融資交渉の最強カード!?他行肩代わりを材料に一石三鳥の融資を引き出す

資金繰りを改善する方法の一つに、現在の借入れを他行で借換えることで、返済の負担を軽くする方法があります。

銀行側から見ると、これを「借入金の肩代わり」と表現します。

肩代わりをすることで、自行の融資シェアを大きく伸ばせるため、良い会社の借入金を肩代わりしたいと考える銀行は多いものです。

しかし、肩代わりされる側の銀行からすれば、大きくシェアを奪われることになるのですから、たまったものではありません。

したがって、他行の肩代わりを防止するためにも、会社に様々なアプローチを仕掛けてきます。

これが、融資交渉の強力なカードとなります。

本稿では、他行肩代わりを融資カードとすることについて、銀行内の稟議を含めて解説していきます。

他行肩代わりは銀行にとって脅威

銀行が非常に嫌うものに、「他行の肩代わり」があります。

これは、会社が既に受けている融資を、融資期間や金利で優遇してもらえる他行の融資に切り替えることです。

その会社との取引が続いていけば、資金需要に応じて融資を実行し、長期的に利息収入を稼いでいくことができます。

会社が成長していけば、融資額は大きくなっていきますし、融資以外にも預金その他の取引を通じて手数料収入を得られる可能性もあり、収益の機会が増えていきます。

業績が悪く、先行きを危惧している会社ならば、他行が肩代わりすることにあまり脅威を感じることはないでしょう。

むしろ、貸し倒れリスクを他行が被ってくれてありがたいと考えるかもしれません。

しかし、その会社の経営が順調であるならば、他行にシェアを奪われ、収益機会を失うことは、銀行としては何としても避けなければなりません。

特に肩代わりでは、既存の融資を一本化することで会社の資金繰りにメリットを期待するものですから、融資シェアの一部を失うよりも、シェアを一気に失ってしまう可能性が高いです。

このような理由から、銀行は他行の肩代わりを非常に嫌うのです。

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どのように交渉してくるか?

では、他行の肩代わりを防止するために、銀行員はどのように提案してくるのでしょうか。

ここでは、一行取引の堅調な会社が、既存の取引銀行であるA銀行よりも良い条件で、B銀行から肩代わりを提案されているケースを考えてみます。

この会社では、手元資金も豊かで資金需要は乏しく、新規事業や設備投資などによる資金需要の気配もなく、ごく落ち着いた取引関係にあります。

しかし、B銀行が割り込んでくることを危惧したため、A銀行の融資担当者は会社を訪問して融資を提案することとしました。

担当者「最近、調子はどうですか。変わらず堅実な経営をされているようですが。」
経営者「手堅くやっているつもりだけど、上手くいっているという意識はそこまでないですよ。」
担当者「そのようには見えませんが、見えない苦労もあるのでしょうね。・・・ところで、以前、B銀行さんから融資の提案を受けているとお聞きしましたが、その後どうでしょうか。」
経営者「最近も融資の提案をしてきてますよ。先週も電話で提案されたんですけど、うちはA銀行さんで全部やってるからって、断ったところでした。」
担当者「それはありがとうございます。しかし、御社を担当している私としては、なんとなく落ち着かない気もします。」
経営者「A銀行さんにはお世話になってますから、そこは心配ないです。筋は通します。」
担当者「そう言っていただけると心強いです。ところで、こちらをご覧ください。現在、御社にはこのような条件でお借りいただいていますが、融資期間も相当に経過して、残高も随分と減りました。追加融資を受けられてはいかがでしょうか。良いお付き合いができていることですし、前回よりも低い金利で対応させていただきたいのですが。」
経営者「ありがたい提案だけど、資金繰りには困っていないんです。今回は遠慮させてください。」
担当者「それは承知の上でのご提案です。現在の借入は、完済まであと1年を切っています。完済いただくことはありがたいのですが、その後空白期間が生じるよりも、私どもはお付き合いを継続したく思っております。何とかご検討いただければありがたいのですが。」
経営者「あれ、イメージしていたより返済が進んでるんですね。じゃあ、融資してもらいましょう。日頃のお付き合いもありますし。金利は、少し頑張ってもらえればと思います。」
担当者「ありがとうございます。上席にも話を通しますので、金利については心配いりません。ぜひ、ご検討ください。」

