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ファクタリングは違法?合法となる条件と「貸付け」と判断された裁判例一覧

最終更新 公開 約22分で読めます 執筆:アンドファクタリング運営事務局

広告なし・一次情報にもとづく解説です。編集方針

この記事の要点

  • ファクタリングは法的には売掛債権の売買(債権譲渡)であり、金融庁も「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しているため、ファクタリングという取引そのものは違法ではない。
  • 契約書が債権譲渡の形式でも、償還請求権や買戻しの約束があるなど経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引は、貸金業法の「貸付け」に当たるおそれがあり、無登録営業には10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金が定められている。
  • 金融庁は、ファクタリングが貸金業に当たらないと判断された裁判例2件と、貸付けなどと判断された裁判例5件を紹介しており、判断の分かれ目は回収の仕組み、償還請求権・買戻しの有無、表明保証の範囲などである。
  • 最高裁判所第三小法廷は令和5年(2023年)2月20日の決定で、個人の賃金債権を買い取る給与ファクタリングの金銭の交付は、貸金業法と出資法の「貸付け」に当たると判断した。
  • 手数料が何%を超えると違法になるという数値基準は法令にも金融庁の資料にもないが、貸付けと判断されれば手数料は名目を問わず利息とみなされ、たとえば手数料10%・期日まで30日の取引は年率換算で約135%となり出資法の上限(年109.5%)を超える。
早わかり表
法律上の性質債権の売買(債権譲渡、民法466条)。金融庁も「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明
違法になる典型実態が貸付けなのに貸金業の登録がない、または上限金利を超えている
判断の3つの軸回収の仕組み(売主に回収を任せ未回収分を払わせるか)/償還請求権・買戻し/表明保証の範囲
金融庁が紹介する裁判例売買と判断2件、貸付けなどと判断5件(2026年9月確認)
給与ファクタリング最高裁第三小法廷 令和5年2月20日決定(令和4年(あ)第288号)で「貸付け」に当たると判断
手数料の数値基準何%を超えると違法という基準は法令にも金融庁資料にもない
貸付けと判断された場合手数料は利息とみなされ、利息制限法(年15〜20%)と出資法(業として年20%・年109.5%)が適用
目次
  1. ファクタリングは違法か:結論
  2. ファクタリングの法律上の位置づけとは
  3. どんな場合に「貸付け」と判断されるのか:判断フロー
  4. 「貸付け」と判断されると何が起きるのか
  5. 裁判例一覧:売買と認められた例と、貸付けと判断された例
  6. 裁判例から読み取れる判断要素
  7. よくある誤解:「ノンリコースなら安全」「2社間は違法」
  8. 公的機関はファクタリングについて何と言っているか
  9. 手数料が高いと違法になるのか:年率換算で確かめる
  10. 給与ファクタリングが「貸付け」とされる理由
  11. 契約前に確認したい8つのポイント
  12. 違法の疑いがあるときの相談先

ファクタリングは、法的には売掛債権の売買(債権譲渡)であり、取引そのものは違法ではありません[1]。ただし、契約書の名目が「債権譲渡」でも、償還請求権(売掛先が払わないときに利用者が支払う義務)や買戻しの約束によって実態が貸付けと判断されると、貸金業法・出資法・利息制限法の規制を受けます[1]。この記事では、金融庁が紹介する裁判例7件と、給与ファクタリングに関する最高裁判所の2023年の決定などを1つの表にまとめ、違法と合法の境目になる判断要素を条文と判決文にもとづいて整理します。

ファクタリングは違法か:結論

ファクタリングが違法かどうかは、契約の名前ではなく取引の実態で決まります。「ファクタリング=違法」も「ファクタリング=法律の規制がないから安全」も、どちらも正確ではありません。

金融庁は、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」と定めた取引でも、経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあるとしています[1]。一方で金融庁は、業者が償還請求権を持たず、売掛先の不払いリスクを業者が負っていた取引について、貸金業法の適用を否定した裁判例も紹介しています[1]。同じ「ファクタリング」という名前でも、中身によって法的な評価が正反対になるということです。

