経営が行き詰った時に「良い破産」を選び、「悪い破産」に至らないために

経営が行き詰まり、破産に至る会社は少なくありません。

この時、同じ破産でも「良い破産」と「悪い破産」があります。

良い破産とは、取引先になるべく被害を与えずに破産することであり、悪い破産とは、取引先にたくさんの被害を与えて破産することです。

良い破産を選ぶことができれば、破産後も取引先との関係を続けられる可能性があり、新たな人生を始める際に大きな力になります。

しかし、良い破産を選べる経営者は少なく、立て直しに奔走した挙句に悪い破産に至る会社が多いものです。

これは、破産に対して間違った考えを持っていることも大きな原因です。

そこで本稿では、悪い破産ではなく良い破産を選ぶために、破産に関する正しい知識を身に着けていきましょう。

「良い破産」と「悪い破産」

破産とは、会社が立ち行かなくなり、取引先や銀行への債務の支払いができなくなり、経営が破綻することを指します。

破産について、このように捉えている人がほとんどだと思いますが、詳しく考えてみると、破産にも二種類あることが分かります。

すなわち、次の方法です。

  • 債務の支払いができなくなった時、早めに見切りをつけ、初期の段階で破産する
  • 債務の支払いができなくなっても、何とか経営を続けようと奔走し、いよいよ手の打ちようがなくなってから破産する

「良い破産」とは?

  • 手形の不渡りがまだ発生していないものの、不渡りになることが明らかな状態
  • あるいは未払金が発生していないものの、近い将来発生することが明らかな状態

このような状態になった時、早めに会社を見切って破産に至ります。

もちろん、これはあくまでも「経営が行き詰った場合」です。

まだ打つ手があるのに破産するということではなく、色々な対処を考え、それぞれの対処をした場合にどのような流れになるのかを予測した結果です。

「色々な対処を考えたが、結局は破産するほかなさそうだ」という結論に至った場合に、早めの破産をすることです。

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このような破産をすれば、取引先に被害を与えることはないのだ。

被害を与えるとしても最小限の被害に止めることができます。

取引先が連鎖倒産してしまうような事態を招くことなく、綺麗に会社をたたむのです。

これは、破産の中でも「良い破産」だと言えます。

「悪い破産」とは?

  • 債務の支払いが不可能になった時、取引先に支払いの延期をお願いする
  • 支払いを延期してもらいつつ仕入れを認めてもらう
  • 親しい会社からお金を借りて支払いを行う
  • 親族や友人からお金を借りる

このように、色々な奔走をするのですが、結局は破産に至るものです。

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これでは、被害を受ける取引先が増えたり、各取引先の被害が大きくなったりする結果を招くわ。

これは、破産の中でも「悪い破産」です。

悪い破産で取引先は泣き寝入り

会社が破産を申し立てると、会社の資産は差し押さえられ、売却の後に債権者への支払いに充てられます。

不渡りの手形や未払金の支払いに充てられたり、銀行への借入金返済に充てられたりします。

しかし、会社の財産を差し押さえて弁済を図っても、債務の全てを消化することはほとんど不可能です。

それぞれの債権者が回収できる債権は数%程度というのが普通です。

これは、債権の種類に応じて債権者には優先順位が付けられており、優先的に弁済を受けられる債権者と、そうではない債権者に分けられるためです。

この優先順位では、まず破産手続き費用、裁判所費用、破産管財人の報酬などが最優先となっており、これらの費用が先に支払われます。

次いで、従業員への未払い給与や未納状態の税金があるならば、これを優先的破産債権とみなして支払います。

これらを支払った後に、一般の破産債権として、取引先や銀行といった債権者への弁済が行われます。

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一般の債権者に弁済される頃には、様々な費用が差し引かれていることが分かるだろう。

