元銀行員が語る「資金使途」第4部:設備資金について

これまで、資金使途の重要性、運転資金や一時資金について、元銀行員から話を聞いてきました。

本稿で取り上げるのは、設備資金です。

資金使途を大きく分類するとき、設備資金以外は運転資金という分類をすることもあるように、設備資金は資金使途の中でも大きなものだと言えます。

また、設備資金は運転資金よりも大きな額になるものですから、経営における重要性は高いとともに、銀行員にとっても融資審査には慎重になる必要があります。

そんな設備資金について、銀行員はどのように見ているのでしょうか。元銀行員の話を聞いていきましょう。

設備資金の分類

―――設備資金は、資金使途の中でも大きな括りになると思います。

創業融資を引き出す場合の資金使途でも、設備資金以外は運転資金としてみなすのが普通です。
設備資金について、銀行員も同じような見方をするのでしょうか。

元銀行員:おっしゃる通り、資金使途を大まかに分けるとすれば、一時資金なども運転資金に含めてしまって、運転資金と設備資金という分け方が簡単で良いと思います。

しかし、これまでも話してきた通り、銀行員は資金使途に細かいですからね。運転資金と一時資金を別物とみなしますし、運転資金もいくつかの種類に分けて考えます。

設備資金も同じです。

設備資金を必要とする会社は多いですし、資金使途の中でもポピュラーだと思うんですが、

  • それが生産に関する設備投資か、販売に関する設備投資か
  • あるいは経営の合理化のためなのか
  • 設備更新のためのものか

というように細かく分けて考えます。

銀行の見方はこんな感じで、社長が「運転資金か設備資金か」と考えているよりも細かいです。

 

―――経営者が設備投資を検討している時にも、銀行員と同じように細かく分けて考えるべきですか?

元銀行員:設備資金としてまとめて考えても問題ないでしょう。

しかし、融資のために資金使途を設定するときは、分けて考えた方がいいでしょうね。

それがどんな設備投資になるかによって銀行員の見方は変わりますから、社長も同じように考えていけば投資計画は立てやすくなりますし、その設備投資は本当に必要なのか、採算が取れるのかというようなことも分かると思います。

本当に必要か、採算が取れるかということは、銀行から見ればその設備投資の成果はどんなもので、きちんと返済できるかということですよね。

そこについては銀行員も慎重に検討しますから、銀行員目線が役に立つんじゃないかと思います。

―――設備資金の分類はどんなものになりますか?社長にはあまりなじみがないと思いますが。

元銀行員:

  • 生産に関する設備投資は「生産型設備資金」
  • 販売に関する設備投資は「販売力拡充設備資金」
  • 合理化のための設備投資は「合理化投資資金」
  • 設備更新のためのものは「設備更新投資資金」

といった分け方になります。

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生産型設備資金

―――まず、生産型設備資金とは、設備資金のなかでもどのようなものですか?

これは、最も一般的な設備資金です。生産力を増強したり、新たな製品を生産したりするための設備投資で、機械を導入したり、工場を新設・増設したり、生産に関する設備資金ですね。

―――設備資金のなかでも身近なものですね。銀行員はこれについて、どのような見方をしますか?

元銀行員:生産型設備資金は、生産力を高めるための設備投資が目的です。

新しい機械を購入したり、工場を大きくしたりするための資金ですから、融資額は大きくなります。それだけに長期分割で返済になります。

長期分割返済は、会社としては月々の返済額が減って都合がよくても、銀行にとっては好ましくありません

中小企業は、経営が安定しないのが普通でしょう。5年後、10年後にどうなってるか、正直わからないわけです。

融資後1年間は問題なく返済できても、5年後はわからない。となると、長期の返済になればなるほど、どうなるかわからない返済を頼りに融資することになりますよね。

だから、長期返済は銀行があまり好まないし、それが前提となる設備資金も慎重に判断する必要がありますね。

まず、これが銀行員の基本的な見方です。

しっかり返済できるかどうかを見極める必要があるわけですが、会社側も大きな投資をするわけですし、資金調達計画は立てているものです。

会社の資金調達計画を見せてもらえば、増資・自己資金・補助金といった長期固定資金を組み合わせながら計画しているのが普通です。

この計画によって、必要額だけではなく、融資の必要性とか返済の状況とかが変わってきますから、これも大きな参考になります。

 

―――設備投資では、計画性が重要といえそうですね。

元銀行員:もちろん、無計画な設備投資ほど危ないものはないですよね。

例えば、供給が不足している商品を自社が製造していて、作れば作っただけ売れるような状況だとしましょう。

このとき、生産設備を増強して、消化しきれない供給にどんどん応えていこうと考える会社は多いでしょうね。

でも、十分に計画しないと、これは危ないですよ。

今は供給不足かもしれませんが、同じように考える会社は多いわけですから、業界全体が生産増強に動いたらどうなります?

