会社にできるだけ多くのお金を残し、資金繰りをラクにしていく方法のひとつとして、節税が挙げられます。
しかし、正しくない節税は脱税とみなされることがあり、その場合にはペナルティが課せられることになります。
従来支払うべき税金にプラスして追徴金などが求められてしまうため、資金繰りをラクにするためにやったはずの節税が、却って資金繰りを圧迫する結果を招いてしまいます。
本来、そのようなことがないように節税に取り組むべきなのですが、いざそのような事態になったときのために、税務調査について一通りの知識を持っておくことが大切です。
本稿では、税務調査の概要やペナルティの内容、税務調査を受けた時の正しい対応について解説していきます。
税務調査は減少傾向にある
国税庁による最新(平成29年11月発表)の発表によると、平成28年に行なわれた税務調査の件数は、法人税が9万7000件、法人消費税が9万3000件、源泉所得税が11万6000件となっています。
この数字だけを見ると、随分多くの税務調査が行われているという印象を抱くかもしれません。
しかし、税務調査の件数は年々減少しており、ここ10年で30~40%も減少しています。
なぜこのように減少しているのかと言えば、平成25年に国税通則法が改正されたことにより、税務署内での審理が厳しくなったことが大きな原因です。
これにより、税務署内での事務作業の負担が増加したため、実地での税務調査が減少したのです。
もちろん、税務調査が減少したからと言って、税金逃れがしやすくなったというわけではありません。
最近の税務行政では、電子化の推進や、AIの活用が活発になりつつあります。
これらによって申告内容をスピーディに、正確にチェックすることができます。
富裕層への適正な課税、悪質な事案の狙い撃ちなどを可能とすることで、効率的な税務調査ができるようになれば、税務調査の件数が減少しても問題にはならなくなるでしょう。
また、国税庁の方針を見ても、税金が正しく納められるように一層の取り組みをしていくことが打ち出されています。

今後は税務調査の方法が変わり、実地調査をせずとも不適切な納税が判定できるようになっていくと考えられます。
会社にとっては、より正しい節税が求められるようになる可能性が高いです。
資金繰りのためには大切なことと考えて、なんとなく節税を行なっている会社の中には、知らず知らずのうちに不適正な節税を行っているケースも多いです。
そのような会社が運よく税務調査を受けずに済んでいることも珍しくありません。
しかし、今後税務の自動化が進んでいけば、悪質な会社はもちろんのこと、ずさんな節税策を行なっている会社は、ペナルティを課せられる可能性が高まっていくことでしょう。

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税務調査は必要なこと
しかしながら、現在はまだ自動化の途上であり、税務調査は従来の方法で行われています。
すなわち、不適正な節税を行なっている疑いがある会社に対して、税務調査官が赴いて実地調査を行い、会社の益金・損金の洗い出しなどを通して、追加納税を求めるのです。
税務調査の対象となる会社は、十中八九は不適正な納税がなされているものですから、ほとんどの場合において追加納税が求められることとなります。
税務調査をしてみたら税金の納め過ぎが明らかとなり、還付されたなどということはまずありません。
これが、税務調査に入られたくないと考えられている原因でもあります。

税務調査が行われるからこそ脱税が摘発されるのであり、それが抑止力となっています。
もし税務調査が全く行われないならば、だれも真面目に納税しなくなります。
そうならないように、税務調査によって脱税を取り締まることで、誰もが定められた条件のもとに納税するようになり、課税の公平性が保たれるのです。
とはいえ、税務調査官の中には、脱税を許さないという強い使命感を持っていたり、追加納税をきっちりとって組織内での評価を上げようとしたりすることによって、必要以上に厳しい税務調査を行う人もいます。
このような税務調査官が調査に入ると、かなり強引な判断で追加納税を求めることがあります。
また、そのような税務調査官でない場合にも、間違った判断によって追加納税を求めることもあります。
したがって、自社が税務調査に入られた場合には、社会のために税務調査は必要なことと捉えて堂々と受け入れましょう。
しかし、おかしな指摘を受けた時のためにも、顧問税理士と共に対応することが大切です。

