どのような会社でも、取引している銀行のうち、「この銀行がメインバンクだ」と言える銀行があると思います。
しかし、その銀行が本当にメインバンクといえるのか、メインバンクとしての役割を期待できるのかというと、疑わしいケースが少なくありません。
同時に、メインバンクを正しく考えていない会社では、メガバンクをメインバンクにしたいと考えていることもあります。
本稿では、中小企業がメインバンクを選ぶ条件と、メガバンクが適していない理由について解説していきます。
メインバンクの重要性を理解していますか?
中小企業を経営している以上、どこかの銀行とつながりを持っていると思います。
- 何行と取引をしているか
- それぞれの銀行からの融資条件がどうなっているか
など、銀行との関係は会社によって様々だと思いますが、どの会社でもメインバンクはここだと言える銀行があると思います。
では、何を基準としてメインバンクを選んでいるのでしょうか。
- 古くから付き合っている銀行を何となくメインバンクにしている
- 融資条件がいいからメインバンクにしている
- 融資条件は悪いが貸してくれやすいからメインバンクにしている
など、色々な見方をしていることと思います。
しかし、そのような考え方は、メインバンクを選ぶ根拠としては間違っています。
そもそも、なぜメインバンクを始めとした銀行と付き合っているのか。
そう考えた時、それは言うまでもなく会社が経営していくために最も重要な資源である「資金」を供給してもらうためです。
もし、供給が途絶えてしまえば経営は成り立たなくなる会社がほとんどですから、このことを中心に考える必要があります。
したがって、メインバンクを選ぶ基準としてまず考えられることは、
「会社を支援してくれるかどうか」
ということです。
もちろん、金銭面での支援すなわち融資をしてくれるからこそ付き合っているというケースがほとんどでしょうから、会社を支援してくれることを基準に選ぶことは、ある意味で当然と言えます。
しかし、それは平常時における付き合いです。
そこで、この条件をより深く考えるために、
会社が窮地に陥った時に支援してくれるかどうか
を基準として考えてみてください。
このように考えると、現在、自社に本当にふさわしい銀行をメインバンクと捉えられているかどうか、考えてみる余地が出てくると思います。
銀行は平常時、すなわち会社経営が普通にうまくいっていて、返済能力にも問題がないときには、問題なく融資してくれるものです。
貸し倒れにならない相手に融資して、利息を得ることが銀行の商売だからです。
しかし、会社が窮地に陥り、貸し倒れリスクが高まったときには、なかなか貸してくれなくなります。

窮地に陥った会社を助けてくれる銀行を、メインバンクに据えているかどうかによって、会社の生存率は大きく左右されます。
メインバンクを正しく選んでいれば、窮地に陥った時に支援を受けられる可能性が高まります。
融資によって支援を受けられることもありますし、好条件のリスケジュールによって支援されることもあります。
メインバンクが支援することによって、他の取引銀行も足並みをそろえて支援に動いてくれることもあります。
しかし、メインバンクから支援を受けられなかった場合、他の取引銀行も十中八九そっぽを向いてしまいます。
会社経営はいよいよ立ち行かなくなってしまうのです。
ですから、メインバンクを選ぶときには、安易に決めてしまってはいけません。
メガバンクは資金が豊富だから、窮地に陥ったときにも助けてくれるだろうなどと考えるのは間違いです。
また、地方金融機関ならば地域密着だからメインバンクに最適と決めつけるのも間違いです。
色々な選択肢がある中で、それぞれの銀行のメリットとデメリットをきちんと知り、自社にふさわしいメインバンクを選んでいくことが大切なのです。

