経営改善のためには、会社の利益を食いつぶしているものや、赤字拡大につながっているものを排除していく必要があります。
中でも重要なのが、不採算事業からの撤退です。
これまで、その事業に多くの投資をしてきた場合、
「これだけやったのに撤退するのはもったいない」
と考え、不採算事業を抱え続け、経営改善が難航することが多いのです。
そこで本稿では、不採算事業から撤退するために、その事業が不採算であるかどうかの考え方、撤退にあたっての注意点などを解説していきます。
リストラと不採算事業
中小企業は経営規模が小さいだけに、経済環境や業界内の動きに影響を受けやすいものです。
そのため、経営困難に陥る可能性が高く、実際に毎年たくさんの会社が倒産しています。
その中で生き残っていくためには、経営困難に陥らないためにも、普段から経営改善を意識した経営に取り組むことが重要です。
また、経営困難に陥った場合には抜本的な経営改革が求められます。
経営改善に取り組む際には、リストラを進める必要があります。
リストラと言えば、一般には人員削減をイメージする人が多いのですが、経営困難に陥る様々な原因を取り除くことをリストラと言います。
資金の浪費が経営困難を招くことが非常に多いため、経費削減の一環として人員削減を行う会社が多いのです。
その他にも
- 役員報酬をカット
- 経営規模を縮小
- 不意採算事業から撤退
など、色々なリストラがあります。
このとき、経営者の考え方が経営改善を難航させることがあります。
それは、「これだけやったのだから」という考え方です。
リストラを進めるにあたって、これまで労力や資金を投資してきたものを切り捨てていく必要があります。
社員を切り捨てるならば、これまで社員教育を施してきた社員を切り捨てるのはもったいないと感じることがあると思います。
これまでに築き上げてきた信頼関係を顧みず、切り捨てることを忍びないと感じる場合もあるでしょう。

特に、不採算事業からの撤退にはこの思いが付きまとうわよね。
資金や労力を始め、その事業から収益を上げるために、これまで色々な経営資源を投資をしてきたと思います。
その事業が、実際に収益につながっていなかったとしても、
- もう少しで成果が出るのではないか
- これだけ投資して育ててきたのに、撤退するのはもったいない
と考えてしまうのです。
会社に余裕があるうちは、そのように考えて投資を続けても問題ないでしょう。
しかし、会社が経営困難に陥っているならば、抜本的な改革が求められます。
これまで投資を続けてきた不採算事業、すなわち会社にとっての金食い虫となっているその事業を思い切って切り捨てることは、非常に重要なことです。
会社は今この時において、経営がどうなるかの岐路に立たされています。
ならば、
- 今どうあるべきか
- 今後どうしていくか
という、現在から未来を基準に判断すべきであって、
- これまでどうであったか
- これまでどれだけ投資してきたか
- これまでの投資に対してどれくらい回収できたか
といった過去のことを基準にしてはならないのです。
これまでの大きな投資をしてきた事業であっても、回収が進んでいないことは事実であり、投資したものはもはや却ってはきません。
その事業を抱えたままの会社が今後どうなっていくのか、あるいは事業を切り離した会社がどうなっていくのかを比べてみましょう。
前者は経営改善の糸口が見えず、後者は経営改善の可能性が見えるというならば、すみやかに不採算事業からの撤退を決断すべきです。

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
アクセルファクターについての関連記事はこちら
不採算事業から撤退する基準とは
その事業が不採算事業であるかどうか、また撤退すべきかどうかという判断をするためには、判断基準を正しく考える必要があります。
その基準とは、
「その事業に伴う固定費を、粗利で賄えるか」
ということです。