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税務調査で悪質と認められたら
さて、税務調査に入られた場合、その多くは追加納税を求められる結果となります。
つまり、損金に計上していたものの中に損金として認められないものがあり、損金の否認を受け、ペナルティが課せられることとなります。
この時に課せられるペナルティは、その会社の状況によって異なります。
黒字の会社
まず、その会社が黒字であったならば、否認された損金の額に応じて本税(本来納めるべき税金)が発生します。
さらに、本税に伴ってペナルティや延滞税が発生します。
例えば、損金として計上していた100万円の経費が認められなかった場合には、
この100万円部分の本税が発生し、さらに過少申告加算税15%が求められるならば、否認された100万円の15%すなわち15万円のペナルティが課せられるということです。
ペナルティのパーセンテージは、否認となったものの悪質性によって異なります。
もし、悪質な税金逃れと認定された場合には、重加算税などの重いペナルティが課せられます。
このことについては、詳しく後述します。
繰越欠損金がある会社
繰越欠損金を抱えている会社の税務調査では、追加納税やペナルティは発生せず、否認された損金分だけ繰越欠損金が少なくなります。
黒字の会社に比べて税務調査の影響は軽微と言えます。
しかし、繰越欠損金が減少することにより、その後の利益が出る時期が早くなります。
そのため、予定していたよりも課税される時期が早くなるため、納税を含めた資金計画を立てていく必要が生じます。
なお、税務調査では3年分の申告に対して調査するのが普通ですが、国税通則法では5年分を調査するものとしています。
さらに、場合によっては最大で7年までさかのぼることもあります。

節税のつもりが資金繰りを圧迫することに
ここでいう「悪質性が高い場合」とは、会社が計算間違いや認識違いから損金性を否認されるのではないです。
明らかに経費にならないものを多額に経費として計上していたり、益金として計上すべきものを計上していなかったりする場合です。

このような場合には、重加算税などの重いペナルティが課せられるだけではなく、そこへさらにペナルティを加算する加重措置が取られることもあります。
これにより、ペナルティの最高税率が50%まで高まることもあります(期限内に申告しておらず、重加算税と加重措置を適用される場合)。
節税したはずが却って資金繰りを圧迫することになるわけですが、悪質という認識がない場合でも、このような結果を招くケースがあります。
期ズレが仇となる場合
例えば、期ズレは節税策としてよく用いられる方法ですが、やり方を誤ると資金繰りを圧迫することになります。
それは、期ズレとして計上した損金が否認され、さらに翌期の損金にもならないような場合です。
もし、今期に認められなかったものの、翌期の損金として認められるならば、当期で否認された損金を翌期に計上することで、当期に課せられた本税は結果的にプラスマイナスゼロとなります。
そのため、実質的に支払うのは加算税と延滞税だけで済みます。
しかし、翌期に予定していた支出を当期に回して損金計上したものの、当期でも翌期でも損金として認められないような場合には、「当期において否認された部分についての本税と、本税に伴う加算税や延滞税が発生する」こととなります。

役員報酬が否認される場合
役員報酬は、一定の条件をクリアすることによって損金計上が可能であり、節税策として利用されることが多いです。
しかし、税務調査の結果、役員報酬に損金性が認められないとなれば、支給した役員報酬の額について、本税とペナルティが発生します。
さらに、役員報酬の支給を受けたことで、役員個人に対する所得税も大きくなります。
本来、役員報酬の支払いというものは、法人税における節税効果と、個人における所得税の増加分を秤にかけて、法人だけではなく個人への影響も踏まえて節税を図るものです。
たくさん役員報酬を支払うことで節税効果が得られたものの、個人所得が増えて個人としての納税額が大きくなりすぎたというのでは意味がありません。
しかしながら、役員報酬の支払いによって節税を図り、役員報酬が否認されてしまえば、法人での節税効果はゼロとなり、個人の納税額が増えるだけという結果を招いてしまいます。
これも、絶対に避けるべきことです。

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具体的なペナルティの内容
ここまで、税務調査の考え方について学んできましたが、ここで具体的なペナルティの内容に迫っていきましょう。
一口にペナルティといっても、軽いものから重いものまで様々であり、悪質性に応じてペナルティが異なります。
ペナルティには、以下のようなものがあります。
無申告加算税

