当サイトでは、元銀行員へのインタビュー記事をしばしば掲載しています。
現場のリアルな意見は、経営者が融資交渉をするうえで非常に参考となります。
今回、筆者は「こんな社長には貸したくない。どんな社長?」という質問を引っ提げてインタビューを行いました。
銀行員が貸したくないと考える社長像がいくつか挙げられたので、紹介していきたいと思います。
融資判断は定量的・定性的の両面から
銀行は、会社に融資を出すことによって、元金とともに利息を得ることによって利益を出しています。
また、融資そのものだけではなく、融資によって会社と取引を深める中で、送金や為替などの手数料収入も重要な稼ぎとなっています。
しかし、利息や手数料などによって利益をあげていくことは、融資先の会社がしっかりと返済してくれることが大前提です。
融資先が返済不能となり、貸し倒れとなってしまった場合には、大きな損失が発生することとなります。
それまでの取引で得られた利息や手数料などの収入よりも損失が上回る可能性も高いです。
したがって、銀行の収益モデルから考えて、元金がきちんと回収されたうえで利息や手数料の収益が発生しなければ、銀行の事業は成り立ちません。
だからこそ、銀行が融資を判断するとき、判断の根拠の大部分は「予定通りに全額を回収できるかどうか?」ということに尽きます。
重要なのは業績・財務だけではない
とはいえ、全額返済できさえすれば融資を受けられるとは限りません。
必要条件・十分条件という言い方をすれば、
「財務や業績を見て、貸し倒れに陥るリスクが低いと判断できる。返済力は高い」
ということは、いわば融資するための十分条件です。

銀行が業績や財務を判断するのは、直近2~3期分の決算書です。
それは、あくまでも現時点での返済力であり、将来的な返済力の保証にはなりにくいからです。
将来的な返済力は、決算書などの定量的な情報から判断できることが限られています。
経営者の資質や後継者の資質、会社を取り巻く環境といった、数値化されない定性的な情報からも判断していくこととなります。

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経営者の資質を重要視する

今はうまくいっている会社でも、経営者の資質にどこか問題があれば、将来的に業績や財務に問題が生じるでしょう。
返済力が低くなり、融資したものが回収不能になる可能性があります。
銀行員は、これまでたくさんの会社に融資し、回収してきた経験から、「このような経営者に融資するのは危ない」という感覚を持っているものです。
したがって、業績や財務が良く、現時点では返済力も高く、融資のための十分条件を備えている会社でも、経営者の資質といった定性的な面で問題があれば、融資が受けられない可能性は大いにあるのです。
逆に言えば、せっかく融資を受けられる状況にある会社は、そのような定性面での問題も取り除いていくことによって、きちんと融資を受けていくことができます。
経営者の資質については、銀行員が特に重視する点です。


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銀行員が貸したくない社長とは
では、経営者のどのような言動が問題しされ、融資に不利に働くのでしょうか。
当サイトでは、銀行交渉に不利にならないようにこう振る舞うべき、といった内容にも触れてきましたが、今回改めて
「こんな社長には貸したくない。どんな社長?」
というテーマで元銀行員にインタビューし、気を付けるべき点を具体的に聞いてみるとしました。
話ができない社長には貸さない
―――「こんな社長には貸したくない。どんな社長?」というテーマでお話をお伺いしていきますが、このように聞かれて真っ先に思い浮かぶのはどういう社長でしょうか。
元銀行員:「貸したくない社長」ですか。
それはいろんなことがいえると思いますし、銀行員によって「この社長はだめだ」という感覚がそれぞれあると思います。
「こんな社長は苦手、関わりたくない、融資も見送りたい」といった感じです。
私なら、「話ができない社長」が一番に挙げられるかもしれません。
―――「話ができない」というと、具体的にはどういうことでしょうか。
元銀行員:「話ができない」といっても、いくつかの意味があると思います。例えば、
- 自分のことばかり話して、一方通行だから話ができない
ということもあれば、
- 考えていることがよくわからなくて話ができない
ということもありますね。
話が一方通行のケース
―――話が一方通行というと、社長に限らず普通に接していても話しにくい相手ですね。
しかし、特に社長という職業柄、バイタリティにあふれていて、自社のことを猛烈にしゃべる社長が多いというイメージもあります。
特に創業社長などはそうでしょう。
元銀行員:ワンマン社長・創業社長は、確かにそのイメージの人が結構いますね。
しかし、社長といっても色々いて、外向的な人もいれば内向的な人もいます。
タイプは様々ですね。
―――どのタイプが融資に不利、ということはありますか?