差押えられる資産の内容によっては、よくても債権額の数%、場合によっては全く回収できないこともあり得るわけです。

そうなれば、取引先は泣き寝入りするほかありません。

良い破産を選び、かなり早い段階で見切って破産に至れば、未払状態の債務が少ない状態です。

したがって、被害を与える取引先は少なくなります。

会社の資産もそれなりに残っており、従業員の給与や税金の未払も軽いでしょう。

もし債務が残っていても、弁済に回される金額も大きく、取引先の被害を最小限に止めることができます。

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しかし、悪い破産ならばどうだろうか。

悪い破産ならば、立て直しのために下手に奔走したことで、債務が大きくなっている可能性が高いです。

また、資産の売却などを通して延命していることでしょうし、従業員の給与や税金も先延ばしにしている可能性が高く、いざ破産して差押えが行われたとしても、弁済に回される金額は小さくなるものと思います。

そうなれば、一般の債権の弁済に回すことができるお金もほとんど残っておらず、たくさんの債権者が泣き寝入りすることになります。

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このように考えると、破産は破産でも「良い破産」と「悪い破産」があり、大きく違うことが分かるよ!

良い破産によって、取引先への被害を最小限に食い止めれば、これまで築いてきた信頼を保つこともできるでしょう。

しかし、悪い破産によって、取引先を泣き寝入りさせることになれば、信頼は崩壊します。

どうせ破産するならば、良い破産をした方が良いに違いありません。

もちろん、これまで苦労して経営してきた会社を破産させるのは、非常に苦しいことと思います。

しかし、あえて早い段階で見切りをつけて良い破産をすれば、次なる人生に確実にプラスをもたらします。

第二の人生で、普通に働いていくにしても、信頼を損なわなかったことによって、かつての関係者から就職の世話をしてもらえる可能性があります。

また、新たな会社を立ち上げて再び経営していく場合には、かつての取引先がまた付き合ってくれるかもしれません。

良い破産を選べば、それが可能です。

しかし、悪い破産を選べば、そのようなことは到底不可能です。

だからこそ、経営が行き詰って対処のしようがなくなったときには、下手にもちこたえようとして悪い破産に至るよりも、早めに見切りをつけて良い破産をする方が良いのです。

ただし、見切りをつけることは簡単なことではありません。

破産を躊躇させる大きな理由として、破産したときに自身に降りかかる影響について、誤ったイメージを抱いていることが挙げられます。

良い破産に踏み切るためには、そのような勘違いを改め、破産に対して過度の不安を抱かないことが大切です。

以下に、破産の実態と実際に身の回りに起こる影響などを紹介していきます。

破産の基礎知識

良い破産を考えるにあたり、まずは破産の基礎知識を学んでいきましょう。

よく、「破産=倒産」と考えている人がいます。

確かに、似たようなイメージがある言葉ですが、厳密には異なる意味を持っています。

破産とは、倒産後に行われる手続きのことを指します。

倒産に至った時、その会社は債権者に弁済するための手続きを行います。

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この手続きには、法的整理と任意整理があるよ!

法的整理とは、正しくは「法的倒産処理手続き」というものであり、破産法や民事再生法といった法律に則り、裁判所の監督で倒産を進めるものです。

一方任意整理とは、正しくは「任意倒産処理手続き」というものであり、倒産した会社と債権者の協議によって、財産の処理を進めていくものです。

私的整理とは、裁判所や法律によることなく、債務者である会社と債権者が協議することによって債務を処理していきます。

裁判所という中立で強力な機関が間に立たずに進めるため、債権者同士の利害から話がまとまらないことも多いです。

このため、法律という絶対的な基準をもとに、確実に、安全に倒産を進めていくためには、法的整理の方が好ましいと言えます。

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法的整理はさらに再建型と清算型に分けられるよ!

