ほとんどの会社では、税理士と顧問契約を結び、会計処理を任せていることでしょう。
そして、税理士は税務のプロであることから、全面的に信頼を寄せ、税理士の仕事内容に全く疑いを抱かない経営者もいると思います。
しかし、税理士はあくまでも税務のプロであり、経営のプロではありません。
このため、税理士の働きによって、税務的には問題ないとしても、経営的には好ましくない結果に陥ることもあります。
そのようなことにならないために、本稿では、税理士を正しく選ぶ方法と、税理士と正しい関係を築いていく方法を解説していきます。
良い税理士を選ぶときの2つのポイント
会社の節税について相談したり、決算書を作成してもらったりする必要から、会社と税理士の関係は密接なものにあります。
税理士に依頼しなくても税務処理が問題なく行なえる、規模が非常に小さい会社を除けば、ほとんどの会社が税理士と何らかの関係を持っていることでしょう。
しかし、税理士は正しく選ばなければ、本当に経営に役立つ働きを期待できない場合があり、むしろ経営に逆効果となってしまうこともあります。
そのため、税理士を慎重に選ぶことは、全ての会社にとって大切なことと言えます。

なにしろ、税理士は平成30年3月時点のデータで約7万7000人も登録されており、その膨大な数から自社に最適な税理士を一人だけ選ぶことは困難、というよりも不可能なのです。
したがって、税理士を選ぶ際には、少なくとも自社にとって不利益にならず、できるだけ多くの利益をもたらしてくれる税理士であることを条件と考えます。
そのためには、以下のポイントを踏まえながら、選んでいくのが良いでしょう。
ポイント1:知識が充分にあり、最新の知識も把握している税理士
そもそも、税理士に依頼する理由は、税理士の知識によって、経営にプラスとなるサポートを受けることです。
資金繰りに役立つ的確な節税を提案してもらったり、銀行からの融資に役立つ決算書を作ってもらったりする必要があります。
そのためには、充分な知識を備えていることは最低限の条件と言えます。
税理士になるためには、難易度の高い国家試験をクリアする必要があるため、ほとんどの税理士は知識に問題がないはずだと考えている人もいると思います。
しかし、税務の知識はあっても会社経営の知識はなく、税務的には好ましくとも経営的には好ましくないアドバイスをしてしまう税理士は非常に多いものです。

そのため、あまり知識のない税理士は、変更前の税制の知識しか持っておらず、不適切な税務処理をしてしまうこともあります。
最新の知識を身に着けているかどうかということは非常に重要であるものの、税制の変化を常に追い続けられる税理士は、それほど多くありません。
このため、常に最新の知識を持っているかどうかを基準に選べば、少なくともこの点においては問題のない税理士を見つけることができるでしょう。
税理士の知識について知るためには、税理士事務所のサイトのコラムや、税理士のブログ記事、書籍、ニュースレターなどが参考になります。
ポイント2:コミュニケーションが取りやすい税理士
次に重要なポイントは、「コミュニケーションが取りやすいか」という点です。
知識のない税理士は問題外ですが、知識が十分にある税理士を選んだとしても、コミュニケーションを取りにくいならば、十分な貢献は期待できません。

- 聞きたいことがあって連絡しても、多忙のためなかなか連絡が取れない
- 面談しても、十分な時間を取ってくれない
- 質問をしても、丁寧に説明してくれない
- 何となく偉そうな態度に感じられて質問がしにくい
このような理由で、コミュニケーションが取りにくい税理士であれば、
- 質問したいことがあっても満足にできない
- 十分に相談に乗ってもらえない
- 会社側の要望をきちんと伝えられない
などの不都合が生じ、したがって十分な働きも期待できません。
この点に関しては、顧問契約のために面談したとき、感覚的に分かると思います。
安易な顧問契約はNG!税理士は慎重に選ぼう
顧問契約を前提として税理士と面談してみて、知識やコミュニケーションに問題を感じたならば、契約する必要はありませんし、契約してはいけません。
そもそも、税理士に期待する働きとは、正しい節税に取り組んだり、融資対策に役立つ決算書を作ってもらったりすることで、会社の資金繰りにプラスになることです。
しかし、役立たない税理士に依頼してしまうと、このような効果は期待できず、場合によってはマイナスの効果を生む可能性があります。

