助成金制度を活用するためには、なんとなく見つけた助成金を行き当たりばったりで利用していくのではなく、むしろ「こんな助成金があるかもしれない」と考えて探し、積極的に利用していくことが大切です。
そのためには、何を以て助成金の受給対象になるのか、政府の意図を汲み取りながら考えていく必要があります。
本稿では、政府が助成金制度を実施している背景、それによって受給対象となる会社の考え方について解説していきます。
助成金制度と政府の意図
現在の日本経済は深刻な問題を抱えています。
日本の企業群のほぼ100%を占める中小企業において人材不足が起こっているのです。
これにより、日本経済の成長が鈍化しています。
政府でも、この問題はかなり重く捉えているようで、現政権は最近の数年で「働き方改革」を加速させています。
働き方改革とは、文字通り日本における「伝統的な働き方」に改革をもたらし、現代社会に適した多様な働き方を推進するものです。
働き方改革の推進により、労働環境が整備されたり、企業の生産性が向上したりすれば、個人所得の増加、個人消費の増加、企業利益の増加、企業間取引の活発化などにより、税収の増加が期待できます。
このため、政府の推進している働き方改革は、政府としては国家にメリットがあることが大前提かもしれませんが、その流れの中で企業にも、労働者にもメリットがある取り組みだと言えます。
しかし、そもそもの環境が厳しい中小企業にとっては、労働環境の整備や生産性の向上により、メリットがあるとわかっていながらも、そのためのコスト負担に耐えられないという問題を抱えています。

助成金を支給することにより、中小企業が負担するコストが結果的に軽減され、政府の意にも適うため、政府は厚生労働省主導で助成金制度を実施しているのです。
以上のような背景により、助成金制度は中小企業の利用を想定して構築されています。
それだけに、多くの中小企業では、よほど問題のある経営をしていない限り、どのような会社でも助成金を受給するチャンスがあります。

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受給対象になるために
上記のことは、助成金制度の背景や政府の意図を知り、受給できる会社を考えるために知っておくべきことです。
そもそも、助成金を支給しているのは政府ですから、政府の意図をよく汲んだうえで取り組む必要があります。
助成金は何を以て受給対象とするのかを知っておくことで、活用もスムーズになります。
さらに、助成金は主に労働・雇用をテーマとしているのですから、助成金の受給対象であるかどうかを考えるには、採用・定着・育成の視点から整理していくのが分かりやすいです。
採用の視点から
まず、「採用」の視点から考えてみましょう。
助成金制度の柱となるのは、労働環境の整備です。
つまり、会社と労働者の雇用関係がどうあるかに重点を置いており、この点での改善に取り組んだ会社には、助成金が支給されることが多いです。
雇用関係の助成金を利用することによって、結果的に人材不足の解消にも大いに役立つことが期待できます。
特に、当サイトの記事でも度々登場している「キャリアアップ助成金」は、人材問題を解決するために、非常に役立つものです。
2013年に労働契約法が改正され、『無期転換ルール』が施行されたことにより、有期契約から無期契約への転換を迫られている会社も多いことでしょう。
また、無期転換ルールのあるなしを問わず、優秀な人材を無期契約へ、あるいは正規雇用へと転換することにより、人材不足を解消したいと考える会社も多いはずです。

なぜ政府が、無期雇用化・正社員化によって助成金を支給しているのかといえば、バブル崩壊後の日本企業が、非正規雇用を大幅に増やしたことにより、ワーキングプアをはじめとする様々な社会問題が起こっているからです。
2017年の総務省のデータによれば、非正規労働者の数は2000万人を超えています。
バブル崩壊直後の1995年に1000万人弱であったことを考えると、約20年間で2倍以上に増えていることになります。
さらに、約2000万人の非正規労働者は、全雇用者の37.3%を占めています。
これも1995年と比較すると、1995年の非正規労働者は全雇用者の0.8%なのですから、かなり高い割合であることが分かります。
正規雇用は、長期の雇用を前提としているからこそ、正社員として雇用しています。
一方、非正規雇用は、長期の雇用を前提としておらず、いざとなれば解雇しやすい雇用形態です。
現在の日本では、全雇用者の3分の1以上が、そのような不安定な状態で働いています。
これは、労働力が安定しないことでもあり、経済成長にマイナスの影響をもたらすため、政府としても大きな懸念となる問題です。

そこで、従業員の労働契約を無期雇用や正規雇用に転換したり、無期雇用や正規雇用を前提として雇用した会社には、助成金を支給するようにしているのです。
以上のように考えると、受給対象となるためには、「非正規労働者の増加に懸念を抱く、政府の施策に適う採用に取り組むこと」がポイントとなります。