供給は大きく増えて、せっかく設備投資をしたのに思ったほど儲からなかったり生産過剰になって不良在庫を抱えたりするかもしれませんよね。

増やした設備も稼働停止なるでしょう。

銀行としては、融資した資金で購入した生産設備が稼働しなければ困るんです。

その設備によって得られたキャッシュが返済原資になるんですから。だから、計画性が乏しい設備投資は本当に危険ですね。

 

―――銀行員は、その危険をどのように避けますか?

元銀行員:しっかりとした計画を会社が立てていることが前提ですが、その計画を吟味していきます。

吟味の方法は、生産力がどのように高められるかによって変わってきます

まず、設備を増強することで、既存の商品を生産するのか、それとも新規の商品を生産するのかによって変わりますね。

既存商品を増強するなら、設備投資によってどれくらい生産が増えて、どのくらいの成果が見込めるかという視点になります。

新規商品ならば、その商品の生産を新しく始めることで、どのような成果が見込めるか、特に他社に類似商品がある場合には、はたして競争していけるのかという視点になります。

生産する商品について、今後の需要もしっかり検討していきます。

今後需要が拡大する商品なのか、成熟した商品なのか、衰退している商品なのかを考えると、その設備投資をすべきかどうか、おのずと分かってきますね。

あと、販売力も大切ですよ。

販売力は、銀行員はちゃんとチェックするんですけど、社長が見落としがちだと感じることがありますね。

売れる商品の生産量を増やしたとしても、会社の販売力で処理しきれなければ駄目です。

販売力といっても、その商品自体が優れていて販売力も高いという場合と、会社の販売力が高いから商品も売れるという場合がありますね。

優れた既存商品の生産を増強する場合、商品自体に競争力があるのですから安心です。

しかし新規商品の生産を始めるなら、会社の販売力が重要になりますね。

ほかには、工場を新設するならば立地が重要になるでしょう。

工場の新設や増設の場合も、設備の導入の場合も同じですが、投資規模が妥当かどうかも重要な視点です。

以上のことを、会社から提出してもらう設備投資計画と、社長へのヒアリングで検討していきます。

  • どのように売上が伸びるのか
  • 経費はどうなるのか
  • 在庫管理はどう考えているか
  • 売上が伸びて売掛金も増えるけれど問題なさそうか
  • 返済計画はどう考えているか
  • 設備投資を何年で回収するのか
  • 増えた利益に対する税金にも対処できるか
  • 生産が増えたことで増加する運転資金への対処も考えているか、

ざっと挙げただけでも色々ですが、チェックしていきます。

―――挙げられたチェック項目の中にある「増加する運転資金への対処」とは、増加運転資金を考慮しているかどうか、ということですよね。

他の項目については分かりやすいですが、増加運転資金を考慮しているかどうか、というチェックは複雑そうですね。

元銀行員:複雑ですね。投資計画を立てることで、運転資金の増加分も明らかになって、それを計画に盛り込むわけです。

元となる計画に間違いがあれば増加運転資金の見込みも外れます。

予測が難しい項目ではあるけれども、増加運転資金が発生するのも事実ですし、考慮しないと計画になりません。

しかし逆に言えば、増加運転資金の見込みについては、元となる計画が正確なものだとわかれば、増加分も正確と言えますよね。

ですから、元となる計画をしっかり検証することで、増加運転資金も理論上は正確に把握できます。

この増加運転資金について、設備資金に含めて考える社長も多いので、そこについても話しておきましょう。

銀行員は資金使途にこだわりますから、設備資金と増加運転資金は別に考えます。

設備投資によって発生する増加運転資金でもありますが、あくまでも別物です。

ですから、設備資金の融資を申し込む社長は、設備資金に増加運転資金も含めて考えるのは間違いです。

それぞれに分けて融資を申し込むというわけではありませんが、例えば「設備資金は1億円、増加運転資金も含みます」というのではなく、「設備資金はいくら、増加運転資金はいくら、だからこれくらい必要です」と分けて考える姿勢が必要ということです。

