融資を受ける際には、銀行から審査を受ける必要があります。
その審査では、会社の返済力を見極めて、融資してもよいかどうかを検討していくのですが、これについては多くの経営者が知っていることと思います。
しかし、具体的に返済力をどのように見ていくのか、つまり財務分析をどのように行っていくのかという点については、分からないことも多いものです。
銀行員の財務分析の視点が分かれば、きっと資金繰りや決算書作成に役立つはずです。
本稿では、実際に融資業務に携わっていた元銀行員に、財務分析について聞いた内容をまとめていきます。

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融資稟議に財務分析は必須
銀行に融資を依頼すると、銀行内では稟議が行われます。
その会社に融資しても大丈夫かどうかを、融資担当者やその上司、支店長など複数人で判断していくのです。
「融資しても大丈夫かどうか」とは、第一に反社会勢力や公序良俗に反する会社など、そもそも融資できる相手かどうかという判断です。
その点で問題がないならば、「きちんと返済できるかどうか?」について判断していくこととなります。
返済力を量る際に重要視される項目は複数あり、
- 経営者の能力や従業員の能力
- 組織としての能力
- 販売している商品やサービス
- その会社が属する業界の将来性
などが挙げられます。
しかし、何と言っても最も重要なのは、会社の業績と財務です。

つまり、経営資源における「カネ」の要素ね。
融資稟議では、融資したお金がきちんと返ってくるかを判断することが最終的な目的であり、それを判断するために色々な切り口から検討していくのです。
融資したお金がきちんと返ってくるかどうかを見極めるためには、その会社の資金繰りをチェックする必要があります。
資金繰りが順調に続いており、資金ショートの危険がないならば、会社が倒産することはありません。
たとえ赤字に陥ったとしても、資金繰りが続けば倒産することはないのです。
したがって、資金繰りがどのようになっているか、資金繰りを続ける力があるかどうかを見極めていくことが、融資稟議の核と言えます。
そのために、融資担当者は財務分析を行います。
財務分析といえば、難解な経済学を理解しなければならないような印象を受けることもあり、近づきがたいと思っている経営者もいると思います。
融資業務にあたる銀行員も、銀行の研修や自主的な勉強によって財務分析を学んでおり、その後の業務経験によっても財務分析を磨いていくのですから、経営者がすぐに全て理解できるものではありません。
しかし、融資稟議の核は財務分析にあるのですから、そこを詳しく知ることによって、融資に役立つことは間違いないことです。
とはいえ、銀行員並の知識を経営者が身に着けることは簡単ではないでしょうし、どこから手を着ければよいか分からない人も多いことでしょう。
そこで、融資担当者は財務分析の際に
- どのような点を特に意識するか
- その時にどのような見方をしているのか
この2点について、実際に融資業務にあたっていた元銀行員に話を聞いてみることとしました。

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売上の傾向について
まずは、売上高の推移を見ていくこととなります。
売上の小さな増減に注目するのではなく、全体的に売上が増加しているか、減少しているかを見ていきます。
ということは、その期の決算書だけではなく、数期にわたって見ていくということですか?
そうです。
最近は銀行業務も忙しいですから、3年分くらいの決算書で見ることも増えてきているようですが、やはり5~10年程度の比較が好ましいです。
融資担当者の指導方針を見てみると、今でもマニュアルでは5~10年程度見ていくとされていますし、新規融資の場合にはそのような見方をすることも多いのではないでしょうか。
融資先の方向性が分かります。
その会社が成長しているのか、横ばいなのか、衰退しているのかといった方向性を把握することは、融資判断のためにとても大切なことです。
もちろん、売上だけ良ければいいというものではありませんが、売上が減少している会社では資金繰りが悪化するのが普通です。
売上が減れば利益も減って、使えるお金は少なくなるのですが、固定費はかかりますし、事業資金もかかります。

売上を改善するために何かするにも、やはりお金は必要なんだ。
そのため、やりくりはどんどん厳しくなっていきます。
しかし、売上が伸びている会社では利益も増えますから、資金繰りは良いのが普通です。
もちろん、売上が伸びることで資金需要も増えれば、資金繰りは苦しくなるものですが、計画的に資金繰りをしているならばそれほど問題ではありませんし、うまく回っていくものです。
必ず融資されないというわけではありませんが、売上が減っているのに積極的に貸すことはありません。
売上が減っていて、資金繰りも少しずつ苦しくなっている中で、今後どのように立て直していくのか、売上が回復する見込みはあるのかといった点についてしっかり確認して、それまで資金繰りが持つかどうかを検討していきます。

