手形は、支払いを先送りすることができる便利なツールです。しかし、約束した期日に支払えなかった場合には、手形は不渡りとみなされ、取引先や銀行から大きく信用を失うこととなります。
特に、6ヶ月以内に2回の不渡りを起こせば、事実上の倒産となります。
手形の不渡りを起こすと、具体的にはどのような影響を及ぼすのでしょうかまた、不渡りを避けるためには、どのような対策をすべきなのでしょうか。
手形と不渡り
約束手形とは、取引の際に現金で取引をするのではなく、その代金を後日支払うことを約束するにあたって振り出される手形のことです。
この時に約束した支払期日には、支払代金を口座に振り込んでおき、手形の代金がきちんと決済されるようにしておく必要があります。
もし、口座に充分な資金がない場合には決済することができず、その手形は「不渡り」となります。

当然ながら、不渡りを出した会社は、銀行からも取引先からも信用を失い、会社の存続にも大きな悪影響をもたらします。

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1回の不渡りで会社はどうなる?
もっとも、不渡りを出したからと言って、会社がすぐに倒産してしまうことはありません。
倒産につながるほどの影響をもっているため、「不渡り=倒産」という勘違いをしている人もいるのでしょう。
しかし、法律上は1回の不渡りで倒産することもありませんし、銀行口座が凍結されたり、会社や経営者の資産が差押えに遭ったりすることもありません。
手形と不渡りを法律的に考えてみると、1回の不渡りを起こしたとしても、会社はそれまでと変わらず事業を継続することができます。
ただし、これはあくまでも法律上の話であって、外部環境や経営環境という観点から言えば、それまでと全く変わらない事業が継続されるとは考えにくいです。
では、1回目の不渡りを起こした会社にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。
信頼を失い多くの取引先から警戒される
不渡りを起こした際には、外部環境は確実に変化します。
まず変化が起きるのは、手形の受取人である取引先の会社でしょう。
取引先からすれば、手形が不渡りになったということは、入ってくるはずのお金が入ってこなかったということです。
中小企業では、資金繰りに余裕がある会社はそれほど多くはありませんから、手形の不渡りを起こしたことで、取引先の資金繰りが圧迫される可能性も十分にあります。
取引先は、手形の不渡りによって資金繰りが悪化することとなり、資金調達に奔走しなければならなくなるかもしれません。
最悪の場合、その手形が決済されなかったことで資金ショートを起こし、買掛金の決済や手形の支払い、銀行への返済などができなくなり、経営が立ち行かなくなる可能性もあります。
このように、手形の不渡りを起こすということは、手形の受取人に多大な迷惑をかけることでもあります。

その後も取引を継続するためには、
- 現金取引でなければ取引してもらえなくなったり
- 掛け取引にしても決済までの期間が短く設定されたり
- 小型の取引でなければ応じてくれなくなったり
と、不利な条件でなければ取引を継続してもらえなくなる可能性が高いです。
また、手形の不渡りを起こした事実は、何らかの形で広まることとなり、多くの会社から警戒される可能性も高いです。
どんな会社でも、貸し倒れの危険性は避けたいと考えるものですから、実際に不渡りを起こしたことがない取引先も取引から撤退したり、不利な条件でなければ取引してくれなくなったりすることも多いです。
このように、手形の不渡りを起こすことによって、様々な取引先からの信用を失い、取引環境が悪化することとなります。
そもそも、会社の経営環境や財務状況などが悪かったために、1回目の不渡りを起こしているのですから、そのような会社が取引環境の悪化に遭えば、事業が立ち行かなくなって倒産する可能性も高いといえます。
全国の銀行に知られてしまい警戒されてしまう
不渡りを出すということは、手形の支払いに指定されていた口座から引き落としがされなかったということであり、支払銀行は不渡りの事実を知ることとなります。
この時銀行は、手形交換所に不渡届を出し、手形交換所は不渡報告を掲載し、全国銀行協会に通知します。
全国銀行協会とは、銀行業の健全な発展のために、ルールを制定したり、様々な情報を共有したりする機関です。