この例では、融資担当者は会社の状況をうかがいつつ、何とか融資できないか探っているのが分かります。

資金をそれほど必要としていない会社ですから、利率を良くすることで融資を提案することで、借入れをお願いしているのです。

融資残高がそれほど残っていない状況ならば、他行であるB銀行も肩代わりしやすいでしょう。

しかし追加融資を出し肩代わりが必要な金額を大きくすることで、B銀行が肩代わりするハードルがいくらか高くなり、牽制につながります。

また、この社長が義理堅い性格であることもポイントです。

銀行が利率を下げて追加融資をすることで、より密接な関係を意識するようになるでしょう。

それ以上の低利でB銀行が再度肩代わりを提案してきても、「いつも良くしてくれているA銀行を裏切れない」と考えて、断る可能性が高いと思われます。

他行の肩代わりを防止するときには、融資担当者はこのように動くのです。

当然、融資条件をかなり優遇する必要がありますから、それについて上司とも協議して、稟議を組成していきます。

例えば、融資担当者と上司の間では以下のように協議されるでしょう。

担当者「以前から、B銀行の融資提案を受けていることは知っていました。
社長は乗り換えるつもりはないと言っているのですが、現在の残高はかなり減っていますし、B銀行が肩代わりを提案する可能性も十分にあります。
もしかすると、既に肩代わりの提案を受けているかもしれません。
社長が肩代わりを断ったとしても、その後が心配です。1年以内に完済の予定ですが、完済すれば社長は当行に対して責任を果たしたと考えるかもしれません。
そのタイミングでB銀行が好条件で融資を提案すれば、とりあえず借りるということも考えられます。
義理堅い社長ですから、一旦融資を受ければB銀行にも特別な意識を抱くことになるでしょう。それは避けるべきです。」
上司「うん。今、取引はウチだけだからね。あの社長は大丈夫と思うけど、他行が入ってくる可能性はできるだけ潰しておかないと。先手、先手で対処してくれよ。」
担当者「ちょうど今日、その先手を打ってきたところです。
足元の業績は引き続き堅調ですし、取引振り(融資以外の取引)も当行で全て請け負っています。融資シェアと取引振りの両面でB銀行を牽制するためにも、新規融資を出すべきと考えます。」
上司「それで、融資を取り付けてきたんだね?」
担当者「そうです。利率を引き下げることを条件としましたが、追加で借りてもいいとのことです。」
上司「よし、条件は君に任せる。進めてくれ。」
担当者「分かりました。それと、もっと支店ぐるみで囲い込みを図っていきたいのですが、社長とお会いいただけませんか。来週、詳しい融資案内をするつもりです。その時にでも同席いただきたいのですが。」
上司「そうだね。初回融資の面談以来、社長とは会っていないし。僕が社長に合わせるから、アポ頼むよ。」

担当者と上司の協議でも、このような流れが多いようです。

担当者から上司に現状報告と他行阻止のアイデアを提示し、稟議組成の基本的な枠組みを作ります。

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稟議書でも積極対応を促す

通常の稟議では、支店内で融資の可否を慎重に検討していくことが目的です。

したがって、担当者が作って支店内で回覧する稟議書には、会社の現状や担当者の所見を記載し、複数の回覧者の判断を経ていくこととなります。

しかし、他行の肩代わりを阻止する目的での融資稟議では、ちょっと様子が違います。

融資しても問題ないことは分かり切っている会社への融資であり、むしろ融資を実行しなければ他行が割り込んでくる危険性があるのです。

したがって、担当者が稟議書を作る際には、

  • 融資対象となる会社の近況
  • 他行の動向
  • 自行のとるべき対処

などについて特に記載し、融資実行を促していくような内容になることが多いです。

具体的には、以下のような稟議書になります。

概況

2005年創業の運送業者。
小規模ながらも堅調。
業績も長期にわたって安定推移。
足元の業績も堅調。

資金使途

経常運転資金。
前回融資の返済は残存期間10ヶ月。
今回、復元融資により当社の資金繰り安定を図るもの。

融資条件

証貸、金額35百万円、融資期間4年の分割返済、利率1.5%。
B銀行から頻繁に融資提案を受けており、当行より低い利率での借換えに至る懸念があるため、前回よりも0.125%引き下げるもの。

保全

全額無担保扱い許容。
取引振りは当行に集約されており、融資額以上の預金平残もあることから、実質的に保全は充足していると思料。

資金調達余力

会社および代表者に見るべき資産はなく、担保余力はなし。
しかし、マル保は未利用であり、当社の業績から60百万円程度の保証余力が十分に認められるもの。

狙い

当行一行先であり、取引振りすこぶる良好。
他行からの積極勧誘あり。
取引防衛のためにも、本件ぜひご承諾賜りたい。

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他行肩代わりは交渉のカードになる

以上のように、他行肩代わりは銀行が非常に嫌うものであり、既存の取引銀行は他行との取引を防止するために動きます。

そこで、これを交渉カードにすることができます。

例えば、上記の会社のように、あなたの会社がA銀行と一行取引をしているとして考えてみてください(一行取引は危険性が高く、避けるべきものですが、ここでは分かりやすい例として一行取引を例にします)。