判断の分かれ目は、大きく3つの軸に整理できます。いずれも、売掛先が払わなかったときの損失を最終的に誰が負うのか、という問いに行き着きます。

取引の実態 裁判例・行政の評価 根拠
償還請求権がなく、売掛先の不払いリスクを業者が負う 債権の売買と判断され、貸金業法の適用が否定された例がある 東京地裁令和2年9月18日判決、東京高裁令和4年6月15日判決(金融庁が紹介)[1]
回収を売主に任せ、回収できなければ売主が買い戻す・自己資金で払う 貸金業に該当するおそれがある 金融庁の注意喚起[1]
ノンリコースと書かれていても、売掛先の支払能力を売主に表明保証させる 金銭消費貸借と判断された例がある 東京地裁令和4年3月4日判決(金融庁が紹介)[1]
個人の給与(賃金債権)を買い取り、本人から回収する 業として行えば貸金業に該当し、最高裁も「貸付け」と判断 金融庁回答[10]、最高裁決定[7]

ファクタリングは民法上の債権譲渡で、お金を借りて返す金銭消費貸借とは別の契約です。ただし貸金業法と出資法は「貸付け」を広く定義しているため、ファクタリングが「貸付けに類する方法」に当たるかどうかが問題になります。

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しています[1]。債権の売買を支えるのは民法で、民法466条1項は「債権は、譲り渡すことができる」と定めています[3]。

一方、貸金業法2条1項は、貸金業の対象となる「貸付け」に、手形の割引や売渡担保などの方法による金銭の交付を含めています[4]。出資法7条も、同じ方法による金銭の交付を金銭の貸付けとみなします[5]。つまり、契約の形式が売買でも、経済的な機能が手形割引や売渡担保と同じなら、貸付けとして扱われる余地があります。

比較の観点 真正なファクタリング(債権の売買) 貸付け(偽装ファクタリングを含む)
法的な根拠 民法466条以下の債権譲渡[3] 金銭消費貸借、または貸金業法2条1項の「これらに類する方法」[4]
売掛先が払わないときの損失 原則として業者が負う 利用者が買戻しや自己資金での支払いで負う
業者の登録 債権の買取りそのものに登録制度はない 貸金業の登録が必要(貸金業法3条)[4]
手数料の扱い 債権の売買代金と額面の差額 名目を問わず利息とみなされる(利息制限法3条、出資法5条の4第4項)[6][5]
上限金利 直接の適用はない 利息制限法(年15〜20%)、出資法(業として年20%、年109.5%)[6][5]

どんな場合に「貸付け」と判断されるのか:判断フロー

貸付けと判断されるかどうかは、売掛先の不払いリスクが実質的に業者へ移っているかで決まります。次のフローは、金融庁の注意喚起と裁判例で使われた判断要素を、確認の順番に並べたものです。

  1. 対象は個人の給与(賃金債権)か。 はいの場合、業として行えば貸金業に該当します。最高裁も「貸付け」に当たると判断しました[7][10]。
  2. 売掛先が払わないとき、利用者が買い戻す、または業者に自己資金で払う定めがあるか。 はいの場合、金融庁は貸金業に該当するおそれがあるとしています[1]。
  3. ノンリコースと書かれていても、実質的に利用者が保証していないか。 売掛先に支払停止や破産原因がないことの表明保証、債権額以上を支払う公正証書などがあれば、貸付けと判断された例があります[1]。
  4. 利用者が事実上、買い戻さざるを得ない状況か。 譲渡の通知を留保し、発覚を避けるために利用者が買い戻すしかない場合は、貸付けや公序良俗違反と判断された例があります[1][7]。
  5. 業者が実質的にリスクを負っていない債権・期間ではないか。 支払日までの期間が短く不履行の可能性が極めて低い場合に、貸付けと判断された例があります[1]。
  6. 金銭の授受が債権の額面と結びついているか。 額面と無関係に金銭を授受していた取引は、金銭消費貸借に準じると判断されました[8]。
  7. 1〜6のいずれにも当たらず、売掛先の不払いリスクを業者が負っているか。 この場合は、貸金業法の適用が否定された裁判例に近い形です[1]。

「貸付け」と判断されると何が起きるのか

ファクタリングが貸付けと判断されると、業者には刑事罰が、契約には上限金利による無効が及び、利用者は払いすぎたお金の返還を求められる可能性が出てきます。手数料は、名目を問わず利息とみなされます[5][6]。

