事業資金が足りなくなった時、多くの会社では銀行融資など、どこからか事業資金の融資を受けることを検討することでしょう。
しかし、融資は簡単に受けられない場合も多いものです。だからといってビジネスローンで融資を受けるのも、よい方法とは言えません。
そのようなときには、資産の換金を検討してみてはいかがでしょうか。
資産の中でも、売掛債権はどの企業でも大抵保有しているものであり、換金に向いている資産です。
事業資金の重要性を知る
会社の経営を継続していくために必要なものはなんでしょうか。
人材?技術力?営業力?生産力?色々な要素が考えられると思いますし、これらの要素も確かに経営の継続のためには必要不可欠なものでしょう。
しかし、それよりなにより必要となるものは、なんといっても事業資金です。
事業資金があればこそ
- ちゃんと給与を支払って人材を確保することができます
- 研究開発に投資をして技術力を高めることができます
- 社員教育を施して営業力を高めることができます
- 設備投資を行なって生産力を高めることができます
ともかく事業資金がなければ、会社の経営は立ち行きません。
会社を人体に例える

人体が健康を保つためには、血液量が豊富であり、その循環が正常に働いていなければなりません。どこかで血液の流れが滞れば、たちまち健康を損ないます。
外傷を負って出血したならば早急に止血する必要がありますし、出血が多ければ輸血の必要があります。
血液量が少なく貧血状態になれば、食生活や生活習慣の改善によって血液量を増やさなければなりません。
血液の滞留
事業資金を血液に例えると、会社における事業資金の重要性がよくわかるでしょう。
血液の流れが滞るという状態は、本来ならば問題なく循環すべきところで流れが滞っているのです。
いわば売掛債権がなかなか回収できず、本来ならば回収して事業に活用できる資金が活用されないような状態です。
血流が滞れば滞留に耐えられずに血管がやぶれたり、組織が腐ってしまったりして重大な健康被害をもたらします。
同じように、売掛債権が回収できないなどで事業資金の回りが悪くなれば、会社が不特定多数の部分でうまく機能しなくなったり、企業の構造に腐敗をもたらす結果に繋がることがあります。

血液の減少
貧血状態も似たようなものです。会社における貧血状態とは、会社の資金繰りが悪くなるということです。
事業活動に活用される資金量が少なくなるということは、様々な点で悪影響をもたらします。
しかし、往往にして貧血状態があまり自覚されないように、資金繰り悪化も程度が進んだ後にはじめて自覚されることが多いものです。
早期に自覚したならば、資金量を増やすなんらかの努力によって、活用される資金量を増やすという対応が可能です。

貧血の自覚に乏しい人は、血液量が足りないまま無理をしてしまい、突然倒れてしまいます。
会社でも同じことで、資金量が足りないまま、無理をして平常時の経営を続けようとすれば、いずれは倒産に至ることでしょう。
したがって、会社における貧血状態を改善するためには、事業に活用される資金量を増やす必要があります。

血液の流出
外傷による出血とはどのようなことでしょうか。
これは、例えば出荷した商品に欠陥が見つかって回収しなければならなくなった、取引先から訴訟を起こされて賠償金を払うことになったなどです。
多くは不測の事態によって社内から資金が流出してしまうことです。
傷が浅い、つまり原因がそれほど深刻ではないならば、簡単な手当てによって止血することが可能です。
しかし、傷が深ければ手当ても難しく、流出した血液量が多ければ輸血の必要があるように、
原因が深刻であれば事業資金の融資や資産の売却、その他の方法によって失った資金を補わなければなりません。
このように、会社における事業資金は人体における血液のように重要なものであり、
- 事業資金が滞る
- 減少する
- 流出するな
どの異常事態が起こった場合には、早急に対策をしなければなりません。
事業資金不足への対策
上記の通り、事業資金が減少する、あるいは流出するなどの事態が起こった場合には、取るべき手段が二種類あります。
それは、事業規模を縮小するか、事業資金を補填するということです。
対策1・事業規模の縮小
事業規模を縮小するというのは、いわゆるリストラです。
例えば、平常時の経営における社員数や生産量を維持するために毎月1000万円必要であったとします。
しかし、資金量が減少したり流出したりしたことによって、現実的に毎月500万円しか捻出できないとなれば、1000万円を要する規模での経営継続は不可能です。