元銀行員:それはありません。どんなタイプの社長でも、しっかり業績を上げていて、資金繰りができていて、将来の予測ができているなら、基本的に貸したいと思います。
それをしっかり自分の言葉で伝える必要がありますが、となると外向的な社長、とにかく積極的に喋る社長がいいと言われることもありますが、そうとも言えないと思います。
確かに、外向的でたくさん喋る社長は、ある意味銀行員にとって話しやすいんです。
銀行員は、会社の現状を知りたい、社長の人柄を知りたい、話が聞きたいと考えて面談していますからね。
たくさん話してくれるほうが、情報を集める立場としてはありがたいです。
しかし、悪く言えば一方的に喋り倒す人もいるわけで、それはちょっとうんざりするというか、飽きてしまうというか、そういう気持ちになることもあります。
外向的でいろいろ喋ってくれるのは良いのですが、やはり会話はキャッチボールですからね。
―――なるほど、外向的は情報収集をしやすい反面、キャッチボールにならないならば問題ということですね。
内向的な場合も、キャッチボールは難しくありませんか?
元銀行員:それは問題ないと思いますね。いくら内向的といっても、融資交渉の場に出てきているのですから、まともに話ができないということはありません。
それに、外向的でたくさん喋ることが、交渉上手だとは思いませんよ。
内向的で、それほどたくさん喋らなくても、必要なことを手短に、的確に喋ることができるならば、それはとても交渉上手だと思いますね。
だって、必要なことを的確に話すことができれば、思わぬ失言もなくなるでしょう。
今の実績の根拠をしっかり話して、それを踏まえて将来的にどうなっていくかを説明できればいいんです。足りないところは、銀行員の方から聞いていきますしね。
中には、喋ることに苦手意識があって、内向的になっているという社長もいます。
そういう人も、明快な説明をあらかじめ考えておけばいいと思います。
色々喋ったほうが融資に有利だという幻想があるから、喋らなければと焦ってしまうのだと思いますが、決してそうではないと考えて、必要なことだけ話すように意識すればいいでしょう。
不安ならば、説明資料を作っていって、銀行員に渡しておけば無難でしょう。それを一緒に見ながら説明していくこともできますし。
―――銀行員にとっても、それはスムーズに話ができそうですね。内向的でも問題ないと聞いて、安心する社長は多いと思います。
では、外向的すぎて、話が一方通行の社長の問題点は、具体的にはどういうところでしょうか。銀行員がうんざりすることだけではないと思うのですが。
元銀行員:もちろんそうです。さっき言ったように、喋り倒されてうんざりするのはもちろんですが、それよりも大きな問題があります。
それは、自分のことばかり話を聞いてほしいということは、つまり「我が強い」ということです。
一方的に喋る態度から、自己中心的な性格が見え隠れするんです。自己中心的な社長は、正直あまり付き合いたくない相手ですね。
例えば、融資交渉というのは、会社と銀行の間でうまく落としどころを見つけて融資条件を決めるものですが、自己中心的な社長だと、自社の都合ばかりゴリ押しして、融資条件に不満を言うこともあります。
ほかにも、自己中心的な話し方だからこそ、自社のいいところばかり話して、無意識に悪いところに触れないこともあります。
銀行員の分析力は甘く見たらいけませんよ。
意外と、会社の弱点を的確に把握していることが多いですから、良いところばかり話されると、悪いところを隠しているという印象を持ってしまします。
悪いところを話さなければ、悪いところを改善するための話も出てこないわけですから、融資することは難しいと感じてしまいますね。「そんな社長には貸したくない」と思います。
―――先ほど、内向的な社長には失言も少ないという話が出ましたが、一方的にしゃべる社長は失言も多いでしょうね。
元銀行員:失言は多いですし、それも貸せない大きな理由になることがあります。
一方的に喋り倒す社長の中には、余計なことまで喋ってしまって不利になるということも多いです。
別の銀行の文句を言ったり、取引先のことを愚痴ったり、社員のせいにしてみたり、色々ありますけれども、そのような失言はマイナスです。
必要なことだけ喋ろうと意識していれば、余計なことは喋りません。
でも、色々話してやろうと考えて、実際に色々話していると、なんとなく「エンジンがかかってくる」という感じになって、余計なことまで喋ってしまうことは多いですよね。
悪気はないはずですが、それでも貸したくない気持ちにさせられますね。
―――なるほど。失言をしないように、また一方的に喋ってしまわないように、外向的な社長は少し抑え気味を意識したほうがよさそうですね。
元銀行員:それがいいでしょう。外向的でも内向的でも、どんなタイプの社長でも、会話している相手のことも考えて、コンパクトに話すことを心掛ければ問題ないと思います。

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考え方がよくわからないケース
