銀行から融資を受ける際には、会社側で予定調達額を決めておき、複数の銀行に対して交渉していくのがポイントとなります。
しかし、予定額を調達するために、交渉する複数の銀行を選んでいくとき、あることを知っておくだけで選定と交渉がスムーズにいきます。
それは、各支店の裁量権というものです。
本稿では、予定額をしっかり調達するための、支店の裁量権の知識についてお伝えしていきます。
銀行交渉の基本は?
銀行から融資を受ける際のポイントは、銀行に「貸さなければ損だ」と思わせるようにと交渉することが大切です。
お金が必要な時に融資を希望すると、「お金を貸してください」とお願いすると、銀行の力が強くなってしまいますから、「貸さなければ損だ」の考えは生まれません。
そこで、計画的に融資を依頼し、資金の供給を受け続けることが大切です。
そのためには、行き当たりばったりで融資を依頼するのではなく、複数の銀行に対して、決算期には社長自ら決算説明に出向き、その際に融資を交渉するのが良いでしょう。
複数の銀行に競争させると、銀行は自行のシェアを他行に奪われたくないと考える組織ですから、貸したいと思うように仕向けていくことができます。
もちろんこの時、経常利益が赤字でないことや、純資産が黒字でも実質債務超過に陥っていないことなどが前提条件となります。
この時、社長は今期の予定調達額を事前に計算しておき、「今期の予定調達額は〇〇万円ですが、良い提案があれば宜しくお願いします」という姿勢で臨み、銀行から提案を受けるようになるのがベストです。
予定調達額の計算方法
では、「今期の予定調達額」とはどのように計算するのでしょうか。
今期の予定調達額を計算するには、貸借対照表の「1年以内返済長期借入金(項目として設けられていない場合には会計事務所に入れてもらう)」から営業キャッシュフローを引き、そこに当期の設備投資額を加えることで計算します。
今期予定調達額=1年以内返済長期借入金—営業キャッシュフロー+当期設備投資額
ざっくりとした計算になりますが、このように予定調達額を決めておき、すぐに提示できるようにしておくことで、銀行にとっては数字に強い社長だという印象を持たせることができます。

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借りられるだけ借りる
なお、銀行に提案してもらって借りるということですが、これは銀行が貸してくれるならば借りられるだけ借りるということでもあります。
そんなことをすれば借金まみれになってしまうと思う人もいるでしょうが、それは個人としての感覚です。
個人が借りられるだけ借りることと、会社が借りられるだけ借りることは違います。
もちろん、経営に何らかの根本的な問題を抱えたまま、借りられるだけ借りるのは問題があります。

しかし、正常に運営されていても、基本的に経営にはお金が足りなくなる(売掛金の回収より先に買掛金の支払いがある、イレギュラーな支払いが発生することもあるなど)ものですから、会社はとにかく手元資金を厚くしておくことが大切です。
預金はいくらあっても困ることはありません。
月商の3ヶ月分くらいの預金があれば、多くの不測の事態に耐えられます。
したがって、「借りられるだけ借りる」といっても、月商3ヶ月分くらいを目安にしておきます。
月商の3ヶ月分をキープしたら、そこから追加で長期借入金の1年分の返済額まで借りるのがベストです。
そうすれば、借入の返済を重荷に感じることなく、預金量をキープしつつ、非常に安全性の高い経営が可能となります。
1年分の返済額がなくなってしまったら、預金を切り崩して返済していくのか?と思う人もいるかもしれません。
しかし、決算説明は年に1回必ず行うもので、来期の決算説明の際には再び予定調達額を伝えて資金を調達することができるので問題ありません。

