資金繰りが上手くいかない企業は、それなりの理由があるものです。
しかし、それが分かっていなければ、いつまでたっても資金不足に悩まされることになります。
資金繰りが上手くいかない原因は、次の3つの場合が多いでしょう。
- 根本的に考え方が違う
- 資金繰りを管理できていない
- 資金の使い道が間違っている
本稿では、それらの問題を解決するために、考え方を学んでいきましょう。
なぜ資金繰りが上手くいかない?
資金繰りが上手くいかなくなる企業には、共通する特徴があります。
それは「本当に危機的な状況に陥ってから、初めて資金調達に奔走する」というものです。
例えば、以下のような動機から、ほぼ不可能な資金調達に奔走する経営者がしばしばみられます。


このように、数日後や1週間後まで、ひどい場合には明日までに現金が必要という、非常に切羽詰まった状態になってから、資金繰りに奔走しています。

資金調達は銀行や日本政策金融公庫などの金融機関に融資を依頼することになりますが、融資の申し込みから実行まで、1ヶ月程度かかるのが普通です。
新規の融資申し込みであれば、それ以上の期間を要することでしょう。
審査が緩めのノンバンクに融資を依頼するにしても、10日から2週間くらいはかかるものです。こちらも緊急のニーズには対応していません。
この通り、よくよく必要に迫られてから資金調達を図っても、そう簡単にはいかないのが現実なのです。
もし、明日や数日後、来週までと期限が迫っていれば、資金調達は非常に困難になります。
考えられる方法としては、知人や親族に頼ってお金を借りることでしょう。
企業で必要となるのは数百万円単位のまとまったお金ですから、なかなか用立てることは難しいです。
ならば、従業員に事情を説明して給料の支払いを遅らせたり、買掛先に謝って支払いを延期してもらうなどの対処をすることになります。

資金繰りに行き詰まる理由の多くは、このように危ない状況に陥るまで、何の対処もできていないことにあります。
さらにその原因は、資金繰りを管理できていないからです。
また、そもそも資金繰りに対する根本的な考え方が間違っているということもあります。
よくあるのが、現金がほとんどない状態のまま、ぎりぎりの資金繰りを続けるというものです。
無借金経営を重視する経営者などに多いのです。
このような経営者は、現金がぎりぎりの状態でも、できるだけ借金を作りたくないと考えて経営を続けます。
ある時まとまった現金が必要となったタイミングで、たちまち資金繰りに行き詰ってしまうのです。

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借入金が多くとも、現金があれば倒産しない
会社にとって、現金は血液のようなものと言われます。
血液が不足している貧血の状態では、いつ倒れてしまうか分かりません。
しかし、その血液が輸血であっても(つまり会社が持っている現金が借入金であったとしても)現金に余裕があるうちは、会社は倒産しないのです。
このことは、実際に数字で見てみると良くわかると思います。
一つ例を見てみましょう。

A社の経営者は、無借金経営を重視しており、現金がぎりぎりの状態でも借り入れることなく、踏ん張っています。
B社は、それなりに現金に余裕がある状態ですが、借入金も多いです。
すなわち、以下のような状態です。
現金 | 借入金 | 実質借入金 | |
A社 | 200万円 | 2200万円 | 2000万円 |
B社 | 2000万円 | 4000万円 | 2000万円 |
A社は、借入金が少ないものの、200万円の現金しか持っていません。
200万円以上のマイナスとなる月があれば、たちまち資金不足に陥ります。
一方B社では、借入金が多いものの、現金に余裕があります。
これだけの現金があれば、大抵の問題には対応できるでしょう。
A社とB社では、規模も年商も実質的な借入金も同じなのですが、安定性において大きな差があります。

たとえ借入金が多くなったとしても、現金がそれなりに余裕のある状況で借り入れておいた方が安全なのです。
倒産する会社の多くが「資金繰りに対する考え方が根本に間違っている」というのは、このようなことを言うのです。
A社のような資金繰りをしている会社は、意外なほどに多いものです。
現金に乏しいA社は、いつも資金不足と隣り合わせです。
倒産を防ぐために重要なのは、どうしようもなく危険な状況に陥るより以前に、融資を受けることです。
新規に融資を受けるためには、時間もエネルギーも費やさなければなりません。
だからこそ、「できるときに事前にやっておく」ことが重要となります。

