そもそも別表とは、法人税の確定申告書を作るために、課税所得金額や申告納付額を計算するための表ですから、別表の数字の整合性などに問題があれば、融資に大きく影響してきます。
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別表のチェックポイント
銀行員が別表でチェックするポイントを知ることで、問題視されるポイントを改善していくことができ、結果的に融資での躓きを減らすことにもつながります。
別表でチェックすべきポイントを、実際の用紙に沿ってみていきましょう。
【1】別表1
別表には税金に関する様々な情報が記載されていますが、別表1はそれらを大まかにまとめたものです。
別表1を見ることで別表の全体像を把握することができるため、銀行員がまずチェックするのも別表1です。
[1-1]税務署受付印と提出日
別表1の最初の部分に、税務署の受付印や提出日が記載されています。
税務署に申告書を提出すると、控えに税務署受付印が押されますが、これが金融機関に別表を提出する際の控えとなります。
ここで重要なのが、提出日の部分です。
申告書の提出期限は決算日から2ヶ月以内とされており、税務申告期限の延長を認められた場合には、決算日から3ヶ月以内とされています。
CFブルー
この提出日の部分を見れば、提出期限を守ったかどうかが分かるよ!
もし、期限内に申告されていないとなると、その理由を求められることとなり、納税に不真面目な会社だと思われることもあります。
[1-2]法人名・代表者名・代表者住所
次に、法人名、代表者名、代表者住所を記載する欄があります。
この欄が会社の登記簿謄本と異なる場合には、その理由を求められます。
登記簿謄本と一致しているかどうかをチェックし、変更している場合には理由を答えられるようにしておく必要があります。
[1-3]申告の種類(1)
次にチェックされるのが、申告の種類です。
申告には青色申告と白色申告の二種類がありますが、青色申告はメリットが大きいため、普通の会社ならば青色申告を選択しているものですから、書類の右上の欄に「青色申告」と記載されます(参考画像も青色申告専用の書類なので「青色申告」と記載されていることが分かります)。
もし、この欄が白色申告になっている場合には、銀行は「何か青色申告にできない理由があるのではないか?」と考え、説明を求めてきます。
[1-4]事業種目
事業種目も、ここでチェックされます。
会社が営んでいる業種をここに記載します。
銀行が融資の判断をする際には、その会社の業種が融資できない業種や融資しにくい業種ではないか、ということも考える必要があります。
そこで、この欄でその会社の業種を把握するのです。
[1-5]期末現在の資本金の額又は出資金の額
資本金や出資額を記載する欄では、その会社が現時点で保有している、資本金や出資額を記載します。
この欄を見ることで、銀行は会社の規模を把握します。
この欄が1億円未満であるか、1億円以上であるかによって、交際費の限度額や適用される税率が変わってくるため、チェックする必要があるのです。
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[1-6]申告の種類(2)(「事業年度分の○○申告書」の部分)
申告の種類は、青色・白色の区別の他に、「確定」「中間」「修正」の区別があります。
通常、融資の際に提出されるのは確定申告書ですが、申告内容に問題があり修正の必要がある場合には修正申告を行います。
この欄に「修正」と記載されている場合には、会社の会計処理能力や納税への意識に問題があると見なされ、マイナスに影響することがあります。
[1-7]所得金額又は欠損金額
この欄は、1年間の会社の業績が黒字であったのか、赤字であったのか、その金額はいくらだったのかを見るためのものです。
銀行が融資する際には、黒字であるかどうかを重視します。
この点は、損益計算書を見ても分かるのですが、別表を見ても把握できるようになっています。
なお、この欄の数字は、別表4の「所得金額又は欠損金額」の欄と一致しているかどうかもを見られるため、整合性をチェックしておく必要があります。
[1-8]差引所得に対する法人税額
この欄は、当期の所得に対する法人税額がいくらかを記入する欄です。
損益計算書には「法人税、住民税及び事業税」の項目がありますが、そのうちの法人税額とこの欄の記載額が一致している必要がありますので、チェックしましょう。
[1-9]中間申告分の法人税額
中間申告を行っている場合には、この欄に納税額を記載します。
中間申告を行っていない会社は、前期の赤字を疑われることになります。
[1-10]差引確定法人税額
最終的に確定した法人税額を記載する箇所です。
この欄は、貸借対照表の「未払法人税」の法人税と一致している必要があります。
[1-11]欠損金又は災害損失金等の当該控除額
所得から控除された欠損額をチェックするための項目です。