つまり、手形の支払銀行から手形交換所へ、手形交換所から全国銀行協会に不渡りが報告されると、全国の全ての金融機関が不渡りの事実を把握することとなります。
このほかにも、不渡報告は全国の手形交換所、全国銀行協会が運営する全国銀行個人信用情報センターなどの、関連する多くの機関で共有されます。
このため、1度でも不渡りを起こした会社は、全国の金融機関から警戒されることとなります。
もちろん、法律上は、不渡りを起こした会社と銀行が付き合ってはならないとするものではなく、単に不渡りを報告することで注意を促がすものでしかありません。
そのため、1回の不渡りを起こしたことで口座が凍結されることはありませんし、入出金や当座取引も可能です。
とはいえ、不渡りの事実が銀行に知れ渡ってしまうことで、信用の低下は免れません。
既に融資を受けている銀行からは、返済が滞る危険性があると警戒されることになりますし、追加融資を受けることが困難になります。
融資を受けていない銀行からも、返済能力が低いと見なされ、新規融資を受けることが困難になります。
したがって、手形の不渡りを1度でも起こしてしまった会社は、それ以降、銀行から融資を受けることが困難(ほぼ不可能)となります。

上記のように、手形の不渡りを1回でも起こした会社は、取引先や銀行などの態度が悪化し、外部環境が悪化し、経営環境全体の悪化につながってしまうことが分かります。
これが、手形の不渡りは絶対に起こしてはならないとされ、「不渡り=倒産」というイメージを抱かれやすい理由でもあります。
実際、不渡りを起こしてしまったことで、倒産は時間の問題となるケースも多々あります。

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6ヶ月以内で2回の不渡りを起こすと「事実上の倒産」
1回の不渡りだけでも、経営には大きな打撃となることが分かりました。
では、2回の不渡りを起こした場合にはどうなるのでしょうか。
2回の不渡りを起こすケースには、短期間のうちに2回目の不渡りを起こすケースと、ある程度の期間を経て2回目の不渡りを起こすケースが考えられます。
より重大なのは前者で、6ヶ月以内に2回目の不渡りを起こすケースです。
通常、6ヶ月以内に2回目の不渡りを起こすと、「事実上の倒産」になるとされています。
あえて「事実上の」と書かれているわけですが、法律上は6ヶ月以内に2回目の不渡りを起こしても、法律的な倒産に至るわけではありません。
このように、6ヶ月以内に2回の不渡りを起こした会社は、法的強制力を以て倒産させられるわけではありませんし、経営継続のための資金さえあれば倒産することはありません。
しかし、倒産の定義とは、債務の返済が不可能となり、経営を続けることが不可能な状態を指します。
そもそも、資金がないからこそ6ヶ月以内に2回の不渡りを起こしたと考えれば、これを以て「事実上の倒産」とみなされることが理解できるでしょう。
また、6ヶ月以内に2回目の不渡りを起こした会社は、手形交換所から当座取引停止処分を受けることになります。
これは、その名の通り当座取引を停止する処分のことであり、その後2年間にわたり、当座預金による取引ができなくなります。

当座取引停止処分を受けると、取引停止報告が全国の銀行に共有されます。
これによって、1回目の不渡り以上に警戒されることとなります。
もちろん、当座取引停止処分を受けても、停止されるのは当座勘定取引だけです。
普通口座での入出金は可能であり、現金決済や掛け取引は可能です。
しかし、1回目の不渡り以上に、取引先や銀行の対応が悪化するのは言うまでもなく、事実上の倒産は免れないと言えるでしょう。
6ヶ月以内に2回の不渡りを起こさなかったとしても・・・
なお、当座取引停止処分を受けるのは、あくまでも6ヶ月以内に2回の不渡りを起こした場合に限られます。
1回目の不渡りを起こしてから、何事もなく6ヶ月が経過すれば、1回目の不渡りで出された不渡報告は効力を失うためです。
このため、1回目の不渡りを起こしてから7ヶ月目以降に2回目の不渡りを起こしたとしても、2回目の不渡りは「1回目の不渡り」として「不渡報告」が出されるだけで、当座取引停止処分を受けることはありません。
その後、6ヶ月以内に2回目の不渡りを出せば、当座取引停止処分となります。
しかし、再び7ヶ月以上を経てから起こした不渡りならば、実際には3回目の不渡りであっても、1回目の不渡りとして処理されます。
とはいえ、これはあくまでも手形交換所の対応がどうかということであって、銀行や取引先も問題ないと見なすわけではありません。
2回目の不渡りを起こしたのが、1回目の不渡りから6ヶ月以内でも1年後でも、取引先や銀行からすれば、どちらも「過去に2回の不渡りを起こした会社」にすぎず、その後の関係が悪化することは避けられません。
また、不渡報告が効力を失っても、信用情報機関には不渡り情報が記録として残るため、銀行からの借り入れや法人カードの利用は困難となります。

