長期プライムレートは1.00%であり、長短金利の逆転が起きていますが、この場合には新長期プライムレートが適用され、短期プライムレートを基準として銀行ごとに金利を上乗せします。
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スプレッド融資の金利は?
スプレッド融資で基準となる金利は、TIBORレートを基準としています。
TIBORは「Tokyo Inter-Bank Offered Rate」の略であり、東京銀行間取引金利(銀行同士の資金の貸し借りを行う市場での金利)のことです。
簡単に言えば、TIBORでの取引によって、資金が不足している銀行は資金が潤沢な銀行から借りることができるんだ。
銀行から銀行に対して融資を行うのですから、当然貸付金利は低くなります。
銀行業界内で、資金を融通し合って金融の円滑化に貢献しようとする意図があるため、TIBORレートは非常に低く設定されているのです。
どれくらい低いのかというと、全銀協の公開している直近のデータでは、
融資期間が1ヶ月の場合・・・0.06091%
融資期間が3ヶ月の場合・・・0.06909%
融資期間が6ヶ月の場合・・・0.12636%
融資期間が12ヶ月の場合・・・0.13636%
となっています。
短期融資の基準となる短期プライムレートが1.475%ですから、破格の低金利であることが分かります。
TIBORレートの設定は最長で12ヶ月となっており、短期融資を基本としています。
もちろん、長期資金をTIBORから調達することもあるのですが、その場合には12ヶ月ごとに金利の見直しをすることとなります。
スプレッド融資で借りる際の金利条件
スプレッド融資では、上記のTIBORレートを最優遇貸出金利とするため、スプレッド融資の金利設定は、
TIBORレート+スプレッド(銀行の設定する上乗せ金利)
となります。
例えば、6か月の短期資金をスプレッド融資で借りるならば、
0.12636%+スプレッド
が金利条件となります。
銀行がスプレッドを1%に設定したとしても、貸出金利は1.12636%となり、一般的な短期融資の金利よりもかなり低く抑えられることが分かります。
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スプレッド融資のハードルは高い
このような好条件であれば、どの会社でもスプレッド融資を受けたいと考えるはずです。
ところが、スプレッド融資のハードルは極めて高く、特に中小企業がスプレッド融資を受けられる可能性は低いです。
これは、以下のような問題があるからです。
収益性の問題
第一に、収益性の問題が挙げられます。
TIBORレートを基準にしているため、スプレッド融資を実行した場合、銀行の利息収入は少なくなります。
5000万円、返済期間6ヶ月、金利2%の短期融資と、5000万円、返済期間6ヶ月、金利1%のスプレッド融資では、銀行の収益には倍の差が生じます。
スプレッド融資の収益を短期融資の収益と同じ水準に引き上げるためには、融資額を2倍に増やす必要があるわ。
したがって、スプレッド融資を実行する場合には、銀行はある程度まとまった融資額であることを条件としています。
中小企業と大企業では、資金需要に大きな差があります。
銀行がスプレッド融資を出すならば、資金需要の小さい中小企業では儲けにならないため、資金需要の大きい大企業をメインの融資先と考えるのです。
銀行の規模によって、スプレッド融資を検討できる融資額は異なりますが、最低でも1億円以上の借入れは必要とされています。
中小企業の短期資金は、数百万円~数千万円ということがほとんどですから、スプレッド融資を希望しても受け入れられない可能性が高いです。
銀行の規模の問題
収益性の問題と関わりの深い問題ですが、銀行の規模も問題です。
上記の通り、スプレッド融資は収益性が低く、大口融資に限定することで収益性をカバーしています。
大口の融資を希望する会社、すなわち大企業はメガバンクと積極的に付き合っています。
地方銀行、信金・信組といった地域金融機関であれば、大口の資金需要に応えられないこともありますから、大企業はメガバンクをメインに付き合うのです。
スプレッド融資は大口融資を対象としており、大口融資を希望する大企業の多くがメガバンクと取引しているのですから、スプレッド融資の大部分を実行しているのはメガバンクと考えることができます。