規制 内容(2026年9月時点の条文) 根拠条文
無登録営業の禁止 登録なく貸金業を営むと、10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金(併科あり) 貸金業法11条1項・47条[4]
高金利の処罰(業として) 年20%を超える利息の契約・受領・要求は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金。年109.5%を超えると10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金 出資法5条2項・3項[5]
契約そのものの無効 貸金業を営む者が年109.5%を超える利息の契約をすると、消費貸借契約自体が無効 貸金業法42条1項[4]
利息の上限 元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%。超える部分は無効 利息制限法1条[6]
みなし利息 礼金・手数料・調査料など名義を問わず利息とみなす(契約締結と弁済の費用は除く) 利息制限法3条、出資法5条の4第4項[6][5]
取立ての規制 正当な理由なく勤務先に電話・訪問すること、借入れの事実を第三者に明らかにすることなどを禁止 貸金業法21条1項[4]

裁判例では、利用者が支払ったお金の返還が認められています。大阪地裁平成29年3月3日判決は、利息制限法の制限利率で計算し直した結果生じた過払金467万4,182円と利息の支払いを業者に命じました[8]。東京地裁令和3年2月9日判決は、給与ファクタリングの業者に対し、9人の原告が支払った金額の全額(合計436万5,000円)の返還を命じています[9]。

公序良俗違反で「無効」とされるとどうなる?

札幌高裁令和4年7月7日判決は、ファクタリング契約を「貸金に関する各種規制を潜脱するもの」と評価し、公序良俗に反し無効と判断しました[1]。民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定めています[3]。無効とされた契約には、買戻代金や違約金を支払う義務の根拠がなくなります。

ただし、無効の範囲と、すでに受け取った買取代金の扱いは別の問題です。民法708条は、不法な原因のために給付をした者はその返還を請求できないと定めています[3]。東京地裁令和3年2月9日判決は、この条文の趣旨から、業者が利用者に渡した金銭を返還額から差し引くことを認めませんでした[9]。

チェックポイントは、支払いを続ける前に証拠をそろえることです。契約書、見積書、振込記録、業者とのメッセージを保存し、弁護士に相談してから次の行動を決めてください。

裁判例一覧:売買と認められた例と、貸付けと判断された例

金融庁は、ファクタリングが貸金業に該当しないと判断された裁判例2件と、貸金業に該当するなどと判断された裁判例5件を紹介しています[1]。次の表は、この7件に、裁判所ウェブサイトで全文を確認できる給与ファクタリングの2件を加えた一覧です。

裁判所・日付 事件番号 対象の債権 結論 主な判断要素
東京地裁 令和2年(2020年)9月18日判決 未確認 事業者の売掛債権 貸金業法は適用されない 償還請求権なし、買戻しの予定なし。対抗要件の具備は猶予されていたが業者の判断で可能。手数料は担保目的を推認させるほど大幅でない[1]
東京高裁 令和4年(2022年)6月15日判決 未確認 事業者の売掛債権 債権の確定的な売買 回収不能額の責任を売主が負わない。売掛先の無資力リスクが業者に移転。手数料は担保目的を推認させるほど多額でない[1]
大阪地裁 平成29年(2017年)3月3日判決 平成26年(ワ)第11716号 事業者の売掛債権 金銭消費貸借に準じる。利息制限法を類推適用し過払金の返還を命令 業者が回収リスクをほとんど負わない。債権の額面と無関係に金銭を授受。売主は買い戻さざるを得ない立場[8]
東京高裁 令和3年(2021年)7月1日判決 未確認 事業者の売掛債権 貸金業法上の貸付けに当たる 売掛先が払わない場合に売主が債権額以上を支払う旨の公正証書を作成。業者が不払いリスクを負わない[1]
名古屋地裁 令和3年(2021年)7月16日判決 未確認 事業者の売掛債権 貸金業法上の貸付けに当たる 資力を担保しない規定はあったが、債権の性質と支払日までの期間の短さから不履行の可能性が極めて低い[1]
札幌高裁 令和4年(2022年)7月7日判決 未確認 事業者の売掛債権 貸金規制の潜脱として公序良俗に反し無効 譲渡が発覚すると取引先の信頼を失うため売主は何としても買い戻さざるを得ず、業者もそれを認識していた[1]
東京地裁 令和4年(2022年)3月4日判決 未確認 事業者の売掛債権 金銭消費貸借契約に該当 ノンリコース規定はあったが、売掛先に不払いの兆候がないことを売主に表明保証させており、保証を求めるのに等しい[1]
東京地裁 令和3年(2021年)2月9日判決 令和2年(ワ)第11883号 個人の給与債権 貸付けに当たり、貸金業法42条1項で無効。支払額の全額返還を命令 労働者を通じた回収が契約の要素。勤務先への通知を背景に支払いを事実上強制[9]
最高裁第三小法廷 令和5年(2023年)2月20日決定 令和4年(あ)第288号 個人の給与債権 貸金業法2条1項と出資法5条3項の「貸付け」に当たる(上告棄却) 譲受人は使用者に請求できず労働者から回収するほかない。労働者は通知を避けるため事実上買い戻さざるを得ない[7]

