プロパー融資を受けられない会社は、信用保証協会保証付融資を検討することになるでしょう。
信用保証協会保証付融資では、信用保証協会からの保証を受けることになります。
信用保証協会保証付融資の経営への活かし方や信用保証協会との付き合い方など、知っておくべき様々なことがあります。
そこで本稿では、それらのことを総合的に解説し、信用保証協会保証付融資マニュアルとします。
信用保証協会保証付融資とは?
銀行から融資を受けるならば、プロパー融資を受けることから考えるべきです。
しかし、プロパー融資は審査が厳しいため、どの会社でもプロパー融資を受けられるものではありません。
特に、創業して間もない会社は信用度が低いものですし、まだ融資を受けたことがない会社も多いですから、いきなりプロパー融資を受けるのは難しいのです。
もちろん、決算内容その他に問題がある会社も、プロパー融資を受けるのは難しくなります。
そこで、プロパー融資を受けられない会社は、信用保証協会保証付融資を受けることを考えていきます。
信用保証協会保証付融資とは、信用保証協会の保証をつけ、銀行の貸し倒れリスクを低く抑えることによって、融資を受けることを容易にしたものです。
まずは信用保証協会保証付融資を受けておき、次第に会社の財務状態や業績をよくしつつ返済実績をつけていきましょう。
そうすれば、いずれプロパー融資を受けられるようにもなります。
信用保証協会とは?
信用保証協会は、会社の融資を支援することによって、会社を育成することを目的としています。
全国の都道府県にそれぞれ1つ以上の窓口を持っています。
銀行は、融資の申し込みを受けた時、その会社を審査して融資の可否を決定します。
その会社の決算の内容により、融資をしても回収できる可能性が高いと判断すれば、融資を実行することが多いです。
とはいえ、その会社が創業間もない会社である、または財務内容や業績に多少なりとも不安が残る場合には、回収できる可能性が高いという判断ができなくなります。
融資した会社が倒産したとしても、信用保証協会から回収できるのです。
そのため、融資の回収に多少の不安がある会社にも融資を出しやすくなるのです。
信用保証協会保証付融資のメリット
信用保証協会保証付融資を受けることによって、プロパー融資を受けられない会社でも、融資を受けやすくなります。
しかし、信用保証協会保証付融資のメリットは他にもあります。
制度融資を利用できる
制度融資とは、信用保証協会の保証をつけることを前提として、国や地方公共団体が融資を出す制度のことです。
制度融資を利用すると、低金利で融資を受けられたり、利子の一部または全額を給付してくれる利子補給を受けられたり、信用保証協会に支払う保証金の一部を給付してくれたりします。
返済期間が長くなる
他にも、信用保証協会保証付融資は、プロパー融資よりも返済期間を長くすることができます。
銀行は返済期間をできるだけ短くしたいと考えます。
返済期間が長くなると、返済期間中に財務内容や業績が悪化し、貸し倒れになるリスクが高いですからです。
しかし会社としては、資金繰りへの圧迫を軽減するために、返済期間をできるだけ長くした方が好ましいです。
そこで、信用保証協会保証付融資を利用すれば5~7年、あるいはそれ以上の長期融資が可能となります。
ただし、このようなメリットがあるからと言って、プロパー融資よりも優れているというわけではありません。
信用保証協会保証付融資には融資額に上限があるのに対し、プロパー融資には上限がないのです。
そのため、できるだけプロパー融資を受け、経営状態が悪化した時のために信用保証協会保証付融資の枠は残しておいた方が望ましいのです。
ファクタリングについての記事はこちら
信用保証協会保証付融資のための条件
信用保証協会を利用するためには、一定の要件を満たす必要があります。
その要件とは以下の通りです。
企業規模
企業規模は資本金もしくは従業員数によって判断されます。
業種によって判断基準が異なります。
業種 | 資本金 | 従業員 |
製造業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
以上の要件を満たす場合には、信用保証協会の保証を受けることができます。
所在地
信用保証協会は、各都道府県に窓口を設けており、それぞれの管轄内で申し込む必要があります。
会社の本店または支店(事業所)が管轄内に入っていることが要件です。
個人事業主の場合には、事業者の住宅または事業書が管轄内に入っていることが要件です。
