給料ファクタリング(給与ファクタリング)は違法|最高裁2023年決定と被害にあったときの相談先
このテーマの基本:ファクタリングは違法?合法となる条件と「貸付け」と判断された裁判例一覧
広告なし・一次情報にもとづく解説です。編集方針
この記事の要点
- 給料ファクタリング(給与ファクタリング)とは、個人が勤務先から受け取る給与を買い取ると称して金銭を渡し、給料日に本人から手数料を上乗せして回収する取引で、金融庁と消費者庁は業として行えば貸金業に当たるとしている。
- 最高裁判所第三小法廷は令和5年(2023年)2月20日の決定(令和4年(あ)第288号)で、給与ファクタリングの金銭の交付は貸金業法2条1項と出資法5条3項の「貸付け」に当たると判断し、無登録営業などで有罪とした判決を維持した。
- 給料ファクタリングが貸付けとされる理由は、労働基準法24条1項により給与は勤務先から労働者本人に直接支払われるため、給与債権を買い取った業者は勤務先に請求できず、本人から回収するしかないことにある。
- 金融庁は、給料ファクタリングの手数料は年利に換算すると「数百~千数百%」になるとしており、東京地裁令和3年2月9日判決は年250%を超える利息の契約として無効とし、業者に利用者9人が支払った合計436万5,000円の全額返還を命じた。
- 給料ファクタリングの被害は、消費者ホットライン188、警察相談専用電話#9110、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、日本貸金業協会(0570-051-051)、法テラス(0570-078374)などに相談できる。
| 定義 | 個人の給与(賃金債権)を買い取ると称して金銭を渡し、給料日に本人から回収する取引 |
|---|---|
| 法的な評価 | 業として行えば貸金業に該当(金融庁・消費者庁)。登録のない業者は無登録営業 |
| 最高裁 | 第三小法廷 令和5年(2023年)2月20日決定(令和4年(あ)第288号)。「判決」ではなく「決定」 |
| 貸付けとされる理由 | 労働基準法24条1項で給与は本人に直接支払われ、業者は勤務先に請求できない |
| 手数料の水準 | 年利換算で「数百~千数百%」(金融庁) |
| 返還を認めた裁判例 | 東京地裁 令和3年2月9日判決:利用者が支払った金額の全額返還を命令 |
| 主な相談先 | 188(消費者ホットライン)、#9110(警察)、0570-016811(金融庁)、0570-051-051(日本貸金業協会) |
目次
給料ファクタリング(給与ファクタリング)は、業として行えば貸金業に当たり、貸金業の登録を受けていない業者が営めば違法です[1][4]。最高裁判所第三小法廷は令和5年(2023年)2月20日の決定で、給与ファクタリングによる金銭の交付は貸金業法と出資法の「貸付け」に当たると判断しました[6]。金融庁は、給与ファクタリングを「利用しないでください」と呼びかけています[2]。
事業者が売掛金を売る通常のファクタリングの違法性は、ファクタリングは違法?合法となる条件と裁判例一覧で解説しています。この記事は、個人の給与を対象にした取引に絞って、仕組み、最高裁決定の中身、手数料の水準、取立ての実態、相談先を整理します。
給料ファクタリングとは:仕組みと誘い文句
給料ファクタリングは、形式上は「給与債権の売買」ですが、実際のお金の流れは「今お金を受け取り、給料日に多く返す」借入れと同じです。金融庁は、業者から受け取る金額と給料日に払う金額の差を、年利に換算すると「数百~千数百%」になるような法外な利息だと説明しています[1]。
国民生活センターは、トラブル事例の仕組みを次の4段階で図示しています[5]。
