経営が困難に陥った時、銀行への返済が難しくなると、リスケや追加での支援を依頼する必要があります。
この時、銀行はリスケや支援を検討するために、経営改善計画の提出を求めます。
経営改善計画を作るためには、経営者が独力で作ることは困難です。
独力で経営改善計画を立てられる計画能力があれば、そもそも経営困難に陥っていないと考えられます。
このため、経営改善計画を作るために、認定機関の協力を仰ぐことになるのですが、認定機関を安易に選んでしまうと、経営がさらに悪化する可能性があります。
そこで本稿では、認定機関を選ぶ際の危険性と、正しい選び方について解説していきます。
銀行から紹介された認定機関は使わない方がいい理由
会社の経営が厳しくなったとき、借入先の銀行がそれを察知したり、会社が困難な状況を打ち明けたりすると、色々な手段によって事態の改善を図ることになります。
ここでいう事態の改善とは、会社の経営が立ち直るように、リスケや追加支援によって、将来的な貸し倒れを防ぐことです。

まず、会社の経営が危なくなったとき、経営再建のためにと経営革新等支援機関(以下、認定機関)を紹介する場合があります。
経営が困難になった場合には、銀行は必要に応じてリスケを認めたり、経営が困難な中でも支援を続けたりする必要があるとの理由から、経営改善計画の作成を求められ、そのために認定機関を紹介されるのです。
会社としても、借入先の銀行に危機感を持たれていることは分かりますから、何とか見放されないようにしようと考えます。
そのため、銀行が紹介してくれた認定機関を利用することを受け入れようとします。
経営困難な状況をどのようにしていくか悩んでいるため、経営改善のための計画を作る必要を感じるでしょう。
認定機関を紹介されると「渡りに船」と考え、受け入れるのです。
しかし、銀行が紹介する認定機関の利用には注意が必要です。
なぜならば、銀行が紹介する認定機関を利用したからと言って、有効な経営改善計画が出来上がるとは限らないからです。
認定機関の経営改善計画の有効性

銀行は融資する側であり、会社は返済する側です。
両者とも融資と返済の状況について良く把握していますし、もっとも真剣に考えているのはこの両者です。
この両者が協議して作るからこそ、本当に経営改善に役立つ計画を作ることができるのです。
しかし、金融再編の流れの中で、金融機関同士が合併したり、支店が合併したりすることによって、銀行員の数は減り、銀行員一人当たりの業務が増えていきました。
それにより、銀行と会社が念入りに協議して、経営改善計画を作ることが難しくなりました。
そこで生まれたのが認定機関です。
つまり、現代においては銀行と会社が協議することがなくなり、その代わりに本来赤の他人に過ぎない認定機関が経営改善計画を支援するようになりました。
当然ながら、本来当事者でない機関ですから、銀行と会社が協議していたころに比べて、経営改善計画はあまり良いものが作られなくなったのです。
もちろん、認定機関の支援を受けるということは、税理士、会計士、中小企業診断士などの専門家の支援を受けることにほかなりませんから、心強くも感じられます。
しかし、認定機関は専門家と言っても、銀行実務をの経験も、会社経営の経験もありません。

いくら専門家とはいえ、このような人物の協力によって作った経営改善計画書は、経営改善に役立たないもの出来上がる可能性も多分にあるのです。

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認定機関の支援には出費が伴ってしまう

この費用は決して安いものではなく、数百万円単位での費用が掛かります。
認定機関の利用にあたっては、国から3分の2の補助を受けることができますが、その上限は200万円と定められています。
このため、300万円の費用がかかるならば100万円を、500万円がかかるならば300万円を会社負担することになります。
会社の経営が厳しい状況だからこそ、認定機関を利用しているわけですが、その状況で数百万円の費用が掛かるのは好ましくありません。
もちろん、数百万円をかけて経営改善計画を作り、それによって本当に経営改善が成就するならば、安い出費だと言えるでしょう。
しかし、上記の通り、認定機関の支援によって作られる経営改善計画は、必ずしも効果的なものとは限らないのですから、やはり好ましい出費とは言えないのです。
場合によっては会社が不利になる
認定機関の専門家は、銀行実務も会社経営の経験もなく、経営改善計画が必ずしも有効なものになるとは限りません。
さらに、このことについては、次の三つの可能性が考えられます。
- 銀行実務の経験がないからこそ、銀行にとって不利な経営改善計画になるか
- 会社経営の経験がないからこそ、会社にとって不利な経営改善計画になるか
- 銀行と会社の双方にとって不利な経営改善計画になるか
銀行から紹介された認定機関を利用する場合、会社に一方的に不利な経営改善計画になる可能性が高いです。