期限後に申告したことにより、本来納めるべき税金の5~20%の追加納税が求められます。
納税額の50万円までは15%、50万円を超える部分には20%の追加納税となります。
ただし、申告の期限を過ぎている場合でも、追加納税を求められない場合、あるいはペナルティが軽減される場合があります。
まず、期限を過ぎていたとしても、期限から1ヶ月以内に自主的に申告している場合です。
あるいは期限後申告の前日から5年以内に一度もペナルティを受けておらず、期限内申告の意思が認められた場合には、無申告加算税を求められることはありません。
また、期限から1ヶ月を超過している場合でも、税務署から指摘される前に自主的に申告した場合には、無申告加算税でありながら5%のペナルティに抑えられます。
過少申告加算税
これは、期限内に申告をしたものの、修正申告を行った場合や、税務調査によって更正が行われた場合に課せられるペナルティです。
修正申告とは、税務調査の通知を受ける前に自主的に申告の修正を申し出たり、税務調査の通知を受け取った後に申告の修正を申し出ることを言います。
過少申告加算税では、修正の結果として追加で発生した税金に対して、5~15%の追加納税を求めます。
ペナルティが5~15%の範囲で変動するのですが、
- 税務調査の通知を受け取る前に、自主的に修正申告をした場合には過少申告加算税は求められない
- 税務調査の通知を受け取った後に、自主的に修正申告をした場合には、50万円までは5%、50万円を超える部分には10%の過少申告加算税が求められる
- 税務調査の通知を受け取ったものの、何の対応せず、実際に税務調査を受けて更正に至った場合には、50万円までは10%、50万円を超える部分には15%の過少申告加算税が求められる
となります。
不納付加算税

課せられるペナルティは、本来納付すべき税額の5~10%となっており、
- 税務署から指摘される前に自主的に納付した場合には5%
- 税務署から指摘された後に納付した場合には10%
のペナルティが課せられます。
重加算税
これは、期限内に申告しているものの、税務調査によって仮装や隠蔽、つまり実態のない経費を計上していたり、本来課税されるべき益金を隠蔽していたりした場合に課せられるペナルティです。

なお、軽微な計算間違いや認識違いから修正を受けた場合には過少申告加算税、正当な理由なく期限内に源泉徴収税を納付しない場合には不納付加算税となるわけですが、その場合に仮装や隠蔽が認められたならば、重加算税となります。
この場合、過少申告加算税や不納付加算税の代わりに、35%の重加算税が課せられることになります。
また、期限後に申告したものに重加算税が適用された場合には、無申告加算税の代わりに、40%の重加算税が課せられることになります。
延滞税
これは、期限内に納付されなかった税金に対して、未納の期間に応じて課せられるペナルティであり、未納が発生した際に、税務調査の有無にかかわらず自動的に成立するペナルティです。
延滞税の税率は、年14.6%となっていますが、納付期限から2ヶ月以内に納付した場合には、年7.3%が適用されます。
ただし、この税率は原則としての年利であり、市場金利に連動していることから、これよりも低くなる場合もあります(平成30年1月1日から12月31日までの期間における延滞税は年2.6~8.9%)。
加重措置
なお、期限後に申告したもので、期限後申告の前日から5年以内に無申告加算税や重加算税などのペナルティを受けている場合には、それぞれの従来のペナルティに対し、さらに10%の上乗せがなされます。
これにより、無申告加算税は最大で30%に、重加算税は過少申告加算税や不納付加算税の代わりの場合には最大で45%、無申告加算税の代わりの場合には最大で50%のペナルティが課せられることとなります。

しかし、短期間のうちに再び同じ間違いを犯したことで、一層の反省を促し、3度目の間違いが起きないためにも、加重措置が取られているのです。
地方税におけるペナルティ
上記のペナルティは全て国税に関するものですが、法人が納めるべき地方税においても、ペナルティが設けられています。
地方税においては、
- 無申告加算税→5~30%
- 過少申告加算税→10~15%
- 重加算税→35~50%
- 延滞税→原則として年利7.3~14.6%
が課せられます。
不適正な節税はハイリスク
以上のように、不適正な節税の結果、非常に重い負担を強いられる可能性があります。
節税によって資金繰りを図ったつもりが、とんでもない追加納税を求められ、資金繰りを圧迫することになるのです。