- 利用者(個人)が、勤務先から受け取る予定の給与(賃金債権)を業者に売却すると称して契約する
- 業者が、手数料を差し引いた金額を利用者に渡す
- 勤務先が、いつもどおり利用者本人に給与を支払う
- 利用者が、手数料を含めた金額を業者に支払う
| 比較の観点 | 事業者のファクタリング(真正な売買の場合) | 給料ファクタリング |
|---|---|---|
| 売るもの | 事業の売掛債権 | 個人の給与(賃金債権) |
| 支払う人 | 売掛先(取引先)が支払う | 勤務先は本人に支払い、本人が業者に払う |
| 業者が支払先に請求できるか | 債権譲渡の通知などで請求できる | 労働基準法24条1項により勤務先に請求できない[9] |
| 不払いのときの損失 | 業者が負う(ノンリコースの場合) | 本人が払うしかない |
| 法的な評価 | 債権の売買(実態が貸付けなら貸金業) | 業として行えば貸金業[3][4] |
金融庁は、事業者向けの注意喚起の中で「通常、個人としてファクタリングを利用する機会はないと思います」と書いています[2]。個人が「給料を売って現金化する」という発想自体が、ファクタリング本来の用途から外れているということです。
チェックポイントは、広告の言葉ではなくお金の流れで判断することです。「受け取る金額より多い金額を、決まった日に自分が払う」契約なら、名前が買取りでも借入れと同じ構造です。
給料ファクタリングは違法か:金融庁・消費者庁の見解
給料ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当し、貸金業の登録がない業者が営めば無登録営業として違法です。金融庁・消費者庁・日本貸金業協会は、いずれもこの見解を公表しています[1][4][17]。
根拠の中心は、2020年3月5日の金融庁の回答です。金融庁は「一般的な法令解釈に係る書面照会手続」に基づき、個人(労働者)が使用者に対して持つ賃金債権を買い取って金銭を交付し、その個人を通じて資金を回収するスキームについて、次のように回答しました[3]。
この回答の前提になっているのが、労働基準法24条1項です。同項は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています[9]。最高裁は昭和43年3月12日の判決で、労働者が賃金債権を他に譲渡した場合でも使用者は労働者に直接支払わなければならず、譲受人は使用者に支払いを求められない、と判断しています(令和5年の最高裁決定が引用)[7]。
業者の言葉は、法律上どう読み替えられるのか
給料ファクタリングの契約書や広告は、借入れの言葉を避けて書かれています。貸付けと判断されると、それぞれの言葉は次のように読み替えられます。
| 業者が使う言葉 | 法律上の扱い(貸付けと判断された場合) | 根拠 |
|---|---|---|
| 給与の「買取り」「譲渡代金」 | 貸付けによる金銭の交付 | 貸金業法2条1項、出資法7条[10][11] |
| 「手数料」「割引」 | 名目を問わず利息とみなされる | 出資法5条の4第4項、利息制限法3条[11][12] |
| 「買戻し」「額面の支払い」 | 貸付けの返済 | 最高裁決定[7] |
| 「遅延損害金」 | 債務不履行の賠償額の予定として、出資法の利息に含まれる | 出資法5条1項[11] |
| 「債権譲渡通知を勤務先に送る」 | 返済を事実上強制する手段。勤務先への連絡を告げる行為は貸金業法21条1項で規制 | 東京地裁判決[8]、貸金業法21条1項[10] |
貸金業の登録がある業者なら、給料ファクタリングは合法か?