大阪地裁平成29年判決では何が問題になったか

大阪地裁の事案は、運送業の会社と、貸金業の登録を受けていないファクタリング業者との取引です[8]。判決によると、両社は同じ債権をほぼ毎月のように売買し、買い戻すことを繰り返していました。売主は業者から代理受領の権限を与えられ、取引先から従来どおり入金を受けて、業者への支払いに充てていました[8]。

判決は、業者が「債権回収のリスクをほとんど負っていない」こと、代金を一部しか支払わず債権の一定額分だけを売買の対象とするなど「債権の額面とは無関係に金員の授受がなされていた」ことを指摘しました[8]。そのうえで、売主は買戻しをせざるを得ない立場にあったとして、返還の合意があったものと同視し、利息制限法1条を類推適用しました[8]。

判決の認定では、売主が業者から受け取った金額は3,049万円余、業者に支払った金額は3,791万円でした[8]。売主の代表者は、当初の説明で「60万円を受け取る代わりに期限には100万円を支払う」と知らされていたと認定されています[8]。

東京地裁令和2年判決・東京高裁令和4年判決は、なぜ売買と認められたか

この2件で売買と認められた共通点は、売掛先が払わなかったときの損失を業者が負う契約だったことです。東京地裁令和2年9月18日判決では、業者が償還請求権を持たず、売主も買戻しを予定していなかったことが重視されました[1]。東京高裁令和4年6月15日判決では、回収できなかった額について売主が責任を負うとされておらず、債務者の無資力の危険が実際に業者へ移転していたと認められました[1]。

2件とも、手数料が「担保目的であることを推認させる」ほど大きくなかった点にも触れています[1]。手数料の水準は、単独で結論を決める要素ではありませんが、総合判断の材料になります。

東京地裁令和3年2月9日判決:給与ファクタリングの契約書には何が書かれていたか

この事案の業者は、給与債権を買い取るサービスをインターネットで宣伝し、ホームページに「ブラックでも即日融資に代わる資金調達が可能」などと掲げていました[9]。契約書には、利用者が勤務先から受け取った給与を約定の期限に業者の口座へ振り込むこと、支払いを怠れば年14%の遅延損害金を払うこと、業者が勤務先に債権譲渡通知を送れることなどが定められていました[9]。

判決は、勤務先に知られることを懸念する利用者に対し、通知の可能性を背景に支払いを「事実上強制」していたと認定しました[9]。そのうえで、年利に換算すると少なくとも年250%を超える利息の契約に当たり、貸金業法42条1項により無効で、出資法5条3項にも違反すると判断しています[9]。なお、業者は公示送達による呼出しを受けながら口頭弁論に出頭していません[9]。

裁判例から読み取れる判断要素

裁判例に共通する物差しは、「業者が売掛先の信用リスクを本当に引き受けているか」です。次の表は、金融庁が紹介する裁判例と大阪地裁判決で、貸付け寄りと売買寄りに評価された事情を要素ごとに並べたものです。