粗利とは売上を上げるために直接的に必要となる減価を差し引いた時に残る金額のことだ。
製造したものを販売する事業ならば、製造に必要となる材料費や外注加工費などを差し引いた金額であり、間接的な経費は考慮しません。
また、固定費の中には減価償却費を含むのが普通ですが、粗利によって事業の採算性を検討する際には、減価償却費は除いて考えます。
なぜならば、事業を中止しても減価償却費は戻ってくるものではないからです。
具体的な考え方の例
ここでは、以下のような会社を例にとります。
- 売上:1000万円
- 経費:1200万円
→200万円の赤字
上記の経費とは、会社経営にかかる全ての経費のことです。
この会社では、製造のための原材料費に400万円の原価が掛かっていたとすれば、
固定費は1200万円の経費から400万円を差し引いた800万円
であることが分かります。
次に、売上である1000万円から原価である400万円を差し引くと、粗利は600万円(粗利率60%)であることが分かります。

粗利率を高めたければ、製造に直接かかる原価を削減していくことになるね。
原価率の低下は、製品のクオリティ低下に大きく影響する要素ですから、結果的に売上低下につながる可能性が高いです。
そのため、一般的には真っ先に原価率を下げるようなことはせず、下げるにしてもかなり慎重に検討する必要があります。
原価率を維持するならば、現状の粗利率で800万円の固定費を賄う必要があります。
その場合、この会社の粗利率は60%ですから、800万円の固定費を稼ぐためには約1333万円の売上が必要となります。
(固定費を粗利だけで賄うために必要となる売上=固定費÷粗利率)
ここまでのことをまとめると、
- 売上:1000万円
- 経費:1200万円
- 原価:400万円(原価率40%)
- 粗利:600万円(粗利率60%)
- 固定費:800万円
(これを稼ぐために必要な売上:約1333万円)
となります。
売上1333万円が損益分岐点となる売上であり、売上がこれを下回ればその事業は不採算事業であると言えます。
なお、このような会社では設備に減価償却している可能性があります。
この場合、事業から撤退しても、先行投資分である減価償却費は戻ってこないため、固定費から排除して考えます。
そうすることで、事業の採算性をより正しく把握することができます。

もし貴社が、新型コロナウイルスで売上が低迷しているなら、この人達が救済してくれるゾ!
撤退すべき事業であるかどうか?
このように考えると、事業継続のためには売上を伸ばしていく必要があることがわかります。
その会社の生産設備における生産能力や受注状況などを振り返った時、
生産能力に余裕があって、さらに売り手も確保できそうで、
333万円の売上を伸ばすことが容易であるならば、事業から撤退する必要はありません。
しかし、実際にその事業が損益分岐点売上高を下回ってきたのには、何らかの理由があるはずです。
簡単に売上を伸ばして、固定費を粗利で賄うというわけにはいかないことと思います。

このように、その事業の採算性を計る時には、あくまで粗利から考える癖をつけることが大切よ。
そして、損益分岐点売上高を明らかにしておき、一定の売上を達成した時に、初めて損益分岐点を超えて利益が出るのだと考えるのです。
もし、一定の売上を達成するだけの製造・販売が無理だと分かれば、その商品の製造を中止したり、事業そのものから撤退したりて、可能性がある商品や事業だけに的を絞るのです。
そうすることによって、不採算な商品や事業は排除することができ、大きな経費削減効果が見込めます。
よくある間違いが、その商品や事業が不採算であるにもかかわらず、
という考え方です。
売れ行き好調な商品であるとしても、工場の生産能力や店舗の規模などによって、その商品の生産数や販売数には上限があるのです。
その上限一杯まで提供しても、損益分岐点売上高に達しない商品や事業であれば、撤退したほうが資金繰りは確実に良くなります。
このタイミングでの新事業は絶対NG
経営困難な会社が、抜本的な改革を行うにあたっては、不採算事業からの撤退は欠かせません。
これがまともな考え方ですが、チャレンジングというか、夢を追いがちな経営者になると、このタイミングで新事業に乗り出すことケースが見られます。
不採算事業の撤退を検討せずとも、経営者が思い描いている新事業を手掛けます。
それが成功した暁には、現時点で不採算となっている事業を軌道に乗せるための時間も稼げます。
そして、これまでのマイナスを一気に払拭するためにも、新事業を手掛けたいと考えるのです。