登録のある貸金業者が給与の買取りの形で資金を渡す場合も、その取引は貸付けとして扱われます。貸金業者は、利息制限法1条の上限を超える利息の契約を締結してはならないと定められています(貸金業法12条の8第1項)[10]。利息制限法の上限は、元本10万円未満で年20%、10万円以上100万円未満で年18%、100万円以上で年15%です[12]。
つまり「合法な給料ファクタリング」があるとすれば、それは上限金利などの規制を守る通常の借入れと同じもので、年率換算で数百%になる手数料は認められません。登録の有無は金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで調べられます[24]。貸金業法・出資法・利息制限法の上限金利と罰則の全体は、ファクタリングと貸金業法・利息制限法・出資法の関係で整理しています。
最高裁2023年2月20日決定の内容
最高裁判所第三小法廷は、給与ファクタリングの金銭の交付を、貸金業法2条1項と出資法5条3項の「貸付け」に当たると判断し、被告人の上告を棄却しました[6]。裁判官全員一致の意見です[7]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 裁判所・裁判種別 | 最高裁判所第三小法廷・決定(判決ではない)[6] |
| 日付 | 令和5年(2023年)2月20日[6] |
| 事件番号 | 令和4年(あ)第288号[6] |
| 事件名 | 貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件[6] |
| 結果 | 上告棄却(貸金業法違反と出資法違反の成立を認めた原判決を維持)[6] |
| 判例集 | 刑集77巻2号13頁[6] |
| 原審 | 札幌高等裁判所 令和4年2月15日判決(令和3年(う)第125号)[6] |
| 参照法条 | 貸金業法2条1項、出資法5条3項・7条、労働基準法24条1項[6] |
どんな取引だったのか
決定によると、被告人は東京都内に事務所を設け、「給料ファクタリング」と称する取引を行っていました[7]。東京都知事の登録を受けないまま、令和2年3月13日から7月27日までの間に、969回にわたり、合計504人の顧客に、貸付名目額合計2,790万9,500円(実際の交付額は合計2,734万2,120円)を貸し付けたとされています[7]。
取引の内容は、労働者である顧客から、勤務先に対する賃金債権の一部を「額面額から4割程度割り引いた額」で譲り受け、同じ額の金銭を渡すというものでした[7]。契約上は、勤務先の不払いの危険は業者が負うとされていました。一方で、希望する顧客は買戻し日に額面額で買い戻せること、顧客が希望すれば買戻し日まで勤務先への債権譲渡通知を留保することが定められ、実際には全ての顧客との間で買戻し日が定められ、通知が留保されていました[7]。
出資法違反の部分では、顧客のうち8人から、法定の1日当たり0.3%の割合による利息11万8,074円を101万7,816円超える、合計113万5,890円の利息を受け取ったとされています[7]。出資法5条3項は、業として年109.5%(1日当たり0.3%)を超える利息を受領することを禁じています[11]。
「不払いリスクは業者が負う」と書いてあっても貸付けとされた理由
最高裁が重視したのは、契約書の文言ではなく、実際にお金がどう回収されるかです。決定の中心部分は次のとおりです[7]。
この決定は、「債権譲渡の形式」「不払いリスクは業者負担という条項」があっても、実質が返済の合意ある金銭の交付なら貸付けに当たることを示しました。事業者向けのファクタリングで同じ論理がどう使われるかは、貸付けと判断された裁判例一覧で比較できます。
事業者の売掛金のファクタリングにも同じ判断が及ぶのか?
最高裁の決定は、賃金債権に特有の事情を理由にしています。労働基準法24条1項により、給与の譲受人は勤務先に支払いを求められないため、業者は本人から回収するしかない、という点です[7]。事業者の売掛債権では、債権譲渡の通知や承諾によって、業者が売掛先から直接回収する道があります。
そのため、この決定から「事業者向けのファクタリングもすべて貸付け」とはいえません。一方で、「形式が債権譲渡で、不払いリスクは業者負担と書いてあっても、実質で判断する」という考え方は共通しています。金融庁も、事業者向けのファクタリングの注意喚起のページに、この決定の抜粋を載せています[2]。
民事の裁判例:支払ったお金の全額返還を命じた東京地裁判決