これは、銀行員に都合がいいだけではなくて、しっかり増加運転資金を計算して計画を立てることにもつながりますから、社長にも必要な観点でしょうね。

ここまでチェックをして、納得できれば融資してもいいでしょうし、納得できなければ融資はしません。

銀行員目線ではありますが、具体的な計画と説明を求めて、納得できないものには融資しないというやり方なら、危険はぐっと減るでしょう。

 

―――計画と説明によって判断するならば、それに乗せられて判断を間違うというような危険はありませんか?

元銀行員:それはありますよ。その設備投資がどのようなもので、どんな効果があるのか、銀行員が正確に判断するのは難しいですからね。

ですから、これは何に対する融資でも同じなんですが、計画と説明は参考であって、検証はまた別です。

―――生産型設備資金の検証は、どのように進めていくのでしょうか。

元銀行員:この検証って、投資計画を作ってもらって、計画通りの効果が本当に得られるかどうかの検証ですよね。

投資計画に記載されている収益はあくまで予想ですから。その予想に期待できるかどうかを検証していきます。

投資の効果をきちんと把握するためには、まずは売上や利益の計画が過大になっていないかという視点が大切です。

同様に、初期投資にかかる費用を過少に見積もっているのも問題ですね。

あとは、設備投資をして、工場なり設備なりを稼働してから、軌道に乗るまでの期間がまともに設定されているかも重要です。

つまり、計画に織り込まれている色々な数字がまともであるかどうかを調べるわけです。

これは、書類を提出してもらえば確実に分かることも多いですね。

初期投資については、工場の新設や増設なら工事見積書、設備導入なら設備の見積書も提出してもらえば、初期投資がこれくらいという根拠になりますね。

売上と利益の計画、それと軌道に乗るまでの期間は、予測に頼る部分が大きくても仕方ありません。

しかし、会社が緻密な計画を立てているなら、計画の裏付けをきちんと説明してもらうことで、信頼できる計画かどうかわかるものですよ。

売上と利益の計画について、生産を増やしてどこに売るのか、見込み客はどうなっているかなどを聞けば、計画に織り込んでいる内容を詳しく知ることができますね。

それを根拠に軌道に乗るまでの期間を考えているのでしょうから、その整合性について見ることもできます。

売上・利益計画はまともで、初期投資も適切で、軌道に乗るまでの期間もおかしくないならば、そこから生み出す利益でどう返済していくのか、返済計画はこうあるべきだという型が見えてきますね。

ここで、返済計画について考えていきます。

投資効果と、既存の収益力の両面から考えて、返済能力がきちんと認められるかを検証します。

それと、見落としてはいけないのが耐用年数ですね。

既に話しましたが(第1部でも言及)、返済期間が耐用年数の範囲内に収まっていないと、返済が危なくなります。

耐用年数5年なのに10年返済なら、6年目以降に生産力が落ちたり、完全に壊れたりしたら、その設備がキャッシュを生み出さない中で返済を続けることになりますから。

耐用年数の範囲内で均等分割返済が基本と考えてください。

社長の中には、単純に返済期間は長ければ長いほどいいと考えて、耐用年数以上の長期返済計画を立てていることもよくあります。

それは基本的に認められませんから、注意してほしいです。

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―――返済能力についてですが、もちろん問題なく返済できることが前提でしょうけれども、銀行員からみて問題ない、好ましい返済力のようなものはありますか?

元銀行員:それについては、銀行員と社長で考え方はほぼ同じだと思いますよ。

返済能力があるかどうかを考える時、年間の税引き後利益と減価償却を足して、それが年間の返済額より大きければいいって言いますよね。

ですから、設備投資によって生産力を増強して、その結果得られる年間の税引き後利益と減価償却を足して、それが年間返済額より大きいのが好ましいですね。

(投資後の年間返済額<投資後の税引き後利益+減価償却)

あとは、償還年数もチェックしますが、こんな計算をします。

(示された銀行員の実務マニュアルに書かれていたのは、

{(固定資産等—公表自己資本)+不良化流動資産+本件投資額}÷本件投資後の(税引き後利益+減価償却―社外流出)<10年

との計算式でした)。

複雑な計算ですから、そんなに気にしなくてもいいでしょう。

要するに、希望する設備資金の融資を含めて、その会社の債務償還期間が10年以内かっていうことです。

投資後の利益が返済額より大きくて、債務償還期間も10年以内なら問題ないと考えます。

 

―――工場や設備導入の投資にはお金がかかりますから、当然保全策も厳しいのではないですか?