銀行側に不利になる経営改善計画を作るような認定機関を、銀行が会社に紹介するはずがないのです。
つまり、銀行から紹介された認定機関は、少なくとも銀行にとって不利な状況を招かない認定機関、あるいは銀行にとって有利な状況を作ってくれる認定機関である可能性が高いといえます。
実際に、ある会社のケースでは、銀行から紹介された認定機関を利用したところ、大きく不利な立場に立たされました。
なぜならば、紹介された認定機関の専門家は、その銀行のOBだったからです。
その結果、策定された経営改善計画は、一方的に銀行に有利なものとなってしまいました。
このようなケースもあるくらいですから、銀行から紹介された認定機関を利用すべきではないことが良くわかると思います。
情報戦でも銀行が有利に
経営改善計画が必要な状況では、銀行は会社に危機感を抱き、貸し倒れリスクを少しでも下げるべく、色々な情報を収集する必要があります。
しかし、上記の通り銀行員一人当たりの業務が増えた今となっては、そのような余裕があまりありません。
そこで、銀行は認定機関を紹介し、認定機関を通じて情報収集を図ります。
認定機関は、経営改善計画を作っていくために、会社の情報を収集する必要があります。
会社としても、経営改善計画を作ってもらうために、積極的に情報を公開するでしょう。
銀行に対しては警戒している会社でも、経営改善のためとなれば積極的に情報を提供するものです。
認定機関が銀行の意を受けている場合、提供された情報は銀行にも流れている可能性を考えるべきです。
これにより、銀行は会社の財務や業績などに関して正確に把握し、持っている資産の情報なども得ることができます。

実際には銀行員の負担が増え、このように調査を外部に委託するようになったことで、銀行自体の調査能力が低下しています。
融資を受けるべき会社が融資を受けられない、あるいは融資を受けるべきではない会社が融資を受けてしまうなど、不都合な事態も生まれてきているのですが・・・。
とはいえ、以上のような現状を踏まえると、銀行に紹介された認定機関を利用することは避けるべきです。
中小企業庁の経営改善支援のパンフレットでも、「経営改善計画書をどのように作成したらいいかわかりません」との問いに対し、「メイン金融機関にご相談いただき、専門家を紹介していただいたり、」との記載があります。
これを見ても分かる通り、銀行から専門家の紹介を受けるというルートはありふれたものなのですが、必ず避けるようにしましょう。
経営困難な状況の中で、銀行から認定機関を紹介された場合には、
「実は、これまで付き合ってきた専門家に、既に協力を依頼しているんです。わが社の事情もある程度わかっていますし、そちらに経営改善計画も相談してみます」
などと伝え、自社に理解がある人物に協力を仰ぐべきです。
自社に理解のある専門家に依頼すれば、少なくとも銀行の意を汲んだ経営改善計画を策定することはありません。
自社の状況を良く踏まえた上で、そして経営者とじっくりと話し合ったうえで経営改善計画を作っていくことができるでしょう。

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認定機関を信用しすぎてはいけない
しかし、経営に困っている会社の中には、普段から付き合いのある専門家に依頼できない場合もあります。
普段から依頼している税理士や会計士が、必ずしも効果的な経営改善計画を作れるとは限らないからです。
特に、税理士と顧問契約を結んでいるとはいっても、最低限の業務しか依頼していないような場合には、その税理士が本当に良い経営改善計画を作ってくれる保証はどこにもないのです。
そのような場合には、全く新規に認定機関に依頼することになるわけですが、銀行から紹介された認定機関を避けるとしても、やはり全面的に信頼できるとは考えにくいです。

そのような専門家も、経営改善に携わった経験が豊富であり、会社と深いつながりがあれば、念入りなものを作っていくことができるかもしれません。
しかし、全くの新規で、経営改善計画の制作だけを依頼する場合、そのように作られた経営改善計画は、単なる借金返済計画に過ぎず、経営改善の観点が抜け落ちてしまうことが多いのです。
このため、専門家が作ったものであるとはいえ、経営改善計画を忠実に実行したとしても、経営が改善できるとは限りません。

例えば、リスケを認めてもらうための経営改善計画を作った場合、それによって借入金の返済につながるならば、銀行は認めることでしょう。
しかし、計画の中身はといえば、単に銀行にリスケを認めてもらうために数字を合わせただけ。
それによってリスケを認めてもらい、借入金の返済は進んだとしても、会社が疲弊するだけかもしれないのです。
これもすべて、専門家が会社の経営を経験したことがなく、会社経営の理論しか知らないからです。
経験に裏付けられない理論は、得てして役立たないことが多いものですが、認定機関が作る経営改善計画にも同じことが言えます。
理論に偏ることの危険性
経営未経験の専門家は、実際に業績改善のために苦労した経験も、支払いや返済のために資金調達に奔走した経験もありません。
経験に基づかない理論だけで経営改善計画を作り、その通りに実行すれば借入金も減るし、経営も改善するだろうと考えます。
経験に基づかず、あくまでも理論だけで計画を作っていることを専門家が理解していれば、専門家は経営者の経験による知識や感覚なども参考にしながら、経営改善計画を作っていくことでしょう。
しかし、多くの専門家は、会社を経営困難に陥らせた経営者に対して、数字に疎く能力の低い経営者とみなし、そのような経営者の意見など参考にしないほうが良いと考えます。

