会社をうまく経営していくためには、資金繰りがうまく回っていく必要があります。
そのためには、資金繰りに関する正しい考え方を身に着けておく必要があります。
しかし、実際には間違って理解されていたり、曖昧に理解されていたり、都合よく理解されたりしているケースが少なくありません。
そこで本稿では、それらの知識を正すために、間違って・曖昧に・恣意的に理解されやすい知識について解説していきます。
資金繰りに経理や会計の知識は必要ない?
まず、資金繰りに経理や会計の知識は必要かどうかということについてです。
経営者の中には、どんぶり勘定でなんとかうまくやれていたり、全部部下に丸投げしたりしているため、「経理や会計の知識なんて必要ないよ」と考えている人もいるのですが、そんなことはありません。
経営者自身が知識をつけておかなければ、経営は不安定になりやすいです。
例えば、掛け売りということについてきちんと理解していなければどうでしょうか。
販売はしたのに売上を回収するまでに数ヶ月かかることを知らず、「売れているのになぜか現金がない」という不安定な状態で資金繰りをしていくことになります。
ついには売り上げがあるのに支払いが間に合わずに倒産する「黒字倒産」になってしまうということもあり得ます。
やはり、経営者自身にある程度知識があり、資金繰りの状況を適切に把握できるようにしておくことが好ましいと言えます。
そうしておけば、金融機関に対する資金調達の際にも、会計の専門用語などを使いながら説明することができ、説得力が増します。

そもそも、資金不足になる原因は、決算書や試算表を見ればわかるようになっています。
経営者自身がそれを読む力を持っていれば、会社の問題点も的確に把握できるようになり、経営改善を図り、安定させていくこともできるのです。
【ポイント】
- ×経営者に経理や会計の知識は必要ない。
- ◎経営者に経理や会計の知識は必要である。
資金繰りは損益計算書から考える?
経営者の中には、いくらかの知識を持っており、決算書を見ている人も少なくありません。
しかし、損益計算書を見て資金繰りを考える経営者は多く、これはあまり良いこととは言えません。
なぜならば、損益計算書では売上高から売上原価を差し引いて売上総利益を算出します。
人件費や経費といった販管費と差し引いて営業利益を算出しと言うように、上から下へと引き算をしていく仕組みになっているからです。
このため、損益計画を出すにあたっては、損益計算書をもとに作成していくことになります。
しかし、資金繰りとなると、大きく事情が異なります。
資金繰り計画は、損益計画とは全く別物だからです。
損益計算書の一番上を見れば売上高があり、それだけの売上があったことを示します。
損益計画における売上高は、それだけの売上を目標にしているということです。
しかし、その売上の中には現金での回収もあれば、売掛金によるものもあり、また売掛金ごとに回収サイトは異なりますから、「売上高」という固定された概念からは、売上の中身を知ることはできません。
損益計画書の売上高を見て、そのお金を回して資金繰りをしていくなどと考えると、とんでもない間違いを犯してしまうこととなります。
【ポイント】
- ×損益計算書から資金繰りを考える。
- ◎損益計算書と資金繰りは別物である。

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最低限プールしておくべき現金は?
損益における科目のうち、どの科目がどの順番で出入りしていくかということは、会社によって異なります。
しかし、ほとんどの会社に共通する事実は、最低でも1ヶ月分の売上高程度の現金を手元に留保しておくべきだということです。
つまり、月末の預金残高と会社の金庫にあるお金の合計が、売上高の1ヶ月分は必要であると考えるべきです。
なぜならば、その月の末にそれだけのお金がなければ、来月の支払いができなくなるからです。
損益計画通りであっても、ほぼ売上と同じ費用が発生すると考えてください。
もしこのお金がない場合には、売掛金の入金がなければ支払いをすることはできません。
もし取引先が何らかの理由で入金できなければ、自社も支払先に入金できなくなってしまいます。