[1-12]翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金
法人では、最大7年間にわたって欠損を控除することができます。
欠損金を翌期に繰り越す場合、過去に計上された赤字を解消できておらず、累積損失が発生していることがわかり、融資の判断に役立ちます。
そのため、この欄の記載もチェックされます。
[1-13]税理士署名押印
税理士の署名欄に押印があれば、その申告書が税理士によって作られたものであることが分かります。
これもチェックポイントとなります。
税理士に作成してもらうことは何ら問題ありませんが、署名している税理士が頻繁に代わっている場合などには、税務処理に問題がある(例えば、無理な節税や粉飾を要求し、都合の良い処理をしてくれる税理士へと代えているなど)とみなされる場合があります。
【2】別表2
別表2は、「同族会社の判定表」という書類です。
これは、同族会社であるか、非同族会社であるか、また株主の構成などを把握するための書類です。
もっとも、同族会社であるか、非同族会社であるかによって、融資に大きな影響を与えるというものではありません。
この表で重要視されるのは株主構成であり、どのような人が株主なのか、その影響力はどれほどなのか、といった点をチェックしていきます。
[2-1]判定結果
判定結果とは、複数の判定基準からみて、その会社が特定同族会社であるか、同族会社であるか、非同族会社であるかを示す欄です。
同族会社の場合、税務上の制約が課されます。
融資にそれほど影響するわけではありませんが、銀行としてはチェックしておく必要があるため、記載を求められています。
[2-2]判定基準となる株主等の株式数等の明細
この欄には、株主の住所、指名、株主との続柄、株式数などが記載されています。
多くの中小企業では、株主構成の欄には親族が記載されているものです。
そのため、親族以外が株主として記載されている場合には、会社との関係性をチェックされます。
チェックの際に問題となるのが、記載されている株主が反社会勢力であったり、系列の会社が入っている場合などです。
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反社会勢力が記載されている場合には、銀行は公益性の観点から融資ができなくなるわ。
また、系列の会社が入っている場合には、「この会社に融資したら系列会社に資金が提供されるのでは?」という疑問が発生し、調査が行われることになります。
そのほか、代表者の保有率についても確認がなされます。
株式の保有率は、代表者の経営権に影響するからです。
株主構成に問題視される点があるならば、納得のいく説明ができるように準備しておく必要があるでしょう。
【3】別表4
別表4は、所得金額の計算表であり、所得額や欠損額がいくらであったかを計算するものです。
この表は、融資にそれほど影響するものではありません。
ここでチェックされるのは、記載されている金額が他の資料との整合性が取れているかどうかという点です。
[3-1]当期純利益又は当期欠損の額
この欄では、当期の業績が黒字であるか、赤字であるかを見ると同時に、損益計算書の当期純利益の数字と一致しているかどうかをチェックされます。
[3-2]所得金額又は欠損金額
上記の[1-7]でも書きましたが、ここに記載される金額は、別表1の「所得金額又は欠損金額」と一致している必要があります。
その点をチェックしておきましょう。
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【4】別表5(1)
別表5(1)は、「利益積立額及び資本金等の額の計算に関する明細書」となっています。
現在までに積み立てた利益の額や資本金の明細書であり、増減や残高を確認するためのものです。
別表5も、数字によって融資判断を判断するというよりも、他の資料の数字と整合性が取れているかどうかをチェックするものです。
[5-1]利益準備金
利益準備金の「差引翌期期首現在利益積立金額」の欄が、貸借対照表の「利益準備金」と一致しているかどうかをチェックします。
[5-2]積立金
積立金の「差引翌期期首現在利益積立金額」の欄が、貸借対照表の「別途積立金」と一致しているかどうかをチェックします。
[5-3]納税充当金(1)
納税充当金は、二点チェックされます。
一点目は、納税充当金の「期首現在利益積立金額」の欄が、“前期の”貸借対照表の「未払法人税」と一致しているかどうかをチェックします。
[5-4]納税充当金(2)
納税充当金の二点目は、納税充当金の「差引翌期期首現在利益積立金額」の欄が、“今期の”貸借対照表の「未払法人税」と一致しているかどうかをチェックします。
[5-5]未納法人税等
未納法人税等の欄には、「未納法人税」「未納道府県民税」「未納市町村民税」の三つの欄があります。