給料ファクタリングで払ったお金は、取り戻せないとは限りません。東京地裁令和3年2月9日判決(令和2年(ワ)第11883号)は、給料ファクタリングの業者に対し、利用者9人が支払った金額の全額返還を命じました[8]。
判決が認定した取引の流れは、次のとおりです[8]。
- 申込者が電話かホームページのフォームで申し込む
- 業者が、給与額、給与支給日、消費者金融などからの借入状況、勤務先や親族の連絡先を確認する
- 業者が「賃金等債権譲渡契約書」のPDFをメールで送る
- 業者が、「説明を受けて金銭の貸し借りでないことを理解しました」という趣旨の文言を書いたメールの返信を指示する
- 業者が申込者の口座に「譲渡代金」を送金する
- 申込者が次の給料日に額面額を業者の口座に振り込み、希望すれば再契約する
契約書には、申込者が支払いを怠ったときは年14%の遅延損害金を払うこと、業者が「申込者が支払わないおそれがある」と判断したときは勤務先へ債権譲渡通知を送れることが定められていました[8]。業者は、期限までに支払わない申込者に、勤務先への連絡や通知書の送付を告げて督促していました[8]。
| 判決の判断 | 内容 |
|---|---|
| 契約の性質 | 経済的には貸付けによる金銭の交付と返還の約束と同じ機能を持ち、貸金業法と出資法の「貸付け」に当たる[8] |
| 利率 | 貸金業法・出資法の計算方法で、少なくとも年250%を超える利息の契約[8] |
| 契約の効力 | 貸金業法42条1項(年109.5%超)により無効。出資法5条3項にも違反[8] |
| 返還の範囲 | 民法708条の趣旨から、業者が渡した金銭を差し引くことは許されず、支払額の全額を返還[8] |
| 返還額 | 9人合計436万5,000円(1人あたり14万円〜112万5,000円)と、支払日の翌日からの利息[8] |
返還を求めるときの2つの考え方
払いすぎたお金を取り戻す考え方は、大きく2つあります。1つは、取引を貸付けとみなし、利息制限法の上限で計算し直して払いすぎた部分(過払金)を返してもらう考え方です。事業者向けの偽装ファクタリングについて、大阪地裁平成29年3月3日判決はこの方法で過払金の返還を命じました(裁判例一覧)。
もう1つは、契約が無効で、業者が渡したお金は「不法な原因のための給付」だから返す必要がなく、自分が払った全額を返してもらう考え方です。民法708条は「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と定めています[25]。東京地裁令和3年2月9日判決は、この条文の趣旨を示した最高裁平成20年6月10日判決を参照し、業者が渡した金銭を差し引くことを認めませんでした[8]。
給料ファクタリングの手数料は年率何%になるのか
給料ファクタリングの手数料は、年率に換算すると数百%から千%を超える水準になります。金融庁は「年利に換算すると数百~千数百%」と説明しています[1]。
国民生活センターの相談事例では、利用者は7万円を受け取り、次の給料日に12万円を返す予定でした。相談者の計算では年利700%以上になっていました[5]。最高裁の事案では、賃金債権を額面から4割程度割り引いた額で譲り受けていました[7]。
| 比較の対象 | 年率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 利息制限法の上限(元本10万円未満) | 年20% | 利息制限法1条[12] |
| 出資法の刑事罰の基準(業として) | 年20%超、年109.5%超 | 出資法5条2項・3項[11] |
| 金融庁が示す給料ファクタリングの水準 | 数百~千数百% | 金融庁[1] |
| 東京地裁令和3年判決の認定 | 少なくとも年250%超 | 東京地裁判決[8] |
| 最高裁事案(4割引き・30日と仮定した場合) | 約811% | 上の計算例(仮定) |
手数料の問題は率だけではありません。金融庁は、給与ファクタリングを使うと本来受け取る賃金より少ない金額しか受け取れなくなり、経済的な生活がかえって悪化して生活が破綻するおそれがあると指摘しています[1]。国民生活センターにも「毎月借りている」という相談が寄せられており、翌月の給料が減った分を埋めるために再び使う、という繰り返しが起きやすい仕組みです[5]。
取立てと被害の実態:相談事例と検挙事例
給料ファクタリングの被害は、高額な手数料と、勤務先や家族を巻き込む取立ての2つです。金融庁は、大声での恫喝や勤務先への連絡といった違法な取立ての危険を挙げています[1]。
国民生活センターが公表した相談事例では、次のようなケースが寄せられています[5]。