業種
多くの業種が信用保証協会の保証を受けることができます。
しかし、農林水産業、風俗関連業、金融業、宗教法人、NPO法人を除く非営利団体は利用することができません。
資金使途について
信用保証協会保証付融資を受けるためには、事業資金であることが要件となります。
具体的には、以下のような資金使途の場合には信用保証協会を利用することはできません。
事業外資金
事業に直接関係ない資金は、全て保証の対象外です。
例えば、経営者個人のプライベートな用途での資金がそれに当たります。
転貸資金
転貸資金とは、自社で受けた融資を、子会社や取引先に又貸しするための資金のことです。
そのような用途では保証を受けることはできません。
子会社設立の際の株式引受資金
子会社を設立するために株式引受資金が必要だとしても、そのような用途での保証は基本的に受けられません。
ただし、業務拡大のために子会社設立が必要である場合には事業資金として認められ、保証を受けられる場合があります。
プロパー融資返済のための資金
既に受けているプロパー融資の一部または全額返済するための保証は受けることはできません。
ただし、その会社の指導育成のために必要であると判断された場合には、この限りではありません。
保証の非対象業種を含む場合
会社の主要業務は保証の対象であっても、一部で非対応業種を兼業している場合には、保証を受けることができません。
資金使途違反を犯さない
実際には上記のような保証を受けられない用途に資金を流用した場合には、資金使途違反となります。
仮にそれがバレなかったとしても、流用の末に経営が破綻し、流用がバレてしまえば信用保証協会の弁済を受けることはできません。
信用保証協会から弁済を受けるために保証を付けて保証料も支払っていたのに、その弁済を受けることができなくなるのです。
銀行は万が一の場合に弁済を受けられなければ困ったことになりますから、きちんと事業資金に使われているかどうかをチェックしているからです。
資金使途違反を犯せば、銀行からの信頼は失い、それ以降の融資は一切受けられませんし、一括返済を求められることもあります。
そのため、融資を受けた資金は「信用保証協会が保証している事業資金」へ利用しましょう。
銀行からも信用保証協会からも、信用を無くさないように気を付けるべきなのです。
信用保証協会への申し込みと保証料
信用保証協会保証付融資を申し込むときには、銀行あるいは信用保証協会に申し込みます。
多くの場合、銀行に申し込むことになります。
信用保証協会保証付融資を受けるにあたっては、銀行から審査されるのはもちろんのこと、信用保証協会からも審査を受けます。
銀行からは融資の可否、信用保証協会からは保証の可否を審査されます。
信用保証協会は、保証した会社が支払い不能になった場合に弁済するのですから、保証した場合のリスクがどれくらいあるかを審査する必要があるのです。
保証料は様々で、利用する保証制度と保証する会社の業種・決算内容・協会独自の格付けによって決まります。
信用保証協会の格付けは、CRDというコンピューターによる分析によって決まります。
CRDでは、倒産リスクに応じて格付けを9段階に分けます。
その会社の倒産リスクが低ければ保証料は安く、リスクが高ければ保証料は高くなります。
この保証料は、融資実行時に一括で支払うが基本ですが、分割での支払いも可能です。
ただし、分割支払いになると銀行の事務の手間が増えて嫌がられ、一括で支払うことを希望される可能性もあります。
保証を断られないために
信用保証協会に保証を依頼すると、協会の職員が会社を訪問して調査を行います。
色々な資料を見て、経営者との面談も行いながら保証の可否を検討していきますが、場合によっては保証を断られることもあります。
時に、決算内容が悪くなくても断られることがあります。
保証を断られた場合には、信用保証協会には審査結果の履歴が残り、再び保証を依頼した時にもその履歴を参考にされるため、二度と保証を受けられなくなることもあります。
したがって、保証を断られるケースにはどのようなものがあるかを知っておき、保証審査に通るようにしておかなければなりません。
保証を断られるケースには、以下のようなものがあります。
裏の経営者がいる場合
会社の中には、審査時に面談する経営者が名前だけの表の経営者であり、裏に真の経営者がいる場合があります。
なぜ裏で控えているのかと言うと、表に出られない何らかの理由があるからです。