再建型とは、会社の再建を目指して行うものであり、民事再生や会社更生がこれに当ります。

一方、清算型とは、破産や特別清算など、清算を目指して手続きを進めるものです。

出資者を得られる場合には、民事再生によって倒産処理を進め、会社を存続させることも可能です。

ただし、破産手続きは手続き費用や弁護士費用で300万程度必要となります。

一方、民事再生は1000万円程度かかるため、この点で大きく違うと言えます。

同じ法的整理でも、再建型は倒産状態にある会社を存続させつつ、債権者への弁済を図ります。

しかし、清算型では会社を存続させることなく、倒産状態にある会社の財産を換金して弁済します。

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法的整理には時間がかかる

以上のように、倒産はいくつかの形態に分かれるわけですが、「破産」とは「法的整理」の「清算型」にあたります。

財産の差押えも、破産手続きの流れの中で行われます。

破産は、会社が裁判所に破産の申し立てを行い、裁判所がそれを認め、破産手続きの開始決定を行うことで手続きが始まります。

この決定がなされなければ、破産手続きが進められることはなく、差押えなども行われることはありません。

したがって、会社が倒産状態に陥ったから、あるいは破産を申し立てたからといって、即座に財産が差し押さえられたり、預金口座を凍結されたりすることはありません(現実的には、借入をしている銀行への返済が滞ったり、手形の不渡りを起こしたりすることで、口座が凍結されることも多い)。

このことから、会社が倒産状態に陥ってから、破産が成立するまでにはかなり時間がかかることが分かります。

破産の申し立てから破産手続きが完了するまで、最低でも半年、平均して1年程度、長ければ2~3年かかることもあります。

破産=債務帳消しではない

多くの経営者は普段から破産について考えることはありません。

普段の経営では、いかに経営を続けていくかを考えており、それが正しい姿勢といえます。

しかし、いざ破産の可能性が生じた時、基本的な知識がないために、間違った認識によって破産に踏み切ることがあります。

よくある勘違いが、「行き詰ったから破産するほかない。破産すれば債務は全部帳消しになる」という勘違いです。

行き詰った時に早期に破産を決断するのは良い破産への一歩となりますが、破産を申し立てたからと言って、借金や債務がなくなるわけではありません

この認識を誤っていると、適切な債務整理に支障をきたし、結局悪い破産になってしまうかもしれません。

「会社の財産を隠蔽しておいて、さっさと破産して債務を消滅させ、新たに事業を始めよう」などという、良くない考えにつながることもあります。

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破産を申し立てれば債務が全て消えてなくなる、という考えは甘いものだと考えよう!

債権と債務は表裏一体であり、債務者の権利として破産が認められていることと同じように、債権者にも財産の分配を受ける権利が認められています。

すなわち、会社の破産では、財産を全て処分して債権者に分配したのち、払いきれなかった債務に限って、会社と債権が同時に消滅することとなるのです。

したがって、会社の破産においては、会社の財産を全て処分し、債務の支払いに充てることが前提となります。

財産の査定や処分、債権者への分配などを要するため、破産には時間がかかります。

このことから、「破産を申し立てればすぐにすっきりする」という認識も勘違いだと言えます。

 