元銀行員:原則的に担保を取りますね。なにしろ、長期の融資というだけでも不安な要素は多いのに、検証を重ねるにしろ投資の成果は不確定なものですから、銀行のリスクは高いんです。

運転資金なんかと比べると、運転資金は基本的に短期で回収するのに、設備資金は長期の回収でリスクは高いですよ。

ですから、万が一に備えて担保を取っておくのが原則です。

―――融資後の管理も重要になるのでは?

元銀行員:もちろん、融資後の管理も重要です。運転資金にしても、融資して仕入れを増やして、それがしっかり売れているかってモニタリングしますよね。

設備資金は大きな融資ですから、それどころじゃないですよ。もっと慎重にモニタリングしなければなりません。

まず、融資した資金が計画通りに使われたかどうかを把握しなければいけません。

大きな額を融資すると、その中の一部に使途不明金が紛れ込む可能性は高いです。

運転資金に1000万円融資して100万円が流用されるより、設備資金に1億円融資して100万円流用される可能性の方が高いですからね。

そんなことがないように、領収書を提出してもらったり、会社を訪問して確認したりのチェックが必要です。

あとは、投資後の決算のタイミングでは、決算内容と事前の計画を比較します。

もし、計画で予想していた売上や利益に達していないならば、その原因はどこにあるのか調査して、社長からも説明を受けて、早急に対策してもらいます。

 

―――会社基準で考えるよりずっと奥が深いですね。生産に関する設備投資は一般的だから、銀行員も深い見方をするのでしょうか。

元銀行員:そういうわけではないですよ。

融資案件で、慎重になるべきか、積極的に検討すべきかといった区別はありますし、案件の頻度や融資額でも区別はあります。

銀行員の意識でも、区別は生じると思います。

しかし、融資額が小さいからといって、浅い見方をするということはありません。浅いとか深いとかいうのは、相対的な基準ですからね。

一方が浅い、それに対してこっちは深いという。ですから、生産型設備資金が特別に深いというわけではないですし、融資全般で同じことが言えます。

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販売力拡充設備資金

―――では、生産型よりもなじみが薄い、販売力拡充設備投資についてはどうでしょうか。

元銀行員:設備というと、機械や工場のイメージが強いですから、販売力を高める設備といってもピンとこないかもしれませんね。でも、これもよくある投資ですよ。

販売力を高めて売上を増やそうと思ったら、どうしますか。販売ルートを広げていくのが普通ですよね。

そのためには、既存の店舗を拡充したり、新規店舗を出店したりします。

これも、機械や工場への投資とは趣きが違いますが、設備投資です。

新規に出店すれば、商圏は広がって売上アップが見込めます。同時に、多額の費用がかかりますね。そこで、設備資金の融資となるわけです。

―――なるほど。販売を広げるための設備投資を指すんですね。

元銀行員:そうです。当然、返済は長期分割になりますが、生産型とは違うところがあります。

生産型の場合、設備の耐用年数を基準に返済期間を決めましたよね。耐用年数が5年なら返済期間も5年といった感じです。

しかし、新規店舗を出店した場合、そこに耐用年数のような基準はありませんよね。ですから、基本的に5年くらいを返済期間とします。

明確な基準がありませんから、もっと長期の返済になることもありますが、長くて7~10年の返済です。

生産型の場合、耐用年数の間は設備が順調に稼働するでしょうし、売上への貢献度も維持されやすいです。

しかし販売力を高めるために投資する場合、返済期間中、ずっと販売力が維持されるとは限りませんよね。

消費者の好みは変わりやすいですから。それだけに、とりあえず返済期間は5年が基本で、それ以上の長期返済についてはシビアに考えます

あと、融資の実行も違いますね。

生産型では融資を実行して設備の購入代金などに充ててもらう流れですが、新規出店のためには工事があるため、工期に応じて融資実行となります。

店舗そのものを建築することもあれば、空き店舗に出店するにしても内装工事は必要ですよね。

ですから、工期が長い場合には、支払い時期に合わせて融資を分割で実行するのが基本です。

 

―――融資の判断は、どのように進めていきますか?

