法人契約で保険に加入している会社は多いと思います。
それが掛け捨ての保険でない場合、解約時にはこれまでに支払った保険料の一部を受け取ることができるため、資金繰りに役立てることができます。
しかし、何らかの理由によって保険を解約したくない場合も多いものです。
その場合には、保険会社から融資を受けて資金を調達する方法が考えられます。
本稿では、以上のような保険を利用した資金調達を考えていきます。
保険の解約で資金調達ができる
法人契約をしていた様々な保険を解約する時、それが掛け捨ての保険でない場合には解約返戻金を受け取ることができます。
もちろん、それによって資金調達も可能です。
法人契約をしている保険には色々なものがあります。
例えば、次の6種類の保険です。
- 終身保険
- 平準定期保険
- 逓増定期保険
- 長期定期保険
- 養老保険
- がん保険
これらは、次の目的をもって加入するものです。
- 事業保障対策資金(経営者に万が一のことがあった場合の、社会的信用の裏付け資金)
- 死亡退職金・弔慰金対策資金(役員や従業員の遺族を守るための資金)
- 退職慰労金対策資金(長年勤めた従業員の功績に報いる資金)
- 企業継承・相続対策資金(円滑な企業継承のための資金)
中途解約のメリット
中小企業では、節税対策として生命保険に加入していることが多く、それを解約すれば解約返戻金による資金調達が可能です。
もちろん、これは融資ではなく、既に支払ったものを返してもらうものですから、借り入れを増やさずに資金調達が可能です。
また、保険は万が一の場合に備えて加入するものであり、平常の経営には加入の有無が影響を与えるものではありません。
したがって、資産売却などによる資金調達とは異なり、中途解約したとしても経営に何の支障もありません。
また、不動産などの資産ならば、一度手放してしまうと再び手に入れることが困難な場合も多いです。
資金繰りのために売却し、それがが改善されてから再度入手して「以前の状態に戻そう」と考えても、うまくいかないこともあるのです。
しかし保険は、同じ保険に再度加入しなおすことができます。

デメリットもある
ただし、保険の中途解約にはデメリットもあります。
まず、終身保険などは、加入期間が長くなるほど返戻率が高くなっていき、いずれは返戻率が100%を超える仕組みです。
もし、解約する時期がそれ以前である場合には、返戻率が100%を切ってしまい損失が発生します。
もちろん、資金調達ができることには違いありませんから、それでも問題ないと考える人もいることと思います。
しかしながら、やはり損が発生するのはあまり喜べることではないでしょう。
また、法人契約で加入している保険料の支払いは控除の対象であり、節税効果があります。
しかし、中途解約すれば節税はできなくなるため、節税目的で保険に加入していた場合にはその点でもデメリットが発生します。
このほか、解約返戻金を受け取った際に保険積立金解約益が生じ、納税が発生してしまうこともあります。

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保険の見直し方
資金調達の手段として活用できるものの、上記のようなデメリットもある方法です。
検討の際には正しい判断が求められます。
その判断基準は、次の点を考えていきます。
- 加入当初の目的は何であったか
- 資金繰りの緊急性はどの程度か
- 返戻金の金額と必要な金額を比較してどうか
したがって、中途解約の判断にあたっては、下記の流れとなります。
- 保険の加入目的を振り返る
- 加入時期と現状の変化により、現在は不要になっている、あるいは不要ではないものの資金繰りの方が緊急と言える保険を明らかにする
- 明らかになった保険を中途解約した場合の返戻金と、資金繰りに必要な金額を比較し、返戻金を受け取ることで資金繰りに役立つならば解約する

そもそも、会社が法人契約して生命保険を加入した時、何の目的もなく加入するということはないでしょう。
何らかの理由があったはずです。
しかし、当時と現在では会社の置かれている環境は変化しているでしょうから、当初の目的では保険が必要であったとしても、現在では必ずしも必要とは言えなくなっているかもしれません。
そこで、加入当初の目的を振り返ることによって、加入当時の状況と現状の違いを根拠に保険の見直しを行います。
具体的な見直しの基準は、以下のマトリックスによって考えるのが良いでしょう。
保険の種類によっては、節税効果も無視できませんから、その点も踏まえて整理すると、以下のようなことが言えます。
●・・・効果なし、〇・・・効果あり、☆・・・非常に効果あり
終身保険 | 平準定期保険 | 逓増定期保険 | 長期定期保険 | 養老保険 | がん保険 | |
事業保障対策資金 | 〇 | ☆ | ☆ | ☆ | 〇 | 〇 |
死亡退職金・弔慰金対策資金 | ● | ☆ | ☆ | ☆ | ● | 〇 |
退職慰労金対策資金 | 〇 | ● | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ |
企業継承・相続対策資金 | ☆ | ● | ☆ | ☆ | ● | 〇 |
節税効果 | ● | 〇 | ☆ | ☆ | 〇 | ☆ |
加入当初の目的と現状を比較した時、現状でも〇あるいは☆と言えることを目的として保険に加入し続けているならば、その保険の解約には慎重になる必要があります。
ただし、加入当初は〇あるいは☆であったものの、今では●になってしまったというならば、積極的に見直すべき保険であるといえます。
保険商品ごとの返戻金の仕組み
返戻金の仕組みは、保険ごとに異なります。
終身保険
終身保険として支払った保険料は保険積立金として計上し、全額を資産とみなします。
このため、終身保険の加入によって節税効果は得られません。
加入期間が長くなると返戻率が高まり、ある時期では保険積立金より解約返戻金が上回ります。
平準定期保険
平準定期保険として支払った保険料は、全額経費として処理するため、保険積立金はありません。
したがって返戻金はなく、あったとしても少額です。
したがって、資金繰り目的で解約しても意味はありません。
逓増定期保険
逓増定期保険では、保険期間に応じて返戻率が異なります。
ある時期までは返戻率が高まり、それ以降は返戻率が下がります。
つまり、ある時期から解約返戻金が保険積立金を上回るものの、その時期を過ぎると解約返戻金が保険積立金を下回っていき、最後はゼロになります。
資金繰り目的で解約するならば解約返戻金が保険積立金を上回る時期に解約するのが得策です。