だからこそ、「この税理士ならば問題ない」という確信を持てない以上、安易に顧問契約を結んではいけないのです。

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【要チェック】税理士報酬はこんな時に変化する!
税理士と顧問契約を結ぶと、税理士報酬を支払う必要があります。
税理士報酬は、税理士への依頼内容によって変わります。税理士報酬は、主に以下のような場合に変化します
帳簿の入力
税理士に帳簿のチェックと入力を依頼すると、税理士報酬が発生します。
税理士報酬を削減するために、会社側で帳簿の入力をした場合には税理士報酬は安くなります。
しかし、帳簿の入力に問題があれば、試算表や決算書の作成にあたって、税理士が帳簿を全てチェックしなければならないこともあります。
その場合には税理士の手間が増えた分だけ税理士報酬が高くなるのが普通です。
訪問頻度
訪問頻度によっても、税理士報酬が変わります。
税理士の訪問は、毎月(年12回)、隔月(年6回)、四半期(年4回)、決算時(年1回)などのパターンがあり、会社の必要に応じて訪問頻度は変わります。
訪問頻度が高ければ、それに伴って税理士が費やす時間も増えますから、税理士報酬は高くなります。
会社規模
会社の規模によっても、税理士報酬は変わります。
例えば、資本金1億円を境に中小企業であるかどうかの区別がなされますが、資本金1億円以上の会社では、税務処理の専門性が高くなることから、税理士報酬は高くなります。

一般的に、売上が大きい会社は節税の必要性も大きいです。
また節税に当って取り扱う額も大きくなり、節税にあたる税理士のリスクは高くなります。
そのため売上規模が大きくなるにつれて税理士報酬も高くなります。
その他
このほか、税理士に依頼する作業が多くなるほど、税理士報酬は高くなります。
税理士に依頼する作業の最小単位は、一般的には試算表や決算書の作成だけです。
この他に源泉徴収票の作成、資金繰り表の作成などの作業を追加で依頼する場合には、その内容に応じて税理士報酬が高くなります。

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税理士報酬をケチると却って損をする
以上のように、依頼内容に応じて税理士報酬は高くなります。
そのため、経費削減のために税理報酬をできるだけ安くしたいと考える会社も少なくありません。
しかし、税理士報酬を削減する場合には、それが果たして妥当な削減であるかどうかを、慎重に考える必要があります。
そもそも税理士は、税理士報酬によって利益を得ているのですから、受け取った報酬の範囲内で作業する必要があります。
そのため、税理士報酬をケチる会社では、ケチった範囲内だけでの働きしか期待できなくなり、満足な対応が受けられなくなる可能性もあります。
せっかく知識もあり、コミュニケーションも取りやすい税理士を選んだとしても、税理士報酬をケチってしまえば、受けられるサポートの範囲は狭くなります。
書類の作成にあたって、アドバイスの余地があっても機械的な作業に止まったり、質問や相談があってもそれほど丁寧に対応してくれなかったりするのです。
例えば、税理士報酬をケチることで、訪問頻度を決算期の年1回に減らしたとすれば、期中に取り組むべき節税策があったとしても、情報の提供が受けられない可能性が高いです。
それなりの頻度で面談していれば、節税情報を得られるかもしれませんし、効果的なアドバイスを受けられるかもしれません。
このように、税理士報酬を過度にケチってしまうと、結果的に損をする可能性があります。
税理士報酬をケチって10万円の削減に成功したとしても、20万円の価値がある情報やアドバイスを逃してしまえば、結果的に10万円の損になってしまうのです。