しかし、このような考えで取り組んだ新事業は、十中八九成功しないぞ。
そもそも新事業とは、入念な調査を行って手ごたえを感じ取った上で、十分な資金の裏付けがあって初めて取り組むべきものなのです。
成果が出るまでにはある程度時間もかかりますし、赤字の期間が発生することも多いです。
その間、資金を供給し続けて新事業を育てていき、しばらくの後に成果が徐々に出てくるものです。
経営改善の必要に迫られており、資金繰りにも余裕がない状況では、新事業を手掛けても成功するはずがありません。
途中で資金が底をつき、挫折してしまうのは目に見えています。
したがって、新事業に取り組むよりも、まずは不採算事業からの撤退を考えるべきです。
不採算事業から撤退することで、-200万円の業績が0万円に回復することは、新事業で200万円の利益を稼ぐことと何ら変わりません。
ならば、わざわざ困難の多い新事業に挑戦する必要はありません。
不採算事業から撤退して経営の効率化を図るべきです。

半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携するなど、この資金調達方法がすごい。

大手企業ともパートナー提携していて非常に安心よ♪
OLTAのサイトはこちらから→ https://www.olta.co.jp/
取引先からの撤退も要検討
リストラの過程において、不採算事業から撤退するということは非常に重要です。
それと同時に検討したいのが、不採算取引先からの撤退です。
不採算取引先とは、その取引先との取引を続けることが、却って経営悪化につながる取引先のことです。
具体的には、以下のような取引先が不採算取引先となることが多いです。
- 受注量が少ないものの、特別なオーダーを受けて製造している。その商品を製造するために必要となる機械のセットアップが多くて大変である。
- 細かい注文が多く、修正依頼なども受けることが多い。
- 顧客の依頼通りのものを納品するために作業していたところ、途中で仕様変更を依頼される。
- とにかくクレームが多く、返品されることも多い。
- 受注の締め切りを守ってくれず、なんとか発注したいと頼み込まれて特別に対応している。
- 受注から出荷までの期間が非常に厳しく設定されている。
このように、取引先の問題には色々なものがあります。
そして、このような問題が見られる取引先では、赤字になっていることが多いのも事実です。
このような不採算取引先から撤退すると、その取引先から得ていた売上はなくなり、売上は下がってしまいます。

しかし、このような会社と取引を中止することで、これまでの赤字が嘘のように黒字化することもよくあるんだ。
また、すぐに黒字化しなかったとしても、問題のある取引先から撤退して、健全な取引先だけと取引するべく営業していくと、次第に売上は高まっていき、やがて黒字化するものです。
不採算取引から撤退する際の注意点
以上のように考えて、不採算取引先から撤退するにあたり、注意すべきことがあります。
それは、不採算取引先から撤退するとき、ただそれだけでは経営改善にはつながらないことです。

不採算取引先から撤退するのは、その事業に取り組むことで生じる赤字を取り除くためなのよ。
しかし、単に撤退しただけでは、人件費や家賃や本部経費といった間接費は削減されません。
不採算取引先からの撤退を検討するにあたっては、その点も含めて広い視野で検討できるように、専門家などの第三者の意見も採り入れながら取り組むべきと言えるでしょう。

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
資金調達プロに関する関連記事はこちら
まとめ
資金や労力を注いできた事業は、経営者や社員の思い入れも強いことが多いと思います。
長年続けてきた、いわば現在の会社の基本となった事業などであれば、なおさら思い入れがあるでしょう。
「尊敬する先代の事業だから、潰すことはできない」
などのケースもあると思います。
しかし、経営改善を求められている会社は、すぐに不採算事業からの撤退に取り組んでいかなければ、いつまでも改善していくことはできず、会社の体力はどんどん弱くなっていきます。
本稿で解説した判断基準などを参考に、不採算事業を特定し、撤退に取り組んでほしいと思います。
コメント