判断要素 貸付け寄りと評価された事情 売買寄りと評価された事情 根拠
償還請求権・買戻し 未回収時に売主が買い戻す、または自己資金で業者に払う 償還請求権がなく、買戻しも予定していない 金融庁[1]、東京地裁令和2年[1]
不払いリスクの所在 業者がリスクをほとんど負わない。債権額以上を払う公正証書 売掛先の無資力リスクが業者に移転 大阪地裁[8]、東京高裁令和3年・令和4年[1]
表明保証 抗弁事由がない、支払停止状態にない、破産原因がないことを売主が表明保証 (該当する売買寄りの例は紹介されていない) 東京地裁令和4年[1]
期間と債権の性質 支払日までが短く、不履行の可能性が極めて低い (同上) 名古屋地裁令和3年[1]
手数料の水準 買取代金が債権額に比べて著しく低い 担保目的を推認させるほど大幅ではない 金融庁リーフレット[2]、東京地裁令和2年[1]
通知・対抗要件 譲渡の発覚を避けるため、売主が買い戻さざるを得ない 猶予していても、業者の判断で対抗要件を備えられた 札幌高裁令和4年、東京地裁令和2年[1]
額面との関係 債権の額面と無関係に金銭を授受 (同上) 大阪地裁[8]
契約書の形式 ノンリコースと書いてあっても実態で判断 形式だけでは決まらない 金融庁[1]

回収の仕組み:2社間で売主に回収を任せる場合は?

2社間ファクタリング(売掛先に知らせず、利用者と業者の2社で契約する形)では、売掛金を利用者が回収し、業者に渡すのが一般的です。金融庁が貸金業に該当するおそれがある例として挙げるのは、この回収を売主に委託したうえで、集金できなかったときに売主が買い戻す、または自己資金で払う取引です[1]。

日本貸金業協会も2017年12月4日の注意喚起で、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高いケースとして、償還請求権が付いていること、取引先に通知しないこと、通帳やキャッシュカードを預かることなど9項目を挙げています[12]。ただし、同協会は「貸金業法違反になるかどうかは、個別の事案ごとに検討する必要があります」とも書いています[12]。

3社間ファクタリングなら問題はないのか?

3社間ファクタリング(売掛先の承諾を得て、売掛先が業者に直接支払う形)では、金融庁が例に挙げる「売主に回収を委託し、集金できなければ売主が買い戻す」構造は生じにくくなります[1]。日本貸金業協会も2017年の注意喚起で、売掛先の承諾がある三者間取引を「正規のファクタリングの事例」として図示し、二者間取引の偽装事例と対比しています[12]。

ただし、3社間であれば必ず売買と評価される、と述べた裁判例や公的資料は確認できていません。3社間でも償還請求権や売主の保証が付いていれば、判断フローの2と3に当たります。契約の形ではなく、不払いのときに誰が損失を負うかを確認してください。2社間と3社間の違いは2社間と3社間の違いで解説しています。

表明保証:どこまでの保証が問題になるのか?

問題にされたのは、売掛先の支払能力にかかわる事項を売主に保証させる表明保証です。東京地裁令和4年3月4日判決は、抗弁事由がないこと、支払停止の状態にないこと、破産手続開始原因がないことなど、債務者に不払いの兆候がないことを売主に表明保証させていた契約について、「売主に債務の保証を求めているのに等しい」と評価しました[1]。

これに対し、債権が実在することや、他に二重に譲渡していないことの表明保証が、裁判例でどう評価されるかは金融庁の紹介には含まれていません。契約書に表明保証の条項があれば、何を保証させられているのかを1項目ずつ確認することが大切です。

期間と債権の性質:ノンリコースでも貸付けになるのはどんな場合?

名古屋地裁令和3年7月16日判決は、売主が債務者の資力を担保しないと規定されていた契約を、貸付けに当たると判断しました[1]。理由は、譲渡債権の性質と、譲渡日から支払日までの期間の短さからみて、債務者が払わない可能性が極めて低かったことです[1]。業者が形式上リスクを負っていても、実際にはリスクがほとんどない債権なら、手数料は時間に対する対価、つまり利息に近いと評価されうることを示しています。

