どの会社でも、もっとも深い取引をしているメインバンクを持っているものです。
通常、メインバンクとの付き合いはうまくいくことが多いのですが、特に問題がないにもかかわらず、メインバンクが消極的な対応しかしてくれないこともあります。
積極対応を引き出しやすいことが、メインバンクの最大の特徴です。
それが期待できないならば、メインバンクを別の銀行に変えるという選択肢も考え、メインバンクが資金繰りにもっと役立つ体制を築いていく必要があります。
本稿では、メインバンクの乗り換えについて、元銀行員に話を聞いてみました。
メインバンクが冷たいのはなぜ?
―――時々、社長から「メインバンクが冷たい」という意見を聞くのですが、これはなぜでしょうか。
元銀行員:それは、色々あるでしょうね。
まず、会社の業績や財務に不安があれば、メインバンクに限らずどの銀行でも冷たい反応をするでしょう。
しかし、問題のない会社でも、冷たく扱われることがあります。
特に、一行取引の時には多いのではないでしょうか。
一行取引だと、唯一付き合っている銀行がメインバンクになりますよね。
そこから借りられなければ会社は立ち行かないのですから、メインバンクからすれば扱いやすい相手になります。
そのような場合、融資条件が会社側に不利になることも多く、そういう意味で冷たく感じるかもしれません。
―――中には、業績も財務も問題ないのに、一行取引でもないのに、メインバンクが冷たいという話を聞くこともあります。
元銀行員:それは、割と珍しいケースでしょうね。
普通ならば、冷たくする理由がないでしょう。
そのまま取引を続けていけば、安定して利益につながるでしょうし、他行からシェアを奪われないためには関係を維持するのが賢いやり方です。
それでも冷たく対応するとしたら、メインバンクとして付き合っている銀行や支店の方針として、融資に消極的になっている可能性がありますね。
あとは、メインバンクの担当者や支店長が、会社に対して何らかの良くない感情を抱いているとか。
得に、社長と支店長のウマがどうしても合わないとなると、会社に問題がなくても支店長の決済が下りずに支援を受けられないことがあります。
もちろん、優良先を逃すきっかけになりますから、このようなパターンは珍しいでしょうけれど。

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メインバンクが冷たい時の対応
―――メインバンクが冷たいと感じたら、社長はどうすべきでしょうか。
元銀行員:もし、会社に問題があって、メインバンクが冷たい反応を示しているならば、それは当然のことですから仕方ありません。
しかし、会社に問題がなければ、何らかの手を打ったほうがいいでしょうね。
そもそも、積極的に支援してくれることが、メインバンクの最大のメリットなのですから、それが期待できないメインバンクはあまり意味がありません。
むしろ、うまくいっていないメインバンクからたくさん融資を受けて、たくさんの担保を入れることになりますから、それよりもメインバンクを乗り換えて、資金繰りに役立てていくべきです。
といっても、一行取引ならば複数行取引に切り替えていくだけで随分変わるでしょう。
競合する銀行が出てくれば、メインバンクも意識を変えて付き合っていく必要がありますからね。
―――メインバンクの乗り換えを、ハードルが高いと感じる社長も多そうです。
元銀行員:これまで支援してもらった、という意識があるのでしょうね。
しかし、会社の今後を考えれば、そのままメインバンクとして付き合い続けるのは得策ではありません。
変に恩義に捉われることなく、乗り換えを検討していくべきです。