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定着の視点から
次に考えるのは、「定着」の視点です。
会社が採用の視点で考え、無期雇用や正規雇用を推進すれば、非正規労働者の増加を食い止め、減少へと導いていくことができます。
しかし、採用への取り組みだけでは、大きな変化につながるとは限りません。
なぜならば、無期雇用や正規雇用で採用される労働者が増えても、その労働者が会社に定着しなければ、労働力の安定にはつながらないからです。
せっかく良い形で採用されても、その後に会社を辞めて無職になったり、他社から非正規雇用で採用されてしまったりすれば、元の木阿弥です。
つまり、政府が懸念する問題は、無期雇用や正規雇用で採用された後、定着するところまで見据える必要があります。

多様な働き方ができる社会とは、次のような会社です。
- 出産や育児をしながら働ける社会
- 介護をしながら働ける社会
- 母子・父子家庭の親でも働ける社会
- 障害者でも働ける社会
- 高齢者でも働ける社会
色々な立場の色々な人が働き、生産し、経済が成長していくことを目指しています。
政府が掲げる「一億総活躍」も、多様な働き方ができてこそ実現されるものです。
そのような社会の実現のためには、中小企業の変革が不可欠です。
- 出産休暇や育児休暇を認める
- 介護休業を認める
- 事業所内保育施設を整備する
- 自宅勤務を導入する
- 障害者採用施設を設置する
などの取り組みです。
これが実現すれば、出産や育児、介護などを理由に離職しなければならなかった人でも、働き続けることができます。
養育のために自由に働きにくい母子・父子家庭の親でも、正社員として働きやすくなります。
また、高齢者や障害者といった、就労そのものが広く受け入れられない人でも、働きやすくなります。

したがって、従業員の定着のために社内の制度を整備・変更したり、設備を導入したりした会社には、助成金が支給されます。
以上のことから、助成金の受給対象となるためには、「政府の目指す、多様な働き方ができる社会を実現するために、従業員の定着を促すよう取り組むこと」もポイントとなります。

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育成の視点から
三つ目に、育成の視点が大切です。
政府の働き方改革では、非正規雇用の労働者を減らし、多様な働き方ができる社会を実現し、それによって経済が成長することを目指しています。
つまり、この二点が満たされたとしても、経済が成長していかなければ意味はないとも言えます。
経済が成長する、つまり国内総生産を高めるためには、量によって高める方法と、質によって高める方法とがあります。
量によって高める場合、生産人口を増やすことによって高めていきます。
労働人口が多ければ、一人当たりの生産性が低くとも、総生産は大きくなります。
中国、インド、インドネシア、ブラジルなどの国内総生産が大きいのも、量によるものです。
質によって高める場合、一人当たりの生産性を高めることによって、総生産を高めていきます。
このように、労働者の労働の質を高めるならば、労働人口が少なくとも、総生産を高めることができます。

しかし、いくら労働環境が整備され、労働人口が増えたところで、その多くは経済が成長していくための下地作りでしかありません。
なぜならば、日本の人口は今後徐々に減少していくからです。
無期雇用や正規雇用、多様な働き方が広がっても、生産人口の絶対数が減少していくのですから、量による経済成長には限界があります。
そこで、質による経済の成長のために、育成の視点からも助成金を支給しています。
これは、優秀な人材を育てるために、社員教育に取り組んでいる会社を対象とした助成金です。
キャリアアップや人材開発などに取り組み、従業員の一人当たりの生産性が高まれば、企業の生産性も高まり、国家経済も成長します。
特に、日本の企業は世界の先進国の中でも、従業員への教育支援が遅れています。
今後、人口が減少していくにつれて、一人当たりの生産性の低さがより大きな問題となるはずです。
政府も、このような問題を深刻に捉えているため、育成の視点からも助成金を支給しているのです。
したがって、助成金の受給対象となるためには、「質による経済成長を促すべく、従業員一人当たりの生産性を高めるために、教育に取り組むこと」が重要となります。

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まとめ
助成金制度は、中小企業を支援することを通して、経済成長を促すためのものです。
会社の立場で考えると、正規雇用をすれば助成金がもらえる、育児休暇を推進したら助成金がもらえる、社員教育をすれば助成金がもらえるといったように、自社と助成金制度の関係で考えることが多いと思います。
しかし、自社と日本経済あるいは自社と政府の関係で大きく捉えることによって、受給できる会社であるためにはどうすべきかが分かります。
また、ここをよく理解しておくことで、今後の社会の変化や政府の方針などから、「今後はこんな助成金が出るかもしれない」「今後、この助成金はこう変わってくるかもしれない」などの見当をつけ、「ならば、自社はこう変わっていこう」と考え、他社よりも進んだ考え方で経営していくこともできます。
変化の激しい時代だからこそ、助成金の活用は、自社のあり方を見つめなおす機会にもなるでしょう。
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