―――もう一方の、「考え方がよくわからない」というのは、どういう社長でしょうか。
元銀行員:考え方が分からないというのは、腹の底が読めなくて不気味であるとか、考えが深すぎてとても理解できないということではありません。
考え方がコロコロ変わって、「この社長はこう考えて事業を進めているんだな」という捉え方ができないことです。
考え方がブレるとでもいいますか、そういう社長には貸したくないですね。
例えば、決算期の説明で、
今期は商品Aに力を入れて、売上はこれくらいを計画しています
と言っていたのに、少したってから会ったときには
やっぱり商品Aでは計画達成が難しいので、商品Bに力を入れたほうがいいと思います。そうすれば、予定通りの売上を達成できそうです
と言っていたらどうでしょうか。ひどい社長だと、
商品Bに注力するのもいいですが、これからは商品Cの需要が伸びそうなので、これも手掛けていきたいと思います。つきましては、増加運転資金の融資をお願いしたく・・・
なんて言い出します。
―――短期間で方針が変わりすぎるということですね。
元銀行員:そうです。これが、数年を通して方針が変わっていくなら、それは環境の変化に最適な対応をしていくために必要なことだと思います。
また、方針通り商品Aが順調に売上につながっていて、そのうえで「商品Bの需要も急に伸びてきたから、こちらも手掛けたい」というならば、それもまた理解できるでしょう。
しかし、最初の方針をなげうって、1年間の方針が数か月で変わったり、数年越しの計画が1年そこらで変わったりしているならば問題です。
最初に打ち出した方針が悪かったからこそ、変更に迫られているわけですからね。
しかも、そのような不完全な方針を、決算説明で自信満々に話しているんですから、これはもう「社長の能力不足」としか言いようがないでしょう。ですから、ブレる社長は信用できません。
経営方針が信用できないだけではないですよ。色々な面で信用できないということです。
経営方針がブレるのと同じように、返済方針もブレるかもしれませんね。
借りるときは「その条件で必ず返せます」と自信満々に約束しても、返済期間中に「やっぱり返せません」となるかもしれません。
―――しかし、ブレている自覚がない社長も多いのではないでしょうか。
元銀行員:その通りで、コロコロと変わっていると自覚している人は少ないですね。
この自覚があれば、普通にお付き合いできることも多いです。方針が変わっていることを自覚していて、
以前の説明では~~~でしたが、*****という想定外の変化が起こっています。早急に対応するために、主力商品をAからBに変更することとなりました。在庫調整や減産の必要もあり、運転資金の融資をお願いしたいのですが・・・
などと言ってくれるならば、銀行も交渉する気になりますし、社長の考え方がブレて困るという見方もしません。もちろん、それが繰り返しになると困りますけれど。
しかし、方針がコロコロ変わっている社長に限って、そうは考えないんですね。
社長は、考え方がコロコロ変わっているのではなくて、状況に応じて柔軟に対応しているくらいに考えています。
だから、そんな柔軟な自分は評価されると思うのか、方針変更も自信満々に話すんです。
―――それもある意味、自己中心的ですね。独善的という感じがします。先ほど聞いた、「一方通行で自己中心的な社長」は、考え方がブレる傾向があるのでは。
元銀行員:自己中心的だから考え方がブレるとは言いません。しかし、自己中心的であるがゆえに、方針がコロコロ変わっても「会社のために最善の判断をしている」と思い込むケースは多いと思います。
対応している銀行員は、「この前聞いた話と違うな」と思っていても、社長はワーッと喋って自己満足してしまうんですね。
このような社長は、その場の勢いで、その場しのぎのことを適当に喋るというイメージを持たれます。
そういう社長に限って、経営が悪化したときにも実現性の低い計画を自信満々に喋ったり、希望的観測で経営が回復すると啖呵を切ったりするんです。
話が通じる社長なら、計画に色々疑問を投げかけたり、アドバイスしたりすることもありますけど、話が通じない社長には「そうですか、そうですか」と話を聞いておいて、融資謝絶となることも多いですよ。
融資を断られると、社長は「好感触だったのに、なぜ」と狼狽するのですが、その時点でも問題点に気づいていないのですから、もうお手上げといった感じです。
打っても響かない社長も注意
―――なるほど。話が一方通行ということと、考え方がブレていて掴めないということは、かなり共通した特性と言えますね。
元銀行員:ただ、考え方が分からないというのは、別の意味でも問題になることがあります。
考え方がコロコロ変わるからわからない、しかもそれを問題と思っていないというのは、社長自身がブレてしまって話が通じないということですね。
しかし、社長が一方的に喋るわけでもなく、社長がブレまくっているわけでもなく、それでいて話が通じないこともあるんです。
―――というと?