したがって、社員の削減や生産量の縮小、不採算部門の撤退などによって、500万円の事業資金で効率よく経営を継続することを目指すのです。
事業縮小は難しい
しかし、事業規模の縮小という決断は、なかなかできるものではありません。
大企業がこれによって立ち直ることがありますが、それに踏み切ったからといってどうにもならないことも多いものです。
だからこそ、事業規模の縮小によって経営を立て直した社長に対して、「あのときの英断は素晴らしかった」などの賞賛が向けられます。
なぜ事業規模の縮小が難しいのでしょうか。

例えば、リストラのために社員を大幅に削減したとします。
そのことによって事業の縮小には繋がるでしょうが、必要以上に削減してしまったり、想定より早く立ち直って人員不足に悩まされるなどの事態に陥ることがあります。
生産量にしても同じことです。
特に不採算部門の撤退では、その部門の展開に費やしたこれまでの投資をすべて放棄することになりますから、場合によっては非常に大きな損失となることもあります。

領土を広げるためには多くの血が流れますが、そうして成り立った大国がもろくも崩れ去るという例はいくらでもあります。
会社にしても、他社との競争に勝ち抜いて事業規模を拡大するのは大変な努力が必要となりますが、縮小させようと思えば簡単にできてしまいます。
そして、一旦縮小してしまったならば、再び以前の事業規模に戻るためにはまた大変な努力を求められます。
このことから、事業規模の縮小は資金量の減少への対策として確実な効果をもたらしてくれます。
しかし縮小前の規模に戻るのは難しく、大きな覚悟と正確な判断力が求められることになります。
対策2・事業資金の供給
もし事業規模の縮小が完遂する自信がない、または事業規模を縮小させずに乗り切りたいと思っているならば、なんらかの方法によって事業資金を調達して供給する必要があります。


例えば上記と同様に月当たり1000万円の事業資金を必要としているものの、事業資金の減少や流出によって500万円の事業資金しか捻出できない会社があるとします。
この会社が事業規模を縮小せずに経営の立て直しを図るためには、単純計算で月に500万円の供給が必要となります。
立て直しが進めば供給すべき資金は徐々に減少していくことも踏まえ、まとまった金額の融資を受け、従来の事業規模を維持しながら財務状態を正常に戻していきます。

例えば不動産や有価証券、売掛債権などの資産を売却することによって事業資金を調達するという方法です。
この方法でもまとまった事業資金調達が可能であり、経営の立て直しを図ることができます。
特にこの方法ならば、活用されていなかった資産を資金化して立て直しに生かすことも可能です。
不採算資産の売却によって経営の効率化を図れるというメリットもあります。
売却できる資産については様々なものがあります。
しかし、当サイトでは中小企業の経営をメインテーマに据えており、そのような企業では不動産や有価証券の売却よりも、売掛債権の売却によって得られる経営改善効果が大きいため、主に売掛債権の売却についてお話しすることとします。

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事業資金融資とは?
では、まずは事業資金の融資について詳しく見ていくこととしましょう。
多くの会社にとって、資金調達の必要が生じた時に検討する方法といえば、融資を受けることになるでしょう。
きちんとした事業計画があり、事業成績や経営内容に問題がなければ融資を受けられることも多く、まとまった資金を調達することができれば、経営に大いにプラスとなります。
事業資金融資の方法は以下の三種類です。
- 公的融資
- 銀行融資
- ビジネスローン
このほか、個人レベルで融資してくれる人を募る社債発行などの方法もありますが、ここでは割愛します。
公的融資とは?
公的融資とは、日本政策金融公庫などの公的金融機関から融資を受ける方法です。
公的金融機関は政府の出資によって運営されている機関であり、融資のための原資は税金です。
政府が行う経済政策の一環として、商業振興のために企業に融資を行うものです。
中小企業を対象として事業資金の融資を行なっているものも多く、また融資上限額も大きい傾向があります。
また、公的融資はあくまでも政策の一環として行われるものです。
貸し付けて利息を得るという営利目的の融資ではないことから、様々な融資の中でも金利がもっとも低いというメリットがあります。
ただし、国民の血税で野放図な融資を行い、貸し倒れが続出し、公的融資制度が破綻するようなことになれば、国民の怒りを買いますし、何よりも経済政策のひとつの失敗にもなります。
ですから、公的融資を受けるためのハードルは高く、融資のための条件が細かく設定されています。
融資を希望したからといってどのような会社でも融資を受けられるというものではありません。