実際、企業に対する融資全体のうち、スプレッド融資が占めている割合を見てみると、メガバンクは49%、地方銀行は14%、信用金庫は2%となっています。
このように、メガバンクではスプレッド融資がそれほど珍しくないものの、地方銀行や信金・信組など、小規模な金融機関ほどスプレッド融資が困難となります。
資金需要がそれほど大きくない中小企業は、地域に根差した地方銀行や信金・信組と取引することがほとんどであり、メガバンクには相手にされないことが多いです。
この意味でも、中小企業がスプレッド融資を受けることは困難です。
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リスクの問題
次に、リスクの問題が挙げられます。
そもそも、銀行が融資先によって金利条件を変えているのは、融資先によって異なる貸し倒れリスクに備えるためです。
貸し倒れリスクが高い融資先に対しては、リスクに見合う収益を求めるため、金利は高めに設定されます。
逆に、貸し倒れリスクが低い融資先に対しては、金利は低めに設定することができます。
スプレッド融資では超低金利を適用するため、貸し倒れリスクが極めて低い会社でなければ融資はできません。
実際、TIBORレートをベースとした融資は『財務内容に懸念無く、取引優良な先に限る』と定められているんだ。
リスクに合わせて、TIBORレートに上乗せするスプレッドを変動させることはできますが、それでも貸し倒れリスクが低い会社でなければ、低金利を適用することは不可能です。
スプレッド融資を出せるかどうかを判断するためには、信用格付けを用います。
信用格付けとは、金融庁の指導に基づいて、会社の決算内容から安全性を格付けするものです。
最も良い格付けは「正常先」であり、スプレッド融資を受けるためには、少なくとも正常先の格付けでなければなりません。
正常先より下の格付けの会社は、スプレッド融資を受けることはできません。
決算内容が悪い会社は、信用格付けを引き下げられることになります。
これまでは業績が安定しており、正常先を維持してきた会社でも、決算内容が悪化すれば正常先を維持できなくなる可能性があります。
中小企業の経営基盤はあまり強いものではなく、外部環境によって容易に業績が落ち込むことが珍しくありません。
つまり、中小企業は信用格付けの維持が難しいということであり、これもスプレッド融資を受けにくくしている原因と言えるでしょう。
長期的な目標にしよう
以上のことから、スプレッド融資が受けられるのは、それなりに規模が大きい超優良企業に限定されることが分かります。
いくら低金利で借りたいからと言って、一般的な中小企業が銀行と交渉をしても、スプレッド融資が受けられる可能性は極めて低いです。
そのような交渉は、まったくもって合理性がないため、銀行が応じることはありません。
むしろ、自社の規模や信用格付けを無視して、そのような交渉を持ち掛けてしまえば、交渉が成立しないばかりか、銀行から疎まれる可能性もあります。
万が一、スプレッド融資が受けられたとしても、銀行にとっては収益性の低い取引先でしかなくなってしまいます。
先々、経営状況が悪化したときに、収益性の低い取引先としてさっさと切り捨てられてしまう可能性もあります。
そのようなことにならないためには、自社の業容を拡大し、業績と財務の両面から強い会社に育て、信用格付けも高く維持することで、将来的にスプレッド融資が受けられる会社を作っていくことが大切です。
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まとめ
スプレッド融資は、通常の融資に比べて非常に低い金利で融資を受けることができます。
このため、資金繰りにも良い影響が期待できます。
しかし、超低金利ゆえに、収益性を確保できるだけの融資額であること、決算内容が優良であることを条件となっており、多くの中小企業はスプレッド融資を受けられない仕組みになっています。
CF戦隊
自社の現状を無視してスプレッド融資を望むのではなく、将来的にスプレッド融資を受けることを目指して経営に取り組んでいこう!
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