よくある誤解:「ノンリコースなら安全」「2社間は違法」

ファクタリングの違法性については、正反対の誤解が広く見られます。次の表で、よくある説明と、根拠に照らした正しい理解を並べます。

よく見かける説明 正しい理解 根拠
「ファクタリングは法律で規制されていないから安全」 実態が貸付けなら貸金業法・出資法・利息制限法が適用され、無登録営業や高金利には刑事罰がある 貸金業法47条、出資法5条[4][5]
「2社間ファクタリングは違法」「ファクタリングは全部ヤミ金」 2社間であることだけで違法にはならない。対抗要件の具備が猶予されていても売買と判断された例がある 東京地裁令和2年9月18日判決(金融庁が紹介)[1]
「契約書にノンリコースと書いてあれば貸金業法とは無関係」 形式ではなく実態で判断される。ノンリコース規定があっても金銭消費貸借とされた例がある 金融庁[1]、東京地裁令和4年3月4日判決[1]
「償還請求権付きなら会計上は必ず借入れ」 会計は支配の移転で判断し、リコース義務付きでも売却処理する設例がある。貸金業法の判断とは物差しが別 金融商品会計基準9項[14]、実務指針 設例2[15]
「手数料は利息ではないから上限金利は関係ない」 貸付けと判断されれば、手数料・調査料など名目を問わず利息とみなされる 利息制限法3条、出資法5条の4第4項[6][5]

最高裁の決定は、この「形式より実態」を端的に示しています。給与ファクタリングの契約では「使用者の不払の危険は被告人が負担する」と定められていましたが、最高裁はそれでも金銭の交付を「貸付け」に当たると判断しました[7]。

公的機関はファクタリングについて何と言っているか

ファクタリングの違法性について、金融庁・消費者庁・国民生活センター・警察庁・日本貸金業協会が注意喚起を出しています。どの資料も「ファクタリングは違法」とは書いておらず、「ファクタリングを装った貸付け」と「給与ファクタリング」を問題にしています。

公表元 資料名 公表日 要点
金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起 掲載日の表示なし(2026年9月18日確認) 偽装ファクタリングへの注意、貸金業に当たるかの判断要素、裁判例7件、給与ファクタリングの利用禁止の呼びかけ、相談窓口[1]
金融庁 事業者向けリーフレット「その資金調達 大丈夫ですか?」 日付の表示なし 被害が疑われる3つの例(著しく低い買取代金・高額な手数料、「売買契約」の定めがない、買戻しや償還請求)[2]
金融庁 一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書) 2020年3月5日 給与ファクタリングを業として行う者は貸金業に該当すると考えられる[10]
消費者庁 違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください! 掲載日の表示なし 給与ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当し、登録が必要[17]
国民生活センター 給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意! 2020年6月12日 7万円を受け取り次の給料日に12万円を返す約束で、勤務先と家族に取立ての電話が来た相談事例(相談者の計算で年利700%以上)[18]
日本貸金業協会 「ファクタリング」を装ったヤミ金融にご注意ください 2017年12月4日 償還請求権付き、通帳の預かり、保証人の要求など、ヤミ金融の可能性が高い9つのケース[12]
警察庁 令和4年版 警察白書 2022年 無登録・高金利事犯は減少傾向だが、給与ファクタリングや後払い現金化など巧妙な手口が発生[19]

資料の日付にも注意が必要です。金融庁と消費者庁のページには掲載日の表示がなく、内容が更新されても日付からは判断できません。記事や社内資料で引用するときは、確認した日を添えることをおすすめします。

手数料が高いと違法になるのか:年率換算で確かめる

手数料が何%を超えると違法になる、という数値基準は法令にも金融庁の資料にもありません。ただし、手数料の水準は貸付けかどうかを判断する材料の1つであり、貸付けと判断されれば手数料は利息として上限金利と比べられます。

金融庁は、偽装ファクタリングが疑われる例の1つに「債権の買取代金が、債権額に比べて著しく低額であったり、高額な手数料が差し引かれる」ことを挙げています[2]。また、高額な手数料を払うと「かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性」があると注意しています[1]。

貸付けとみなされた場合に上限金利と比べるには、手数料を受取額に対する年率に換算します。計算式は「手数料 ÷ 受取額 × 365 ÷ 支払期日までの日数」です。詳しい計算方法はファクタリング手数料の年率換算で解説しています。

支払期日までの日数 年率換算(手数料10%) 利息制限法の上限(年18%)との比較 出資法の年109.5%との比較
30日 約135.2% 超える 超える
60日 約67.6% 超える 超えない(年20%は超える)
90日 約45.1% 超える 超えない(年20%は超える)