- 子どもの治療費のために7万円を受け取った。期日に遅れていないのに、期日前に勤務先と自宅に電話がかかり、勤務先と家族に知られた(2019年8月受付、40歳代男性)
- 返済日の変更を申し出たら、凄んだ口調で拒否された
- 失業して契約したが、家族へ執拗に取り立てられている
- 返済が遅れたら強引な取立てを受けた
こうした取立ては、貸金業法で禁じられています。貸金業法21条1項は、貸金業を営む者が、正当な理由なく債務者の勤務先に電話や訪問をすること、借入れの事実などを債務者以外の者に明らかにすること、そうした行為をすると告げることなどを禁止しています[10]。違反には2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(併科あり)が定められています(同法47条の3)[10]。
警察庁が公表した給与ファクタリングの検挙事例
警察庁の年次資料には、給与ファクタリングを使った無登録営業などの検挙事例が載っています。個人名は資料にも記載がなく、当サイトでも載せていません。
| 公表資料 | 検挙の時期・警察 | 手口 | 規模 |
|---|---|---|---|
| 令和3年の生活経済事犯(警察庁)[13] | 2021年1月、警視庁(7人・1法人) | 給与ファクタリングと称する手法。インターネット広告で集客 | 延べ約9万7,000人。法定利息の約13〜30倍。元利金合計約63億5,000万円 |
| 同上[13] | 2021年5月までに、千葉・沖縄(6人・3法人) | 給与ファクタリング、または商品代金の後払いを仮装 | 延べ約1,900人。法定利息の約23〜139倍。元利金合計約1億3,500万円 |
| 令和4年の生活経済事犯(警察庁)[14] | 2022年7月までに、埼玉(5人) | 給与ファクタリング、または商品代金の後払いを仮装。返済は現金書留 | 約6,800人。法定利息の約57〜139倍。元利金合計約2億8,000万円 |
ヤミ金融全体の状況は、警察庁の集計で次のように推移しています。2025年は相談受理件数3,501件、検挙550事件でした[15]。相談者の41.6%が20歳代・30歳代で、インターネットなど非対面の手口が87.3%を占めています[15]。
| 年 | ヤミ金融事犯の相談受理件数 | 検挙事件数 | 被害人員 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 5,099件 | 502事件 | 11万7,689人 |
| 2022年 | 4,047件 | 627事件 | 3万5,298人 |
| 2023年 | 3,957件 | 671事件 | 4万8,631人 |
| 2024年 | 3,825件 | 639事件 | 2万2,501人 |
| 2025年 | 3,501件 | 550事件 | 1万225人 |
出典:警察庁「令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について」図表14・図表26[15]。警察庁の集計はヤミ金融全体の数字で、給与ファクタリングだけの件数は公表されていません。ほかの検挙事例はファクタリング業者の逮捕事例と手口の傾向にまとめています。
給料ファクタリングの広告を見分けるには
給料ファクタリングの広告は、「借金ではない」ことと「誰でも借りられる」ことを強調するのが特徴です。貸金業の登録を受けていない者は、貸金業を営む旨の広告や勧誘そのものが禁じられています(貸金業法11条2項、違反は2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金)[10]。
登録のある貸金業者でも、広告で使えない表現があります。貸金業法16条2項は、他の貸金業者の利用者や返済能力がない者を対象として勧誘する旨の表示、借入れが容易であることを過度に強調する表示などを禁止しています[10]。つまり「ブラックOK」のような表示は、登録業者であっても許されない種類の広告です。
似た手口:後払い現金化と先払い買取現金化
給料ファクタリングと同じように、売買を装ってお金を渡し、後日多く払わせる手口が他にもあります。消費者庁は、次の2つにも注意を呼びかけています[4]。
| 手口 | 消費者庁の説明の要旨 | 給料ファクタリングとの共通点 |
|---|---|---|
| 後払い現金化 | 形式上は後払いの商品売買だが、代金の支払いの前に金銭を受け取り、給料日などに商品代金を払う。代金と受け取った金銭の差額が高額になる傾向[4] | 給料日に多く払う構造 |