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どの銀行がメインバンク?
融資を受けている銀行が一行だけというならば、メインバンクをどこにしようかと考えるまでもなく、その銀行がメインバンクとなります。
一方、複数の銀行と取引しているならば、その中からメインバンクに据える銀行を選ぶ必要があります。
メインバンクと考える基準は、既に述べた通り、会社が窮地に陥った時に支援してくれるかどうかです。
しかし経営者は、以下のような間違った考えから、メインバンクを選んでしまうことも多いです。
融資量が最も大きい銀行がメインバンク?
最も多い間違いが、融資量が一番多い銀行がメインバンクだとする考え方です。
もちろん、その会社の支援に積極的な銀行が、最も多くの融資を実行してくれた場合には、その銀行をメインバンクと考えても間違いありません。
また実際に、支援の姿勢が融資量に影響し、メインバンクの融資量が最も大きくなることもよくあります。
しかし、融資量とメインバンクの関係は必ずしもイコールではありません。
なぜならば、窮地に陥った場合に支援してくれない銀行が、たまたま最も多くの融資を出しているケースもたくさんあるからです。
会社にとって、たくさん融資してくれる銀行は自社に好意的な銀行であり、いざという時にも頼れる存在に思えるかもしれません。
しかし、たくさん融資してくれていた銀行が、いざという時にすぐに手を引くことは普通にありますし、逆にそこそこ融資してくれていた銀行が、いざという時に粘り強く支援してくれることもあります。
これには、メインバンクというものをどう考えるかについて、会社と銀行の間に温度差があることが原因でしょう。
会社側から考えると、銀行からの支援を受けられなくなれば一大事であり、特にメインバンクの存在は大きいものです。
しかし、銀行側にはそのような切実な思いはありません。
このため、会社が
「この銀行は一番多く融資してくれるから、万が一の時も支援を期待できるメインバンクだ」
と考えていても、銀行では
「平常時だからたくさん貸しただけで、いつでも支援するわけではない」
と考えているというような、認識のズレが起こってしまいます。
このズレに陥ってしまうと、メインバンクは正しく選べないので要注意です。
最も深く付き合っている銀行がメインバンク?
次に多い間違いが、
「特に付き合いが深いから」
という理由から、メインバンクを決めつけてしまうものです。
一番分かりやすいのが、最も長く付き合ってきた銀行をメインバンクと考えるものです。
しかし、付き合いさえ長ければ、その銀行が強力な後ろ盾になってくれるわけではありません。
長年取引してきた会社でも、貸し倒れリスクが高まれば支援しなくなる銀行はいくらでもあります。
また、付き合った年数にかかわらず、銀行と積極的に付き合ってきたことで、メインバンクと決めつけてしまうこともあります。
例えば、銀行員から相談を受けてキャンペーンに協力したり、取引口座に設定してほしいと頼まれて応じたりすることがありますが、それを通して銀行と良い付き合いをしている気になり、「ここがうちのメインバンク」と考えるのです。
しかし、このような付き合いがある銀行ならば、会社が窮地に陥った時に支援してくれるのでしょうか。
もちろん、そうとは限りません。
銀行員にはノルマがあり、預金や融資を取り扱ったり、様々な金融商品を販売したりする必要があるため、ノルマ達成のために社長にお願いしているというだけのことで、それに応じたからと言って支援が約束されるわけではありません。
もちろん、調子のいい銀行員ならば、ノルマ達成のために「うちがメインバンクなんですから、なんとかお願いできませんか」などと言ってくることもあります。
窮地に陥った場合に支援するつもりがなくても、経営者がその銀行をメインバンクと考えていることを逆手にとって、このような営業をかけてくるのです。
経営者としては、自分でもメインバンクと思っているし、良い付き合いをしたいと思っていますから、銀行員に協力します。
しかし、そのようなやり取りは銀行の担当者と経営者の間だけで終わるもので、銀行の上層部に対して好印象を及ぼすことはありませんし、支援につながるわけでもありません。

あくまでも、メインバンクの条件は困った時に本当に頼れることであり、そのためにはリスクを負ってくれることなのです。
もし、これまでメインバンクと考えていた銀行が、「会社が窮地に陥った時に支援してくれる」というメインバンクの条件に当てはまらないならば、今後の取引を見直すべきです。