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税理士は全面的に信用してはならない
さて、知識があり、コミュニケーションも取りやすく、さらに税理士報酬もきちんと支払っているならば、税理士は全面的に信用できるのでしょうか。
実は、そうでもありません。なぜならば、知識がある税理士といっても、それは税務に関する知識が豊富なだけで、必ずしも経営にプラスになる知識であるとは限らないからです。
そのような知識を背景としている税理士ならば、いくらコミュニケーションが取りやすかったとしても、全面的に信用できるとは言いがたいでしょう。
もちろん、税理士報酬をケチらずに支払っていた場合にも同じです。

当然、銀行が融資の判断をする際には、この決算書をよりどころとします。
銀行は、融資をすることで利益を得ているのであり、銀行員も間違いのない融資を通すことで評価を得ています。
つまり、貸せる相手ならばいつでも貸したいと考えています。
ここでいう「貸せる相手」とは、きちんと返済してくれる会社のことです。
つまり、決算書を見た時に、返済に充てられる利益がきちんと出ており、将来的にも利益を出し続けるだろうと思える会社のことです。
しかし、税務だけに明るい税理士が作った決算書には、銀行が好ましくないと考える決算書が少なくありません。
税金から逃れるためにわざと赤字決算になっていたり、債務超過になったりしている場合が多いのです。
税理士を信頼しすぎて失敗した例
例えば、こんな例があります。
ある会社では、税理士を全面的に信頼して、会計処理を任せていました。
その結果、出来上がった決算書は債務超過に陥っていました。
税理士としては、言われた通りに機械的な会計処理をし、決算書を作っただけであり、債務超過は危険であることや、債務超過を解消するためのアドバイスもありませんでした。
債務超過に陥っている会社は、銀行から融資を受けることが困難になります。

困った社長が経営コンサルタントに相談して決算書を見せると、社長から会社に貸した貸付金が債務超過額以上にあることが分かりました。
もし、この税理士が税務だけではなく経営についてもいくらかの知識があり、債務超過では融資を受けられずに困るということも考慮していたとすれば、
社長にアドバイスして貸付金を放棄させ、債務超過を解消したうえで決算書を作成していたことでしょう。
しかし、この税理士は税務に関する当たり前の知識によって、当たり前に会計処理を行っただけでした。
その後この会社は、社長が貸付金を放棄することで債務超過状態を解消しました。
それでも、債務超過の決算をした過去があることで融資を受けにくくなり、資金繰りに苦労することとなりました。
税理士を信頼しすぎると赤字決算となる
また、赤字決算に陥っている中小企業が多いことも、税理士を信頼しすぎたことが原因です。
確かに、赤字決算に陥った場合には、会社は税金を支払う必要がなくなります。
支払う税金を少なくすることを目的に税理士を雇っているのですから、ある意味で税理士は目標を達成したとも言えます。
また、あまり知識のない経営者ならば、税理士から
「赤字にすれば税金は支払う必要がなくなりますし、赤字分は9年間にわたって繰り越すことができます。
来年以降、利益が出ても相殺できますから、支払う税金を減らすことができます」
などと言われれば、ラッキーとばかりに赤字決算に満足します。
このような理由から、中小企業には赤字決算の会社が非常に多いのです。
赤字決算の問題点
しかし、そのような決算書を作ったことによって、銀行からの評価は低くなり、融資を受けられなくなってしまうならば本末転倒です。
そのような事例が非常に多いことを知り、税理士を全面的に信頼することは避けるべきです。

