.8時間・稼働率40%の状況に変更すればいいことが分かります。

このような稼働率の向上は、現実的に可能だと思うよ。
飲食店A店では、ランチタイムの3時間の稼働だけでなく、ディナータイムにも3時間の稼働をさせる状況に持ち込めば、稼働率は50%となってゆで麺機による赤字は払しょくされ、毎月13万円の黒字となるのです。
稼働率アップは現実的な方法
設備の稼働率を上げて固定費を削減することは、業績改善の方策としてかなり現実的です。
もし、固定費を削減したいからと言って、無理に人件費を削減したり、消耗品費や水道光熱費を削減したりすると、顧客満足度に響いてしまいます。
しかし、設備の稼働率をアップすれば、売上に占める設備の固定費率は圧縮されます。
下手に固定費の削減に着手するよりも、赤字改善効果が大きくなります。

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在庫管理の重要性
業務プロセス改善のために欠かせないのが、在庫管理です。
在庫管理は収益力に大きく影響するため、コスト削減の観点からも、資産の活用の観点からも欠かせません。
在庫管理とコスト削減
当然のことですが、食材を扱う飲食店において、廃棄の問題は非常に大きいと言えます。
ここまで解説した通り、材料費を削減することで限界利益率を高めることが、業績改善に大きな効果をもたらします。
材料費を削減するためには、料理に使う量を減らすか、捨てる量を減らす必要があります。
実際には、料理に使う量を減らすと顧客満足度に悪影響があるため、捨てる量を減らすことが重要となります。
捨てる量が多い理由は、必要以上に仕入れてしまっているからです。
販売予測をしっかりと行うことで、必要以上に仕入れてしまう量を減らすことができれば、捨てる量はおのずと減り、材料費削減につながります。
具体例を見てみましょう。100万円で仕入れた食材を、限界利益率70%で販売しているならば、そこから得られる売上は170万円、限界利益は70万円です。
しかし、これはすべてが予定通りに売れた場合のことであって、実際には廃棄が生まれています。
もし、100万円で仕入れた食材のうち、30%にあたる30万円分が廃棄されていたならば、70%の場合に得られる売上は119万円となります。
原材料費は100万円支払っているのですから、限界利益は19万円になってしまいます。
そこで、売上予測によって廃棄率を15%まで引き下げることができれば、得られる売上は144.5万円となり、限界利益は44.5万円に高まります。

これを見れば、廃棄を減らすことの重要性が分かると思う。
飲食業だけに限らず、仕入れすぎて過剰在庫を抱えた結果、在庫が経年劣化や需要低下によって売れなくなり、廃棄しなければならないことはあるものです。
だからこそ、在庫管理は非常に重要なのです。
ちなみに、銀行融資でも過剰在庫は非常に嫌われます。
過剰在庫をどのように処理していくかによって銀行の評価が大きく変わりますから、融資対策の点でも在庫管理は非常に重要と言えます。
在庫管理と資産の活用
次に、資産活用の観点から見てみましょう。
設備の稼働率を高める効果は前述の通りですが、在庫の稼働率を高めることも業績改善に大きな効果があります。
在庫のことを棚卸資産と言い、在庫の稼働率のことを棚卸資産回転速度と言いますが、この回転速度は高ければ高いほど収益力は高まります。
なぜ、在庫の稼働率がそれほど重要なのでしょうか。
それは、在庫という資産の本質を考えてみるとよくわかります。
そもそも在庫とは、商品にせよ、食材にせよ、原料にせよ、仕入れ業者に代金を支払って仕入れたものです。
つまり、仕入れによって現金が在庫に置き換えられたということです。
在庫の状態である限り、それが会社に収益をもたらすことはありません。
在庫は在庫のままです。