よくあるのが、以前会社を経営して倒産し、貸し倒れを起こしてしまった経営者です。
自分が表にいては融資を受けられないため、親族や知人を表の経営者に立てているケースがあります。
このほかには、反社会的勢力と関係していたり、過去に犯罪を起こしていたりする人も、表に立っていては融資を受けられません。
裏の経営者として実権を握っていることもあります。
そして、表の経営者以外の同席は認めないものですから、表の経営者が全ての質問に答えていくことになります。
表の経営者ゆえに、経営内容をしっかりと把握しておらず、信用保証協会からの質問に答えられなければ、信用保証協会はその人が真の経営者でないことに気づく可能性が高いです。
そうなると、信用保証協会は保証をしてくれなくなります。
しかしながら、真の経営者が会社勤めをしており、その兼ね合いから表立って経営者になれないなど、納得のいく理由があれば保証してもらえる可能性があります。
貸し倒れになって信用保証協会が弁済した場合には、信用保証協会は経営者から回収していくことになります。
この時、表の経営者と裏の経営者が異なり、表の経営者が名前だけの経営者の場合には、連帯保証になるのを嫌がって話が頓挫することもあります。
大株主と経営者が別のケース
このほか、株式会社では経営者が雇われ社長ということがあります。
大株主と経営者が異なるケースです。
この場合にも、表の経営者と真の経営者が異なるという見方ができると思います。
しかし、実際に雇われとは言えども、その経営者の采配によって経営されていることは間違いありませんから、保証を受けることができます。
ただし、その組織内の最高権力者は大株主であるため、大株主も連帯保証人になることを求められることが多いです。
経営者に問題がある
裏の経営者がいる場合ともリンクしますが、経営者が裏と表に分かれていなくとも、経営者に問題がある場合には保証を受けることができません。
信用保証協会は、保証を依頼してきた会社の経営者に対し、個人信用情報に照会する場合があります。
それを見たところ、過去に破産や債務整理をしていた、個人的な借り入れの返済を延滞しているなどの情報が出てくると、保証を受けられなくなります。
もちろん、経営者が反社会的勢力と付き合いがあったり、犯罪歴があったりした場合には、そもそも銀行が融資を断ります。
信用保証協会も保証をしません。
信用保証協会保証付融資はグループでひとつ
したがって、グループ内のA社で信用保証協会保証付融資を受けており、そのグループ内のB社でも信用保証協会保証付融資を受けたいと思っても、受けることは難しいです。
もし、同グループ内での信用保証協会保証付融資が何度も可能になれば、関連会社を作って信用保証協会保証付融資を受けるということを繰り返すことも可能になります。
信用保証協会保証付融資では、融資額の上限が決まっていますから、この手段をとる会社もでてくることでしょう。
したがって、既に信用保証協会保証付融資を受けている会社の関連企業から、新たに保証を依頼された場合、信用保証協会は保証を出しません。
債権譲渡登記がある
債権譲渡登記とは、商業登記簿に付随している債権譲渡に関する情報です。
売掛債権などを担保にしてノンバンクから融資を受けるなど、債権を譲渡した場合にその旨の記録が残ります。
そのことによって、譲渡が行われたことを法的に明らかにするのです。
信用保証協会が調査したところ、債権譲渡登記があるとわかれば、「おそらく売掛債権などの譲渡によって融資が行われたのだろう」と予想します。
逆に言えば、「売掛債権を譲渡しなければ融資を受けられないほど、経営状況が悪い会社なのだろう」と予想することも可能です。
そのような会社は、倒産リスクが極めて高い会社ですから、信用保証協会は保証を嫌がります。
もし債権譲渡登記がある場合には、売掛債権を担保にして受けた融資を返済しましょう。
債権譲渡登記を抹消したうえで、信用保証協会に申し込むのが良いでしょう。
信用保証協会への初めての保証申し込みで失敗してしまえば、会社の今後の資金繰りはかなり厳しくなるでしょう。
プロパー融資が受けられないからこそ、信用保証協会に保証を依頼しているのですから、プロパー融資も信用保証協会保証付融資も受けられないことになります。
信用保証協会が保証しない会社に対して、公的金融機関も融資してくれるとは考えにくいです。
その際に残る選択肢はノンバンクくらいになるのですが、ノンバンクは資金繰りにはあまり役立ちません。
面談ではどんなやり取りをする?
