銀行と会社は、ビジネスライクな付き合いが好ましいと言えますが、銀行員と経営者の関係はそうではありません。
銀行員と経営者の関係は会社対会社ではなく、人間対人間の関係を作ることが可能であり、情によって経営者に良くしたい、助けたいという気持ちが働くためです。
したがって、銀行員と良い関係を築いておくと、会社にとって何かとメリットがあるものです。
そこで本稿では、銀行員と良い関係を作った時のメリットと、信頼を得るための誠意の在り方について解説していきます。
前提として銀行と会社の関係はビジネスに徹するべき
銀行は、非常に保守的な組織です。
会社に対する融資に当っても、銀行としての立場や利益を重く捉え、時に非情な行動をとることがあります。
倒産すれば経営者も従業員も職を失い、路頭に迷うような会社であっても、銀行の損失を避けるためには簡単に見放します。
時には、強引な回収に乗り出し、会社を倒産に追い込むこともあります。
また、経営状態の芳しくない会社に対しては、それを弱みとして捉え、銀行側に圧倒的有利な条件で融資することもあります。
例えば
- 信用保証協会の保証をつけることで銀行側のリスクを抑える
- 担保や第三者保証人も取ってさらにリスクを抑える
- その上で高めの金利を設定する
などして、銀行が一方的に儲けられるような関係を作ることもあります。
金融機関の多くは株式会社であり、株主に利益を還元する必要があります。

となると、銀行は株式会社としての使命を果たすために利益を追求し、上記のような行動に出ることがあるのです。
銀行が帯びている公的使命や、金融庁の監督によって、貸金業者のような強烈な利益主義に陥ることはないとしても、お金を貸して利益を得ている以上、やはり「金貸し」としての側面を持っています。
会社が銀行と付き合っていくにあたっては、積極的に敵対するようなことは好ましくないとしても、銀行をあまり信用しすぎることは禁物です。
銀行は、これまで良い関係を築いていると感じていたとしても、いきなり手の平を返すように姿勢を変えることがあります。
また、信頼関係があるように感じていても、実際には銀行に有利な立場を築くために、虎視眈々と狙っている可能性もあります。
だからこそ、銀行と関係を築いていくためには、ある程度の距離を取り、銀行と会社はビジネスパートナーであるという認識が必要です。
融資を受ける際にも、銀行から支援を受けるというよりも、銀行は融資によって会社に資金を供給し、会社は利息を上乗せすることで銀行に利益を提供するのだと、商談のように捉えることが好ましいのです。
したがって、銀行と会社が関係を築いていくためには、あくまでも会社対会社との認識を忘れてはいけません。
銀行が会社に対しているのと同じように、会社側も私情を挟むことなく、ビジネスに徹するべきです。

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
アクセルファクターについての関連記事はこちら
銀行員と経営者の関係は構築できる
しかし、銀行と銀行員は違います。銀行は組織であり、銀行員は個人です。
もちろん、銀行に所属する銀行員として、銀行という組織の考え方に沿って動くことが求められます。
それでも、銀行員である以前に一個人の人間なのです。
このため、取引している銀行との関係をビジネスライクなものに保つとしても、銀行員との付き合いは深めていくべきです。
深く付き合っていれば、銀行員は経営者と人間的な関係を結び、会社が窮地に立った時に、支援することが銀行にとって好ましくない場合でも、経営者を助けようと動くこともあるのです。
銀行の融資担当者、上席者、副支店長や支店長など、銀行と付き合っていれば色々な銀行員との関係が生じます。
そこで良い人間関係を築くように努力していれば、それは貴重な人的ネットワークとなります。
銀行員との関係が融資を有利にする
例えば、融資を受けたいと感じている時、人的ネットワークが活きることが珍しくありません。
融資を検討する際には、融資担当者から支店長まで稟議書が流れます。
複数の人間の目に触れることとなり、そこで問題が起これば稟議はなかなか通らなくなります。
そして、銀行は貸し倒れの危険を避けるために稟議しているのですから、稟議書から問題を見つけようとして目を通します。
当然ながら、好意を抱いていない会社の稟議書は、銀行としての視点で稟議を検討することとなり、融資がスムーズに下りない可能性が高まります。

融資に問題がないならば、なんとか問題を見出そうとすることもなく、スムーズに稟議が進むでしょう。
融資に問題がある場合でも、何とか融資が通るような見方をしてくれるものです。
また、良い関係を築いているならば、融資が通りやすくなるように、アドバイスしてくれることも多いです。
銀行の内部情報をこっそり教え、それを踏まえた融資対策をアドバイスしてくれたり、重点的に改善すべきポイントを指摘してくれることもあるかもしれません。