この欄の、「当期の増減」の増加の箇所が「中間」と「確定」とに分かれていますが、「確定」の欄に記載されている数字と、「差引翌期期首現在利益積立金額」の欄の整合性がチェックされます。
この欄が互いに一致していれば問題ないのですが、一致していない場合には税金の未納や滞納があることが分かります。
[5-6]差引合計額
未納法人税等の下に記載される「差引合計額」は、前期の貸借対照表の対応する数字と一致しているかどうかをチェックされます。
修正申告を行っているならば、数字が一致しないこともあるため、その場合には修正申告書もチェックされることになります。
【6】別表5(2)
別表5(2)は、「租税公課の納付状況等に関する明細書」です。
「租税公課」とは、事業税や住民税などを含む税金のことで、この表にはそれらの発生額と納付状況の明細が記載されています。
[6-1]各税金の明細欄
「法人税及び地方法人税」「道府県民税」「市町村民税」などの一連の欄では、「当期発生税額」の「当期分(確定)」の欄と、「期末現在未納税額」が一致しているかどうかをチェックします。
一致している場合には、滞納や未納がないことが分かります。
[6-2]期末納税充当金
「納税充当金の計算」における「期末納税充当金」の欄では、今期の貸借対照表における「未払法人税」と一致しているかどうかをチェックされます。
【7】別表7
別表7は「欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書」です。
ここでは、会社で欠損額(赤字になっている額)がいくらであるかを、過去7年間にさかのぼって記載します。
ここを見ることによって、過去の欠損額と累積損失を知ることができます。
欠損金が残っているということは赤字ということですから、税金の負担は軽くなります。
CFレッド
しかし、欠損金の繰越がある会社に対しては、銀行は厳しい判断を下すよ!
というのも、赤字であるということは、利益が出ていないということであり、返済能力も低いと判断されるからです。
したがって、別表の中でも、別表7は融資への影響度は高いと言えます。
[7-1]控除未済欠損金額
各事業年度の「控除未済欠損金額」は、その年度の欠損額を示します。
欠損がない場合には空白となり、欠損がある場合にはこの欄に記載します。
[7-2]当期控除額
この欄では、当期で控除した欠損額を記載します。
[7-3]翌期繰越額
青色申告をしている会社は、ある年度で欠損が出た場合、その後7年間にわたり、翌年度の黒字と相殺することができます。
欠損を繰り越す場合には、その額が「翌期繰越額」に記載されます。
なお、繰り越される欠損金は、別表1の[1-11]で書いた「欠損金又は災害損失金等の当該控除額」と一致しているかどうかをチェックされます。
【8】別表15
別表15は「交際費等の損金算入に関する明細書」です。
この表は、会社が交際費として使った経費のうち、損金になるものとならないものを明らかにするためのものです。
この表を見たとき、計上されている額が過大だと判断されると、会社の経理感覚を疑われることとなります。
[8-1]支出交際費等の額
ここには、その年度に支出された交際費の総額を記載します。
[8-2]損金不算入額
ここには、支出された交際費の総額のうち、損金にならない額を記載します。
【9】別表16
別表16は、「旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」となっています。
ただし、別表16には(1)と(2)の二種類があり、(1)では「旧定額法又は定額法」、(2)では「旧定率法又は定率法」となっています。
どちらも見方は変わらないため、ここでは(1)を例とします。
[9-1]当期分の償却限度額(合計)
「当期分の償却限度額」における「合計」の欄には、当期に償却可能な償却限度額が記載されます。
[9-2]当期償却額
[9-1]の償却限度額のうち、実際に減価償却した額を記載します。
[9-3]償却不足額
当期の償却限度額よりも当期償却額が小さい場合、差額を償却不足額として計上します。
このような場合には、適正な償却がなされているかどうかをチェックされることとなります。
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まとめ
本稿では、別表で銀行員がチェックするポイントを見てきました。
これらの点については、経営者自らがチェックしたほうが望ましいと言えます。
決算書の作成を税理士などの専門家に依頼し、チェックしなくとも安心だと考えている人も多いと思います。
しかし、別表の見方を経営者自身が知り、チェックする習慣をつけておくと、万が一誤って記載されている時に気付くことができます。
別表に記載されている内容を把握することで、会社の数字に明るくなることができます。
また、銀行員の目線で別表を見ることで、融資を受けるために改善すべき項目が見えてくるものです。
決算書を作成した際には、ぜひ別表をチェックすることをおすすめします。