在庫を販売して売上を回収し、初めて会社の儲けとなるのね。
在庫の回転が遅い商品は、現金が寝てしまう期間が長く、儲ける力が低いと言えます。
逆に、在庫の回転が速い商品は、現金が寝ている期間が短く、儲ける力は高いと言えます。
利益ポテンシャルを知る
ここで知っておきたいのが、利益ポテンシャルという考え方です。
利益ポテンシャルとは、その商品が現金を稼ぎ出す力のことであり、限界利益を在庫金額で割ることによって算出します。
数式にすると、
利益ポテンシャル=限界利益÷在庫金額
です。この式だけでは、利益ポテンシャルの意味が分かりにくいと思います。
そこで、この式を別の視点から見て、
=(限界利益÷売上高)×(売上高÷在庫金額)
=限界利益率×在庫回転速度
と考えてみましょう。
限界利益率は売上における限界利益の割合であり、限界利益率が高い商品ほど、その商品の付加価値は大きいといえます。
在庫回転速度は、在庫が回転する速度であり、一定期間で在庫が何回転したかを表します。
つまり、仕入れ→在庫→販売→仕入れ→在庫→販売・・・というように、在庫が入れ替わっていく速度を表すものでもあります。
限界利益率と在庫回転速度を掛け合わせて算出される利益ポテンシャルは、その商品の稼ぐ力を示します。
例えば、
- 商品Aは限界利益率が50%、在庫回転速度が1
- 商品Bは限界利益率が50%、在庫回転速度が2
とすれば、商品Aの利益ポテンシャルは0.5、商品Bの利益ポテンシャルは1となり、商品Bのほうが稼ぐ力が高いことが分かります。
したがって、業績改善を目指す会社では、自社の商品の利益ポテンシャルをそれぞれ算出してみて、稼ぐ力が高い商品を意識して売り込むことによって、業績改善効果が得られるのです。
利益ポテンシャルの具体例
利益ポテンシャルの理解を深めるために、具体例を見ていきましょう。
飲食店A店で取り扱っている商品に、やや高めに設定した1200円のステーキと、一般的な500円のハンバーグがあります。
ステーキの仕入値は360円で限界利益率は70%、ハンバーグの仕入値は150円で、こちらも限界利益率は70%とします。
どちらも限界利益率は同じです。
ステーキは毎日20食・毎月600食、ハンバーグは毎日40食・毎月1200食売れているとすれば、それぞれの毎月の限界利益は、
- ステーキ→1200円×600食×70%=21万6000円
- ハンバーグ→500円×1200食×70%=18万円
となり、ステーキのほうが限界利益は大きく、儲かるメニューであることが分かります。
このように考えていくと、ハンバーグよりもステーキを積極的に売ったほうが儲かると言えます。
しかし、在庫の回転速度を見てみる必要があります。
ステーキはオーストラリアから輸入しており、仕入れにお金がかかるため、3か月分を64万8000円でまとめて仕入れています。
これに対して、ハンバーグは国内の業者から仕入れられるため、2週間分を9万円で仕入れています。
この情報をもとに利益ポテンシャルを比較してみると、以下のようになります。
ステーキ | ハンバーグ | |
売値 | 1200 | 500 |
原価 | 360 | 150 |
限界利益率 | 70% | 70% |
1日の販売量 | 20 | 40 |
1か月の販売量 | 600 | 1200 |
1か月の売上 | 720000 | 600000 |
1か月の限界利益 | 504000 | 420000 |
在庫金額 | 648000 | 90000 |
在庫回転速度 | 1.11 | 6.67 |
利益ポテンシャル | 0.78 | 4.67 |
このように、限界利益が高いステーキのほうが儲かるはずですが、利益ポテンシャルを見てみると、ハンバーグの「儲ける力」はステーキの約6倍です。
管理会計の観点から考えると理屈に合わないように思うでしょう。
しかし、在庫の回転速度まで加味すると、3か月間は在庫として眠っているステーキよりも、2週間で回転するハンバーグのほうがより多くの現金をもたらしてくれるのです。

このように、利益ポテンシャルから在庫と収益性の関係が分かるようになると、業績改善がもっと効率的になるよ。

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業績改善のまとめ
業績改善の道筋は、業務プロセスまでで終わりです。
これまで解説してきた全体の流れを簡単にまとめるならば、
- 管理会計の財務の視点から、自社の業績の問題点をあぶりだし、改善すべきポイントを考え、アクションプランを立てる
- 財務の視点に顧客の視点を掛け合わせる。アクションプランのうち業績に悪影響があるプランを省く
- 財務の視点・顧客の視点に業務プロセスの視点を掛け合わせる。無駄を省いてコストを削減する、設備の稼働率を上げて固定費を削減する、利益ポテンシャルの高い商品に注力して稼ぐ力を高めるなどの取り組みをする
といった流れになります。
財務・顧客・業務プロセスの3つの視点のうち、どれが欠けても業績改善は成功しません。
黒字転換を目指すならば、しっかりとすべての視点を取り入れるべきです。
無理のある方法で臨めば、業績改善は失敗する可能性が高いです。
仮に黒字に転換したとしても、それは一時的なものにすぎず、いずれまた赤字に落ちこむ可能性が高いです。
せっかく黒字転換を目指すならば、黒字転換後も黒字を維持し、業績が伸びていくようにすべきです。
財務の視点で問題点を常に把握し、顧客視点での取り組みも忘れず、業務プロセスの改善によって収益力を高めていけば、黒字の維持と業績の向上は必ず可能です。

会社の業績と財務は良好となり、銀行から融資を受けることも簡単になっていくよ!
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