元銀行員:基本的には、生産型投資資金と同じですね。

会社から投資計画を提出してもらって、社長にも説明を求めて、その投資に見合う売上が期待できるかを見ます。現在における業績推移、同業他社との比較も欠かせません。

販売力拡充設備資金での特有の見方をするのは、立地条件や、商圏の調査でしょうね。

単に機械を導入する場合には、立地条件や商圏といった考え方は不要です。工場の新設ならば、運送の便なども踏まえて立地条件を確認しますが、店舗ほどではありません。

やはり、新規出店するとなると、そこに出店してどれくらいの集客が見込めるのか、そのエリアの競合店はどのようになっているかといったことを考える必要がありますよね。

投資計画と、社長の説明と、銀行員の見識や常識から、妥当性を検討していきます。

 

―――その際の検証について教えてください。

元銀行員:まず、資金調達をして投資するわけですから、これはどんな資金使途にしてもそうですけども、本当にそれが必要かという視点ですよね。

これまでに話したかどうかわかりませんけど、資金使途から融資を判断するとき、「社長がおっしゃることは分かりますが、その必要が本当にありますか?」という目線です。

機械の導入にしても、色々に検証していくことは既に話しましたが、それも「そのように投資する必要がある」という前提に立って、投資効果を見ているんです。

必要ないと判断したら、融資はしませんでしょう?必要ないなら、それは無駄な投資になるんですから。

販売力への投資では、特にその目線が重要だと思います。

  • 新規出店する必要が本当にありますか?
  • 店舗を拡充する必要が本当にありますか?

という目線で必ず考えます。

具体的には、既存店舗に改善の余地はないのか、既存店舗でカバーできないのかということです。

既存店舗に伸びしろがあるうちから、新規に出店して手広く商売を仕掛けるのは順序的に好ましくないでしょう。

第一、新規に出店する本当の理由を考えれば、今の店舗で努力を重ねて、もうこれ以上どうにもならないところまで来たから、新規出店によって更なる成長を目指すわけです。

だから、販売力のための投資では、その必要性を十分に検討する必要がありますし、既存店舗に改善の余地があるとすれば、融資は認められにくいでしょうね。

既存店だけでは限界だから新規出店したいという必然性に加えて、新規出店すれば単位面積当たりの売上高はどれくらい見込めるか、その予測は自社と他社の実績や業界平均も踏まえて妥当であるかを考えます。

その見込みが妥当で、新規出店や増設の効果が得られそうであれば、それも新規出店や増設が必要なのだと言えるでしょう。

あとは、さっきも話した立地ですが、これは簡単に言うなら「そこに出店して、お客さんが本当につかめるか」ということですね。

立地にも色々あって、自社に最適な立地というものがあるはずです。同業他社と自社では、同じ業界で商売していても、最適な立地が異なることがあります。

ですから、会社の計画について説明を受ける時、ターゲットをきちんと意識しているかどうかに注目します。

ターゲットを意識してこそ、予測通りの売上も期待できるわけです。

そして、会社のコンセプトとターゲットを明らかにした上で、その上で銀行員が現地を自分の眼で確認します。

その結果、どうもコンセプトやターゲットとマッチしない気がするというならば、融資は見送ります。

 

―――マーケティングの観点から見ていくわけですね。

元銀行員:そうです。マーケティングについては、会社のほうがプロ目線といえますから、しっかりと計画して、ノウハウも注ぎながら取り組んでいるなら、間違いないことが多いでしょう。

しかし、銀行員の経験や知識にもよりますが、アマチュアあるいはセミプロレベルの銀行員がマーケティング的に見てみて、問題があるような計画は実現性が低いと言っていいでしょうね。

資金使途に銀行員が納得できずに融資を拒否するとき、銀行員は現場を知ないから否定的に見ているとか、プロの意見の方が正しいに決まっているのにおかしい、といった感想を持つ人もいるかもしれません。

しかし、言葉は悪いですけど、バカでも儲けられる事業に投資すれば失敗しないなんて言うでしょう。

それと同じで、銀行員目線でさえ疑問を持ってしまうような案件は、無理して融資するべきじゃないと考えるのが普通なんです。

 

―――銀行の立場を考えない経営者にありがちかもしれませんね。では、新規出店や増設ではなく、改装の場合にはどう考えますか?