銀行融資とは?
銀行融資とは、その名の通り銀行から事業資金の融資を受けるという方法です。
すでにご存知の方も多いでしょうが、銀行も非常に金利が低く、返済計画も長期で立てられるというメリットがあります。
その反面、融資のための審査が非常に厳しいというデメリットがあります。
なぜ銀行融資では審査が非常に厳しいかといえば、融資のための原資が預金者の預けたお金だからです。
銀行は預金者を募ってお金を集め、それを会社に貸し付けて利息を受け取り、それを預金者に再分配するというシステムで成り立っています。
もし貸し倒れが続出してしまえば、預金者に利益を分配できないのはもとより、預金を返せないという事態にも陥る可能性があります。
実際にはそのような事態に陥らなかったとしても、銀行の融資政策が失敗して不良債権が多発すれば、預金していた人は自分の預金を回収しようとします。
銀行から預金の引き出しのために殺到する可能性があります。

銀行は、預金者の預金を運用して経営しているのですから、このような取り付け騒ぎが起きてしまえば、経営が破綻します。
運用のための原資である預金がなくなってしまい、経営が立ち行かなくなるのです。
以上のような事態を避けるためには、銀行は融資の申し込みに対して慎重に審査を行い、不良債権の発生の発生を防ぐ必要があります。
非常な好景気の中では、企業の経営拡大に伴って融資希望が増えますが、それ以上に社会にお金が溢れて銀行預金も多いため、銀行は簡単に融資をしてくれます。
実際に、そのような時代もありました。
しかし、不景気な昨今では経営困難に伴う融資需要が増えた反面、社会にお金が溢れているわけではありません。
人々が消費を控えて貯蓄を行うことで、預金額は増えるかもしれませんが、平常時に比べて預金者のマインドは銀行の経営状態に敏感になっています。

したがって、銀行は融資条件がよく、企業の資金調達の王道でもありますが、審査が非常に厳しいというデメリットもあります。
決算内容から経営状態や事業成績を厳しく審査されますから、経営困難の会社が融資を申し込んだとしても、断られる可能性が高いです。
もっとも、立て直し可能な事業計画があり、しかも価値のある不動産などを担保として提供できるならば、経営困難でも融資を受けられる可能性はあるでしょう。
しかし、そもそも経営困難に陥っている会社には、銀行が融資を断る理由になるマイナスポイントを持っているケースが多いのです。
さらには中小企業では担保の提供も容易ではないことから、やはり融資を受けられないことも多いといえます。
ビジネスローンとは?
公的融資や銀行融資を断られた会社が、事業資金の融資を受けられる最後の手段とも言えるものが、ノンバンクのビジネスローンで借りるという方法です。
ビジネスローンは、商工ローンなどの名称でも知られています。
ノンバンクとは、銀行などの金融機関のように預金業務を行なっておらず、主に貸金業を行なっている貸金業者のことです。
公的金融機関や銀行が、金利収入以外に様々な目的や意図を持っているのに対し、ノンバンクでは完全に金利収入を目的として経営を行なっているのです。
したがって、公的融資の原資が税金であり、銀行融資の原資が預金であるのに対し、ノンバンクの融資の原資は銀行からの借入金となっています。

ノンバンクの融資条件は非常に悪いものですから、どの会社でも好んでビジネスローンを利用するということはなく、できれば公的融資や銀行融資を受けたいと思っています。
しかし、融資条件に合わなかったり、審査に通らなかったりした場合には、他に融資を申し込めるところがビジネスローンしかないため、ビジネスローンに事業資金の融資を申し込むのです。
このことは、言い方を変えれば、公的金融機関や銀行から「あなたの会社は経営内容が悪くて、貸し倒れのリスクが高いから貸せません」という判断を下された会社が、ビジネスローンに申し込んでいるということでもあります。
金利が高い

このリスクをコントロールする方法は主に三つあり
- 金利を高くする
- 回収期間を短くする
- 融資上限額を低くする
というものです。
金利の高さは、公的融資や銀行融資と比較すれば一目瞭然です。
公的融資ならば3%以下、銀行融資ならば5%以下の金利で融資するのが一般的ですが、ビジネスローンでは15%程度での融資になるのが普通です。
実に公的融資の5倍以上、銀行融資の3倍以上もの金利を受け取っているのです。
ノンバンクの融資条件を見てみると、よく8〜15%という表記がなされていますが、8%の適用はほとんどあり得ません。
経営内容が非常に良い会社ならばこのような条件も可能かもしれませんが、そのような会社であれば銀行などから融資を受けることが可能です。
そもそもノンバンクに流れてくることがないため、現実的にはあり得ないのです。
返済期間が短い