なお、これは1ヶ月という期間で見た場合に、損益計画通りにお金が出入りしていればという前提での話です。
そうでなくなった場合に備えて、より多くの現金があるに越したことはありません。
【ポイント】
- ×会社にいくらくらい現金をプールしておくのか考えていない。
- ◎最低限、売上の1ヶ月分はプールしておく。
売上と支払い、どちらが先か?
資金繰りで頻繁に問題として取り上げられるのが、売上と仕入れの支払いの順番です。
資金繰りの本を読むと、このことに触れていない本の方はないと言っていいくらい、重要な問題です。
小売業で考えると、この問題は良くわかります。
お店で商品を売るためには、商品を仕入れる必要があります。
つまり、開店前に市場などに行って、商品を仕入れる必要があるということです。
このことから、売上よりも仕入の方が先になることが分かります。
しかし、売上で仕入れをしているのではないかと思う人もいると思います。
お店が新規開店した時のことを考えると、やはり最初に仕入れを行っているわけですから、仕入れの方が売上よりも先になっていることが分かると思います。
仕入れた商品は在庫と呼ばれます。
例えば、1000万円分の商品を仕入れ、倉庫に保管したり、お店に陳列したりされる商品を在庫と呼びます。
お店を始める前には、必ず在庫が必要です。
一部、インターネットの特殊な事業などでは、在庫を抱えずに運営していくスタイルもあるようですが、やはり基本は仕入れによる在庫があって、売れた分だけ売上になるのです。
そして在庫は、それが過剰在庫の場合などを除けば一定の在庫をキープし続けます。 売れた分を補充して再び販売するからです。
したがって、在庫相当分の資金は、常に現金ではなく在庫という形で存在し続け、その資金のことを在庫資金と言います。

仕入れ資金とは、売れた分を補充するための資金のことです。
例えば、在庫が1000万円分あり、そこから500万円分が売れたとします。
常に1000万円分の商品を確保しておくならば、500万円分を仕入れる資金が必要となります。
しかし、現金商売ならばいいのですが、そうでないならば、入金がまだという合には仕入れることができなくなってしまいます。
そこで、仕入れるために、売上を回収する以前に仕入れ費用として500万円が出て行くことになります。
このような「在庫補充のための仕入れに必要なお金」のことを「仕入れ資金」と言います。
上記の通り、最低限売上の1ヶ月分程度の現金をプールしておかなければならないわけですが、仕入れ資金もこの中に含まれます。

売れることを見越して仕入れる
しかし、確保した在庫が全て売れてから仕入れるというわけにはいかないものです。
実際には、在庫がなくなってからでは、実際の仕入れまでの期間に販売の機会を損失してしまうことになりますから、これは利益を失うのと同じことです。
したがって、売れそうな量を見越して仕入れていくことになります。

例えば今月は500万円分売れると見越して500万円分の仕入れを行ったところ、300万円しか売れなかったようなことがあるのです。
その場合には、月末の棚卸では200万円の在庫が増えたことになります。
損益計算書で資金繰りはできないと書いた理由を詳しく見れば、このようなことになります。
損益計画通りに運べば何も問題はないのですが、実際には仕入れの見込み違いによって、在庫が増えたり減ったり、それによって資金繰りがずれたりすることがあるのです。
【ポイント】
- ×売上があって支払いがある(支払うことを見越して売る)。
- ◎支払いがあって売上がある(売れることを見越して支払う)。

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掛け取引の性質を理解している?
本稿では、売掛金という言葉がしばしば出てきますが、これは皆さんもよく知っている通り、支払いを先送りすることを認める形で商品を販売することです。
では、買掛金とはどのようなことを言うのでしょうか。
買掛金は、取引先における売掛金を自社に適用したもの、つまり支払いの先送りを認めてもらう形で購入することです。
仕入れた代金のうち、まだ支払っていないお金のことを買掛金といい、決算書の中でも「買掛金」という項目が設けられているはずです。
多くの会社で、日常的に買掛金が発生していることでしょう。