元銀行員:改装の場合にも、目的と計画の妥当性で判断します。

改装することで売上をアップするというのが目的でしょうが、もっと具体的に言えば、現在営業しているエリアの中で、改装することでターゲットとなる客層を広げたいとか、ヘビーユーザーを増やしたいとか、つまり競合他社よりも優位に立つことが目的となります。

ですから、競合店に対してどのような観点で優位に立っていくのか、その計画を検証していきます。

当然、計画には競合店とどのように差別化していくのかが織り込まれているべきです。

改装することによって、どこが、どのように良くなって、どのような結果につながるのかということです。

また、改装によって取り扱う商品を大きく変わることがありますが、その場合には変更後も長期にわたって売上可能であることを示してもらう必要があります。

また、商品が変更となれば、仕入先も変わるかもしれませんし、仕入ルートについても確認しておくべきでしょう。

 

―――新規出店と改装とでは、また見方が違うんですね。

元銀行員:そうです。投資によってどうしていきたいかという部分が違いますから。

経験から言うと、新規出店や増設の時、より注意が必要だと思います。

―――それはなぜですか?

元銀行員:まず、改装よりも新規出店のほうが融資額が大きいから、ということもありますが、それ以外にも理由があります。

銀行員としての経験から言うなら、新規店舗の出店のために設備資金を融資してほしいという場合、自信過剰な計画が見られることが多いんです。

他の資金使途よりも過大な売上を見込んでいるようなケースが良くあります。

経験から思うのは、他の資金使途よりも希望にあふれているというか、そういう性質があるからじゃないかと思います。

切羽詰まって新規出店というのではなくて、既存店で儲かっているから、もっと儲かるために新規出店したいというように、これからに大きな期待を抱いているんです。

すると、希望的観測に陥る可能性もあるわけで、計画が自信過剰になることもあるのだと思います。

改装の場合も、そういった側面はあります。改装すればもっと儲かるという前提があって改装するわけですからね。

しかし、売上が落ちてきたから改装で打開しようという動機もあるわけで、そうなると現実を見据えて計画になることが多いです。

ですから、希望をもって投資に臨む新規出店や増設の場合、経験のある銀行員ほどここに注意すると思います。

―――その視点は全くありませんでした。種々の注意を払って投資計画を検証するわけですが、返済計画も検証すると思います。

生産型設備資金でもお聞きしたように、返済力について銀行員目線での見方があれば教えてください。

元銀行員:生産型の考えと、あまり変わりませんよ。投資後の利益で返済できるか、それと債務償還期間を見ます

販売力拡充のために投資すると、販売力が高まりますね。すると、販売コストも大きくなります。それを踏まえた投資効果は、投資後の販売高と販売コストから考えます。

販売高は、もちろん販売量と販売単価を掛け合わせたものですよね。

その会社の実績と業界平均を参考にすれば、突拍子もない計画はおかしいとわかります。

単位面積当たりの売上高と店舗面積を掛け合わせても、販売高は分かりますね。これに立地の良し悪しを考慮すると、もっと正確になります。

次に販売コストですが、商品の仕入高、人件費、光熱費、店舗の賃料、支払利息、税金などを足し合わせて計算します。

販売高から販売コストを差し引けば、設備投資後に得られる税引き後利益が分かりますね。

もちろん、年間の税引き後利益と減価償却を足した数字が、年間の返済額より大きいならば、返済力には問題ないと考えます。

(投資後の年間返済額<投資後の税引き後利益+減価償却)

次に、投資に必要な額を、投資後に得られる税引き後利益で割ります。

これは、税引き後利益を全て返済に充てた場合に、何年で返済できるかを表すわけです。

つまり、設備投資による借入額と、設備投資後の利益だけを見た時の債務償還期間ですね。これが7年以内でなければ返済能力に問題ありです。

生産型と同じく、全体での債務償還期間も見ます。これはよく知られている通り10年以内。

設備投資単体で見て7年、会社全体で見て10年という債務償還期間をクリアしないと、返済力が不十分と言えます。

 

―――もちろん、返済力を確認したうえで保全策も講じますよね?

