会社の経営状態を表す一つの指標として、売掛金回転期間というものがあります。
これは、簡単に言えば、取引によって発生した売掛金を、どのくらいの期間で回収しているかを表すものです。
本稿では、売掛金回転期間の重要性と、売掛金回転期間を短縮する方法を解説していきます。
売掛金と支払いサイト
企業間取引において、売り手企業が買い手企業に商品を納入した時、現金ですぐに支払いが行われることはほとんどありません。
多くの場合、取引契約において支払い期日を定め、後日支払いを受け取る金銭債権が発生するのです。


支払いサイトは業種にもよりますが、多くは1〜3ヶ月程度であり、特別な業種や取引先の事情によっては6ヶ月程度となることもあります。
「支払いサイトが長かろうが、短かろうが、支払い期日には支払われるならばそれで良いではないか」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
支払いサイトは長ければ長いほど、資金繰りが厳しくなるからです。
支払いサイトの影響
具体的な数字を見ながら、支払いサイトの長短が資金繰りに与える影響を見ていきましょう。
ある会社では「製品を製造してから販売し、売掛金が発生する」までに下記のコストが発生します。
- 原材料の仕入れコスト
- 製造コスト
- 在庫管理コスト
- 販売コスト
このように様々なコストを負担し、月あたり200万円の費用がかかります。利益率は10%とします。この会社において、
支払いサイト3ヶ月の場合
- 1月に支払いサイト3ヶ月で販売して200万円のコスト負担が発生。
- 2月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 3月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 4月にも同様に200万円のコスト負担が発生して累積の負担コストは800万円となり、同時に1月に利益率10%で販売した売掛金240万円がようやく回収される。
支払いサイト6ヶ月の場合
- 1月に支払いサイト3ヶ月で販売して200万円のコスト負担が発生。
- 2月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 3月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 4月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 5月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 6月にも同様に200万円のコスト負担が発生。
- 7月にも同様に200万円のコスト負担が発生して累積の負担コストは1400万円となり、同時に1月に利益率10%で販売した売掛金240万円がようやく回収される。

支払いサイトが長期化しても、手持ちの資金が潤沢な会社であればそれで経営が傾くことはありません。しっかりと売掛金を回収していけば経営は回っていきます。
しかし、中小企業や個人事業主においては資金がそれほど潤沢ではない場合の多くも、支払いサイトの長期化による負担コストの増大が、深刻な資金繰り悪化を招くことがあります。
また、そもそもなぜ買い手企業が売掛金取引を希望するのかといえば、支払いを先送りすれば手持ち資金に余裕ができ、資金繰りが楽になるからです。
即座に支払わなければならない取引では、手持ち資金の範囲内での取引しかできませんが、数ヶ月先に先送りすれば、それまでに資金を準備することができます。

短期間のうちに十分支払い可能というのであれば問題ないのですが、長期の支払いサイトを設けている取引先はあまり良くありません。
なぜならば、長期の支払いサイトを設けなければ代金の支払いができないほど、資金繰りが悪い可能性があるからです(このことは、取引先の信用調査によって判断しなければなりません)。
したがって、そのような会社と長期の支払いサイトを設けて取引をすれば、その期間内に取引先の経営が傾いてしまう可能性もあるわけです。

もし回収前に取引先が倒産して回収不能になれば、資金繰りは一気に悪化します。
なにしろ、貸し倒れによって200万円の負担コストを回収できなくなったならば、利益率10%での取引をしている会社は、1000万円もの販売をして初めて貸し倒れの200万円を埋め合わせることができるからです。
このようなことからも、売掛金の支払いサイトはできるだけ短期であることが好ましく、長期化は避けなければなりません。

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売掛金回転期間とは?
自社の保有している売掛金の、平均的な回収期間がどれくらいであるかを示す指標として、売掛金回転期間というものがあります。
これは読んで字のごとく、「取引によって発生した売掛金が、どのくらいの期間で回収されており、自社の流動資産上で回転しているか」ということです。
売掛金はバランスシートでは流動資産に分類されています。
- それぞれの売掛金が発生して流動資産の売掛金の欄に入る
- 回収することによって売掛金の欄から出て行く
この様子を回転というわけです。
さて、自社の売掛金回転期間を知るためには、以下の計算式を用います。
売掛金回転期間(ヶ月)=売掛金総額÷(売上÷12ヶ月)
例えば、複数の会社に対して売掛金を2000万円保有しており、年間の売上が9000万円の会社があったとすれば、
売掛金回転期間(ヶ月)=2000万円÷(9000万円÷12ヶ月)≒2.7ヶ月