元銀行員:融資というのは銀行と会社の商談という側面がありますよね。会社は融資を受けて資金繰りを回す、銀行は融資をして収益につなげるという、双方にメリットのある商談です。
商談である以上、お互いに話した内容がうまく調和する必要があります。「打てば響く」がということですね。
社長が話した内容や意図が銀行員によくわかる、銀行員が話した内容も社長が良く汲み取る、それでお互いの納得できるところで融資を出すわけですね。
社長が一方的に喋りすぎると、社長の話した内容が銀行員に響きません。この逆もあるわけです。
例えば、銀行員が知りたいことを質問してみても、社長が不利になることを言うまい、探られまいと考えてなかなか答えてくれないことがあります。
そうなると、銀行も融資の判断材料が十分じゃないですから、どうしても融資しにくくなります。
融資できるだけの会社であっても、なんだかちぐはぐなやり取りになってしまって、融資謝絶になることもあるんです。
ほかにも、銀行員のアドバイスが響かないこともありますね。もちろん、銀行員は経営のプロではありませんから、アドバイスには限界があるでしょう。
といっても、財務や業績を銀行員目線で見て、「ここをこうすれば融資を検討しやすくなる」といったアドバイスもあるわけです。融資を受けたいと思って交渉に来ているのですから、無駄なアドバイスではないと思います。
しかし、このアドバイスを聞いたようで聞いていない社長もいるんです。
そのような社長には、「あまり響いていないな」という感じを受けますが、実際にアドバイスが反映されていることは少ないです。
このような社長も、融資しにくい社長ですね。
―――これは、どのようなタイプの社長が気を付けるべきことでしょうか。
元銀行員:内向的な社長や、不安や緊張を過度に抱いている社長は気を付けるべきでしょうね。
といっても、外向的な社長でも、有利な部分はどんどんしゃべって、不利な部分ははぐらかすことがありますから、その点ではあまり変わりません。
要は、銀行の知りたいことを教えてくださいということです。悪い点を話してもいいんですよ。
それが致命的な問題ではなくて、改善をしっかり考えていればいいんです。
―――悪い問題に触れない、はぐらかそうとする、うそをつく、色々あると思いますが、どれが一番問題でしょうか。
元銀行員:打っても響かないという意味ではどれも問題ですが、嘘をつくのは論外ですね。
もちろん、まったくの嘘をつく社長は少ないですが、嘘に近いことをする社長はいますよ。
自分が悪いのに他人が悪いといって言い訳をするようなパターンです。
たまにいるのですが、部下に責任を転嫁する社長は大問題ですね。
そんな社長には貸したくないと思います。
問題としっかり向き合わず、社員に任せてしまうような社長は、言ってみれば問題の処理が下手くそと思われても仕方ありません。「危機対応能力がない社長」・・・どうですか、貸したいとは思えないでしょう?
どんなに優秀な組織でも、社長でも、間違えることはあります。それを素直に認めて、受け止めて、考えていける社長が優秀な社長で、銀行が貸したい社長なんです。
あと、社員などの「自分以外の誰か」のせいにする社長は、融資しなかった時に、取引先に「あの銀行に貸し渋りをされた」なんて騒ぐことも多くて、迷惑することもあります。
そういう意味でも、できるだけ付き合いたくない、融資したくない相手と言えます。

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まとめ
本稿では、融資交渉の際の社長の話し方にスポットを当てて聞いていきました。
融資交渉の面談やその他の場面で、社長と銀行員が話す機会は多いものですが、そのような場でも銀行員は社長の資質を見ています。
本稿で挙げられたように、銀行員は次のように考えています。
- 一方的に喋る社長には貸したくない
- 考え方がブレる社長には貸したくない
- 打っても響かない社長には貸したくない
どれも当たり前のことかもしれませんが、今一度反省してみて、銀行員との付き合いに活かしてみてはいかがでしょうか。
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