※本記事はプロモーションを含みます。会社を経営していく上では、色々なリスクを抱えながら経営していくことになります。
そのリスクの中でも、ほとんど会社が抱えており、ときに倒産のきっかけにもなってしまうリスクとして、貸し倒れリスクが挙げられます。
取引先の貸し倒れリスクに応じて取引方針を変えて管理していくことを、与信と言います。
与信管理の上で非常に役立つのが、取引先を自社内で独自に格付けする「社内格付け」です。
本稿では、社内格付けを作っていくにあたってのポイントなどを解説していきます。
社内格付けのポイント
社内格付けを作るためには、一定の基準を設ける必要があります。
この時の基準が間違っていると、出来上がった社内格付けも適当なものではなくなってしまいます。
そこで、注意すべきポイントを踏まえて、社内格付けの基準を作っていく必要があります。
客観性を持つこと
社内格付けを作る際には、社会に存在している企業全体における、標準的な財務指標から基準を作っていきます。
基準を作成したら、取引先の財務指標を点数化し、信用力を評価し、格付けしていくのです。
簡単に言うと、
「普通、会社の財務はこうあるべきである。それに対し、取引先Aはこうであるから〇点をつけることができ、格付けはCである」
という評価をしていくのです。
CFイエロー
ここで重要となるのは、与信管理の根本を忘れないことよ!
与信管理が何のためにあるのかと言えば、貸し倒れを防ぐためにあります。
したがって、現在生存している企業だけではなく、倒産企業も分析したうえで標準的な財務指標を作り、それによって格付けしていくのです。
よくある間違いが、自社の取引先だけを分析して基準を作ってしまうことです。
それでは、分析対象が少なく、分析結果は十分に客観的だとは言えなくなります。
客観的ではなく、厳しすぎる、あるいは甘すぎるものとなってしまい、適切な与信管理には役立たなくなってしまいます。
そこで、生存企業や倒産企業など、できるだけ多くの企業を分析していき、その結果を格付けに反映させていくことが大切となります。
わかりやすいこと
適切に社内格付けを作り、格付けの結果を全社で活かしていくためには、社内格付けの基準が分かりやすいことが重要です。
社内格付けが分かりにくいものであれば、その格付けをもとに色々な決定を下し、行動していくことが困難になります。
したがって、社内全体が格付けを簡単に理解しておけるように工夫し、それぞれの現場で自発的に行動に移れる体制を作っておくことが大切です。
また、社内格付けが分かりやすいものになっておくと、それが社内での共通言語として利用されるようになります。
例えば営業部門において、「あの会社の格付けは●(将来的な支払能力に懸念あり)だから、できるだけ回収サイトは短くなるようにしていこう」といった意思の疎通が期待できるのです。
管理方針を作っておく
CFブルー
単に社内格付けを作っておくだけでは、格付けを十分に活かすことは難しいと言える。
例えば、取引シェアが非常に大きい取引先や、何らかの問題が起こった取引先に対しては、集中的に管理していく必要が生じます。
しかしながら、ここで管理の方針が明確に定められていなかったならば、管理がうまくいかず、貸し倒れリスクの低減にも役立ちません。
そこで、社内格付けを作ると同時に、格付先の管理方針も作っておくことにとによって、各取引先の管理レベルを明確にすることができます。
また、集中管理の方針を作っておき、社内格付けを見ただけで特別な取引先であることが分かるようになっていれば、全社で注意を払いながら対応できるようになります。
CFレッド
これによって、無駄な営業活動を省いたり、与信リスクが高まることを防いだりできるのだ!
モニタリングと平行する
社内格付けは、一度作ったらそれで終わりではありません。
取引先の信用力は常に変化するものであり、社内格付けが変化することも普通にあり得ます。
そこで、取引先の情報は継続的に入手し続け、何らかの問題や大きな変化が起こったときには、すぐに格付けを見直す必要があります。
これを続けていくと、取引先の社内格付けの変遷を見ることもできるようになり、信用力の変化の推移を見ることでも、取引の参考にすることができます。
CFイエロー
モニタリングを行いながら、社内格付けの基準を変化させていくことも大切よ!