なお、会社が処分すべき財産を持っていない場合はどうなるのでしょうか。

この場合には、裁判所は破産手続き開始決定を行うと同時に、破産手続きを完了します。

これを、同時廃止事件と言い、かなりスピーディに破産に至ります。

ただし、同時廃止事件のほとんどは、資産を持たない個人が破産する場合に限られます。

会社となると、弁済に充てられる資産が全くのゼロということは普通ありえませんから、同時廃止事件になることは稀です。

同時廃止事件にならない場合、管財事件として取り扱われます。

管財事件では、裁判所が破産管財人を選任し、財産の調査や破産手続きを進めていきます。

会社の破産=自己破産になる場合

中には、個人事業主や自営業者の場合もあるでしょう。

このような場合も、会社の破産ということができますが、個人事業主や自営業者は会社の財産と経営者個人の財産が明確に区別できないことが多々あります。

このため、会社の破産を個人の自己破産として進めていくこともあります。

とはいえ、個人の自己破産になったからと言って、会社の自己破産とそれほど異なるわけではありません。

個人事業主や自営業者でも、事業に利用していた機器や車両など、何らかの資産を持っているのが普通ですし、売掛金がある場合も考えられます。

そのため、それらを処分して債権者に分配することになります。

分配する債権者も、借入先の銀行、未払いの買掛先、未払の給与がある従業員、不渡りをだした取引先などが債権者となり、これも会社の破産と変わりません。

会社の借入金の連帯保証人になっている場合

また、個人事業主や自営業者でなくとも、会社が破産するにあたり、経営者個人が自己破産となることもあります。

会社の財産は仕方ないとしても、経営者個人の資産は差し押さえられたくないと考える人は多いでしょうから、この点は気になるところだと思います。

本来ならば、会社と経営者個人は別人格とされますから、会社が破産した時に経営者個人の財産が差し押さえられることはありません。

しかし、中小企業が銀行などから融資を受ける際には、ほとんどの場合、経営者が会社の連帯保証人になっているものです。

このため、会社が破産して債務の支払いを免れたとしても、その債務は経営者個人に回ってくることとなります。

経営者個人がたくさんの財産を持っており、会社の債務を肩代わりできるならば、そうすることによって全て丸く収まります。

しかし、多くの経営者は、会社が支払えなかったほどの債務を個人的に支払えることはなく、経営者個人としても自己破産に至り、個人財産が差し押さえられることになります。

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このように考えると、会社の破産と経営者個人の破産は密接な関係にあることが分かるよ!

会社が破産するということは、実質的には経営者個人の破産を意味するとも言えます。

このため、会社の破産と経営者個人の破産が同時進行で進められると考えてください。

実際、会社が破産するにあたっては、裁判所は経営者個人の破産も同時進行で進めるように指示します。

会社の破産と個人の破産の2つの案件を同じ破産管財人が担当し、並行して進めていくこととなります。

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差押えられる資産の範囲

会社の破産と経営者個人の破産が同時進行で進められるわけですが、会社と個人の差押えは、どのような範囲で行われるのでしょうか。

まず、会社の場合から考えてみましょう。

会社名義の財産は、個人名義の財産とは異なり、かなりの範囲で差押えの対象となります。

換金できるものは全て換金し、債権者に分配するためです。

このため、会社名義の財産では、以下のようなものが差押えの対象となります。

  • 現金、預貯金
  • 有価証券、不動産
  • 車両
  • 機材、工具、什器、備品
  • 在庫
  • 売掛金、受取手形
  • 会社名義で契約している保険の解約返戻金
  • 積立保証金
  • 賃貸している事務所や工場・倉庫などの敷金

現金・預金や有価証券、不動産などはイメージしやすいと思います。

しかし、機械類や在庫、事務所内のあらゆる設備、電化製品などは全てが差し押さえられます。

個人財産の差押えは厳しくない

では、経営者個人の資産への差押えはどうでしょうか。

経営者の個人資産も差し押さえられるとなれば、怖いと感じる人も多いと思います。

失いたくないものもたくさんあるでしょうし、破産と差押えによって家族が路頭に迷うのではないかと不安になる人もいるでしょう。

例えば、債権者から依頼を受けた回収業者や、裁判所のスタッフが自宅に急に押しかけてきて、何から何まで持ち去っていき、自宅が空っぽになってしまうといったイメージがあります。

おそらくこれは、悪質な金融業者を題材にした漫画やドラマなどのイメージが強いのだと思います。

また、刑事事件の際に、刑事たちが証拠になりそうなものを何から何まで段ボールに詰め込んで持ち去るイメージと混同している人もいるかもしれませんが、これは「差押え」ではなく「押収」です。

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差押えは、そのように無慈悲に行われるものでは無いわ!

差押えは計画的に行われますし、差し押さえても良い資産の範囲が明確に定められています。

会社への差押えならば、換金性のある様々な資産が差し押さえられることになります。

しかし、特に個人に対する差押えでは、生活に最低限必要となる「自由財産」を差し押さえてはならないこと、換金しても20万円未満にしかならないものは差し押さえないことが決まっているため、差押えの後に残るものも多いのです。

そもそも、破産で差し押さえを行う理由は、それを換金して債権者に分配することです。

換金性の低い個人財産は、換金にかかるコストの方が上回ってしまうことも多く、弁済の役には立ちません。

だからこそ、差し押さえられない資産も多いのです。

個人資産のうち、差押えの対象となるのは、何百万円もするような高級家具や家電、高級時計、宝石類、骨とう品などが挙げられます。

経営者名義の自家用車や不動産も差押えの対象となります。

ただし、上記の通り、生活に最低限必要となる資産や、換金性が一定額未満の資産は差し押さえられません。

このため、交通の便が非常に悪いなど、車が必ず必要な事情があるとか、価値が低い車である場合などには、差し押さえられないこともあります。

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次に気になるのが、預金だ!