貸し倒れのリスクが比較的小さいと判断した場合には、最長5年などでの返済期間が設けられるでしょう。これは高い金利でできるだけ長期の計画を組ませることで、より多くの金利収入が得られるからです。
逆に、貸し倒れのリスクが高いと判断した場合には、返済期間が長ければ返済期間中に倒産する危険性もあるため、貸し付け上限額を小さく抑えるなどのリスクコントロールを行います。
いずれの場合でも5年以上としないのは、あまりに長くなってしまうとより多くの金利収入を得られるメリットよりも、回収困難に陥るデメリットのほうが大きくなる可能性が高いからです。
銀行でも、事業資金でも運転資金の融資ならば一般的に5年ですが、場合によっては7年などの返済期間とすることも可能です。
また、設備投資のための融資であれば、10年での返済も可能です。
融資上限額が低い

公的融資や銀行融資ならば、企業の状況にもよりますが、融資上限額は数千万円〜1億円以上となることも多く、かなりまとまった資金の調達が可能です。
しかし、ビジネスローンでは500〜1000万円を上限としている業者がほとんどです。これも、リスクコントロールとして行われていることです。
1億円を一社に対して貸し付けた場合、そもそも公的融資や銀行融資を断られた会社に対しては過大ですし、貸し倒れの際のリスクがあまりにも大きいのです。
15%で貸し付けた場合、経営状態が思わしくない会社が年間1500万円もの利息を支払えるはずがないでしょう。
そうするよりは、500万円の融資を二十社に対して行っておけば、返済不可能な金額ではありませんし、このうちの数社が倒産したとしても損失は限定されます。

経営状態が思わしくないという烙印を押された会社が、高金利で事業資金の融資を受ければ、金利支払いに圧迫されて経営状態がなかなか改善しないでしょう。
むしろ悪化してしまう可能性も高いです。
また、まとまった事業資金を得られれば、それを多方面に活用して経営の立て直しを図ることも可能でしょう。
しかし、たった500万円や1000万円の融資では、一時的な延命措置にしかならない可能性も高く、まさに焼け石に水です。
以上のことから、事業規模を縮小させずに事業の立て直しを図るため、事業資金の供給をうけるとき、公的融資や銀行融資といった良い条件での融資を受けられるならば、融資によって事業資金を供給するのが良いでしょう。
しかし、すでに述べた通りこれらの方法は融資条件や審査が厳しく、なかなか融資を受けられるないこともあります。
とはいえ、そのような状況でもビジネスローンで融資を受けるのは馬鹿げています。
ビジネスローンから融資を受けるという方法は最初から考えず、公的融資や銀行融資が不可能となった場合には、資産の売却によって事業資金を供給することを考えなければなりません。

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資産の売却による事業資金調達
さて、事業規模を縮小せず、事業資金の調達を融資に頼らずという方法を検討した時、残る有効な方法はおのずと資産売却のみとなってきます。
売却の対象となる資産としては、主に土地や建物などの不動産、有価証券、そして売掛債権になることでしょう。
土地や建物
土地や建物などの不動産を売却するというのは、よく使われる方法です。
有効活用していなかった土地を売却したり、投資用に保有している物件を売却することによって、資金を調達することができます。
有価証券
企業の規模が大きい場合には、色々な有価証券を持っていることも多いでしょう。
関係の深い企業の株式を保有していたり、社債を引き受けていたりしたならば、それを時価で売却して資金調達ができます。
購入当時よりも証券価値が上がっていたならば、多くの資金を調達できることもあります。
とはいえ、このような資産を持っている会社ならば、銀行融資を受ける際にこれらの不動産や有価証券を担保にすることで融資を受けられることも多いものです。
ならば、これらを売却して資金調達をするのも一計ですが、それを担保にして融資を受け、事業の立て直しを行い、完済後には担保資産を引き受けまた活用の道を探すこともできます。
つまり、時と場合による部分も大きいのですが、資金難だからと言って資産の売却に踏み切るよりは、資産を担保にして融資を受けたほうが良いケースもたくさんあります。
また、中小企業の中には売却可能な不動産や有価証券を保有していないことも多く、これらの売却による事業資金調達が不可能なことも多いでしょう。
そのような場合にも売却を検討できる資産として、売掛債権があります。
売掛債権とは?
企業間取引において、商品の納入と同時期に現金によって決済が行われることはほとんどありません。
多くは後日の支払い期日を設定して、手形や売掛金といった売掛債権が発生することになります。
これは、現金で即時的な取引を行うよりも、後日の支払いに先延ばししたほうが、買い手企業の資金繰りが楽になるからです。
すぐに現金払いとしたならば、手元に現金がないので支払いができず、取引も成立しないことが多いものです。しかし、後日なんらかの収入を見込んでいるならば、それを支払いに充てることで取引を成立させることができます。
また、「今支払わなければならない100万円と、3ヶ月後に支払わなければならない100万円」を比較した時、実際の出費となる金額に差はありませんが、後日の支払いとなればその支払いを踏まえて、計画的な経営も可能となります。
だからこそ、買い手企業にとっては後日支払いの方が何かと都合が良いのです。