資金繰りを少しでもラクにしたいからといって、強引な節税を試みた結果、ペナルティを課せられるのでは本末転倒です。
ペナルティが極めて小さく、税務調査を受けても資金繰りを圧迫するほどの影響がなければ、ペナルティを受けるリスクを取って節税を図るという考え方も成り立つでしょう。
しかし、ペナルティを受けた場合の負担はかなり大きくなるのですから、下手な節税策がハイリスクであることが分かると思います。
ペナルティは損金にならない
ペナルティを課せられた場合にはたくさんの支払いを求められることになります。
しかし、さらに悲惨なことに、ペナルティの支払いは損金として認められません。
そもそも、ペナルティという言葉からも分かる通り、追加で求められる納税は罰金に過ぎません。
不適正な節税をしたことに対する懲らしめの意図があるとも言えます。
事業を行う上で必要と認められる費用ならば、損金として認められ、節税に役立てることも可能です。
しかし、追徴課税は本来支払う必要のないものであり、事業を行う上で必要な費用とは認められず、したがって損金にもなりません。

ペナルティは、悪意ある場合にはもちろんのこと、悪意がない場合にも発生する可能性がありますから、専門家の協力も求めつつ納税することを心がけましょう。

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ペナルティに納得できない場合には
しかしながら、税務調査を受けて追徴課税が発生したものの、その内容に納得できないことがあります。
この場合、「税務署の主張はおかしい。絶対に支払わない」と腹を決める経営者もいるかもしれませんが、その場合にも適切な対応が求められます。
まず、税務署の主張がおかしいかどうかにかかわらず、憲法において納税の義務が定められており、なおかつ税務署が支払いを求めている事実がある以上、無視を決め込むのはいけません。
そのような対応をすれば、税務署は納税を怠っているとしか見ませんから、納付を催促されますし、税金が未納状態となっていることで銀行融資などにも悪影響となります。
場合によっては、強制執行によって財産の差押えを受ける可能性もあります。
したがって、追加徴税に納得していない場合には、
- どうしても納得できないため、法的手段に訴える
- 納付を拒否することによって生じるデメリットを考え、納得できないながら納付する
という方法があります。
法的手段に訴えるためには、税務署に再審査を求めるほか、国税不服審判所に審査を求める、裁判所に訴えるなどの方法があります。
この場合、あらかじめ追徴課税を納付しておき、追徴課税の必要がないと認められた場合、支払った追徴課税を還付してもらうこととなります。
また、還付される税金には「還付加算金」という利息が上乗せされるため、利息収入を得られる可能性もあります。
しかし、このような手段はあまりおすすめできません。
なぜならば、法的手段をとる場合にも、あらかじめ追徴課税を納付しておく必要があり、資金繰りへの圧迫は変わらないからです。
それでも、追加徴税を取り戻せるならば挑戦したいと考えるかもしれませんが、追徴課税が取り消されることは非常に困難です。
そもそも税務調査は、課税の公平性を保つために行なわれていることであり、本当に悪質なものが狙い撃ちされているケースがほとんどです。

したがって、不服を申し立てたとしても、税務署を相手取っての争いは困難であり、望んだ結果にならないことがほとんどです。
また、争いが長期に及ぶことも多く、相応の費用も掛かります。
専門家の意見も踏まえて、明らかにおかしいと判断でき、なおかつ追加徴税が巨額の場合には法的手段に訴えても良いかもしれません。
しかし、多くの場合、納得できるかどうかにかかわらず、おとなしく納税しておく方が、デメリットを最小限に止めることができるでしょう。
まとめ
本稿で述べたように、税務調査は課税の公平性を保つために必要なものであり、適切な納税を心がけていれば、自社に不利益をもたらすものではありません。
しかし、税務調査を受けた場合には、ほとんどにおいてペナルティを課せられることとなり、場合によっては非常に重い負担を強いられることとなります。
このように、税務署は「触らぬ神に祟りなし」といったところで、適正な節税の重要性が良くわかります。
資金繰りのために節税をしたはずが、ペナルティによって資金繰りを圧迫したという、本末転倒の結果を招かないためにも、正しい節税を心がけましょう。
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