建設業は、他の業種と比較して離職率が高い業種です。
これは、一般的な理由による離職だけではなく、建設作業中の事故による離職も起こりやすいからです。
このため、建設事業者の雇用保険料は高めに設定されています。
建設業者は離職率が高く、人材不足に悩まされやすく、さらに資金繰りにも余裕がないケースが多いことから、助成金の利用によって状況を改善していく努力が求められます。
本稿では、建設業者と助成金の関係、そして利用できる助成金について解説していきます。
建設業と人材不足について
中小企業の人材不足が深刻化する昨今、とりわけ苦戦を強いられている業種の一つの建設業があります。
建築業では離職率が高く、それでいて業界自体は活況にあるため、需要に応えるために十分な人材が得られていない状況にあります。
また、様々な業種の中でも、建設業は業界の慣習によって、特に資金繰りが厳しくなりやすい事情を抱えています。
建設業では、オリンピック特需などによって好景気が続いている印象がありますが、台所事情を見てみると、厳しいと言わざるを得ない中小企業も多いです。

この場合、手付金をもらったり、工事の進捗に伴って分割で代金を支払ってもらえれば良いのですが、取引によっては工事が完了してから全額支払いとなっているケースもよく見られます。
このような取引では、工事代金を受け取るまでの6ヶ月間にかかる費用は、自社で一時的に立て替える必要があります。
当然、売上が入ってこないうちから出費がかさむため、資金繰りが厳しくなってしまうのです。
だからこそ、工事の受注は順調でありながら、慢性的な資金不足に陥り、ちょっとしたトラブルで資金ショートを起こしてしまう会社もあります。
立替資金は、銀行融資などによってカバーすることができますが、このような事情があるために、建設業者では運転資金の調達に奔走しなければならず、その他の取り組みに後ろ向きになってしまいます。

労働環境を整備し、採用・雇用条件を改善し、求人への応募の増加や職場への定着を促すための取り組みが困難です。
運転資金によって資金繰りが圧迫されている状況で、下手に人材問題に取り組んでしまうと、そのためのコスト負担によって資金繰りが破綻してしまう危険があります。
このように、建設業者でも人材不足に悩まされており、しかもその解決に取り組むことが困難となっているのです。
建設業者だからこそ助成金の活用を
人材問題に取り組むにあたり、負担を軽減するためにも、助成金制度を積極的に活用していくべきです。
助成金制度は、主に中小企業への支援を目的としているため、ほとんどの会社で利用することができます。
中でも、建設業に対する助成金は他の業種よりも離職率が高く、人材不足が深刻になりやすいことから、他の業種よりも助成金の活用が重要と言えます。
離職率が高いと言えば、職場環境が劣悪でなかなか人材が定着しないというイメージがわくかもしれません。
確かに、建設の現場で働く従業員は、肉体労働に従事していることから、肉体的負担に耐えられずにやめてしまう人もいるでしょう。

建設業では、事故による離職が他の業種に比べて圧倒的に高いことも影響して、離職率が高くなるのです。
このように、人材不足が他の業種よりも深刻であることから、政府は建設業に対する助成金を充実させています。
実際に、厚生労働省の助成金のページを見てもわかりますが、特に建設業を対象とした助成金がたくさんあります。
助成金の種類が多いことによって、活用できるシーンが増えます。
しっかりと助成金について学び、取り入れていくことが大切です。
建設業者の雇用保険料は高い!利用しなきゃ損!
また、建設業者の雇用保険料は、他の業種よりも高く設定されています。
一般の事業の保険料率は、年間の人件費の1000分の9(事業主負担はこのうち1000分の6)となっているのに対し、建設業者の保険料率は年間の人件費の1000分の12(事業主負担はこのうち1000分の8)となっています。
他の業種よりも高く設定されているのも、離職率の高さによるものです。
離職率が高ければ、それだけ失業保険の利用も多くなるため、雇用保険料の支払いが高くなるのです。

そして、その離職率の高さに対応すべく、政府は建設業者向けに多くの助成金を設けています。
助成金の財源は事業者が納めた雇用保険料ですから、助成金の種類が多い建設業者では、納める雇用保険料も高くなっているのです。
このように、建設業者は他の業種よりも高めの雇用保険料を支払っているのですから、利用できる助成金は積極的に活用しなければ損なのです。
では、具体的にどのような助成金があり、どのようなシーンで活用できるのでしょうか。
2019年4月時点で募集されているものをまとめてみました。