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いくら借りたいかと聞かれたら
今期の予定調達額を伝えた時に、銀行がいくら借りたいかと聞いてくることがあるでしょうが、その場合には、「いくらまでなら貸せますか?」と聞き返してください。
銀行は、借入の話があるときには、事前に行内で内諾を取っていることが多いので、いくらまでなら貸せるか、大体の話はできています。
したがって、このように聞けば、銀行が「いくらまでなら貸せる」と言うでしょうから、融資条件が良ければそれを受けるのが良いでしょう。
しかし、新規融資の場合は別です。
新規融資は、資金使途と融資額が審査に大きな影響を与えるものだからです。
通常融資でも資金使途と融資額の影響は小さくないですが、新規融資は実績がないだけになおさらです。
したがって、銀行がいくら借りたいかと聞いてきた場合には、明確な数字を提示する必要があります。

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銀行の裁量権から考える
いくら借りたいかと聞かれた時、明確な数字を提示する際に重要となる考え方は、支店の裁量権です。
また、各銀行から引き出せる融資額のあたりをつける際にも、裁量権は知っておくべきです。
裁量権とは、その支店では、支店の裁量でどこまで貸せるかという範囲のことです。
裁量権の範囲内ならば、支店長の裁量で取引条件を決め、融資を出すことが可能です。
しかし、裁量権を超える案件になると、本部が決裁することとなるため、審査が厳しくなってしまいます。

上記の通り、その銀行との取引が初めてである場合には、審査に厳しい傾向があるからです。
当然、新規取引の会社に対しては、取引金額や取引条件が厳しくなります。
銀行や支店によって裁量権は異なりますが、一般的な傾向を言えば、銀行や支店の規模が大きくなれば、裁量権も大きくなるものです。
そこで、それぞれの金融機関の標準的な裁量権と金利条件を見てみましょう(黒字法人の場合)。
信用金庫・地方銀行の小型支店
- 新取引枠・・・500万円まで(1.4%程度)
- 標準取引枠・・・500万円まで(0.9%程度)
- 支店決裁枠・・・1000万円まで(0.7%程度)
日本政策金融公庫
- 新規取引枠・・・500万円まで(1.4%程度)
- 標準取引枠・・・1000万円まで(1.4%程度)
- 支店決裁枠・・・1000万円まで(1.4%程度)
都市銀行、地方銀行・信用金庫の大型支店
- 新規取引枠・・・1000万円まで(0.9%程度)
- 標準取引枠・・・3000万円まで(0.6%程度)
- 支店決裁枠・・・1億円まで(0.4%程度)
中小企業金融公庫、商工組合中央金庫
- 新規取引枠・・・3000万円から(0.9%程度)
- 標準取引枠・・・1億円まで(0.6%程度)
- 支店決裁枠・・・2億円まで(0.4%程度)
以上のように、新規取引の場合には融資額が小さく、金利は高いことが分かると思います。
前述の通り、融資をうまく引き出していくためには複数の銀行に対して交渉していきますが、予定調達額を考えておくだけではなく、各銀行の裁量権を知った上で銀行を組み合わせ、交渉していく必要があります。
例えば、大きな資金を必要としているのに、裁量権の小さな信金や地銀の小型支店ばかりに交渉していくのは好ましくないということです。

したがって、あらかじめ各銀行の裁量権を知った上で、いくら貸してほしいかと聞かれたときには裁量権以上の額を求めないことによって、スムーズに融資が引き出せるようになります。
もっとも、上記の一覧は一般的な目安に過ぎません。
担当者と仲良くなれば支店決済枠を教えてもらえることもありますので、そのようなより正確な情報を聞き出してみましょう。

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まとめ
支店の裁量権を知っておくと、複数の銀行に対して交渉していく際にも、交渉する銀行の選定に役立ちます。
少額の調達を予定しているならば、比較的規模の小さな銀行に交渉し、多額の調達を予定しているならば、規模の大きな銀行に交渉していくのです。
そうすれば、支店裁量権を超えることなく、支店内決裁だけで融資を引くことができるため、本部決裁に回されるよりも随分と融資を受けるのが楽になります。
融資を受ける際には、支店の裁量権を知り、銀行交渉に役立ててほしいと思います。