業種別の売掛回転機関
上述の通り売掛金回転期間は業種によって大きく異なります。自社の属する業界の平均を知り、それに照らして自社の売掛金回転期間が適正であるかどうかを判断する必要があります。
業種別の売掛金回転期間は、以下の通りになっています(2014年1月のEDIUNETのデータ)。
- 銀行、信託業・・・約332日
- 一般機械器具製造業・・・約110日
- 建設業・・・約108日
- 金属製品製造業・・・約103日
- 化学工業・・・約98日
- 窯業、土石製品製造業・・・約98日
- 精密機械器具製造業・・・約98日
- 電気機械器具製造業・・・約96日
- ゴム製品製造業・・・約92日
- その他サービス業・・・約90日
- パルプ、紙、紙加工品製造業・・・約86日
- 非鉄金属製造業・・・約85日
- その他の製造業・・・約84日
- 鉄鋼業・・・約81日
- 木材、木製品製造業・・・約76日
- 通信業・・・約74日
- 卸売業・・・約74日
- 輸送用機械器具製造業・・・約71日
- 維工業・・・約69日
- 皮革、同製品製造業・・・約69日
- 航空運輸業・・・約68日
- 出版、印刷同関連産業・・・約67日
- 農業・・・約66日
- 原油、天然ガス鉱業・・・約60日
- 運輸に付帯するサービス業・・・約59日
- 保険業・・・約57日
- 食料品製造業・・・約55日
- 石油製品、石炭製品製造業・・・約55日
- 林業・・・約54日
- 石炭鉱業・・・約48日
- 漁業・・・約43日
- 金属工業・・・約42日
- ガス業・・・約36日
- 映画業・・・約33日
- 道路運送業・・・約32日
- 小売業・・・約28日
- 旅館業・・・約27日
- 電気業・・・約27日
- 民営鉄道業・・・約25日
- 倉庫業・・・約24日
- 水運業・・・約24日
- 娯楽業・・・約19日
- 不動産業・・・約11日
- 証券業・・・約7日
売掛金回転期間が短いならば、その会社は短い支払いサイトで順調に売掛金の回収ができているということです。
逆に、売掛金回転期間が長ければその会社は
- 支払いサイトが長期化しがち
- 売掛金の回収が遅れがち
順調に売掛金を回収しているとは言えず、それだけ資金繰りへの悪影響も大きいということです。

実際に、銀行に融資を申し込んだ時には「経営状況、財務状況、事業成績」などが審査されますが、売掛金回転期間も見られます。
業界平均よりも長ければ融資を断られてしまう可能性がかなり高まります。
また、新規の取引の際には、取引の安全性確保のために、取引先から自社へ信用調査が行われます。
その際に売掛金回転期間が長いことを知られれば、少額でしか取引してもらえなかったり、取引を断られることもあります。

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売掛金回転期間を短くする普通の方法
上記の通り、売掛金回転期間の計算式は「売掛金回転期間(ヶ月)=売掛金総額÷(売上÷12ヶ月)」です。
売掛金回転期間の数値が小さければ小さいほど、すなわち売掛金回転期間が短ければ短いほど好ましい状態であると言えます。
そこで、売掛金回転期間を小さくする方法を検討してみると「売掛金総額を減らすか・売上を大きくするか」のいずれかの方法が考えられます。
しかし、売上を急に伸ばすのは一般的ではありません。そもそも掛売りをしている以上、売上が伸びれば売掛金総額も増えていきます。
もちろん、現金取引を行うことによって、売上を伸ばして売掛金総額を増やさなければ、売掛金回転期間は小さくなります。しかし、すでに述べた通り現金取引はほとんど行われません。


- 方法その1:不良債権を回収する
- 方法その2:営業の改善
それぞれ解説していきます。
不良債権を回収する
売掛金総額が大きくなっている理由の一つとして考えられるのは、売掛金管理がうまくいっておらず、不良債権が多発しているということです。
したがって、不良債権があるならば、すぐさま「請求・催促・督促」などを行なって取引先に支払いを迫りましょう。
必要ならば法的手段も検討しなければなりません。
そうして不良債権が回収されれば、売上は変わらないまま売掛金総額が小さくなりますから、売掛金回転期間も短くなります。
自社の請求漏れによる不良債権の発生などであれば早期回収も望めます。ただし、取引先の経営悪化によって不良債権が発生しているならば、回収は容易ではありません。
ある程度の時間をかけて、腰を据えて回収に臨まなければならないこともあります。
営業の改善
営業の方法に問題があるために、売掛金回転期間が長くなっている会社も少なくありません。
例えば、営業担当者が営業成績を伸ばすことだけに力を注いだ場合です。
信用調査をあまり行わず、とにかく取引の成立ばかりを考えていたならば、支払い能力が低い会社にも販売してしまうことになります。
売上は伸びますが、不良債権が多発する原因にもなります。売掛金総額がなかなか減らなくなるため、売掛金回転期間は長くなります。