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メインバンクを乗り換えた会社の例
―――メインバンクを乗り換えた会社の具体例などあれば、ぜひ参考にしたいのですが。
元銀行員:私が乗り換えを担当したA社という会社があります。
この会社は、B銀行をメインバンクにしており、一行取引の状態でした。
当然、融資も、入出金取引も、不動産担保も、全てB銀行に集約されていました。
あるとき、A社からウチに運転資金を融資してほしいと依頼がありました。
話を聞いてみると、売上拡大に伴って運転資金が必要とのことで、資金使途も合理的でした。
決算書を見てみると、業績にも財務にも問題は見られません。
資金使途も合理的ですし、以前から営業をかけていた会社でしたから、融資したいと思いました。
しかし、簡単には融資できませんね。
こういう時、銀行員はちょっと怪しいと考えます。
―――どこが怪しいのでしょうか。
元銀行員:もし、このとき社長が
「一行取引だと不安定だし、取引先銀行を増やしたい。今度、運転資金が必要だからいい機会だと思って」
などと言えば、疑わなかったかもしれません。
しかし、そういう理由でもありません。
普通ならばメインバンクから借りればよさそうなのに、あえて交渉しにくい新規の銀行に依頼してきている。
これはおかしいでしょう。
―――メインバンクから借りない理由を明らかにしてほしいと。
元銀行員:そうです。
実際、まずはB銀行に相談してはどうかとアドバイスしたんです。
すると、もうB銀行には相談したけど、貸してくれないんだと話すじゃないですか。
決算書では問題なし、でもメインバンクが貸さないとなると、ウチが疑うのは
「もしかすると、B銀行だけがA社の危ない情報を掴んでいるのかも・・・」
ということです。
同時に、もし危ない情報もなく、単にB銀行が融資を渋っているだけならば、シェアを奪うチャンスとも考えましたね。
社長の話を聞いていると、どうもB銀行が冷たいだけという印象も受けましたし。

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―――シェアを奪うとは、どのように奪うのでしょうか。
元銀行員:A社の危ない情報があるかもしれないという不安がないわけではありませんが、調べる限りそのような情報は見当たりません。
それに、B銀行の融資残高と担保物件の評価を比べてみると、まだ担保余力があることもわかりました。
担保余力の範囲内ならば、悪い情報があってもメインバンクとして貸すのが普通ですが、それをしない。
延滞もないのに、おかしいと思いましたね。
たぶん、B銀行が消極的なだけだろうという結論に達しました。
そこで、B銀行のシェアを奪いにかかるわけですが、社長と相談して、B銀行の融資を全て肩代わりする方向で進めていきました。
―――となると、A社はB銀行との一行取引から、別の銀行との一行取引になるわけですね。
元銀行員:そうです。
一行取引はあまりよくないですが、B銀行の対応はひどいものだったので、ウチとの一行取引に乗り換えてはどうですかと提案したんです。
ウチをメインバンクにしてから、他の銀行を開拓していけばいいわけですし。
で、乗り換えの流れですが、B銀行からの借入金を全てウチで肩代わりして、担保もウチに移して、担保余力の範囲内で運転資金を融資しましょう、という流れです。
もちろん、B銀行に集約されていたあらゆる取引や定期預金なんかも、全部ウチに移してもらって。
社長個人の住宅ローンもB銀行で組んでいましたから、それも移してもらって。
―――肩代わりはスムーズに進んだのでしょうか。
元銀行員:事務手続きだけですからね。
通常、他行で肩代わりすると、肩代わりされた銀行とは取引がなくなるといいます。
ですから、A社はその後、B銀行との取引が一切なくなりました。
しかし、この場合、悪いのはB銀行でしょう。
肩代わりの話を進めていくと、慌てて運転資金を出すから肩代わりしないでくれって、社長に頼んできたらしいですよ。
社長はウチとの約束を守って、取引を全部ウチに移してくれましたけどね。
―――メインバンクの乗り換えには、そういう流れがあるんですね。
元銀行員:ケースバイケースでしょうが、問題のない会社は銀行にとっていい客ですから、どの銀行でもメインバンクになりたいと思っています。
ですから、メインバンクが冷たいから乗り換えたいという社長は、メインバンク以外で付き合っている銀行の中から、一番付き合いやすいと感じている銀行を選んで、相談してみるといいですよ。

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まとめ
自社に問題がないにもかかわらず、メインバンクから満足な対応が受けられない場合には、付き合いを見直す必要があります。
自社に問題がない以上、他行に相談すれば乗り換え先として名乗りをあげてくれる銀行も多いことでしょう。
そのような会社は、メインバンクとの取引を見直し、乗り換えを検討してみてはいかがでしょうか。