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資金繰りを管理しよう
しかし、「できるときに事前にやっておく」とは言っても、そのタイミングさえ良くわからないという人も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、資金繰りが管理できていなければ、資金繰りが危なそうだと事前に察知する事ができません。
早期に融資を受ける判断ができないのです。
そこで、資金繰りを管理していくためにも、資金繰り表を作る必要があります。
資金繰り表は、その会社の資金状況が「ある期間内にどのようになっていくのか」を事前に予測するものです。
その予測を立てておけば「ある時期に資金不足になるならば」それを事前に知ることができます。
事前に知ることができれば、それに合わせて早期に資金を調達しておくのです。
資金繰り表は、月次のものと日次のものを2通り作ります。
月次資金繰り表
月次の資金繰り表は、この先半年間ないし1年間の資金繰りの予測を表にしたものです。
月末現金残高数ヶ月の実績も参考にしながら、今後の予定を記入していきます。
(実際の表は、『月次資金繰り表雛形』などのキーワードで検索すると、無料でダウンロードできます。)
それぞれの欄を的確に記入していけば、それが予定といえども、かなり実態に近い表に仕上がると思います。

これは、その月の末日に予定される現金残高ですから、ここがマイナスになっているならば、その月に資金不足に陥ってしまうということが分かります。
それとわかれば、事前に資金調達を行なっておくことができます。
本来ならば資金不足に陥っていたであろう月も、無事に資金繰りを回していくことができます。
日次資金繰り表
しかし、月次資金繰り表において、月末現金残高がプラスになることが分かっていても、その一ヶ月間のうち、どこかでマイナスになる可能性もあります。
そこで、月中の1日ごとの資金繰りを予測するために、日次資金繰り表を作ることも大切です。
日次資金繰り表では、2~3ヶ月先までの資金繰りを把握します。
(これも、『日次資金繰り表雛形』などのキーワードで検索すると、無料でダウンロードできます)。

入金が多ければ現金残高は多くなりますし、支払いが多ければ現金残高は少なくなります。
現金残高が多くなる月は喜ばしい限りですが、問題なのは現金残高が少なくなる時期です。
そのような時期にも、月商の1ヶ月分の現金がプールされているような状態を心がけていれば、資金繰りに行き詰まることはないでしょう。
もっとも、理想的には月商の3ヶ月分の現金がプールされているのが好ましいです。

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借入計画を銀行に伝える
資金繰りに対する考え方を正し、資金繰り表によって早期に対策できる体制を整えたならば、もう一つやっておきたいことがあります。
なんといっても、資金調達方法の中でも最もスタンダードなものは融資であり、融資ならば銀行からの融資が最も好ましいといえます。
銀行との良好な関係を築き、さらにはスムーズに融資を受けるためには「銀行に対して、定期的に借入計画を出しておく」のが良いでしょう。
そもそも、企業の運転資金や設備資金を融資する「事業性融資」は、マイカーローンや学資ローンなどの「個人消費性融資」に比べて、大きな金額が動くものです。
したがって、銀行が支店内だけで融資を決定することはなく、支店内で担当者→上司→課長→副支店長→支店長と稟議書が流れ、問題がなければ本部へ稟議伺いとなります。
それだけ慎重に、時間をかけて融資を検討するのです。
だからこそ、いきなり融資を受けることはできません。
その中でもできるだけスムーズに融資を受けるべく、借入計画を銀行に伝えておくのです。
この借入計画は、月次資金繰り表によって作ります。
資金繰り表の予定に、銀行からの借入を盛り込んでおき、その資金繰り表を3ヶ月に1回くらいのペースで銀行に提出しておきます。
この資金繰り表によって、銀行に対し、