売上や利益が大きく伸びているわけではありませんが、業績は安定しており、自己資金も年々厚くなっています。

営業基盤も確立されており、貸し倒れリスクも低いです。

一行取引ならば、A銀行は低リスクで融資することができ、さらに預金その他の融資外取引も独占状態となるでしょう。

A銀行からみれば、ぜひとも取引を維持すべき顧客です。

しかし、今は一行取引をしていても、そのような会社に対しては、他の銀行も取引したいと考えていますから、融資提案を受ける可能性も大いにあります。

運転資金や設備資金として融資を受けないかと提案してくるのです。

例えば、B銀行が以下のような提案をしてくるかもしれません。

「社長、現在はA銀行とのみお付き合いしているとのことですが、借入条件はどのようになっているのでしょうか。
なるほど、借入総額3000万円、融資の残存期間は2年、金利は2.0%ですか。
どうでしょう、うちでその融資、全額肩代わりさせていただけませんか。
融資期間もご希望ならば延長できますし、金利も引き下げますから、資金繰りにも役立つと思いますが。
業績は順調ですし、これから成長していくとなると、資金繰りには余裕があった方が良いと思います。
ぜひ、ご検討をお願いします。」

このように提案されると、取引するのがA銀行からB銀行に代わるだけですし、資金繰りにもメリットがあるならば、肩代わりをお願いしたいと考えるかもしれません。

しかし、銀行交渉がうまい経営者ならば、このような提案をすぐに受け入れてしまうことはありません。

これを交渉カードにして資金繰りに活かしていきます。

この提案を知れば、A銀行は肩代わり防止に動くでしょう。

また、肩代わりを断ったからと言って、今後B銀行との付き合いがなくなるわけではありません。

しかし、B銀行の肩代わりに応じてしまうと、A銀行との関係は悪化し、肩代わり後は付き合いがなくなる可能性があります。

つまり、B銀行の肩代わりの提案を受け入れた場合には、

  • 融資期間と金利が下がるため、資金繰りが楽になる

というメリットがあり、一方で

  • A銀行との関係が断たれる

というデメリットもあります。

ところが、これを交渉カードとして利用すれば、

  • A銀行から、肩代わり防止のために好条件での取引を期待できる
  • B銀行との関係を再度構築していき、肩代わり以外での融資を期待できる
  • A銀行のみの一行取引から、A銀行・B銀行の複数取引へと増える

という、一石三鳥の成果が期待できるのです。

良い条件でたくさんの融資を引き出し、なおかつ銀行の新規開拓までできてしまうのです。

肩代わりを受け入れて、一長一短の結果を得るよりもはるかに良いでしょう。

銀行との付き合いを融資に活かしていくためには、このような考え方をすべきです。

一般的に、借換えは既存の取引銀行との関係悪化を招く可能性が高いため、銀行交渉の禁じ手と考えられることが多いものです。

確かに、「こちらの要求が通らないなら、他行で借り換えますよ?」といった、銀行の足元を見るような交渉は禁じ手と言えます。

しかし、上記のように他行肩代わりが会社にとって受動的に発生した場合には、これを積極的に活用していくべきでしょう。

既存の取引銀行が他行の動向を探ってきたときなどに、

「融資の提案ですか?B銀行さんとC銀行さんから提案されたことがありますね。B銀行さんは特に熱心で、全部肩代わりするって言ってました。A銀行さんに悪いから断ったけど・・・」

などと伝えれば、既存の取引銀行は危機感を抱き、肩代わり防止に動く可能性が高いです。

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まとめ

融資を考える時、経営者の多くは「銀行→会社」という流れで資金を供給してもらうだけの、一方的な関係をイメージしがちです。

しかし、融資を商談として捉え、「銀行⇔会社」と双方向での関係をイメージすると、随分交渉の幅が広がります。

新規の銀行から頻繁に融資を提案されたり、肩代わりを提案されたりしているならば、それはぜひ交渉カードとして利用しましょう。

既存の取引銀行に対し、「他行の肩代わりを見送る」というメリットを与えることで、好条件を引き出していくのです。

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このような観点は、融資交渉に非常に役立ちますから、ぜひとも身に着けてほしい!

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