経営者個人の預金口座は差し押さえられますが、年金や退職金の受給権、小規模企業共済の受給権などは差押えることができません。

預金残高は、20万円以上の部分が差押え対象となります。

また、現金に関しても99万円までは差押えることができません。

このほか、経営者個人が保険金を積み立てている場合には、解約したうえで返戻金を差し押さえられることとなります。

この場合にも、返戻金の額が20万円未満であれば、差押えを免れます。

もっとも、これはあくまでも基本的な差押えのルールです。

家族の人数が多い、家族の中に要介護者や入院者がいるなどの理由から、普通よりも多くのお金が必要となる場合には、自由財産の拡張を申し立てることによって、差押えの範囲を緩くしてもらうことができます。

家族の財産は差し押さえられない

上記において、会社と経営者は別人格であり、しかし実際に破産の際にはどちらの資産も差押え対象となると書きました。

では、経営者の家族の資産はどのように見なされるのか、気になる人も多いと思います。

法人と経営者が別人格であるのと同じく、経営者の配偶者や家族もまた別人格とみなされます。

このため、会社が破産し、経営者個人も自己破産したとしても、配偶者や家族、親族などの資産が差押え対象となることはありません。

これは、配偶者や家族、親族などが、会社の役員になっている場合にも同様です。

会社の事業に関係していないならば、なおさら無関係と言えます。

このため、会社の破産に伴って経営者個人も破産となり、経営者名義の資産が差し押さえられたとしても、配偶者や家族の名義になっている資産が差し押さえられることはありません。

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ただし、保険に関しては勘違いしやすいので注意が必要だ!

経営者個人が生命保険の積立を行なっている場合、解約返戻金は差押え対象となります。

これは、生命保険の契約者が経営者本人であるものの、受取人が配偶者や家族である場合にも同様です。

この場合、その解約返戻金は経営者個人の財産とみなされるため、差押え対象とはなります。

逆に、保険の契約者が配偶者や家族となっている場合には、受取人が経営者個人になっていたとしても、その保険の解約返戻金は配偶者や家族の財産とみなされ、差押え対象にはなりません。

配偶者や家族の財産が差押えられる場合

ただし、配偶者や家族が会社や経営者の連帯保証人になっている場合には、配偶者や家族の資産も差押え対象となります。

連帯保証人には、元々の債務者に代わって返済する必要があるため、会社の連帯保証人になっている場合、あるいは会社の連帯保証人になっている経営者の連帯保証人になっている場合には、配偶者や家族に返済義務が生じます。

このため、配偶者や家族の資産を以てしても債務を解消できない場合には、配偶者や家族も自己破産することとなります。

このことから考えると、会社が銀行などから借り入れる際に、経営者個人が連帯保証人になるのは仕方がないとしても、経営者の配偶者や家族が連帯保証人になることはできるだけ避けるべきでしょう。

また、連帯保証人になっていない場合には、配偶者や家族の資産が差押えられないといっても、経営者名義からの名義変更には注意を要します。

破産を見据えた経営者の中には、個人資産の差し押さえを避けるために、自分の名義を配偶者や家族の名義に変更してから、破産を申し立てようとする場合があります。

しかし、これは客観的に見ても、債権者に財産が流れるのを防ぐための、悪質な差押え対策だと分かります

このような行為は、たとえ名義変更を済ませてから破産を申請したとしても、債権者の利益を害する詐害行為とみなされ、名義にかかわらず差押え対象となります。

破産にあたっては、申し立てから2年ほどさかのぼって資産・財産の状況を洗い出すため、破産申請の直前に名義変更をしても無駄です。

名義変更によって財産を守るためには、2年以上前に名義変更をしておく必要があるわけですが、破産申し立てより2年も前に、破産を見越して名義変更をすることは現実的とは言えません。