この計算は、取引が貸付けと判断された場合の比較です。真正な債権の売買であれば、年率換算の値が高いことだけで違法にはなりません。自分の条件で計算するには手数料・実質年率の計算ツールを、各社の公表手数料はファクタリング手数料の相場を参照してください。

給与ファクタリングが「貸付け」とされる理由

個人の給与を買い取る給与ファクタリングは、業として行えば貸金業に当たります。理由は、労働基準法24条1項により、給与は使用者から労働者本人に直接支払わなければならず、給与債権を買い取った業者は勤務先に支払いを求められないからです[11][10]。

金融庁は2020年3月5日、「一般的な法令解釈に係る書面照会手続」に基づく回答で、この仕組みは「経済的に貸付け…と同様の機能を有している」として、業として行う者は貸金業に該当すると考えられるとしました[10]。この回答は、いわゆるノーアクションレター(法令適用事前確認手続)ではありません。回答書自身も、捜査機関の判断や罰則の適用を含めた司法判断を拘束しうるものではない、と明記しています[10]。

最高裁判所第三小法廷は令和5年(2023年)2月20日の決定で、給与ファクタリングの金銭の交付は貸金業法2条1項と出資法5条3項の「貸付け」に当たると判断しました[7]。決定によると、被告人は令和2年3月から7月までの間に、延べ969回、504人の顧客に合計2,790万9,500円を貸し付けていました[7]。取引の内容は、賃金債権の一部を額面から4割程度割り引いた額で譲り受けるものでした[7]。

給与ファクタリングの仕組み、手数料の水準、取立てへの対処は、給料ファクタリング(給与ファクタリング)は違法で詳しく解説しています。

契約前に確認したい8つのポイント

偽装ファクタリングを避けるには、契約書に署名する前に、売掛先が払わなかったときの扱いを必ず確認します。次の8項目は、この記事で紹介した裁判例と金融庁・日本貸金業協会の注意喚起から、確認の優先度が高いものを選んだものです。

15項目の詳しい確認方法と各項目の法的根拠は悪質なファクタリング業者の見分け方で、当てはまる項目の数から危険度を確かめるには違法業者チェックリストで確認できます。契約書の条項の読み方はファクタリング契約書のチェックポイント、業者の登録の調べ方はファクタリング会社に許認可や登録は必要かで解説しています。

違法の疑いがあるときの相談先

違法の疑いがあるときは、支払いを続けるかどうかを自分だけで決めず、公的な窓口か弁護士に相談します。金融庁は、ファクタリングの注意喚起のページで次の窓口を案内しています[1]。

窓口 電話番号 受付時間・備考
金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) 平日10時〜17時。あっせん・仲介・調停は行わない[1][16]
警察相談専用電話 #9110 悪質な取立ての被害は警察への相談を呼びかけ[1]
日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター 0570-051051(IP電話からは03-5739-3861) 9時〜17時(土日祝・年末年始を除く)[1]
消費生活相談窓口(消費者ホットライン) 188 最寄りの消費生活相談窓口を案内[1]

金融庁は、ファクタリングを利用する事業者に対し、「少しでも心配な点があれば、法律の専門家である弁護士に相談するなど」するよう求めています[1]。弁護士会の窓口や費用の目安はファクタリングのトラブルを弁護士に相談するには、手口別の相談先はファクタリング詐欺の手口と相談先にまとめています。すでに2社間の回収金を使い込んでしまった場合は、払えないときの対処法を参照してください。

違法業者・トラブル対策の記事一覧

違法性とトラブルに関する当サイトの記事は、目的別に次のとおりです。

よくある質問

Qファクタリングは違法ですか?

Aファクタリングは法的には売掛債権の売買(債権譲渡)であり、取引そのものは違法ではありません。ただし、償還請求権や買戻しの約束があるなど実態が貸付けと判断されると貸金業法の規制を受け、登録のない業者が営めば無登録営業になります。違法かどうかは契約書の名前ではなく、取引の実態で判断されます。

Q2社間ファクタリングは違法ですか?