| 先払い買取現金化 | 手元にない商品の買取りを装って先にお金を払い、商品を送らなかった違約金(キャンセル料)名目でより高額を払わせる[4] | 売買を装った名目で差額を取る |
警察庁の検挙事例にも、給与ファクタリングと「商品代金の後払い」を組み合わせた事件があります[13][14]。名前が「買取り」「後払い」でも、受け取った額より多く払う約束なら、同じ危険があると考えてください。
給与前払いサービスとは何が違うのか
勤務先が導入する給与前払いサービスは、給料ファクタリングとは別の仕組みです。金融庁は、一定の前提のもとでは給与前払いサービスは貸付けに当たらないと回答しています[16]。
金融庁のグレーゾーン解消制度に基づく回答(2018年12月20日)が対象にしたのは、事業者が導入企業と業務委託契約を結び、従業員の申請に応じて勤怠実績に応じた賃金相当額を上限に給与口座へ振り込み、導入企業が給料日に精算する仕組みです[16]。金融庁は、給料日までの極めて短期間の立替えであること、導入企業の支払能力を補うための立替えではないこと、手数料が導入企業の信用力によらず一定であることなどを前提に、貸金業に該当しないと考えられるとしました[16]。
| 比較の観点 | 給与前払いサービス(金融庁回答の前提) | 給料ファクタリング |
|---|---|---|
| 導入の主体 | 勤務先(導入企業)が事業者と契約 | 業者と個人が直接契約 |
| 受け取れる上限 | 勤怠実績に応じた賃金相当額[16] | 業者が決めた額(額面から割り引いた額) |
| 本人の返済 | 不要。前払額は賃金として支払われる[16] | 給料日に本人が額面額を払う |
| 信用調査 | 従業員の返済能力を調査しない[16] | 借入状況や勤務先・親族の連絡先を確認した例がある[8] |
| 法的な評価 | 前提どおりなら貸付けに当たらない(前提が違えば貸金業に該当する可能性が高い)[16] | 業として行えば貸金業[3] |
勤務先に直接頼める制度もあります。労働基準法25条は、労働者が出産、疾病、災害など厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求したときは、使用者は支払期日前でも既に働いた分の賃金を支払わなければならないと定めています[9]。
給料ファクタリングを使ってしまったときの対処手順
給料ファクタリングを使ってしまったら、次の利用をやめ、証拠をそろえて、公的窓口か弁護士に相談します。支払いを止めるかどうかは、相談してから決めてください。
- 新たな契約をしない。 翌月の給料が減った分を埋めるために再び使うと、負担が雪だるま式に増えます[1]。
- 証拠を保存する。 契約書(PDF)、業者とのメールやSNSのやり取り、振込記録、通話の日時をまとめます。東京地裁の事案では、契約書のPDFと確認メールが取引の認定に使われました[8]。
- 業者の登録を確認する。 金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで、商号や電話番号から検索できます[24]。
- 相談する。 消費者ホットライン188や金融庁、日本貸金業協会で状況を整理し、返還請求などは弁護士に相談します(相談先は次の章)。
- 取立てを受けたら記録し、警察に相談する。 勤務先や家族への連絡、脅すような言動は、日時と内容を記録します。
給料ファクタリングを利用した側が罰せられることはあるか?
貸金業法47条の無登録営業の罪や出資法5条の高金利の罪は、お金を渡した業者の側を処罰する規定です[10][11]。これらの条文には、給料ファクタリングを利用した個人を処罰する定めはありません。国民生活センターも、利用者に対しては「まずは消費生活センター等に相談を」と呼びかけています[5]。
国民生活センターに寄せられた相談の背景には、子どものけがの治療費、失業、家族の任意整理中の借入れ、新型コロナウイルスの影響による収入減などがありました[5]。利用したことを恥じて相談をためらう必要はありません。
被害にあったときの相談先一覧
給料ファクタリングの相談先は、目的によって選びます。次の窓口は、金融庁・消費者庁などの公式ページで名称と電話番号を確認したものです(2026年9月18日確認)。
| 相談先 | 相談できること | 電話番号 | 受付時間 |
|---|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 最寄りの消費生活センターなどを案内 | 188 | 全国共通の3桁の番号。受付時間は案内先の窓口による[5] |
| 警察相談専用電話 | 緊急でない相談。脅迫的な取立て | #9110 | 各都道府県警察の相談窓口につながる[23] |