元銀行員:そうです。長期融資でリスクも高いので担保の取得は絶対、担保が不足するなら、不足分に応じて自己資金を増やしてもらって、融資額を低くしますね。

 

―――他に注意点があるとすれば、融資後の資金管理でしょうか。

元銀行員:資金管理は重要ですが、その前提となる部分から話した方がいいでしょう。

融資後の資金管理ではなく、融資前の資金状況をどう見るかということです。これが、融資後の資金管理とも関係しますから。

まず、販売力拡充設備資金も、生産型設備資金と同じように、必要額のチェックは必須です。

融資実行の前提として、銀行員が必要額だけの融資を心がけるのは、ここまでの話でも分かりますよね。

見積書や工事請負契約書で必要額は必ずチェックしますし、コストは適正水準かどうかも考えます。正しく使われたかどうかもチェックします。

このチェックで必要額を把握したら、そのための資金調達計画もチェックします。

5000万円必要なのに、A銀行から3000万円調達して、ウチからも3000万円というのでは1000万円が余計ですからね。

資金調達計画と調達状況から、融資希望額が妥当かを考えます。

この時、銀行員が目を光らせるのは、調達状況を確認したときに感じる違和感ですね。

新規出店のような大型の投資になると、複数の銀行に支援を依頼することもあり得ます。

融資を申し込んできた会社の業績が好調だとすれば、どの銀行に融資をお願いしていても、取り立てておかしいところはないですよね。

主力以外の銀行に全額融資を依頼することもあるでしょう。

でも、業績が悪化傾向にあるならどうでしょうか。

業績が悪い時に大型の資金調達が必要なら、普通はメインバンクを中心に複数の支援を依頼していきますよね。主力でもない自行に全額の調達を依頼しているとすれば、銀行員は違和感を抱くでしょう。

  • メインバンクから見放されたか?
  • 他の銀行がこぞって支援を拒否しているのか?
  • だからウチに来ているのか?

といった疑いを抱くわけです。

社長は、そんなことはないと言うでしょう。特別に意図があるわけではなくて、偶然そちらに全額融資を希望したと言うはずです。

それが本当だとしても、鈍くない銀行員は疑いますよ。

書類から必要額を把握して、その必要額をどのように調達するのかをチェックして、違和感があれば要注意という流れです。

 

―――融資前に細かく注意を払い、融資すると判断したならば、資金管理が必要ですね。

元銀行員:販売力拡充設備投資の資金管理は、生産型よりも神経を使いますよ。

まず融資実行の流れですが、他の資金使途とは違う部分もあって、神経を使うところです。

新規出店や増設や改装の際、大きな工事をするならば工期は長くなります。工期によって支払い時期も変わりますから、融資もそれに応じて分割で実行します。

なぜ分割で融資するかというと、資金の流用を防ぐためです。

工期が長くて何回かに分割して支払うのに、分割払いの最初の段階でまとめて融資してしまうと、後々の分割払いに使う資金が手元に残ることになりますよね。

それを、正確に分割払いに充てられるなら問題ないのですが、そうならない可能性も大きいです。

仕入れ代金の支払いが厳しいから、工事代金からちょっと拝借ということも起こり得ます。

それで工事代金が支払えなくなったとすれば、まだ投資が完了しないうちから計画が頓挫することになります。

そうならないように、分割払いに応じて分割で融資するんです。

分割払いの時期が短期間に集中しているような場合には、一括で融資することもあります。

しかし、原則的には支払い時期に合わせます。

分割で融資を実行するだけではなく、きちんと工事代金を支払って、他の目的に流用していないかどうかもチェックしますよ。

他の資金使途よりも大きな融資になりますし、分割払いに間違いがあれば大問題ですから、かなり徹底した資金管理になります。

(合理化投資資金と設備更新投資資金は第5部にて)

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まとめ

第4部では、設備投資の中でも特になじみの深い、生産力と販売力を増強するための設備投資について聞いていきました。

製造業ならば生産型の設備投資は必須でしょうし、小売業などでは販売力拡充の設備投資は必須でしょう。

必須となる設備投資にあたり、その資金の融資を申し込むと、銀行員は投資の計画に目を光らせます

かなり注意深く検証していき、計画が信頼できるものであれば、融資を実行するのです。

銀行員が投資計画をどのように判断するかを知っておけば、投資計画の作成に役立つことでしょう。

銀行員が注意する点について重点的に計画・説明すれば、ポイントを絞らずに計画・説明するよりも、納得を得られる可能性は高まるに違いありません。

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