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不渡りへの対策
上記のように、不渡りを起こした会社は経営環境の悪化を避けられず、6ヶ月以内に2回の不渡りを起こしてしまうと、当座取引停止処分を受け、事実上の倒産とみなされます。
不渡りを起こすことは何としても避けるべきだと言えますが、1度でも不渡りを起こさない、あるいはせめて2回目の不渡りを避けるために、有効な対策にはどのようなものが考えられるでしょうか。
有効な対策としては、次の3つの方法が考えられます。
- 決済期日をバラバラにしない
- 融資を受けていない銀行口座をキープする
- 手形取引を振り出さない
決済期日をバラバラにしない
まず、手形の決済期日をバラバラにすることを避けるべきです。
これは、例えばある月の15日と20日と25日に3回の手形決済があるような状況です。
このような場合、支払期日が短期間で複数日に分散していることで、手形の管理が煩雑になります。
その結果、把握できていなかったために決済がなされず、不渡りに陥ってしまうことがあります。
うっかり把握していなかったことによって不渡りを起こし、様々な信用不安を起こしてしまうことは避けなければなりません。
また、支払期日がバラバラになっているのですから、ごく短期間のうちに複数回の支払いをしなければなりません。
1回目の支払いによって資金が減り、その後も短期間のうちに連続して支払いが発生すれば、支払いに耐えられなくなる可能性があります。
これによって、連続する支払いのどこかで1回目の不渡りを起こしてしまう可能性が高まります。

このような状況では、15日の支払いをできても20日の支払いができません。
20日の支払いから僅か5日後の25日の支払いもできず、ごく短期間に2回の不渡りを起こしてしまい、当座取引停止処分を受ける危険があるのです。
以上のことから、手形の支払期日はできるだけまとめることが大切です。
支払期日をまとめていれば、手形の管理が簡単になり、うっかり不渡りを起こしてしまうことがありません。
用意すべき決済代金をきちんと用意しておき、不渡りを避けることができます。
また、資金不足によって1回の不渡りを起こしてしまう場合にも、決済期日を1日にまとめていれば、1回の不渡りで済みます。
たとえ、同じ日の手形Aと手形Bが不渡りになったとしても、不渡りは1回としてカウントされます。
このため、決済期日をバラバラにすることで2回の不渡りを起こすのではなく、1日にまとめることで1回の不渡りに食い止めることができるのです。
このことから、決済期日を短期間でバラバラにするのは大変危険であり、できるだけ1日に集中させることが重要だと言えます。
融資を受けていない銀行口座をキープする
融資を受けている銀行に対して、返済困難になって延滞を繰り返すと、その銀行は融資引き上げのために、ほぼ間違いなく預金口座を凍結します。
これにより、もし借入先の銀行で手形の決済口座を設けていたとすれば、手形決済用の口座も同時に凍結されることとなります。
よく、借入先の銀行との付き合いの中で、借入先の銀行で手形決済用の口座を設けることがあります。