例えば、不景気な時代には、厳しめの基準で格付けし、与信リスクを避けていくのですが、景気が上向いてからもその基準で評価し続けていると、販売機会を失うことにつながります。
経済情勢などによって格付けの基準を変えていくことも、モニタリングを続けていてこそ可能となるものですから、モニタリングを怠らないようにしましょう。
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取引先を評価する方法
では、いよいよ取引先を評価し、格付けしていく方法を見ていきましょう。
取引先を評価するとき、評価の対象となる要素には、定量評価、定性評価、外部評価、取引内容の評価が大切になります。
これらの要素について、詳しく知っておくことが大切です。
定量評価
定量評価とは、決算書の数字に表れる情報から評価していく方法のことです。
貸借対照表や損益計算書を評価し、点数化していくのです。
この点数付けを行う際の注意点は、決算書の表面的な数字を鵜呑みにしないことです。
例えば、取引先が資産として計上しているものの中には、不良債権や含み損を抱えた資産があるかもしれません。
それを加味することが重要です(これを知るためには、当サイトの他の記事でも解説している、銀行員の決算書の見方などが参考になります)。
使用する指標には、以下のようなものがあります。
- 規模分析:売上高、自己資本額
- 安全性分析:自己資本比率、借入月商比、流動比率、借入依存度
- 収益性分析:総資本経常利益率、売上高経常利益率、増収率、経常支出率
- 回転率分析:総資本回転数、売掛債権回転期間、棚卸資産回転期間
ただし、決算書の内容が全て本当であるとは言えませんし、決算書自体が入手できない場合もあります。
CFブルー
その場合には、信用調査会社から企業概要のデータを取り寄せ、定量評価モデルを構築していくよ!
- 規模分析:売上高、純利益額、従業員数
- 安全性分析:資本金
- 収益性分析:売上高純利益率、増収率、増益率
定性評価
ただし、決算書が入手できても、入手できずに企業概要データを取り寄せても、それによる定量評価だけでは格付けすることはできません。
それに加えて、取引先に営業をする中で得た現場の情報などを加味しておくことも重要です。
したがって、定量評価で大まかな格付けをした後に、定性評価によって格付けを上げたり、下げたりしていくことになります。
CFレッド
定性評価では、取引先が子会社の場合には、まず親会社から評価することが大切だ!
親会社の信用力が高い場合や、親会社のサポートが充実している場合などには、取引先の信用力は高まり、格付けを1つ、2つ上げることが可能となります。
次に、取引先の業界を評価することも大切です。
取引先が業界でどれくらいの位置にいるのか、その業界への新規参入にはどの程度の障壁があるのかなどを考えて行くと、その会社が今後も安定して経営していけるかどうかが見えてくると思います。
しかし、取引先の業界を調べて行くと、業界内で信用不安情報が流れていたり、参入がいとも簡単であったりと、今後の経営に不安を匂わせる情報が得らえることもあります。
その場合には、評価を下げる必要があります。
このような定性評価が必要となるのは、以下のような要因です。
- ヒト:経営者の能力と資産背景、親会社の支援
- モノ:業界順位や業界の特性
- カネ:取引している金融機関
- その他:信用不安情報の有無
CFイエロー
定性要因は、あらかじめ数値化されていないだけに、分析を間違い安いものよ!
例えば、長年取引をしていること、他社よりも利益率が高いこと、担保が取得できていることなどは、本来支払能力に関係ないことなのですが、それらによって格付けを引き上げてしまうこともあります。
したがって、定性評価を行う際には、分析する人によって恣意的になったり、過大・過少評価されたりしてしまうことがあります。
そのようなことにならないように、客観性を以て見ていくことが大切です。
外部評価
外部評価とは、外部の格付け機関が行なっている格付けのことです。
定量評価と定性評価だけではなく、外部の格付けを見てみるのも非常に役立つことです。
特に、取引先から決算書を手に入れられない場合には、定量分析がどうしても甘くなってしまうため、正しい分析に自信を持てないことも多いです。
そのような場合には、信用調査会社などが作っている格付けを参考にして見ましょう。
CFブルー
これは、信用力の調査を外部にアウトソーシングするということだ!
自社で分析するのとは異なり、外部の機関の分析は完全に客観的な視点に立って行われるものです。
自社では見つけられなかったリスクを発見したり、与信管理の問題点を発見したりすることもあります。
これにより、与信管理の強化につながります。
また、自社の信用力調査でも、外部機関の調査でも優良とされた取引先とは、自信をもって取引することができます。
リスクが小さいのですから、意思決定もよりスピーディにすることができ、与信管理が効率化するのです。
取引内容の評価
最後に、取引内容を勘案したうえで評価を加えていきます。
まず注意したいのは、取引シェアが高い取引先、あるいは回収遅延などの問題が起きている取引先、倒産している取引先などは、特に区別しておく必要があるということです。
取引シェアが高い取引先は、万が一貸し倒れを起こしたときのダメージが非常に大きく、また自社の収益確保の上でも欠かせない存在であるため、集中的な管理が必要となります。
もし、取引シェアの高い取引先に対し、かなり真実味を帯びた不安情報を入手したとしても、収益の大幅な低下などを考えると、簡単には撤退できないと思います。
そこで撤退し、収益力が大きく損なわれ、倒産するということにもなりかねません。
CFレッド
しかし、何もしないのもまた問題だ!