売り手企業から見れば、「3ヶ月後に入ってくる100万円と今入ってくる100万円」を比較した時、どちらも入ってくる金額には差がありません。
しかし、価値的には今入ってくる100万円の方が価値が大きことはいうまでもありません。
今入ってくればすぐに売り上げを回収できるため貸し倒れの懸念がなくなりますし、すぐに売り上げを活用することができます。
また、3ヶ月後の支払いまでの資金繰りに悩む必要もなくなります。
したがって、買い手企業の都合と売り手企業の都合から、両者にとって最もよい形での取引条件を設定することになります。
支払いサイト
- 支払いサイトが長過ぎれば買い手にとっては有利で売り手にとっては不利
- 支払いサイトが短過ぎれば買い手にとっては不利で売り手にとっては有利
となりますから、うまく落とし所を見つけて支払いサイトを設定しなければなりません。
自社が売り手の場合、自社の営業マンがきちんと交渉を行なって適切な支払いサイトを設定しなければ、売掛債権の負担に悩むことになるでしょう。
言うまでもなく、売掛債権というものは自社が製品などを販売することで発生しているものです。
売掛債権の発生のためには、
- 原材料の仕入れコスト
- 製品の製造コスト
- 製品の在庫管理コスト
- 販売のための営業コスト
- その他営業外コスト
など様々な費用の支払いを行なっています。

ですから、売り上げを事業に活用するためにはできるだけ早期の回収が必要となります。
回収遅延や貸し倒れになってしまえば、自社に与える悪影響は計り知れません。
貸し倒れ
特に、貸し倒れだけはなんとしても避けたいものです。
例えば、貸し倒れによって1000万円の損失が発生した場合、その損失を埋め合わせるためには多大な努力を強いられます。
利益率10%で販売している企業ならば、1000万円の損失を取り戻すためには、実に1億円もの売上を上げなければならないのです。
売掛債権を換金するということ
さて、そんな売掛債権ですが、売掛債権にはそれぞれの債権にふさわしい価値を持っています。
売掛債権は、後日の支払い期日にはキャッシュフローを生み出すのですから、それを裏付けとした価値を持っているのです。
売掛先の信用力や支払い条件によって価値は変動します。
売掛先が十分な支払い能力と支払い意思を持っているならば、その売掛債権の価値は高く、額面金額とほぼ変わらない金銭的価値があるといってよいでしょう。
逆に、売掛先の支払い能力や支払い意思に問題があったり、支払いサイトが長すぎたりする場合には、その売掛債権の価値は低くなり、額面金額よりも金銭的価値は低くなります。
事業資金の調達のために売掛債権を換金するにあたっては、買取先は引き受ける売掛債権の信用力に応じて買取を行います。

逆に、価値の高くない売掛債権ばかり保有しているならば、期待したほどの事業資金は調達できない可能性もあります。
しかし、商売をしていれば売掛債権はほぼ間違いなく発生するものであり、どのような企業でも等しく保有している資産です。
そのため、資産の換金による資金調達を検討した場合、売掛債権の換金はどのような企業でも可能な方法です。
また、売掛債権の換金は単に事業資金の調達ばかりではありません。
それと同時に資産効率を上げて財務内容を改善する効果もあり、それが後に銀行融資の際にもプラスとなることがあります。
これらのことは、詳しく後述していきます。