| 金融庁 金融サービス利用者相談室 | 貸金業に関する一般的な相談 | 0570-016811(IP電話は03-5251-6811) | 平日10時〜17時[1] |
| 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター | 登録業者かの確認、貸金業の相談 | 0570-051-051(IP電話は050-3494-7988または03-5739-3861) | 9時〜17時(土日祝・年末年始を除く)[18] |
| 法テラス・サポートダイヤル | 法制度と相談窓口の案内 | 0570-078374 | 平日9時〜21時、土曜9時〜17時[19] |
| ひまわりお悩み110番(日本弁護士連合会) | 近くの弁護士会の法律相談センターにつながる | 0570-783-110 | 通話料がかかる。050IP電話からはつながらない場合がある[21] |
事業者が売掛金のファクタリングを装った貸付けや詐欺の被害にあった場合の手口と相談先は、ファクタリング詐欺の手口と、被害にあったときの相談先で解説しています。
法テラスの無料法律相談は、経済的に困っている方が対象で、収入(手取りの平均月収)と資産が一定基準以下であることが条件です[20]。同じ問題について3回まで無料で相談できます[20]。多重債務になっている場合は、金融庁の多重債務についての相談窓口から全国の財務局などの窓口を探せます[22]。
状況別:最初にどこへ相談するか
相談先に迷ったら、今いちばん困っていることから選びます。どの窓口も、必要に応じて他の窓口を案内してくれます。
| 今の状況 | 最初の相談先 | 理由 |
|---|---|---|
| どこに相談すればよいかわからない | 消費者ホットライン188 | 最寄りの消費生活センターなどを案内してくれる[5] |
| 勤務先や家族に連絡すると脅されている | #9110(警察相談専用電話) | 金融庁は悪質な取立ての被害は警察への相談を呼びかけている[2] |
| 相手が登録業者かどうか知りたい | 日本貸金業協会 0570-051-051、金融庁の検索サービス | 登録業者かどうかを確認できる[17][24] |
| 払ったお金を取り戻したい、契約が有効か知りたい | 弁護士(ひまわりお悩み110番、法テラス) | 返還請求は個別の法律判断が必要 |
| ほかの借金も重なって返済が苦しい | 多重債務相談窓口(財務局など) | 債務の整理方法をまとめて相談できる[22] |
お金に困ったときに給料ファクタリング以外で検討できること
給料日までのお金が足りないときは、給料ファクタリングの前に、公的な制度や相談窓口を使う方法があります。消費者庁は、生活資金の工面や多重債務に困っている方は、まず自立相談支援機関や多重債務相談窓口などに問い合わせるよう案内しています[4]。
| 状況 | 検討できる方法 | 根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 出産・病気・災害などの急な出費 | 勤務先に既に働いた分の賃金の支払いを請求する(非常時払) | 労働基準法25条[9] |
| 勤務先が給与前払いサービスを導入している | 勤怠実績に応じた範囲で前払いを受ける | 金融庁のグレーゾーン回答の前提を確認[16] |
| 借入れが重なって返済が苦しい | 多重債務の相談窓口で整理の方法を相談する | 金融庁・財務局の多重債務相談窓口[22] |
| 借金の悩みと生活の立て直し | 日本貸金業協会の生活再建支援カウンセリング、貸付自粛制度 | 日本貸金業協会[18] |
| どうしても借りる必要がある | 登録のある貸金業者か確認し、利息制限法の範囲の金利か確かめる | 貸金業法12条の8、利息制限法1条[10][12] |
よくある質問
Q給料ファクタリングは違法ですか?
A給料ファクタリングを業として行うことは貸金業に当たり、貸金業の登録が必要です(金融庁・消費者庁)。登録のない業者が営めば無登録営業として違法で、最高裁判所も2023年2月20日の決定で「貸付け」に当たると判断しました。金融庁は、給与ファクタリングを利用しないよう呼びかけています。
Q給料ファクタリングは借金ですか?
A給料ファクタリングは、業者が「借金ではない」と宣伝していても、法的には貸付けと同じ扱いを受けます。国民生活センターは、給与ファクタリングは「実態は貸金業であり借金と同じ」と注意を呼びかけています。受け取った金額より多い金額を給料日に払う仕組みで、差額は利息に当たります。
Q給料ファクタリングの最高裁の判断は「判決」ですか?