そうするうちに債権者が取り立てに動いたり、自社に支払い猶予を求められたりすると、リスクはますます高くなり、退くに引けない状況になってしまう可能性もあります。
これでは、せっかく社内格付けまで作って、管理していた意味がなくなってしまいます。
したがって、自社の販売シェアが30%を超えるような取引先に関しては、常に業況を把握するように努め、少しでも信用状況が悪化した場合には、すぐに対応できるように準備しておくことが大切です。
もし、支払遅延が起きている会社や、すでに倒産した会社への対応などは、全社で協力して、通常の数倍、数十倍といった力を注いで対応していくべきです。
社内格付けを作っておき、各取引先の格付けランクが一目でわかるようになっていれば、集中管理先を全社で一致して認識することができます。
管理体制が厳重になり、与信リスクを下げることができるのです。
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一目でわかる格付け表と格付けの方法
では、格付けの方法を見ていきましょう。
その前提として、格付けは以下のように8ランクくらいに分けて格付けします。
もちろん、会社によっては多少前後することもあるかもしれませんが、8通りで問題ないでしょう。
高シェアの取引先は、各格付けの前にSをつけ、「S-A」「S-B」などの表記で区別できるようにしておきます。
F以下に格付けすべき情報
最初に格付けすべきは、倒産の可能性が非常に高い取引先であり、Fランク以下に格付けされる情報をいち早くキャッチすべきです。
以下のような情報が見られた取引先は、Fランク以下に格付けします。
(定量情報)
(定性情報)
- 手形が不渡りに関する信用不安情報が出ている。
- 粉飾決算に関する信用不安情報が出ている。
- 代表者や役員の中に倒産歴がある人物がいる。
- 夜逃げや任意整理などで、事実上の休眠状態にある。
D以下に格付けすべき情報
D・Eランクは、すぐに倒産することはないでしょうが、支払能力が低下しており、将来的に不安がある取引先です。
以下のような情報が見られる取引先は、D以下に格付けします。
(定量情報)
- 借入依存率が60%以上である。
- 借入返済年数が30年以上である。
- 当期利益が赤字である。
- 流動比率が100%未満である。
(定性情報)
- 銀行以外の金融業者から担保設定がある。
- 支払遅延等の信用不安情報が出ている。
2ランクダウンすべき情報
格付けを2ランクダウンすべき情報というものもあります。
例えば、DやEにランク付けされている会社は、すぐに倒産するリスクはありませんが、財務状況や支払い状況が悪化し、Fランク以下に陥る可能性も十分にある取引先です。
したがって、常に注視しておき、以下のような情報が見られた際には、2ランクを下げて管理方針を変えていく必要があります。
もちろん、それほど危険がないと思える取引先でも、定量・定性情報によって、必要に応じてランクを下げて管理していくことが大切です。
(定量情報)
- 資本金が300万円未満である。
- 自己資本比率が7%未満である。
(定性情報)
- 3年以内に商号を2回以上変更している。
- 3年以内に本店所在地を2回以上移転している。
- 3年以内に代表番号を2回以上変更している。
- 代表者と役員が2年以内に2回以上交代している。
- 設立後5年以内の会社である。
- 談合事件などにより、数ヶ月の指名停止処分を受けている。
- 脱税や詐欺などによって、代表者や役員が逮捕されている。
- 主要販売先を急に変更している。
1ランクダウンすべき情報
2ランクダウンの情報に比べると、それほど大きな情報ではありませんが、やはり信用情報を悪化させる情報があります。
それは、以下のような情報です。
(定量情報)
- 自己資本総額が3000万円未満である。
- 借入依存度が40%以上60%未満である。
- 自己資本比率が7%以上15%未満である
- 経常利益が赤字である
- 支払利息が営業利益を上回っている
(定性情報)
- 社有地及び代表者私有地に時価総額を上回る担保設定がある
- 借入過大や財務状態に関する不安情報が出ている
- 取引先の主要販売先で最近倒産した会社がある
- 使用仕入先が取引量を減らしている
- 役員間または労使間で社内に重大な紛争が起きている
- 官報等による決算広告を行っていない
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ランクダウンの可能性が高い情報
必ずしもランクダウンにつながるわけではありませんが、時にランクダウンさせてもいい情報も存在します。