破産申し立て時点での資産がポイント

差押え対象となる資産の範囲について、もう一つ気になるのが、破産申し立て後に取得した資産も差し押さえられるのかということです。

中には、破産申し立て後に取得した資産も差し押さえ対象になると考え、必要以上につましい生活を送ろうとする人もいます。

しかし、破産申し立て後に取得した資産は、差押え対象にはなりません。

例えば、破産申し立て後、再び事業を起こそうとする人もいるでしょうし、就職して収入を得ようとする人もいるでしょうが、どんな形にせよ、破産申し立て後に得た収入は自由に使うことができます。

これは、差押え対象となる資産の範囲は、あくまでも「破産申し立て時点で所有していた資産」に限られるからです。

ですから、破産申し立て後に得た収入は元より、それ以降に購入した車などの資産についても、差押え対象とはなりません。

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もちろん、破産手続き完了前でも同様よ!

ただし、破産申し込み後に得られる収入であるとしても、破産申し込み時点で発生していた売掛金や、破産申し込み時点で所有していた不動産からの賃貸収入などは差押え対象となります。

これは、破産申し込み時点で、それらの収入の発生が予定されているからです。

したがって、破産申し立て以降に発生する収入のうち、その収入が発生する原因も破産申し立て以降に発生している場合について、差押え対象外であると考えるのが良いでしょう。

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返す必要のない、助成金で資金調達する方法もあります。

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破産の事実が掲載される範囲

さて、差し押さえられる資産の範囲を正しく理解すれば、生活に必要なお金や資産は守られることや、配偶者や家族の資産も守られることが分かり、かなり安心できることと思います。

そこで、次に気になるのが、破産することによって身の回りに起こる色々な変化です。

例えば、よくある勘違いとして、破産の事実が戸籍などに掲載され、破産の事実を色々な場面で知られてしまうという勘違いがあります。

また、最近ではあまり信じている人はいないかもしれませんが、破産すれば選挙権がなくなると言う都市伝説があります。

日本において、選挙権を失うなどというのは、禁固刑以上の刑に処せられている人や、選挙に関する何らかの犯罪で選挙権を停止されている人くらいのもので、破産によって選挙権を失うなどと言うことはありません。

戸籍などに破産の事実が掲載され、それによって社会的地位を失い、選挙権も失ってしまうと考える人もいますが、そのような心配はないので安心してください。

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ただし、破産の事実は官報や破産者名簿には記載されるよ!

これは、自治体が身分証明書を発行する際に参照するためであり、もし破産手続き中の人ならば、身分証明書には「破産宣告または破産手続き開始決定の通知を受けている」と記載されます。

身分証明書は、様々な法律行為を行うにあたり、その人物に法律行為を行う能力があるかどうかを証明するために用いるものです。

例えば、売買契約を結ぶ際に身分証明書を利用するならば、その人物が売買契約を行う能力があるかどうかの証明に用います。

身分証明書を発行することで、その人物が破産手続きを行っているとわかれば、売買契約を自由に行うことはできません。

その人物の個人財産であったとしても、債権者への分配のために処分すべき財産となる可能性もあるからです。

売買契約を結ぼうとする相手も、破産手続き中の人の資産を買い取れば、後でトラブルになりますから、それを避けるためにも、身分証明書によって問題の有無を確認するのです。

したがって、破産手続きを開始した人は、官報や破産者名簿にその事実が記載されると考えてください。

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これにより、売買契約その他の法律行為に支障を来す可能性もあるよ!

もっとも、破産手続きが完了し、債務免除が確定すれば、この記載は抹消されます。

それ以降の身分証明書には、「破産宣告または破産手続き開始決定の通知を受けていない」と記載されます。

破産で家計はどうなる

さて、破産によって経営者個人が破産したり、場合によっては配偶者や家族も破産したとすれば、家計には大きなダメージとなるでしょう。

財産が差し押さえられ、会社からの収入が断たれることも家計にダメージとなりますが、それと同時に、クレジットカードやローンを組めなくなるということからも、従来よりも家計が厳しくなります。