上記において、信用保証協会の職員が会社を訪問し、経営者と面談すると書きました。
この面談では、一体どのようなやり取りが行われるのでしょうか。
これは大まかに言えば、実際に事業が行われているのかを確認するための訪問です。
事務所に訪問してもらい、そこで実際に仕事をしているならば、この意味では問題ないと思います。
しかし、個人事業主が自宅で仕事をしているような場合には、自宅ゆえに仕事をしている雰囲気が感じられないこともあるので、注意が必要です。
面談は、書類の確認と質問によって行われます。
どのような書類を見られるか
まず書類を見ていきましょう。
信用保証協会は、以下のようにたくさんの書類を見ることによって、その会社の経営実態を隅々まで把握しようとします。
もっとも、これらの書類は、普通に経営していれば準備できるものです。
- その事務所で事業をしていることを証明する書類(自社所有の事務所ならば不動産登記簿、賃貸の場合には賃貸契約書)
- 代表者の自宅を確認できる書類(持ち家ならば不動産登記簿か公共料金の請求書、賃貸ならば賃貸契約書)
- 会社の預金口座の通帳1年分
- 取引先からの請求書
- 決算書
- 試算表
- 総勘定元帳
- その他、業種によっては受注状況や許認可証
どのような質問をされるか
信用保証協会からの質問は、非常に気になるところでしょう。
以下のような質問がされますから、事前に回答を考えておくのがおすすめです。
信用保証協会は、このような質問によって、面談している経営者が真の経営者であるか、きちんと関心を持って積極的に経営にかかわっているかといったことを見てきます。
ここで明快に答えられなければ、保証を受けられなくなる可能性があります。
しかし、質問内容を見ればわかると思いますが、経営にきちんと携わっていれば答えられる内容ばかりだと思います。
【Q1】信用保証協会の審査はどれくらいかかる?
保証協会付き融資を受けるためには、銀行と信用保証協会の両方で審査を受ける必要があり、通常の融資に比べて時間がかかります。
資金繰りのための融資を希望している人の中には、できるだけ早く融資を実行してほしいと思っているでしょうが、通常の融資よりも時間がかかるのが普通です。
しかし、必要以上に遅いというイメージを抱いている人もいます。
全国信用保証協会連合会は社団法人であり、公的要素を帯びていることから、いわゆる「お役所仕事」のようにのんびりしているイメージがあるのでしょう。
実際には、保証協会の審査にかかる時間は、早くて1~2週間、遅くて3週間~1ヶ月といったところです。
1ヶ月を大幅に超えることは、よほどイレギュラーなケースを除けばないでしょう。
1週間~1ヶ月と言われれば、非常に幅があると思うかもしれません。
しかし、審査にかかる時間は、各保証協会や案件によって異なるため、一概にどれくらいかかると言いにくいのです。
逆に、地方になるほど審査が早くなる傾向があります。
もっとも、この期間は資金使途によっても異なります。
運転資金の場合の審査は2~3週間ということが多く、設備資金になると設備投資の効果を検証する必要があることから、3~5週間かかるのが一般的です。
もちろんこの目安は、書類の不備などがなく、スムーズに進んだ場合です。
信用保証協会への提出資料は多く、書類不備が発生することがありますし、稀に銀行員が提出を忘れてしまって審査が遅れるというケースもあると言われます。
銀行側のミスはほとんど起きないので安心していいでしょうが、会社側が提出する資料に不備がないように注意しておくことが、審査を早める唯一の方法だと言えます。
【Q2】経営者の個人情報は審査に影響する?
信用保証協会に保証を依頼する際には、「個人情報の取り扱いに関する同意書」を提出します。
書類の名前からして、経営者個人の情報を調べ上げる際の情報の取り扱い方について同意する書類に思えます。
このため、経営者個人の個人情報が審査に影響すると考える人は少なくありません。
しかし、ここでいう「個人情報」とは、過去の金融事故履歴や消費者金融からの借入額などについて記録した個人信用情報のことではありません。
これは、主に会社としての個人情報を指しており、経営者の個人情報を指しているのではありません。
保証協会が審査の際に重視するのは、保証する相手がどのような個人であるかということではなく、どのような会社であるかということです。
経営者個人ではなく、会社が事業のために融資するのですから、経営者個人の信用情報は照会しないのです。
したがって、消費者金融から借りているとか、過去にクレジットカードの支払いを延滞したとか、借金を返済できなくなって債務整理をしたとか、そのような情報を保証協会が知ることはないため、審査にも影響しません。
ただし、保証協会は債務の保証をするだけで、あくまでもお金を出すのは銀行です。
銀行も、事業のための貸し出しの際に、各経営者の個人信用情報を照会することは基本的にはありません。
しかし、何らかの疑わしい点があれば調べるでしょう。
銀行が調べれば、金融事故履歴や消費者金融からの借り入れなどはすぐに分かります。
そうなれば、銀行は融資をストップしますから、保証協会付き融資は受けられなくなります。
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【Q3】保証を受けやすい資金使途は?