というのも、営業担当者が売掛金管理まで意識しておらず、取引先の希望する支払いサイトに簡単に応じている事もあります。その場合、支払いサイトが長い取引先が増えていくことになります。
支払いサイトが長い売掛金は、当然ながら回収までに時間がかかり、売掛金総額がなかなか減りませんから、これも売掛金回転期間が長くなります。

きちんと信用調査を行い、支払い能力の低い取引先との取引を控えていきましょう。
不良債権が発生しにくくなり、支払いサイトの長期化も避けられるため、売掛金回転期間は短くなります。
また、自社と取引先の事情を考慮しながら、よいところで落とし所を見つけて取引条件を決められれば、自社に不利な支払いサイトが設けられる可能性は低くなります。
したがって、これも売掛金回転期間の短縮につながります。
ただし、これは営業担当者の教育を行い、取引先や取引条件を見直した取引を継続いていくことで、徐々に効果が現れてくるものです。
このような取り組みをしっかり行うことは、会社の健全な経営のために必要不可欠なものです。しかし、時間がかかる取り組みであることも覚悟しなければなりません。

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売掛金回転期間を短くする驚きの方法
では、上記のような条件に当てはまらない会社や、現時点で資金繰りが厳しく、時間をかけられない会社はどのようにすればよいのでしょうか。
まず、「不良債権がなく、営業にも問題がない」ならば、回収は順調に行われていることでしょうから、売掛金回転期間にも問題はないと思います。
しかし、さらなる高みを目指して売掛金回転期間を短くしたいと考えるならば、上記の方法では対応できません。
また、現時点で資金繰りが非常に厳しい会社は、すぐにでも売掛金回転期間を短くしたいと思うでしょう。
しかし不良債権の回収や営業部門の問題解決には時間がかかるため、これも上記の方法では対応できません。


ファクタリングとは、自社の保有する売掛金を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことによって資金化するものです。
つまり、自社の保有する売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、バランスシートから売掛金総額を減らすことができれば、売掛金回転期間も短くなるということです。
ファクタリングではすでに支払い期日を過ぎている不良債権の買取には対応していません。
しかし、不良債権の回収にあたってのコンサルティングを行なっているファクタリング会社もあります。そして不良債権になるリスクが高い売掛金の買取も行っています。
ファクタリングが与える影響
ファクタリングにあたっては、通常10〜20%の手数料がかかります。このことを踏まえて、売掛金回転期間への影響を検証してみましょう。
例えば、上記の「売掛金総額2000万円、年間売上9000万円の会社の売掛金回転期間は約2.7ヶ月」でしたが、売掛金のうち1000万円をファクタリングしたならば、
売掛金回転期間(ヶ月)=1000万円÷(9000万円÷12ヶ月)≒1.3ヶ月
となり、売掛金回転期間が半分に短縮されることがわかります。
手数料が20%かかったとしたならば、ファクタリングする売掛金は1000万円から800万円に目減りします。
しかし、200万円の手数料によって売掛金回転期間が半分になり、さらに数ヶ月後にしか回収できなかった売掛金の8割が即座に得られるということは、非常によいことです。
少なくとも、すぐに800万円が必要だからといって、15%程度もの金利でビジネスローンから借りるよりは、間違いなくよい方法であると言えます。
ファクタリングの注意点
しかし、売掛金回転期間を短くするためにファクタリングを利用する際、注意すべき点があります。
それは償還請求権の問題です。
償還請求権とは、万が一売掛先が倒産するなどして、ファクタリングした売掛金が回収不能となった場合、ファクタリング会社が依頼した会社に弁済を求めることができる権利のことです。
通常、ファクタリングでは償還請求権放棄での取引が行われるため、売掛金が回収不能となっても弁済の必要はなく、売掛金回転期間もファクタリングした分だけ短くなります。
しかし、ファクタリング契約によっては償還請求権留保でのファクタリングとすることがあり、その場合には回収不能の際には弁済のしなければなりません。
償還請求権留保でファクタリングした場合にも、買取代金は得られ、表面的には自社の売掛金は少なくなっているのですが、これは弁済が必要となる可能性があるものです。

したがって、償還請求権留保でのファクタリングには、売掛金を資金化する効果はあるものの、売掛金回転期間を短くする効果はないのです。
売掛金回転期間を短くすることを目的としてファクタリングを利用するならば、必ず償還請求権放棄でのファクタリング契約を結ぶようにしてください。

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まとめ
売掛金回転期間は、企業の売掛金管理の状況を知るための重要な指標であり、取引銀行や取引企業など、多方面から参考にされるものです。
そのため、売掛金回転期間が悪ければ、売掛金管理がまともにできない会社であるという印象を与えるため、好ましくありません。
売掛金回転期間を短縮したいならば、売掛金総額をいかに減らすかを考え、取り組んでいきましょう。
その際に、必要に応じてファクタリングを活用することは、売掛金回転期間短縮のために、大いに役立ってくれることでしょう。