自己破産すると、個人信用情報機関という機関に破産の事実が記録され、全ての金融機関(ノンバンクを含む)や信販会社に共有されるようになります。

このため、会社名義でも個人名義でも、お金を借りたり、クレジットカードを使ったりすることができなくなります。

お金を借り入れられないのはもちろんのこと、ローンを組むこともできなくなります。

クレジットカードを使うことで便利に生活している人は多いですし、ローンを利用する人も多いでしょう。

自動車や自宅など、高額なものにローンを組むのはもちろんのこと、スマホやパソコンなどをローンで購入することも多いかもしれませんが、それができなくなります。

また、子供がいる家庭では、教育資金ローンが組めなくなることも、家計を圧迫することにつながります。

普通、クレジットカードを使ったり、ローンを組んだりするということは、必要となる現金をすぐに準備できないからこそ、信用を担保にして分割払いにしてもらっているのです。

お金を借りるのも、手持ちのお金が足りないからこそ借りています。

破産することによって、色々な資産を差し押さえられ、収入も大きく減ったり不安定になったりしている状況ならば、特にクレジットカード、ローン、借入などの必要性を感じるものと思います。

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それができなくなるため、家計への影響が大きいと感じる人もいるだろう。

とはいえ、銀行などから借り入れができないとしても、預金口座を開設して利用することは可能ですし、銀行のキャッシュカードにデビットカードの機能をつけることで、クレジットカードと似た使い方をすることができます。

ローンを組めないことで、買えるものは少なくなるかもしれませんが、ローンは返済能力を十分に認められる人しか利用できないと考えれば、致し方ありません。

それでも、教育資金ローンを組めないならば奨学金制度を利用するなど、代替可能な方法を利用することで、色々なことに対応していけることと思います。

さらに、信用情報機関に記録されている破産の情報は、永遠に記録され続けるものではありません。

いくつかの説がありますが、破産の記録は早ければ7年、長くても10年くらいで抹消されると言われています。

情報が抹消されれば、再びクレジットカードやローン、借入の利用が可能となります。

破産で住居はどうなる

次に気になるのが、破産することによる住居への影響です。

昔は、破産した人は家賃の支払能力が低くなることから、賃貸借契約を一方的に解約し、立ち退きを迫ることが法律的に認められていました。

このことから、破産すれば現在借りて住んでいる住居から立ち退かなければならないと考えている人もいます。

しかし、現在では、破産を理由に賃貸借契約を解除することは、法律で禁じられています。

このため、破産を理由に立ち退きを迫られることはありません。

では、持ち家に住んでいる場合はどうでしょうか。

持ち家に住んでおり、破産によって差し押さえられることとなれば、いずれは立ち退くことを求められます。

また、借家に住んでいる場合にも、破産によって実際に支払能力が低くなり、滞納を繰り返してしまうと、賃貸借契約を解除され、立ち退きを迫られることになります。

問題となるのは、自宅を差し押さえられて引っ越す場合や、現在住んでいる借家の家賃を支払えずに引っ越す場合、果たして新たな不動産会社と無事に賃貸借契約を結び、住居を確保できるかどうかということです。

まず、親族などが保証人になってくれるならば、それを条件に公営住宅や民間物件に入居できる可能性が高いです。これが、最もスムーズなケースでしょう。

もし、保証人が得られない場合には、保証会社に保証してもらうことが考えられます。

しかし、家賃保証会社は、入居者の審査を行うため、信用情報を参照したうえで保証を拒否する可能性が高いです。

ただし、個人信用情報を参照するのは主に信販系の家賃保証会社ですから、それ以外を利用することによって、問題なく保証してもらえることもあります。

以上のことから、既に住んでいる借家に住み続けるのに何ら問題なく、引っ越すにしても保証人が得られるならば問題ないことが多いことが分かります。

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破産したからと言って、住居への影響はそれほど大きくないと言えるわ。