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中小企業のメインバンクにメガバンクが向いていない理由
さて、メインバンクの正しい考え方、そしてメインバンクを選ぶ際の条件は以上の通りですが、ならばどのような銀行を選ぶべきでしょうか。
これを考える時、メガバンクをメインバンクに選びたいと考える人が少なくありません。
間違った考えによって、メガバンクを選ぼうとするのです。
例えば、上記にも書いた通り、メガバンクは資金力があるからという理由でメインバンクに選ぶことがあります。
確かに、メガバンクはたくさんの資金を持っており、中小企業に少し貸すくらい簡単そうですし、窮地に陥った時にも助けてくれそうな気がします。
しかし実際には、以下のような理由から、メガバンクは中小企業への融資に消極的です。
大企業中心で動いている
メガバンクには融資できる資金が多いことは間違いありません。
このため、大企業に大型の融資をすることも可能であり、そこから大きな収益も期待できます。
大企業が10億円貸してほしいと依頼した場合と、中小企業が3000万円貸してほしいと依頼した場合を比較してみれば、銀行としては大企業に貸した方がより大きな利益が期待できます。
また、基本的に融資の審査というものは、融資する金額によって審査の手間が変わるわけではありません。
10億円でも、1億円でも、1000万円でも、審査にかかる手間は同じです。
このため、効率よく稼ぐためには、融資額の大きな案件に注力したほうが良いと言えます。
さらに、メガバンクでは、そこで働く銀行員も多いですが、融資担当者一人当たりが抱える顧客は中小の銀行より多くなっています。

皆さんが思っている通り、メガバンクは融資に回せる資金をたくさん持っています。
しかし、だからと言って中小企業に融資してくれやすいということはなく、むしろ資金力があり、大企業への融資依頼にも応えられるだけに、中小企業の依頼にあまり取り合ってくれないのです。
プロパー融資を狙いにくい
中小企業は、一般的に経営基盤がぜい弱です。
だからこそ、いざという時に頼れる銀行をメインバンクにしておく必要があります。
また、いざという時のためにという意味では、できるだけプロパー融資を狙っていくことが大切です。
融資の形態には、銀行が100%のリスクを負って融資を出すプロパー融資と、信用保証協会の保証をつけることにより、貸し倒れの際の保全を図る保証付融資とがあります。
保証付融資を利用すれば、銀行が負うべきリスクがかなり抑えられるため、融資してもらえる可能性が高まります。
しかし、信用保証協会では、保証先1社あたりの保証上限額を決めており、その上限以上の保証はしません。
したがって、融資を引き出しやすい保証付融資は、できるだけ保証枠を使わないようにしておき、新規の銀行を開拓するときや業績・財務が悪化したときなど、銀行から融資を受けにくいときのために残しておくべきです。
したがって、中小企業が銀行から融資を受ける際には、できるだけプロパー融資を引き出すように意識する必要があります。
では、メガバンクからプロパー融資を引き出せるかどうかというと、これは非常に難しいでしょう。
理由は上記の通り、メガバンクは大口顧客を中心に動いているからです。
基本的に中小企業への融資に消極的なのに、それがプロパー融資となればもっと消極的になり、融資されない可能性が非常に高いのです。
経営困難の時に支援を受けにくい
以上のような理由から、メガバンクからはそもそも融資を引き出すのが難しいと言えます。
幸い融資を引き出すことができて取引関係になったとしても、メガバンクをメインバンクにするのは考え物です。
なぜならば、すでに書いた通り、メインバンクは窮地に陥った場合に支援を仰ぐべき存在であるのに、メガバンクにはそれが期待しにくいからです。
窮地に陥った会社を支援する場合、会社の立て直しに付き合っていくことになるため、銀行は非常に手間を取られることになります。