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長期定期保険
長期定期保険として支払った保険料は、支払った保険料の2分の1が保険積立金となります。
これも時機に応じて返戻率が異なり、ある時期から解約返戻金が保険積立金を上回るので、その時期に解約するのが得策です。
しかし、その時期を過ぎると解約返戻金が保険積立金を下回り、最後はゼロになります。
養老保険
契約形態により、養老保険として支払った保険料の2分の1が保険積立金となります。
満期を迎えると満期保険金を受け取ります。
加入時期が長いほど返戻率は高まりますが、ほとんどの期間において、解約返戻金が保険積立金を上回っています。
がん保険
保険積立金はないものの、解約返戻金は常に増加していきます。
保険料は全額経費として処理するため、解約返戻金は雑収入として計上します。

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契約者貸付制度を検討する
しかし、保険を解約することで資金繰りに役立つとはいえ、加入当初も現在も必要な保険だから解約したくない事もあるでしょう。
- 解約返戻金を受け取ることによって納税が発生するため解約したくない
- 従業員に万が一の場合の保険なので解約したくない
このように、色々な理由から解約に抵抗がある場合も多いと思います。
この場合にも、保険を活用した資金繰りは可能です。
解約しなくとも、契約者貸付制度を利用することによって、資金繰りに役立てることができるのです。
契約者貸付制度とは、保険を解約することなく、解約した場合に受け取れる返戻金の80~90%(一般の保険会社は80%、外資系の保険会社は90%)を自由に使える制度のことです。
例えば、自社が資金繰りに困り、ある保険商品を見直した結果、2000万円の解約返戻金がもらえるとするならば、その80~90%にあたる1600~1800万円の資金を調達できるのです。
この制度を利用すれば、4~5日のうちに資金を調達できますから、緊急の資金需要にも対応可能です。


- 必要書類を揃える
契約者貸付申込書に記入し、発行後3か月以内の印鑑証明、保険証券を揃える。 - 提出する
保険会社の担当者に渡して本社に送ってもらう。 - 入金
3~4日のうちに手続きが完了し、4~5日のうちに現金が振り込まれる。
このように、非常にスピーディに資金を調達することができます。
このことから、保険積立金は外部留保されている資金と考えることもできます。
契約者貸付制度のメリット
契約者貸付制度のメリットは、上記の通り保険を解約せずにスピーディな資金調達ができるだけではありません。
以下のようなメリットを持っています。
返済条件がない
契約者貸付制度には、定まった返済条件がなく、返済条件は非常に緩く設定されています。
例えば、満期日に一括して清算してもいいですし、満期日以前に資金的に余裕ができた場合には繰上げ返済も可能です。
満期日に一括清算する場合には、満期日に受け取るべき保険金から借入金を差し引いて支払うことになります。
金融機関よりも金利が低い
金融機関で融資を受ける場合、長期プライムレートや短期プライムレートを適用して金利を計算します。
金融機関の独自のレートを利用するため、金利を低く抑えることは難しいです。
しかし契約者貸付制度の場合には、保険会社の保険の運用利率によって金利を計算します。
もちろん、保険の運用利率が高ければ金利も高くなるわけです。
しかし、運用利率と金利の差が0.5%程度になるように設計されており、昨今では運用利率は低くなっています。
そのため、金融機関よりも低金利での資金調達が可能となります。
固定金利である
また、契約者貸付制度は固定金利です。
このため、借入後に運用利率が高まったとしても、金利が上昇することはなく、契約時点での金利が維持されます。
したがって、運用利率が低いタイミングで利用していれば、低金利が適用され続けることとなります。

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まとめ
本稿で解説した通り、保険を利用すれば柔軟な資金調達が可能となります。
保険を見直し、今や必要ないと思える保険に加入しているならば、それを解約することによって解約返戻金を受け取るのが良いでしょう。
また、何らかの理由によって解約できない場合にも、契約者貸付制度を利用することによって、解約返戻金を根拠としたスピーディな借り入れが可能です。
資金調達が必要な際には、金融機関からの借り入れや資産の売却だけではなく、保険の見直しなども検討しましょう。
よりよい条件で活用できる資金調達を検討することが大切です。