もっとも、破産手続き中に引っ越しをする際には、裁判所に住所変更の届出を提出し、移動の許可を得る必要があります。

これは、破産手続き中に無断で引っ越してしまうと、手続き上での郵便物などのやり取りで問題が生じ、手続きが進まなくなる可能性があるからです。

引っ越しの申請が認められないことはほぼありませんから、これもあまり問題にはならないでしょう。

破産による不自由は案外少ない

差し押さえられる資産の範囲でも、致命的な問題はなんら見当たらず、家計や住居への影響も小さいことが分かったと思います。

そのほか、生活に影響を与えるものをいくつか考えてみても、やはり問題になることは少ないです。

海外渡航に許可が必要

例えば、破産手続き中に海外に行くためには、裁判所の許可が必要です。

これは、海外旅行に行っていることを把握しておかなければ、破産手続きのためのやり取りがスムーズにいかなくなる可能性があるからです。

また、あまりに治安の悪い国へ行く場合や、あまりにも長期間の渡航になる場合海外旅行と称して実際には国外逃亡を考えていると思われる場合などには、海外旅行は認められません。

ただし、海外旅行はお金のかかる娯楽ですから、そのような余裕がどこにあったのかと疑われ、面倒なことになる可能性があります。

したがって、仕事上の理由から仕方なく海外に行く場合や、知り合いの結婚式に招待されて海外に行く場合などを除けば、海外に行くのは避けておいた方が良いでしょう。

とはいえ、破産手続き中に海外旅行に行きたいと考えるほど、お金にも心にも余裕がないのが普通ですから、この点もほとんど問題にならないと思います。

郵便物への制限

このほか、破産者の郵便物が管財人に回され、確認されることもデメリットと言えばデメリットです。

これは、破産者の隠し財産を発見したり、把握している債権に漏れがないかを確認したりするために行われます。

これにより、個人的にやり取りしている手紙など、人に見られて良い気がしないものまで確認されるため、嫌だと感じる人もいるかもしれません。

しかし、今の時代、個人的なやり取りはメールなどで行うのが普通ですし、これもほとんど問題にはならないでしょう。

破産のメリットは安心を得られること

ここまで読んで、破産について正しい理解が得られたこと思います。

破産をすれば、順調な頃よりも生活は厳しくなることと思いますが、生活困難になるほどの差押えは行なわれませんし、生活への色々な影響を考えても、それほど深刻なものは見当たりません。

したがって、本当に経営が行き詰って破産を考えるようになった時、過度な恐れから破産を遅らせて悪い破産に陥るよりも、できるだけ早い段階で破産に踏み切るべきことも分かったと思います。

破産しないように経営を続けていくことがベストですが、それはあくまでも理想であって、現実に毎年多くの会社が倒産しています。もし、自社も同じ状況に追い込まれた時には、良い破産をしたいものです。

 

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良い破産に踏み切ることができれば、色々なメリットも得られるよ!

まず、債務の支払いに追われていたころと比べて、気持ちが軽くなります。

資金繰りに奔走することはなくなりますし、債権者から支払いの請求を受けることもなくなります。

それ以降、債権者とのやり取りは全て弁護士が行ってくれるため、平穏な生活を送ることができるようになります。

破産するほかない状況で、破産しないように奔走するのは大変なことです。

自分でも、もう無理だということは薄々気づいており、しかし負い目から奔走せざるを得ない状況です。

気持ちがふさぎ込み、焦ってばかりの状態で、冷静な判断はできず、前向きな考えも浮かんでこず、適切に対処していくことができず、事態はますます悪くなっていきます。

早めに破産に踏み切ることで安心を得て、冷静に、前向きな考えを持つことができれば、立ち直るための方法を模索していくこともできるでしょう。

それが、早い段階で生活を再建し、第二の人生を積極的に歩んでいく力となります。

破産を積極的に勧めるわけではありませんが、破産するほかない状況においては、早期の破産をした方が良い結果が得られることも、経営者として知っておくべき知識なのです。

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まとめ

本稿では、破産にも「良い破産」と「悪い破産」があり、「良い破産」を選ぶべきことを解説してきました。

しかし、当然ながら、本来会社が考えるべきことは「破産をどうするか」ではなく、「破産しないためにどう資金繰りしていくか」ということです。

万が一破産に至る場合には「良い破産」を選ぶことが重要ですが、そうならないように普段から健全な経営を心掛けることはもっと重要です。

ぜひ、当サイトの情報も参考にしつつ、健全な経営を目指してほしいと思います。

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