半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携するなど、この資金調達方法がすごい。

大手企業ともパートナー提携していて非常に安心よ♪
OLTAのサイトはこちらから→ https://www.olta.co.jp/
トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)
トライアル雇用助成金は、雇用に伴って利用できる助成金として有名ですが、建設業者では、特に建設業者向けのコースが設けられています。
一般的なトライアル雇用助成金(一般トライアルコース)では、職業経験や技能、知識などによって、安定した就職が困難な人材を雇用する場合に利用できるものです。
このような人材は、いきなり長期間の有期雇用、あるいは無期雇用や正規雇用が困難です。
そこで、トライアル雇用助成金を利用するうことで、3ヶ月のトライアル雇用期間を設けて雇用するというものです。
トライアル期間の後、常用雇用に切り替えると1人あたり1ヶ月4万円、最大12万円の助成金を受給することができます。
一方、若年・女性建設労働者トライアルコースでは、経験・技能・知識などに難のある人材に限らず、若年または女性を雇い入れる場合に利用できるものです。
トライアル雇用期間や助成金額は、一般コースと変わりません。しかし、「安定した就職が困難な人材(自社でも雇用が困難な可能性が高い人材)」に限定せず、若年あるいは女性という条件を満たせば利用できるところにメリットがあります。
【支給額】
1人あたり1ヶ月4万円(最大12万円)
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、建設業者向けの制度が充実しています。
雇用を慎重に進めていくならば、トライアル雇用助成金を利用すべきですが、労働環境や賃金制度などを整備し、積極的に雇用していく場合には、人材確保等支援助成金を利用すべきです。
こちらのほうが、トライアル雇用助成金よりも支給額が大きく、負担の軽減につながります。
建設業者向けに設けられているコースについて、簡単に見ていきましょう。
雇用管理制度助成コース(整備助成)
雇用管理制度助成コースでは、雇用管理制度を整備することによって助成金を支給しています。
雇用管理制度の整備のためには、人事評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度などを導入する必要があります。
これにより、従業員の離職率の低下や、若年・女性労働者の雇用促進を目指す会社に支給しています。
受給できる機会は2回あります。第1回目は、
- 雇用管理制度整備計画期間の末日の翌日から12か月を経過するまでの期間における若年及び女性入職被保険者の入職率が5.5%以上であること
- 同期間の若年及び女性入職被保険者の人数が、人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)における雇用管理制度整備計画認定申請日の1年前の日の属する月の初日から起算して、認定申請日の属する月の前月末までの期間の人数を超えていること
を満たした場合に受給することができます。
さらに、第2回目は、
- 第1回目の助成金を受給したこと
- 第1回目終了の翌日から24か月を経過するまでの期間における若年及び女性入職被保険者の入職率の年平均 が5.5%以上であること
- 第2回目における若年及び女性入職被保険者の人数が、計画時算定期間の人数を超えており、なおかつ離職率が職場定着支援助成金における離職率を下回っていること
を満たした場合、さらなる助成金を受給することができます。
【支給額】
- 第1回目の入職率目標を達成→57万円(生産性要件を満たした場合72万円)
- 第2回目の入職率目標を達成→85.5万円(生産性要件を満たした場合108万円)
雇用管理制度助成コース(登録基幹技能者の処遇向上支援助成)
雇用管理制度助成コースのもう一つのパターンとして、全ての登録基幹技能者を対象に賃金または手当の単価を増額改定し、処遇を引き上げることによっても、助成金を受給することができます。
登録基幹技能者とは、国土交通大臣が登録した登録基幹技能者講習実施機関にて、登録基幹技能者講習を修了した人のことです。

賃金テーブルを改定する場合には、
- 改定後1年目には2%以上アップ
- 改定後2年目には4%以上アップ
- 改定後3年目には6%以上アップ
することによって、複数回にわたって受給することができます。
また、登録基幹技能者手当を増額する場合には、
- 改定後1年目には月額8334円以上アップ
- 改定後2年目には月額16667円以上アップ
- 改定後3年目には月額25000円以上アップ
することにより、複数回の受給が可能です。
【支給額】
登録基幹技能者1人当たり年額6.65万円(生産性要件を満たした場合には8.4万円)
※2年目と3年目の受給も同額

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
アクセルファクターについての関連記事はこちら
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(事業主経費助成)
トライアル雇用助成金と同様に、人材確保等支援助成金でも特に若年・女性労働者を対象とした助成金があります。
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースでは、若年・女性労働者の入職と定着を目指して、啓蒙活動や研修会・講習会、労働安全管理の普及などに取り組んだ会社や事業主団体に、助成金を支給しています。
【支給額】
この助成金は経費助成であり、労働環境改善にかかった経費の実費相当額(項目によって上限あり)を支給してもらうことができます。

もし貴社が、新型コロナウイルスで売上が低迷しているなら、この人達が救済してくれるゾ!
人材開発支援助成金
次に注目したいのが、人材開発支援助成金です。
建設業の従業員は、作業のために技術を必要とする場合があり、そのためには訓練や技能実習を受ける必要があります。
そのような取り組みを行った会社では、助成金を受給することができます。
建設労働者認定訓練コース
まず、建設労働者認定訓練コースから見ていきましょう。
このコースでは、従業員に建設関連の認定訓練を受講させる際に必要となった経費や、訓練中に発生する賃金について、助成金を受給することができます。
【支給額】
- 経費助成→訓練にかかった経費の6分の1相当額
- 賃金助成→訓練期間中、対象労働者1人当たり日額4750円(生産性要件を満たした場合は6000円)
※ただし、1事業所が1年間に受給できる賃金助成の上限額は1000万円。
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースでは、対象となる労働者に技能実習を受講させたとき、経費や賃金を助成してもらえるものです。
【支給額】
- 経費助成→経費助成では、技能実習に要した費用の実費相当額(一つの技能実習につき1人当たり10万円が上限)
- 賃金助成→雇用保険被保険者数が20人以下の中小事業者は、対象労働者1人当たり日額7600円(生産性要件を満たした場合は9600円)
雇用保険被保険者数が21人以上の中小事業者は、対象労働者1人当たり日額6650円(生産性要件を満たした場合は8400円)
※ただし、1事業所が1年間に受給できる賃金助成の上限額は500万円

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
資金調達プロに関する関連記事はこちら
まとめ
本稿では、建設業者が利用できる助成金のうち、特に活用しやすいものの情報についてまとめました。
雇用にあたって利用できる助成金もあれば、雇用を促進するために利用できる助成金もあり、また訓練に利用できる助成金もあります。
これらをうまく組み合わせて使うことが重要です。
例えば、若年・女性労働者を雇用することで助成金を受給し、なおかつ訓練を施しつつ助成金を利用することで、雇用と教育の両面から人材不足を解消していくのです。
助成金をうまく利用すれば、人材不足に悩んでいる会社でも道を切り開いていくことができます。
ぜひ、積極的に利用を検討してみてください。
コメント