と打診することができるのです。
事前に伝えてもらえれば、銀行でも余裕をもって稟議書を作ることができます。
融資審査の中で企業に対して質問などが行われた場合にも、余裕をもって回答することができ、全体に融資がスムーズに運びやすいです。
また、資金繰り表や企業の信用状況から、融資が難しくなることも当然あるでしょう。
その場合にも数か月前の時点で「融資は難しい」と回答を得ることができますから、企業は早い段階で別の方法を模索していくことができます。
ちなみに、資金繰り表を実際に作ってみるとわかると思いますが、銀行から融資を受ければ現金残高が増え、返済が進むにつれて現金残高が減少していくものです。
このことからも、長期の資金繰り表を作り、現金残高の動きを把握しておく必要があります。
少なくとも月商の1ヶ月分、理想的には月商3ヶ月分の現金が留保されるように、定期的に融資を受けていくこと重要です。

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調達資金を流用しない
最後に注意したいのが、調達した資金を流用しないということです。
せっかく時間と労力をかけて、資金繰りの管理を適切に行い、実際に資金を調達できたのです。
しかし、その資金の使い方がマズければ何にもならないのです。
調達した資金は、あくまでも本業のための運転資金や設備資金として活用してください。

と思う人も多いでしょう。

そのようなことをすれば、再び本業の資金繰りに問題が出る可能性が高いです。
それで返済が滞ってしまえば、銀行からの信頼を著しく損ない、再び融資を受けることが難しくなるでしょう。
調達資金の流用は、具体的には以下のようなケースがあります。
新事業へ充てるケース
元々新規事業を始めたいと考えていた場合などに、調達資金を新事業のためのお金として充当することがあります。
新事業で多くの利益が出て、本業の資金繰りも改善するならば問題ない。
ですが、本業に支障が出る場合には、新事業の展開を控えて本業の立て直しを図るのが先決です。
関連会社への流用
関連会社が資金繰りに困っている場合に、調達資金を関連会社に融資したり、関連会社への出資に流用することがあります。
これは、関連会社自体が融資を受けるべきであり、調達資金を流用すべきではありません。
個人で使ってしまう
調達資金を、経営者の個人的な用途で使ってしまうことがあります。
生活費に充てたり、遊興費に充てたりするケースがよく見られます。
このように、会社と経営者個人の資金繰りを混同している会社は、常に資金繰りが不安定な状態になります。
会社と経営者個人の資金は明確に分け、経営者個人の生活費や遊興費は、経営者個人でローンを組んで調達すべきです。
知人に貸してしまう
経営者の知人がお金に困っている時、調達資金を貸してしまうことがあります。
自分の会社が資金繰りに困っているのに、知人に貸してしまうというのはあまりにもお人よしです。
知人がどこからかお金を借りられるよう、相談に乗ってあげるくらいにしておきましょう。
社員の横領
あってはならないことですが、調達資金を社員が横領してしまうことがあります。
そのような社員を出さないためには、経営者が常にチェックするほかありません。
もし横領が発覚したならば、早急に警察に相談しなければなりません。
詐欺被害
せっかく資金を調達しても、その資金を用いて資金繰りを回すにあたって、詐欺に遭ってしまうことがあります。
これは現密に言えば流用ではありませんが、本来使うべきところに資金を使えないのですから、同じようなものです。
詐欺には十分気をつけましょう。
借金への返済
銀行から融資を受ける以前に、知人や親族から融資を受けていた場合、調達資金に目を付けられ、知人や親戚への返済に流用してしまうことがあります。
しかし、それでは本業の運転資金や設備資金が不足してしまいます。
まずは調達資金で本業の立て直しを図り、知人や親族への返済は、あくまでも事業の利益から充当すべきです。
融資への返済
このほか、調達資金によって別の融資の返済に充てることもあります。
このような自転車操業をしていては、結局調達資金を活用することにはならず、いつまでたっても資金繰りが改善されません。
もっとも、借り換えやローンの一本化の場合は除きます。
以上の例を見てみれば、「流用などするはずがない」と思っていた人も、案外流用の可能性があることが分かるのではないでしょうか。
このような流用をしていれば、いつまでたっても本業は資金不足のままです。
他の目的に流用したからと言って、また新たに資金調達をするのは容易ではないのです。
まとめ
資金調達には色々な方法があります。
しかし、資金繰りの根本的な考え方が間違っていたり、資金繰りが管理できていなかったり、資金を流用してしまって活かせないようでは、いつまでたっても資金繰りはうまくいきません。
本稿によって、資金繰りの基本的な姿勢を学べば、資金繰りを徐々に改善していけることと思います。