少しでも黒字を出している会社と、少しでも赤字を出している会社があるならば、銀行は黒字の会社を圧倒的に高く評価します。
利益は大きいほど好ましいのですが、そもそも中小企業は利益を出し続けることが困難ということが前提にあります。
利益が少ない年があっても、継続して黒字を出し続ける会社は高く評価されるのです。
このように、銀行は赤字の決算書を非常に嫌います。
既に取引のある銀行では、信用さえあれば追加融資を出したいと考えているのですが、赤字の決算書を出されてしまうと、追加融資も困難になります。
せっかく融資の可能性があるのに、安易に税理士を信頼したことで、その可能性を潰してしまうのです。
もし、経営に関して少しでも理解のある税理士ならば、銀行からの評価も考慮して決算書を作るでしょう。
例えば、本来赤字に陥りそうな会社でも、「これで税金を納めなくてよくなる」と喜ぶのではなく、「融資対策のために、なんとかして黒字にしなければ」と考えて会計処理に変更を加え、黒字に持ち込もうとします。
会計処理に変更が加えられていたとしても、それがあまりに問題あるものでなければ、黒字の決算書として認められ、融資を受けやすくなることも多いです。
少なくとも、会計処理を変えて黒字に持ち込んだA社と、常識通りに処理して赤字に陥ったB社があれば、銀行員は確実にA社に融資したいと考えます。
万が一、その融資が回収困難になり、融資を担当した銀行員が責任を追及されることになっても、黒字決算だったから問題ないと判断したという説明もできるからです。
赤字決算の会社に融資して貸し倒れとなれば、言い訳は不可能です。
節税対策には注意する
税理士の多くは、税務の知識だけから会計処理を行います。
節税には積極的に取り組み、利益を圧縮して納税額を減らそうとしますが、それが会社の首を絞めることもあるのです。
会社にとって、現金は最も重要な経営資源のひとつですが、節税の名のもとに現金の流出を招いていることが非常に多いです。
無駄な節税を辞めれば、まともに税金を払っても手元に資金が残ります。
それによって資金繰りがラクになるにもかかわらず、とにかく納税額を減らすことだけを考えてしまうのです。

また、赤字決算に持ち込めば、納税額を減らすという意味では最も良い結果を得たことになりますが、融資が厳しくなり、ここでも会社の首を絞めることになります。
- 節税のため現金の流出を招いて資金繰りが困難になる
- 資金繰り困難な時にこそ必要となる融資が受けられなくなる
- 資金繰りが行き詰ってしまう
したがって、本当に良い税理士とは、次のような税理士です。
- 効果のある節税だけを取り入れる
- 無駄な節税はせずに手元資金の流出を防ぐ
- 赤字決算ではなく黒字決算になるための工夫をしてくれる
黒字のために決算内容に手を加えれば、程度によっては粉飾とみなされることもあるかもしれません。
しかし、許容範囲の変更であれば粉飾とみなされることはありませんし、粉飾に近いようなグレーな処理をしていたとしても、赤字決算よりはマシです。
また、会計処理に手を加えすぎると、税務署がうるさいと思う人もいるかもしれませんが、黒字決算のために手を加えるならば問題はありません。

しかし、黒字決算のために会計処理に手を加えた場合、本来は取れなかった税金が取れるようになるのですから、税務署は何の文句もありません。
税理士はパートナー
有能な税理士を選ぶためには、
- 知識とコミュニケーションに問題がない税理士を選び
- 税理士報酬は適切に支払い
- さらに経営にプラスになるという視点から会計処理ができる税理士を選ぶ
ことが重要です。
そのように選んでこそ、会社が安定感のある経営をし、順調に発展していくために、税理士が心強いパートナーとなってくれるのです。
もし、顧問契約をしている税理士に経営の知識がなく、銀行対策に役立たないことばかりしているようならば、すぐに税理士を変える必要があるでしょう。
また、新たに顧問契約をした税理士に対しても、全面的に信頼するのではなく、経営に役立つ会計処理を積極的に求めていきましょう。
税理士の知識と経営者の経験をうまく合わせて戦っていける関係を築いていくべきです。

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まとめ
税理士は、会社経営に必要不可欠な存在です。
しかし、税理士の能力には大きく差があり、選び方を間違えると経営にプラスにならないことがあります。
むしろ、税理士の働きによって、銀行からの評価が大きく下がって融資を受けられなくなり、経営にマイナスになることもあるのです。
したがって、税理士を選ぶ際には、本稿で紹介した通りに知識とコミュニケーションの両面から選んでいき、しかし全面的に信頼することなく、経営にプラスになる協力を求めていくべきです。
経営にプラスになる仕事を税理士に求めるためには、経営者自身が豊富な知識を持ち、税理士のアドバイスを取捨したり、具体的な要求をしたりすることも必要です。
そのためにも、当サイトの記事が役立てば幸いです。
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