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売掛債権を換金する方法を検討する
さて、売掛債権を換金するためには、複数の方法が考えられます。
その中でも代表的な方法が、手形割引とファクタリングです。
手形割引は日本において最も一般的とも言える方法であり、歴史が古いだけに利用もしやすい方法です。
ファクタリングは、まだまだ普及しているとは言いがたい状況ですが、今後普及していくことが見込まれている方法です。
では、それぞれの方法を検討していきましょう。
手形割引

買い手企業は手形の紙面に支払代金や支払期日などといった必要事項を記載し、売り手企業に振り出します。
売り手企業は支払期日なれば、取引銀行に手形の呈示を行い、代金受け取りの手続きを行います。
これが手形の一般的な利用方法であり、支払期日を待って代金を受け取ることを手形交換と言います。

それは裏書譲渡というものであり、手形の裏面に必要事項を記入することによって、その手形の額面金額をもって決済に利用することができるのです。
例えば、自社がA社に製品を販売し、200万円の代金を後日の支払いとして額面200万円の手形を受け取ったとします。
ところが、自社は支払期日前に買掛先B社への支払いとして200万円の決済をする必要があり、そのための現金を持っていませんでした。
そこで、自社はA社から受け取った200万円の手形をB社に裏書譲渡し、買掛金の決済に利用することにしました。
後日の支払期日には、A社が手形の決済のために200万円を当座口座に入金しておき、B社はその手形を銀行に呈示することによって、200万円を受け取ることができるという仕組みです。

これが手形の換金に利用される方法です。
手形割引とは、手形が後日の支払い期日に生むキャッシュフローを裏付けとして、銀行や手形割引業者に手形を譲渡することによって、換金することです。
手形割引の際にも、手形に裏書きをした上で銀行や手形割引業者に譲渡します。
手形割引は、手形を利用した資金調達方法として、多くの会社に利用されています。
手形割引の依頼先
手形割引を銀行に依頼するか、あるいは手形割引業者に依頼するかということは、自社の置かれている状況によって異なるでしょう。
銀行

そのため、手形割引を行う際には自社の経営状況を詳しく審査され、担保も必要となります。
このほか、審査のために時間がかかりますが、手形割引の手数料は極めて安く、有利な条件での手形割引が可能です。
手形割引業者

そのため自社に対する審査は行われず、その手形の価値を知るために、債務者に対して審査を行います。
そして、手形の信用力に応じて割引の手数料が変動します。審査はスピーディに行われるものの、一般的に手数料は銀行よりも高めです。
手形割引のデメリット
しかし、手形割引にはデメリットがあります。
それは、割引した手形が不渡りとなった場合には、自社が弁済しなければならないということです。
そもそも、裏書譲渡には遡求の権利があります。
これは、譲渡された手形が不渡りになった時、譲渡人に支払いを求めることができるという権利です。
この権利があるからこそ、譲受人側は安心して裏書譲渡に応じることができるのです。
手形割引も裏書譲渡の一種ですから、割引した手形が不渡りになると遡求が行われます。

信用力の低い手形を割引した結果、一時的な資金調達はできたものの、後日弁済を求められて結局元の木阿弥になるということもあり得ます。
ただし、信用力の高い手形であれば、そのようなことになる可能性は低いため、手形割引も事業資金調達のための有効な手段になると言えます。
ファクタリング
次に、ファクタリングを見ていきましょう。
ファクタリングとは、手形に限らず売掛債権全体を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことによって、売掛債権を換金するものです。
買取の際には、売掛先の信用調査を行うことによって、リスクに応じた買取率を設定します。このため、相応の買取料を手数料として支払う必要があります。

それは、基本的に償還請求権が放棄となっていることです。
償還請求権とは、譲渡された売掛債権が貸し倒れになった場合、譲渡人に対して弁済を求める権利のことです。
この償還請求権を放棄する契約を結ぶということは、ファクタリングした売掛債権が、売掛先が倒産するなどして貸し倒れになった場合にも心配は要りません。