この理由を、簡単に説明してみましょう。
A銀行から融資を受けていたB社は、返済困難に陥り、A銀行から口座をロックされることとなりました。
しかしB社は、取引先のC社に手形の支払いをしなければなりません。
そこで、手形の決済口座もA銀行に指定していたため、決済代金の100万円をA銀行の決済口座に振り込みました。
しかしA銀行は、100万円の入金があったと知ると、それを返済資金としてすぐに抑えてしまいます。
その結果、C社への手形の決済も不可能となり、不渡りを起こしてしまうことになります。
このように、借入先の銀行に手形決済用の口座を設けていると、銀行への返済が困難になった場合に、容易に不渡りを起こしてしまうことになります。
短期間で2回以上の不渡りを起こす可能性も高く、事実上の倒産に至る危険性も高いです。

そうすれば、借入の返済が困難になって口座が凍結されても、別の銀行では口座が凍結されているわけではありませんから、手形の決済は可能です。
一つの銀行に対して返済困難になったとしても、生き延びられる可能性が断たれるわけではありません。
しかし、借入先の銀行に手形の決済用口座に設けていると、手形の不渡りにつながり、倒産を避けられなくなってしまいます。
このような事態を避けるためには、借入のない銀行口座を手形決済に利用することが大切です。
不渡り後の対策として、借入のない口座に資金をストック?
また、6ヶ月以内に2回の起こすと、当座取引停止処分を受け、その情報が全国の銀行に共有されます。
この時、借入のある銀行では、返済状況にかかわらず、口座の凍結に動きます。
上記の通り、当座取引停止処分を受けた会社は、事実上の倒産とみなされます。
融資している銀行からすれば、貸し倒れになる危険性が高いわけですから、少しでも被害を抑えるべく、口座を凍結して融資の回収に動き出すのです。
ただし、融資を受けていない銀行では、当座取引停止処分を受けたとしても口座を凍結することはなく、入出金その他の取引を自由に行うことができます。
このため、「当座取引停止処分に備えて、借入のない銀行に資金をストックしておくべき」などと勧める専門家もいます。
確かに、借入のない銀行にいくらかの資金をストックしておけば、当座取引停止処分を受けてからも口座を凍結されることなく、事業を継続できるかもしれません。

そもそも、借入のない銀行の口座に資金をストックしているならば、その資金を使って不渡りを避けるべきであり、不渡りを起こした後に資金がストックされているという状況は現実的ではないからです。
もし、不渡りを起こした後に、借入のない銀行口座に資金がストックされているから事業を継続できるというならば、それはもはや本末転倒と言うべきです。
したがって、借入先と別の銀行を手形の決済用口座にするということは、不渡り後の対策としてではなく、あくまでも返済困難によって銀行口座を凍結された場合の対策だと考えてください。
手形を振り出さない
このほか、不渡りを避けるためのもっと根本的な対策としては、手形を振り出さないということが挙げられます。
手形を振り出さなければ、手形決済をすることもなく、手形が不渡りになることもありません。
不渡りが100%起きないようにするためには、この方法しかありません。
資金繰りが厳しい時には、支払いを先送りするために、手形を使いたいと思うかもしれません。
しかし、そのような場合にも、掛け取引によって手形を避けるのです。
掛け取引をすれば、支払期日に買掛金を支払うわけですから、「後日の支払期日に代金を支払う」という意味では手形と何ら変わりません。
しかし、買掛金の支払いがどうしてもできない場合には、取引先と交渉することで支払いを延ばしてもらえる可能性があります。
一方、手形の支払期日は絶対であり、取引先との交渉でどうなるものでもなく、とにかく支払期日までに口座に代金を振り込むことができなければ、不渡りとみなされてしまいます。
したがって、手形は絶対に振り出さず、即金や掛けでの取引だけにすると決めておけば、不渡りが起きることは絶対にありません。
これこそが、不渡りを防ぐための最高の方法だと言えます。

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まとめ
手形の不渡りを起こしてしまうと、たったの1回でも大きく信用を失うこととなり、その後の資金繰りが困難となります。
6ヶ月以内に2回目の不渡りを起こしてしまえば、事実上の倒産を免れません。
そのようなことにならないためには、本稿で紹介した通り、手形の決済期日を工夫したり、手形の決済用口座を借入のない銀行に指定したり、できることならば手形取引そのものを廃止してしまうのが良いでしょう。
本稿が、手形取引を見直すきっかけとなれば幸いです。
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