業績や内務内容に大きな差がないA社とB社が、同時に1億円の融資を申し込んだような場合にも、銀行員との親密さがモノを言います。
A社が銀行員と良い関係を築いており、B社が特に関係を築いていないとすれば、銀行はほぼ間違いなくA社を優先的に融資することでしょう。
このように考えても、銀行員と良い関係を築いている場合と、そうではない場合の優劣がはっきりと表れます。

もし貴社が、新型コロナウイルスで売上が低迷しているなら、この人達が救済してくれるゾ!
窮地に立たされた場合も助けてもらえる
また、会社が窮地に立たされた場合にも、銀行員と経営者の関係によって救われる場合があります。
厳しい状況の中で融資を受けられるかもしれないということもその一つなのですが、いくら良い人間関係を築いていたとしても、あまりにも貸し倒れリスクが大きい場合には融資は厳しくなるものです。
それでも、例えば銀行員が民間のサービサーと事前交渉することで債務の圧縮を図ってくれたり、破産処理ができるだけスムーズに、あるいはできるだけ影響を小さくする為にアドバイスしてくれたりすることもあります。
つまり、銀行員との関係が良い場合には、銀行の損失を積極的に受け入れるようなことはしてくれませんが、そうならない範囲において、できるだけ会社の助けになるような働きが期待できるのです。
このように、銀行員との人的ネットワークは、会社にとって非常に大きな財産となり得るのです。
逆の場合は大きな負の財産に
以上のことから、銀行員と積極的に良い関係を築いていくべきことが分かります。
では、その逆の場合、つまり関係が壊れてしまったらどうなるでしょうか。
銀行員との関係が可もなく不可もない状況ならば、これから良い関係を築いていけばいいだけです。
しかし、銀行員との関係を悪化させてしまうことは、会社にとって命とりになりかねません。
まず、融資が非常に通りにくくなります。
融資の可否は稟議システムによって判断されるのですから、言い方によっては銀行員の胸三寸で決まるとも言えます。
態度が横柄であるとか、銀行員を見下すような物言いをするとかによって、融資担当者が経営者を嫌っているならば、わざと融資の通らない稟議書を作ってしまえば、融資が通ることはありません。

特に、支店長との人間関係が悪ければ致命的です。
本部での稟議がない場合、最終的な決定権は支店長が握っているからです。
このため、業績や財務に全く問題がなく、当然融資を受けられる会社であったとしても、経営者が支店長から嫌われているならば、稟議書に問題がなくとも最終的な支店長決裁で拒否に終わる可能性が高いです。
人間関係が悪ければ、なんとか助けようという気持ちも全く起こりませんし、むしろやっつけてやろうというような気持ちも起こるかもしれません。
このため、会社が窮地に陥った時には支援は見込めませんし、積極的な回収に乗り出す時期が早まる恐れもあります。

資金繰りが厳しくなった場合に追加融資も受けられず、延命を図る間もなく回収を受けることになるかもしれないのです。
銀行員との関係を悪化させてしまったために、本来は倒産しなくてもよい会社が倒産してしまう可能性があるのです。
銀行員との関係には、十分注意したいものです。

半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携するなど、この資金調達方法がすごい。

大手企業ともパートナー提携していて非常に安心よ♪
OLTAのサイトはこちらから→ https://www.olta.co.jp/
銀行員と信頼関係を築くための基本
では、銀行員と良い関係を築いていくためには、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。
信用を重んじる銀行員にとっては、何よりも先に信頼を勝ち取るべきですから、基本的な信頼関係の築き方を知っておくべきです。
銀行員からの信用は、誠意によって勝ち取ることができます。
お金や口先で勝ち取れるものではなく、誠意のみが信用をもたらします。
銀行も取引先のひとつとして考える
まずは銀行に対して、普通の取引先のような捉え方をしてください。
仕入れや販売の相手となる、商売上の取引先に対しては、信用を失わないように誠意をもって努める経営者は多いものです。
しかし、銀行となると、仕入れも販売も行わないために、商売上の取引先とは別のものと考えがちです。
商売上の取引先に対しては、支払いを絶対に遅らせないように努力したり、遅れてしまう場合には連絡を入れて、誠意をもって対応したりするものです。
支払いが遅れることを謝罪し、改めて支払う期日を伝え、その約束を守るために駆けまわります。
一方、相手が銀行となると、返済を遅らせないように努力はしたとしても、遅れてしまう場合に連絡を入れずにとぼけようとしたり、少しくらい遅れても大丈夫だろうと安易に考たりする傾向があります。
しかし、銀行も取引先の一つです。