なぜならば、その会社と同規模以上の顧客を新規に開拓するのは難しいからです。
しかし、規模が小さい会社となれば、支援しないのが普通です。
メガバンクは規模が巨大であるために、中小企業などの小口の融資先がつぶれたとしても、ほとんど影響がありません。
むしろ、小口の融資先に手間を取られて業務効率が落ちるよりは、支援せずに早々に回収に乗り出した方が良いと考えることも多いのです。
このように、メガバンクをメインバンクにした場合、メインバンクに最も期待する「困難な時の支援」が受けられない可能性が高いのです。
これも、中小企業のメインバンクにメガバンクが向いていない理由です。
銀行員が真剣にならない
上記ように、メガバンクは中小企業への融資にあまり取り合ってくれませんし、経営困難な時の支援も受けにくいです。
これは、銀行の方針がそうであるというだけではなく、融資にかかわる銀行員の態度も大きく影響しています。
中小企業への融資に対し、融資にあたる銀行員が真剣ではないのです。
ここで言う中小企業とは、年商5億円未満の会社を指しています。
しかし、それ以上の年商がある中小企業ならば融資を受けられるということでもありません。
メガバンクが真剣に融資を考える会社は、一般的に年商50億円を超える会社です。
なぜ年商50億円を超える会社でなければ真剣に向き合わないかと言えば、融資規模が小さいことにより、銀行員の成績に反映されにくいからです。
銀行では、
- 銀行員を融資額
- 回収額
- 預金額
- 投資信託販売額
- 保険販売額
などよって評価する制度を取っています。
成績のよい支店や銀行員は、年に1~2回の表彰を受けることとなり、それが昇進などにも大きく影響します。
そのため、評価の悪い銀行員への風当たりは強くなります。
さらに、それぞれの評価項目のウェイトは、景気によって変動します。
景気の良い時は、会社の支払能力も高いですから、たくさん融資することで評価が高まります。
逆に景気が悪い時は、不良債権を抱えないために回収を進める必要があるため、たくさん回収したほうが評価は高まります。

特に、景気が悪化して支援が必要になったときは悲惨です。
景気が悪化した時には、銀行の評価制度では回収が高ポイントとなりますから、銀行員は積極的に回収を図ります。
経営基盤な中小企業は、経営状況を景気に左右されやすく、景気悪化の影響も大きく受けやすいです。
中小企業だからこそ、景気悪化によって支援が必要となるのですが、そのタイミングで回収を受けてしまう可能性が高いのです。
メガバンクにメリットはあるか
では、中小企業がメガバンクをメインバンクにするメリットは全くないのかと言えば、そうとも言い切れません。
まず、メガバンクは大きな取引をたくさんしており、付き合いも広いです。
当然、多くの情報が集まります。
このため、メガバンクと良い付き合いをしていく中で、会社経営に役立ちそうな情報、例えば、顧客になってくれそうな会社の情報や、評判の良い専門家の情報なども教えてもらえることがあります。
したがって、メガバンクを味方につけられるだけの会社であれば、メガバンクをメインバンクに据えるのも良いでしょう。
しかし、中小企業においては、あえてメガバンクをメインバンクに据える必要はあまりないと言えます。
経営者の中には、メガバンクをメインバンクに据えることによって、取引先などに対する信用を高められると考えている人もいます。
確かに、一昔前ならばそのようなメリットもありましたが、今ではそれほどメリットにはなりません。
融資を受けている銀行を重視して商売の相手を選ぶようなことは、あまりなくなっているのです。

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メガバンクより地方金融機関を
以上のことから、中小企業がメインバンクを選ぶ際には、メガバンクを選ぶ必要はありませんし、却って逆効果になることも多いです。
むしろ、メガバンクよりも地方金融機関のほうが、中小企業のメインバンクとしては適しています。
なぜならば、地方金融機関はメガバンクと比べて、融資できる資金が少なく、顧客も少ないからです。
当然、大きな融資に対応することができず、大企業は地方金融機関ではなくメガバンクに融資を依頼することとなります。
これにより、地方金融機関の顧客は中小企業がほとんどとなり、顧客の経営規模によって融資の姿勢が変わることがなくなります。
さらに、資金量に制限があるからこそ、リスクを分散するために、中小企業へ比較的小口の融資を積極的に行います。
融資先の会社が窮地に陥った場合にも、できるだけ倒産しないように支援するのが普通です。
以上のように、地方金融機関はメガバンクに比べて、中小企業に親身に対応してくれる傾向があります。
中小企業においては、少なくともメガバンクより地方金融機関をメインバンクにした方が良いことが分かるでしょう。

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まとめ
本稿では、メインバンクを選ぶ際の条件と、メガバンクがその条件に適していない理由を解説してきました。
メインバンクを正しく選ぶことができなければ、窮地に陥った際に支援してくれない銀行に頼らざるを得なくなります。
当然ながら、支援を受けて活路を見出すことも困難となり、経営破綻の可能性が高まります。
そうならないためにも、メインバンクは正しく選ぶことが大切です。
中小企業ならば、少なくともメガバンクをメインバンクにすることは間違いなのです。