しかしその結果、理論偏重で経営改善に役立たない経営改善計画が出来上がってしまったのでは意味がありません。
経営者の経験を踏まえず、現場の実態も考慮することなく作った計画など、所詮は机上の空論です。
経営には、必ずしも理論通りにはいかない部分が確実にあるのです。
理論が及ばずに計画通りに行かなかった時にどうすべきかを考えなければならないのが実際の経営なのですが、理論偏重の専門家はそこまで考えてはくれません。
理論だけで考えられた経営改善計画では、経営改善はうまくいかないものです。

本当の経営改善計画とは、資金繰りを改善したり、売上と利益を伸ばす方法を考えたりしながら作っていき、経営改善によって生み出された利益によって返済していくための計画です。
そのような計画を作るためには
- 与信管理の整備による売掛金回収の改善
- 取引先との交渉による資金繰りの改善
- 経費を削減して利益を伸ばすための在庫管理の改善
- 経営における不確定要素への対応の改善
など、経験に基づくことも踏まえて計画していく必要があるのです。
この観点が抜け落ちると、理論だけの、もっと言えば小手先だけで経営改善計画を作ることになり、経営改善がなされることはありません。
経営改善ができないまま返済を続ける計画を実行すれば、どこかで無理をして捻出した資金を返済に回すことになりますから、会社は疲弊していきます。
つまり、経営の破綻を先延ばしにしているだけで、その間に銀行が着実に回収しているだけのことなのです。
計画を実行すればするほど会社は弱っていくのですから、これは経営改善どころか経営改悪と言っていいほどです。
したがって、銀行が紹介してきた認定機関を避けるだけではなく、本当に信頼できる認定機関を利用しなければなりません。

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信頼できる認定機関の選び方
信用できない認定機関も多い中で、信用できる支援機関を選ぶためには、慎重に選ぶ必要があります。
認定機関を選ぶ際には、都道府県にある経営改善センターから紹介してもらうか、経済産業局に紹介してもらうのが一般的です。
紹介を受けずに自ら選ぶことも可能ですが、現在、関東経済産業局の管内だけでも、1万弱の認定機関が存在していることから、紹介を受けずに選ぶのはかなり時間がかかると思われます。
経営改善計画を必要としている逼迫した状況において、ここで時間をかけすぎるのは得策とは言えません。
そこで、上記のような方法で紹介を受け、その中から選んでいくことになります。
選ぶポイントとして、中小機構の運営するJ-Net21では以下のポイントを挙げています。
自社の業種について知識があるか
認定機関は、国の認定を受けている専門家ですから、広く深い知識を持っていそうなものです。
しかし、一口に業種と言っても多種多様な業種が存在しているため、専門家ごとに得手不得手があります。
このため、自社の業種にそれほど知識のない認定機関が紹介されることも考えられますが、その場合には効果的な経営改善計画が期待できません。
したがって、認定機関を選ぶ第一の条件として、自社の業種に深い知識を持っていることが挙げられます。
理論に傾きがちな専門家だからこそ、その業種特有の知識も踏まえた理論によって計画するか、業種特有の知識を無視した経営一般の理論によって計画するかによって、雲泥の差が現れるのです。
認定機関を選ぶ際には、専門家と面談を行います。この時、相談する中で知識のレベルを探り、信用できると思える専門家に依頼することを考えましょう。
密接な支援が期待できるか
認定機関の支援を受ける時、専門家は理論に精通していても経験に欠けるからこそ、経験を持つ経営者と二人三脚で経営改善に臨む必要があります。
そのため、密接な関係を築けるかどうかということも、非常に重要な要素となります。
したがって、正式に依頼することを前提として相談する中で、連絡が取りにくいという印象があるような場合には、多忙のために密接な支援が期待できない可能性があります。
正式依頼の前段階での相談は十分に行うべきですが、その際の相談のしやすさも、認定機関を選ぶときの基準にしましょう。
熱意があるか
認定機関の専門家も人間ですから、経営改善に熱意をもって取り組む人もいれば、そうではない人もいます。
経営改善に対し、経営者が熱意をもって取り組もうとしても、専門家が避けているならば、その温度差に苦しむこともあります。
このため、認定機関の専門家が熱意を持って取り組んでくれるかどうかを、相談しながら探っていくことが大切です。
経営者の熱意に対し、専門家が応えてくれるならば、積極的な支援が期待できるでしょう。

経営者と専門家が互いに熱意を持っていても、人間同士の関係にはどうしても相性があるものですから、そこでかみ合わなければ二人三脚での取り組みが難しくなります。
そのため、熱意と相性も十分に検討したうえで、依頼先を決めることが大切です。

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まとめ
認定機関は専門家であり、支援を受けられることは心強く感じられるものです。
しかし、認定機関は銀行から紹介されることも多く、その場合には自社に不利な状況を招く可能性もあります。
また、いくら専門家と言っても、それは経営や会計の理論に関する専門家に過ぎず、経験に裏付けられたものではありません。
そのため、認定機関を利用する際には、経験を持っている経営者と二人三脚で経営改善計画を作るためにも、慎重に選ぶことが求められます。
認定機関を信用するためには、信用に足るだけに専門家を自ら選ぶことが大切なのです。
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