誠意をもって期日通りに返済するべきであり、返済できない場合にも誠意ある対応をしなければなりません。
銀行に誠意のない行動をするということは、銀行員に対しても誠意がないということにほかなりません。
銀行と会社という、会社対会社の取引であるとしても、実際に返済の管理にあたり、返済によって経営者への印象良くしたり、悪くしたりするのは銀行員なのです。
その銀行員に、「あの経営者は返済期日を守らない」とか、「返済期日を遅れても、何の連絡もない」などと思われてしまえば、信頼を得られることなどあり得ません。
したがって、返済をきちんと履行することは最低限の条件と言えます。
そして、返済期日を守れない場合には、誠意をもって説明し、いつまでに払いますという約束をして、それを必ず守ることです。
それができれば、本来の返済期日を守れなかった場合にも、大きく信頼を損なうことはありません。
この積み重ねをすることによって、銀行員は「この経営者はちゃんと約束を守ってくれる」という信頼を寄せられるようになります。
また、「期日に遅れても逃げずに説明して、約束は守る。責任感があるし、嘘をつかない人だ」と好印象を持たれることもあります。
どこまで誠意を見せべきか
約束を守る、逃げずに説明する、責任ある行動をするなどの繰り返しによって、信頼は構築されていきます。
しかし、誠意にも限度があります。
誠意を見せることによって、自社が不利な立場に陥ってしまうような場合もあり、あまり馬鹿正直になりすぎるのも問題です。
例えば、会社が経営困難に陥っている時、銀行に正直になって誠意を見せようと考え、全ての財産を提供してしまえばどうでしょうか。
会社がうまくいっているならば、それでも何ら問題はないかもしれませんが、会社が良い状況にない場合には、それが自社を追い込むことになります。

しかし、全ての資産を提供してしまえば、再生の道は閉ざされてしまいます。
このような事態は当然避けるべきです。
誠意を見せるということは、もっぱら「誠意がないと思われる行動を避け、可能な範囲で誠意を見せる」と考えてください。
銀行としても、いくら誠意を求めていると言っても、会社が丸裸になることまで期待しているわけではありません。
銀行員と経営者が信頼関係を築いていなければ、銀行は会社を丸裸にしようとしてくるかもしれません。
しかし、良い関係にあるならば、銀行員はむしろ「全て財産を提供するようなことはしなくていい」とさえ考えているものです。
「可能な範囲で」誠意を見せることが重要
このような銀行と会社の関係は、以下のような例で考えてみると分かりやすいと思います。
例えば、あなたが大きな借金を抱えてお金に困り、親しい友人から100万円を借りたとします。
この100万円は当然返済すべきです。
ある時、あなたは100万円の臨時収入を得ることができました。
これにより、友人の借金を返済することができますが、その100万円を活用すれば、生活を再建することもできるかもしれません。
そこで、あなたは100万円を得たことを友人に伝えず、まず10万円を返済することとし、90万円で生活再建を図りました。

必ずしもそうとは言えないでしょう。
あなたに100万円を貸したことで、友人が生活に困っているような場合であれば、100万円を返済すべきであり、そこで10万円しか返済しない行為は誠意ない行動かもしれません。
しかし、そのような状況でないならば、一部だけでも返済することで誠意をみせることができるのです。
親しい友人だからこそ、必要以上に誠意を見せて100万円を返済し、再び生活困難に陥ったとすればどうでしょう。
自分も不幸になりますし、友人もあまり良い気はせず、関係は壊れてしまうかもしれません。
それよりも、一部の返済によって、その時点で可能な誠意を確実に見せましょう。
その上で生活再建を図って残りのお金も返し、返済後も良い関係を続けていく方が、互いによほど幸福です。
完全に同じとは言わないまでも、銀行員と会社が良い関係を築いている場合には、似たようなことが言えます。
会社は銀行に対し、可能な範囲で誠意を見せていれば、銀行員が経営者を悪く思うことはありません。

会社が資産を全て提供することなく、再生のための余力を残していたとしても、それを誠意のない態度とみなして怒ることもありません。
もちろん、複数の銀行と取引している時に、特定の銀行に対してのみ誠意をみせたり、見せなかったりするのは問題ですので、その点には注意が必要です。

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
資金調達プロに関する関連記事はこちら
まとめ
銀行員と経営者が良い関係を築いておけば、融資に有利になったり、困難な時にサポートしてもらえたりと、何かと役立つものです。
もちろん、役立つという考えで、利用してやろう考えているならば、功利的な考えを見抜かれ、関係が壊れてしまうかもしれません。
しかし、ただ良い関係を築きたいと考えて誠意を見せて行くならば、良い関係を築くことは十分に可能であり、その延長として会社に色々なメリットがもたらされます。
多くの人に支えられながら、盤石な経営をしていくためにも、銀行員との人的ネットワークは大切にしていきましょう。
コメント