銀行の融資に対してよくあるイメージに、運転資金は借りやすく、設備資金は借りにくいというものがあります。
保証協会の保証についても同様に、運転資金は借りやすくて設備資金は借りにくいというイメージをしている人がたくさんいます。
これは全くの勘違いです。
確かに、銀行や保証協会は資金使途を確認します。
しかし、資金使途によって借りやすさや保証の受けやすさが変わるということはありません。
銀行や保証協会が見ている点は、融資を受けた会社が、どのような資金使途を予定しているか、その資金使途で融資をすれば経営にどのような効果があるかです。
そして、プラスの効果が見込めるか、プラスの効果によってきちんと返済ができるかどうかということです。
運転資金でも設備資金でも、それを融資することによって経営にプラスの効果が現れるかどうかが重要です。
したがって、「どのような資金使途が審査に有利か」ではなく「どのような資金使途が経営に効果的か」を基準に資金使途を考え、資金使途は正直に伝えるようにしましょう。
運転資金ならば運転資金として、設備資金ならば設備資金として融資を受けるのです。
もし、運転資金よりも設備資金の方が審査に有利だと勘違いし、本当は資金使途とは異なる名目で融資を受けたら大変です。
銀行も保証協会も、設備資金として融資したものを運転資金に“流用された”と捉えるため、資金使途違反を問われることになります。
資金使途違反は、保証協会の保証免責事項にも該当しますから、資金使途違反が明らかになった時点で保証を外されます。
銀行からは期限の利益の損失を理由に一括返済を要求されるでしょう。
そのようなことになれば、経営が立ち行くはずもありません。
保証を受けやすい資金使途などはありません。資金使途は正直に伝えましょう。
【Q4】信用保証協会が自社を訪問する理由は?
保証を受けるにあたって、保証協会が会社の訪問を希望することがあります。
これは毎回ではなく、保証協会の支店ごとに対応は異なりますが、新規の保証の場合には頻度が高く、特に東京都内では訪問率が高いといわれます。
保証協会から訪問したいと言われた時、「なにか審査で問題があったのではないか。これ以上さぐりを入れられて、借りられないと困ったことになる」などと考え、訪問を断る経営者がいるようですが、この対応は間違いです。
なぜならば、保証協会が訪問する理由は、単に会社が本当に存在していて、事業を行っているかを調べるためだからです。
ちゃんとそこで事業を営んでいるならば、何も警戒する必要はありません。
むしろ、訪問を渋ると、会社が実在しないのではないか、ペーパーカンパニーなのではないかなどといった疑いをかけられ、保証を受けられなくなる可能性が高まります。
多くの会社は実在しているでしょうから、実在することを確認するために訪問するといえば、なんとも面倒なことをする、当たり前ではないかと思う人も多いかもしれません。
しかし、保証制度を悪用する人も実際にいるのですから、保証協会としては訪問しなければならないという考えがあります。
これは、かつて国が起業を奨励し、制度融資(国や自治体が銀行にお金を預け、保証協会付きで融資を出すもの)によって支援を図ったとき、創業すると見せかけて融資を受け、一度も返済せずに雲隠れする詐欺師が多数出たことによります。
これによる被害を受けた保証協会は、それ以降、新規に保証する会社に対しては訪問をし、時には既存の保証相手にも抜き打ち訪問をするようになったと言います。
このような背景から、信用保証協会が訪問するのは仕方のないことであるといえます。
保証協会は訪問によってリスク低減に努めているのですから、訪問を渋るような非協力的な会社に対しては、リスク回避の観点から保証を見送る可能性も十分にあります。
訪問した保証協会は、事務所内の様子から会社としての実態があるか、つまり本当に従業員が働いており、パソコンやコピー機やデスクなどの設備があってオフィスの体をなしており・・・といった点を確認します。
会社としての実態があれば、それだけで何も問題ありません。
保証協会の担当者は、社内の様子を見ながら「従業員の勤務態度が不真面目。減点」「整理整頓ができていない。減点」といったチェックをしているのではありませんから、安心して訪問を受けてください。
【Q5】保証協会の枠はどの銀行で使う?