A2社間ファクタリングであることだけで違法にはなりません。金融庁は、対抗要件の具備が猶予されていた取引でも、業者が償還請求権を持たず不払いリスクを負っていたとして貸金業法の適用を否定した裁判例(東京地裁令和2年9月18日判決)を紹介しています。一方で、売主に回収を任せ、回収できなければ売主が買い戻す2社間取引は、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

Q償還請求権(リコース)付きのファクタリングは違法ですか?

A償還請求権があるだけで直ちに違法と決まるわけではありませんが、貸付けと判断される方向の大きな要素です。金融庁は、回収できなかった場合に売主の買戻しや買取業者の償還請求が行われる取引を、偽装ファクタリングの被害が疑われる例に挙げています。貸付けと判断されれば、貸金業の登録や上限金利の規制が及びます。

Q偽装ファクタリングとは何ですか?

A偽装ファクタリングとは、ファクタリング(債権の売買)の形をとりながら、実態は売掛債権を担保にした貸付けである取引のことです。金融庁は、貸金業登録を受けていない者がファクタリングを装って業として債権担保貸付けを行っている事案が確認されているとして、注意を呼びかけています。

Qノンリコース契約なら安全ですか?

A契約書にノンリコースと書いてあるだけでは安全とはいえません。金融庁は、貸金業に当たるかどうかはノンリコース規定の有無などの形式だけでなく、経済的側面や実態で判断されるとしています。東京地裁令和4年3月4日判決は、ノンリコース規定があっても、売掛先に不払いの兆候がないことを売主に表明保証させていた契約を金銭消費貸借に当たると判断しました。

Q手数料が高いファクタリングは違法ですか?

A手数料が何%を超えると違法になるという数値基準は、法令にも金融庁の資料にもありません。ただし、手数料の水準は貸付けかどうかの判断要素の1つで、貸付けと判断されれば手数料は名目を問わず利息とみなされます。たとえば手数料10%・期日まで30日なら年率換算で約135%となり、出資法の上限である年109.5%を超えます。

Q違法なファクタリングで払ったお金は取り戻せますか?

A取引が貸付けと判断され、返還が認められた裁判例はあります。大阪地裁平成29年3月3日判決は利息制限法で計算し直した過払金の返還を命じ、東京地裁令和3年2月9日判決は給与ファクタリング業者に利用者が支払った金額の全額返還を命じました。結論は事実関係で変わるため、契約書と振込記録をそろえて弁護士に相談してください。

Qファクタリング会社に貸金業の登録は必要ですか?

A債権の買取りだけを行うファクタリングには、貸金業の登録は必要ありません。ただし、取引の実態が貸付けに当たる場合は貸金業に該当し、財務局長または都道府県知事の登録が必要です。登録の有無は金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで調べられます。

出典・参考資料

  1. 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
  2. 金融庁「事業者向けリーフレット「その資金調達 大丈夫ですか?」(表面)」
  3. e-Gov法令検索「民法」
  4. e-Gov法令検索「貸金業法」
  5. e-Gov法令検索「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」
  6. e-Gov法令検索「利息制限法」
  7. 裁判所「最高裁判所第三小法廷 令和5年2月20日決定(令和4年(あ)第288号)」(2023年2月20日)
  8. 裁判所「大阪地方裁判所 平成29年3月3日判決(平成26年(ワ)第11716号)」(2017年3月3日)
  9. 裁判所「東京地方裁判所 令和3年2月9日判決(令和2年(ワ)第11883号)」(2021年2月9日)
  10. 金融庁「一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書)」(2020年3月5日)
  11. e-Gov法令検索「労働基準法」
  12. 日本貸金業協会「「ファクタリング」を装ったヤミ金融にご注意ください」(2017年12月4日)
  13. 金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
  14. 企業会計基準委員会「企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」」
  15. 企業会計基準委員会「移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」」
  16. 金融庁「金融サービス利用者相談室」
  17. 消費者庁「違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください!」
  18. 国民生活センター「給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!」(2020年6月12日)
  19. 警察庁「令和4年版 警察白書(ヤミ金融事犯)」

出典のURLと内容は2026年9月18日時点で確認しています。

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アンドファクタリング「ファクタリングは違法?合法となる条件と「貸付け」と判断された裁判例一覧」(https://factoring.co.jp/safety/is-factoring-legal/、2026年9月18日更新)