A最高裁の判断は「最高裁判所第三小法廷 令和5年(2023年)2月20日決定」で、判決ではなく決定です。事件番号は令和4年(あ)第288号で、上告を棄却し、貸金業法違反と出資法違反の成立を認めた原判決を維持しました。「第一小法廷」「判決」と書かれていることがありますが誤りです。
Q給料ファクタリングで払ったお金は取り戻せますか?
A返還が認められた裁判例があります。東京地裁令和3年2月9日判決は、給料ファクタリングの契約を年250%を超える利息の貸付けとして無効とし、業者に利用者9人が支払った金額の全額返還を命じました。結論は事実関係で変わるため、契約書や振込記録をそろえて弁護士や法テラスに相談してください。
Q給料ファクタリングの業者から勤務先に連絡されることはありますか?
A国民生活センターには、期日前に勤務先や家族へ取立ての電話がかかってきたという相談が寄せられています。貸金業法21条1項は、正当な理由なく勤務先に電話や訪問をすること、借入れの事実を第三者に明らかにすること、それらをすると告げることを禁じており、違反には2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金があります。脅迫的な取立ては警察に相談してください。
Q給与前払いサービスも違法ですか?
A勤務先が導入する給与前払いサービスは、給料ファクタリングとは仕組みが異なります。金融庁は2018年12月20日のグレーゾーン解消制度の回答で、勤怠実績に応じた賃金相当額を上限に、給料日までの極めて短期間に立て替える形などの前提のもとでは貸付けに当たらないとしました。ただし前提と違い、実質的に貸付けを行っている場合は貸金業に該当する可能性が高いとしています。
Q給料ファクタリングの手数料は年率何%になりますか?
A金融庁は、給与ファクタリングの手数料は年利に換算すると「数百~千数百%」になるとしています。たとえば額面10万円の給与を4割引きの6万円で売り、30日後に10万円を払う場合、年率に換算すると約811%です。利息制限法の上限は元本10万円未満で年20%です。
Q給料ファクタリングの被害はどこに相談すればいいですか?
A消費者ホットライン188、警察相談専用電話#9110、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051)に相談できます。返還請求などの法律相談は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)や弁護士会のひまわりお悩み110番(0570-783-110)で窓口を案内しています。
出典・参考資料
- 金融庁「給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!」
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 金融庁「一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書)」(2020年3月5日)
- 消費者庁「違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください!」
- 国民生活センター「給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!-高額な手数料や強引な取り立ての相談が寄せられています-」(2020年6月12日)
- 裁判所「最高裁判所第三小法廷 令和5年2月20日決定(令和4年(あ)第288号)裁判例情報」(2023年2月20日)
- 裁判所「最高裁判所第三小法廷 令和5年2月20日決定 全文」(2023年2月20日)
- 裁判所「東京地方裁判所 令和3年2月9日判決(令和2年(ワ)第11883号)全文」(2021年2月9日)
- e-Gov法令検索「労働基準法」
- e-Gov法令検索「貸金業法」
- e-Gov法令検索「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」
- e-Gov法令検索「利息制限法」
- 警察庁「令和3年における生活経済事犯の検挙状況等について」(2022年)
- 警察庁「令和4年における生活経済事犯の検挙状況等について」(2023年)
- 警察庁「令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について」(2026年3月)
- 金融庁「確認の求めに対する回答の内容の公表(給与前払いサービス、グレーゾーン解消制度)」(2018年12月20日)
- 日本貸金業協会「悪質な金融業者にご注意!」
- 日本貸金業協会「貸金業相談・紛争解決センターについて」
- 法テラス(日本司法支援センター)「法テラス・サポートダイヤル」
- 法テラス(日本司法支援センター)「無料法律相談のご利用の流れ」
- 日本弁護士連合会「ひまわりお悩み110番」
- 金融庁「多重債務についての相談窓口」
- 警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」
- 金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」
- e-Gov法令検索「民法」
出典のURLと内容は2026年9月18日時点で確認しています。
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アンドファクタリング「給料ファクタリング(給与ファクタリング)は違法|最高裁2023年決定と被害にあったときの相談先」(https://factoring.co.jp/safety/salary-factoring/、2026年9月18日更新)