保証協会の保証には、枠があります。
無担保ならば8000万円、有担保ならば2億円が基本的な保証上限となっています。
つまり、銀行Aで3000万円、銀行Bから5000万円の保証を受けたら、それ以上の保証は受けられません。
また、8000万円の保証枠があるからと言って、必ず8000万円まで保証を受けられるということではなく、月商に応じて8000万円まで保証可能という意味です。
複数の銀行で、上限なしに保証を受けられるならば、どの銀行で保証枠を使えばよいかと迷うことはありません。
しかし、保証枠には上限があるため、保証枠を使う銀行はどこにすればよいかという疑問が起こります。
このことに関して、メインバンクで保証枠を使うのが良いという考えがあります。
保証協会付き融資は銀行のリスクヘッジになり、銀行は保証を好むため、プロパー融資を受けているメインバンクとの付き合いの中で、保証枠を使っていくのが良いという考え方です。
むしろ、既にプロパー融資を受けられている銀行に保証枠を使うのはもったいないことです。
なぜならば保証協会付き融資は、他の銀行から新規融資を受ける際の条件として求められることが多いからです。
メインバンクに保証枠を使い、他の銀行で保証が使えなくなってしまうと、銀行の新規開拓が困難になってしまいます。
したがって、保証枠は新規の銀行を開拓するために使うのが良いでしょう。
新規融資の際には保証協会付き融資で融資を受け、返済実績を作っていけば、やがてプロパー融資を引き出すことも可能となります。
つまり、保証協会の保証枠は、より多くの銀行と付き合い、より多くの銀行からプロパー融資を引き出すための道具とするのです。
もちろん、メインバンクから「保証協会付き融資もぜひウチで」と要請されることがあると思います。
その場合にも、きちんと理由を述べて断れば問題ありません。
例えば、
「当社のメインバンクはあくまで○○銀行ですが、長期的な資金繰りを考えると、メインバンクだけに頼るよりも、複数の銀行から融資を受けていきたいと思っています。
新規の融資を受け、いずれはプロパー融資を引き出していくためにも、保証枠はそちらで使っていきたいのです」
などと断ります。
このようにきちんと断れば、銀行員は「この社長は会社の経営が良くわかっている」という印象を受けると思います。
銀行との関係が悪化することもないでしょう。
【Q6】経営革新計画で保証上限額が増えるって?
中小企業庁は、中小企業の経営革新を奨励しています。
このため、経営革新計画の承認を受ければ、通常の保証上限額に加えて、無担保ならば8000万円、有担保ならば2億円の特例枠が認められます。
しかし、経営革新の認定を受けたからといって、必ず通常の保証枠以上の保証を受けられると考えてはいけません。
あくまでも保証可能な枠が広がるだけのことであって、実際に保証を受けられるかどうかは別問題です。
中には、コンサルタントや中小企業診断士から「うちと顧問契約を結べば、経営革新計画の認定を受けられるようにします。そうすれば、保証枠が追加されますよ(追加融資が受けられるとは言わない)」などと言われ、契約してしまう会社もあります。
追加融資を受けたいばかりに、このような甘い誘いに乗ってしまうのです。
確かに、コンサルタントや中小企業診断士の知識をもってすれば、経営革新の承認を受けることは簡単です。
承認を受ければ、確かに保証枠は広がります。
しかし、本当に経営を革新する気があるのではなく、追加融資を受けたいと思って経営革新の承認を受けたような会社を、保証協会が保証することはありません。
特に、このような会社の中には、業績が悪く、とにかくお金に困っており、追加融資を受けたいと考えて経営革新の承認を受けようとする会社が少なくありません。
そのような会社が、いくら認定を受けたからと言って、保証協会の審査には通るはずがないのです。
保証協会からみれば、
「業績が良い会社が、更なる業績向上を目指して経営革新を謳うなら分かります。
しかし、これまで業績が悪かった会社には、経営革新など無理でしょう。
それ以前に、経営を正常化することが先ではないのですか」
としか考えられないからです。
このことから、経営革新計画の承認を受け、保証上限額が増えたとしても、この特別枠で融資を受けた会社は、全体の2割以下となっています。
【Q7】信用保証料は分割払いできる?