ランクダウンの基準としては、以下の情報に2項目該当する場合が妥当でしょう。
以下の情報に2項目該当すれば、実際に経営が悪化している可能性が高いと言えます。
(定量情報)
- 自己資本総額が3000万円超5000万円未満である
- 当期利益が不明または200万円未満である
- 当期利益が黒字の場合で、売上高利益率が1%未満である
- 売上高が20%以上減少している
- 総資産が20%以上減少している
(定性情報)
- 取引先の代表番号にかけても先方担当者までつながらない
- 従業員数が会社の事業内容と比べて極端に少ない
- 従業員数が極端に減少している
- 3年以内に2回以上事業内容や目的を変更している
- 主要取引先が急に変更されている
- 取引先の貸倒れに関する不安情報が出ている
- 廃棄物処理等により周辺環境に環境汚染事件が発生している
- 所属業界が全体的に縮小傾向にある
- 所属業界が市況悪化などの景気変動の影響受けやすい
- 所属業界が新規参入や新商品・サービスなどの出現によって競争が激化する可能性がある
経営悪化の兆候となる懸念情報
経営がいくらか悪化しているかもしれないと思える情報も把握しておきましょう。
以下の項目のうち、4項目該当したならば1ランクダウンさせて良いでしょう。
(定量情報)
- 借入依存度が20%以上40%未満である
- 自己資本比率が15%以上20%未満である
- 自己資本総額が3000万円以上1億円未満である
- 当期利益が2000万円以上1億円未満である
- 売上高または総資産が極端に増加している
- 5年以内に極端な増減資を行っている
(定性情報)
- 自社で把握している会社名とホームページの称号が一致しない
- 自社で把握している会社名と商業登記簿の称号が一致しない
- 社有地及び代表者所有地に担保設定がある
- 電話帳の代表番号とホームページの代表番号が一致しない
- 電話帳に代表番号が記載されているが実際の代表番号と一致しない
- 自社との取引内容がホームページの事業内容と一致しない
- 自社との取引内容が商業登記簿の目的と一致しない
- ホームページ記載の取引銀行と担保権者が一致しない
懸念情報だが信用悪化にはつながりにくい情報
懸念事項ではありながら、信用悪化にはつながりにくい情報もあります。
以下の情報があったとき、過大に評価してランクを不要にダウンさせないようにしたいものです。
ただし、インターネットが普及した今、インターネットでの情報開示にあまりにも消極的であるとすれば、そこに何らかの問題がある可能性もあります。
したがって、いずれ大きめの懸念情報が出てこないとも限らないため、以下のほとんどあるいはすべてに該当する場合には1ランクダウンと捉えて良いでしょう。
(定量情報)
- 自己資本比率が20%以上30%未満である
- 自己資本額が1億円以上10億円未満である
- 当期利益額が1000万円以上3000万円未満である
(定性情報)
- 取引先のホームページが存在しない
- 会社のパンフレットが存在しない
- 不動産登記簿から社有地が確認できない
- 自社で把握している本社所在地とホームページの本社住所地が一致しない
- 自社で把握している本社所在地と商業登記簿の本社住所地が一致ししない
- 電話帳に電話番号が記載されていない
- ホームページから会社概要が確認できない
加点すべき項目
基本的に、社内格付けは減点方式ですべきものであり、加点は行わないものです。
しかし、以下のように、安全性に大きな好影響を与える情報を把握したならば、その取引先は特に加点しても問題ないでしょう。
(定量情報)
- 自己資本比率が30%を超えている
- 自己資本総額は15億円を超えている
- 当期利益額が1億円を超えている
- 無借金経営である
(定性情報)
- 大手優良企業の子会社である
- 大手優良企業の関連会社で親会社から役員等の人的派遣がある
- 大手優良企業の関連会社で正午に親会社の「冠」がついている
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まとめ
本稿は、あくまでも社内格付けの概論を述べたものであり、実際の作成に関してはまた別の観点からの解説が必要となってくるでしょう。
しかし、本稿で述べたポイントを踏まえて社内格付けを作れば、より役立つ格付けが出来上がることと思います。
また、格付けの基準を知ることによって、取引先の信用力をどのように評価すべきなのか、どのような動きに注意すべきなのかということを把握できるのも、社内格付けを学ぶ効果だと言ってよいでしょう。
本稿が、あなたの会社で社内格付け を作る参考になれば幸いです。