このほかにも、ファクタリングによって売掛債権を換金することは、他の資金調達法にはない様々なメリットを享受することになります。

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ファクタリングで売掛債権を換金するメリット
ファクタリングで可能となるのは事業資金の調達ばかりではなく、以下のようなメリットがあります。
売掛債権回転率と売掛債権回転期間が改善する
まず、売掛債権を換金することによって、売掛債権回転率と売掛債権回転期間が改善するという効果があります。
売掛債権回転率とは、売掛債権がどのくらいの効率で回収されているかを示す指標です。
いわば販売のために投資した資金をいかに効率よく回収しているかを示すものです。
売掛債権回転率は、売掛債権回転率=売上÷売掛債権額によって算出します。
ファクタリングによって売掛債権を換金すれば、資産上の売掛債権の残高は減少することになり、したがって売掛債権回転率は大きくなります。
次に売掛債権回転期間ですが、これは売掛債権が平均してどれくらいの期間で回収されているかを示す指標です。
すでに述べた通り、売掛債権の回収期間は短ければ短いほど良いとされています。
売掛債権回転期間は「売掛債権回転期間(ヶ月)=売掛債権額÷売上÷12ヶ月」によって算出します。
ファクタリングによって売掛債権額が減少すれば、売掛債権回転期間の数値も小さくなります。
売掛債権回転率が大きくなり、売掛債権回転期間が小さくなれば、それは短い期間で効率よく売掛債権を回収しているということになりますから、好ましいことです。


財務内容を改善できる
ファクタリングによって売掛債権を換金するとき、複数をファクタリングすれば、まとまった資金を調達できます。
まとまった資金を調達すれば、財務内容の改善のために資金を振り分けることもできます。
例えば、ファクタリングによって得た資金のうち「一部は銀行の返済に回し、一部は買掛金の決済に回し、一部は留保し・・・」というように振り分けることができるのです。
このような振り分けによって、借入金の返済や買掛金の決済に回せば、財務はより圧縮されます。
ファクタリングによって売掛債権額が圧縮されるだけではなく、有利子負債や買掛金も圧縮されるため、財務内容が改善するのです。

リスクマネジメントに役立つ
ファクタリングは、リスクマネジメントにも役立ちます。
自社で売掛債権管理をしていくならば、時には管理がうまくいかず、不良債権が発生することになるでしょう。
回収遅延になれば自社の資金繰りは圧迫されますし、貸し倒れになってしまえば深刻な影響をもたらすこともあります。
しかし、ファクタリングでは上記の通り償還請求権なしで換金が可能です。
そのため、万が一売掛先が倒産するなどして売掛債権の回収が困難になったとしても、そのリスクはすべてファクタリング会社に移転することができます。

保証ファクタリングとは、売掛債権の買取を行うものではなく、売掛債権に保険をかけるためのものです。
保証ファクタリングでは、売掛債権の信用力を審査した上で、保証限度額と保証料が決定されます。
保証料を支払っていれば、保険をかけた売掛債権が回収不能になった時、事前に決めた保証限度額の範囲内で保証を受けることができるのです。
保証ファクタリングは、売掛債権の換金はできないものの、ファクタリングを活用したリスクマネジメントには役立ちます。
経営資源を集中させられる
最後のメリットは、経営資源の集中です。売掛債権をファクタリングすれば、自社で管理する売掛債権は少なくなります。
また、不良債権を含めて大幅なファクタリングを行えば、管理は容易になるでしょう。
そもそも、売掛債権をきちんと管理していくためには、自社で売掛債権管理マニュアルを策定し、全社的にマニュアルを徹底した上で管理に当たらなければなりません。
そのためにはある程度の時間がかかるでしょうし、場合によってはコンサルティングなども受けながら管理体制を整えていかなければなりません。
そこに割くべき経営資源も必要となりますから、その効果が現れるまでは相応の痛みを負うことになります。

ファクタリング会社と長期的な契約を結び、売掛債権を随時資金化しながら経営していきましょう。
本来ならば売掛債権管理に割くべき経営資源を、本業に集中させることができます。
また、いずれは自社でしっかりと売掛債権管理をしていき、自社で回収していきたいと考える場合にも同様です。
ファクタリングを活用しながら管理体制を整えていけば、事業資金の枯渇を招くことなく進めていくことができるでしょう。
まとめ
事業資金が足りなくなった時、良い条件で融資を受けることができるならば、それに越したことはありません。
しかし、公的融資や銀行融資は融資条件や審査が厳しく、借りられないケースも多いものです。
そのような場合には、自社の保有している資産を換金することによって、事業資金を調達してみましょう。
特に、ファクタリングによって売掛債権を換金することは、資金調達以外の様々なメリットも得られるため、ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。