ただし、途中で支払いができなくなれば保証を外されるわ。
保証協会付き融資は、本来ならば銀行が融資しにくい会社でも融資を受けられる仕組みであり、ありがたい仕組みだといえます。
しかし、保証協会付き融資には大きな問題があります。
それは、保証協会付き融資を受けた場合には、信用保証協会に対して保証料を支払う必要があるということです。
保証料は、決して安いものではありません。
保証料の計算式は、保証料=融資総額×保証料率×保証期間(月数)/12×分割係数です。
保証料率は案件ごとに異なり、平均保証料は1.55%です。
分割係数は、融資を分割返済する場合の、返済の進捗を考慮した掛け目のことです。
例えば保証料1.50%の5年保証(5年間の分割払い、分割係数は0.55)3000万円を借りた場合には、保証料=3000万円×1.50×60/12×0.55=123万7500円となります。
調達コストだけでこれだけかかってしまうのですから、やはり高いですし、分割で支払いたいと思う人も多いことでしょう。
ところが、銀行は分割払いを好みません。
したがって、一括払いが当然といった態度で融資を進めようとするでしょう。
これは、分割払いになると管理の手間がかかることと、途中で保証料が支払えなくなった場合のリスクを嫌うからです。
保証料を分割払いにし、途中で支払えなくなってしまうと、保証協会の保証は外れ、銀行は残債を一括請求しなければならなくなります。
そのようなことをされても、支払える会社はほとんどないでしょう。
つまり、銀行にとって不良債権となってしまうのです。
だからこそ、銀行は分割払いを嫌います。
分割払いを勧めてくることはありませんし、一括払いを求めてくるでしょう。
しかし、仕組みとして分割払いは可能です。
保証協会の保証申込書には、分割払いか一括払いかを選択する欄がありますし、保証協会の公式サイトを見てみても、分割払いの案内があります。
ただし、保証期間が2年超であることが条件です。
したがって、保証料の一括払いをしたくない場合には、銀行に分割払いにしてほしいと申し出ましょう。
そうすれば、銀行も断ることはできません。
ただし、上記のように、保証料が支払えなくなった場合にはリスクがあることを忘れないでください。
【Q8】他の都道府県の信用保証協会は使える?
本社以外の都道府県に工場や営業所がある場合でも、本社所在地の信用保証協会しか使えないのか、あるいは関連施設がある都道府県の信用保証協会は使えるのかといった疑問があります。
結論から言うと、本社以外の都道府県の信用保証協会でも、工場や営業所などの関連施設があれば、その都道府県の信用保証協会を利用することができます。
対象となる関連施設の基準は、その施設が運営されていることを保証協会に証明できることです。
例えば、営業所があるならば、その営業所で実際に商売が行われている実態を、支店登記のコピーや、法人市民税の納付書などによって証明することで、その地区の保証協会を利用できます。
もっとも、信用保証協会の上限額は上記の通り無担保ならば8000万円といった枠が設けられており、この上限は一つの法人に対する上限額となっています。
つまり、複数の都道府県の信用保証協会に保証を依頼しても、それぞれの保証協会に8000万円の上限があるのではなく、利用した保証協会全てをトータルして8000万円の上限となります。
しかし、利用できる信用保証協会が複数ある会社は、それらを検討してみる価値があります。
というのも、信用保証協会は、全国信用保証協会連合会という組織が束ねているものの、それぞれの信用保証協会で保証制度が違うからです。
複数の保証協会を利用できるならば、各保証協会の保証制度を見比べてみて、自社に最も適している条件の保証制度を利用すると、経営的にもメリットがあるでしょう。
まとめ
信用保証協会の保証を受ければ、プロパー融資を受けられない会社でも融資を受けやすくなります。
保証を付けた上で銀行から融資を受け、返済実績をつけながら財務内容や業績を改善していけば、いずれプロパー融資を受けられる可能性も高まります。
しかし、信用保証協会からの保証を一度断られてしまうと、その後の資金繰りでかなり苦労することでしょう。
信用保証協会から保証を受けたいならば、体制を整えて確実に保証を受け、その後の資金繰りに活かせるような付き合いを始めるようにしましょう。