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売上総利益率の傾向について
利益を見ていくときは、単純に利益が多いか少ないかというよりは、売上に対して利益がどれくらい出ているかを見ていきます。
つまり売上総利益率を見ていくのですが、これも売上と同じように推移をみることで傾向を把握していきます。
もちろん、そのような見方もしますが、利益率を見る時はその会社の中だけで利益率が伸びた・縮んだということはそれほど重要ではないんです。
それよりも重要なのは、同業他社との比較です。
同業他社と比較して利益率が良ければ、その会社は競争力が高いことが分かります。
もし、同業他社よりも低ければ、競争力が低いということですし、何か大きな理由が隠れているかもしれません。
例えば、会社の販売力が同業他社よりも低いために、価格を下げるなどの無理をして販売していることがあります。
売上総利益率も、資金繰りが上手くいくかどうかの根拠になるのですから、銀行は必ずチェックしますし、その際には同業他社と比較します。
同業他社と比較したうえで、推移もきちんと見ていきます。
これも、数年間の総利益率を確認していくのですが、これによって競争力が良く分かります。
同業他社と比較して利益率が高く、競争力があることが確認でき、さらに数年間の推移をみても利益率が伸びているというならば、これはかなりよい会社だという判断材料になります。
また、同業他社と比較して低めの利益率のとどまっている会社は、競争力に問題ありと考えることができます。
ですが、それでも数年間の推移において利益率を伸ばしているとすれば、今後十分な競争力を備えた会社に成長していく可能性があります。
同業他社と比較した際のマイナスイメージをカバーすることもできます。
しかし、利益率が低下の傾向にあれば、同業他社との比較に関わらずマイナスの印象を受けてしまいますね。
同業他社よりも利益率が高い会社であっても、利益率が低下傾向にあるならば、やがて業界平均レベルの利益率に落ち込み、さらにそこを割り込んでいく可能性もあります。
ですから、同業他社より利益率が高い会社でも、利益率が低下傾向にあるならば要注意とみなします。
もちろん、同業他社に比べて利益率が平均的な会社や、平均以下の会社で、さらに利益率も低下の傾向にあるとすれば、融資稟議には大きなマイナスになると言えますね。

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そうです。
売上でも、売上総利益率でも、長期間の推移からトレンドを把握すれば、融資先の将来性が見えてきます。
特に、利益率は競争力をよく表していますから、将来性への影響は大きいでしょう。
利益率が伸びている会社ならば、同じ量を販売しても利益は伸びていきます。
無理に販売せずに利益を伸ばしていくことができるのですから、堅実な成長が見込めます。
逆に、利益率が低下している会社は、同じ量を販売するだけでは業績は落ちていき、資金繰りも厳しくなっていきますから、販売量を増やすしかありません。
販売量を増やすといっても簡単ではありませんから、どこかで無理をすることも多いです。
それによって、支払能力の低い会社と取引して貸し倒れになったり、単価や支払い条件などがあまり良くない取引をしたりすることも考えられます。
利益率の低下は、将来的な資金繰り悪化の原因になることもあるんです。
どちらがより大切という見方をすると、どちらか一方があまり重要ではないという見方にもつながります。
売上も、売上総利益率も大切な指標ですから、どちらが大切という考え方は銀行員らしくありません。
しかし、経営や資金繰りへの影響度を考えると、確かに売上総利益率のほうが重要と言えるかもしれませんね。
売上を伸ばすよりも、利益率を伸ばすほうが難しいと思いますし。
がむしゃらに売れば売上は伸びますが、利益率を伸ばすためにはあらゆる業務改善が求められます。
ですから、売上が伸びるよりも利益率が伸びたほうが高評価につながりますし、売上が落ちるよりも利益率が低下する方が悪材料と見られます。
もっと言えば、売上が落ちていても、利益率が上がっていれば評価されることも多いですよ。
利益率を上げるために改善を図って、そのために売上が落ちることもありますが、それは会社の将来性も含めて考えると確実にプラスです。

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まとめ
経営者の皆さんも、売上高や利益率は重要なものだと考えているはずです。
売上高や利益率は会社の稼ぐ力であり、資金繰りにも大きく影響します。
そのため、銀行員もこの点を重く見ています。
銀行員の目線で売上高や利益率を考えることができれば、融資がスムーズに引き出せる業績とはどのようなものかが分かるでしょう。
それは、銀行のための業績ではなく、その業績によって資金繰りも良くなり、それが結果的に融資をスムーズにすることにつながります。

自社の業績を振り返る時、また売上や利益の計画を立てる時、この視点を活かしてみてはいかがでしょうか。
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