掛け取引では、現金で取引する必要がありません。
現金取引しかないとすれば、多くの現金を持ち歩き、領収書なども商品代金の受け渡しごとに発行する必要があります。
多額の現金を持ち歩くのは危険ですし、領収書の発行などの事務作業も軽減されます。
したがって、売り手は相手がきちんと支払ってくれることを信頼して、あるいは買い手は自分がきちんと支払うことを信頼してもらって、掛け取引が行われます。
このように、信用を担保とした取引であるため、信用取引とも言われます。
これがもたらすメリットは、在庫資金や仕入れ資金の支払いを先送りできることです。
支払いを先送りできれば、現時点で会社に留保される現金が減りにくくなるわけですから、それだけ資金繰りは楽になります。
しかし、やがては支払う必要があるものですから、例えば1ヶ月先払いの取引が継続されれば、1ヶ月後からは毎月支払が発生し、資金繰りがラクになることはありません。
また、支払いが先延ばしになっている取引先が増えると、資金繰りが複雑になるというデメリットもあります。
【ポイント】
- ×掛け取引の性質を理解していない。
- ◎掛け取引の性質や、メリット・デメリットを理解している。
運転資金の計算方法を知っている?
仕入れ代金を買掛で取引することができれば、その支払いまでに資金の必要はなくなると勘違いしている人もいるのですが、そんなことはありません。
このことは、開業1ヶ月目を考えると良くわかります。
自己資金がそれなりにあって、在庫を自己資金で確保するとすれば、1ヶ月目は仕入れに伴う支払いがなくなります。
このほか、1ヶ月目に支払う人件費と経費が必要となりますから、これも手持ち資金で準備できたとすれば、1ヶ月目の資金繰りは全て自己資金だけで成り立ったことになります。
これに加えて、仕入れはツケで売り上げが現金販売ということであれば、1ヶ月後には1ヶ月分の売上が現金として残り、それを仕入れに回せばいいため、2ヶ月目以降も資金繰りの心配はなくなります。
しかし、世の中の多くの商売は売掛取引をしていますから、翌月以降に入金となることでしょう。

運転資金にありがちな間違い
運転資金を考える時、間違いたくないのが計算にとらわれすぎることです。 一般的な運転資金の計算式は、売掛金+在庫-買掛金=運転資金ですが、これは必ずしも正しいとは言えません。
というのも、実際に計算式に当てはめてみればわかるのですが、現金商売で(売掛金がゼロ)、在庫を持たない商売をしており(在庫がゼロ)、仕入れも掛買いにしない(買掛金ゼロ)商売があったとすれば、この計算式の答えはゼロとなり、運転資金は全く必要ないということになります。
しかし実際には、全く運転資金がゼロで成り立つ商売などないでしょう。
さらに、現金商売で、在庫を持たず、買掛金があるというケースも考えられますが、その場合には運転資金がマイナスという、何ともおかしなこととなってしまいます。
このように、運転資金に関する計算式にとらわれ過ぎていると、現実離れした回答を得てしまい、資金繰りにずれが生じてしまう可能性があるので、注意が必要です。
そうならないためには、必要となる運転資金の性質をよく考え、計算式を鵜呑みにしないようにしなければなりません。
【ポイント】
- ×常に「運転資金=売掛金+在庫-買掛金」に当てはめれば大丈夫だと考えている。
- ◎自社の資金繰りにおける運転資金の性質を考えた上で、必要に応じて計算式を利用している。

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本当のサイトを理解している?
よく、掛け取引の期間を指して「1ヶ月サイト」などと言います。
特に、売掛金が入って来るまでの期間を「回収サイト」、買掛金を支払うまでの期間を「支払いサイト」と言います。
しかし、1ヶ月サイトだからと言って、1ヶ月で入金や支払いがあると思い込んでしまってはいけません。
例えば、5月1日に1ヶ月サイトで支払った商品が、月末締め翌月末払いであった場合には、実質的には2ヶ月間は入金がないことになります。
この場合にも、人件費や経費は同じようにかかるため、2ヶ月分の現金を持っていないと支払いが不可能になってしまいます。
さらに言うならば、支払いが期待される約2ヶ月後に、取引先の理由で入金がされないとなれば、その日に控えている買掛金の支払いなどができなくなってしまいます。
このような事態を防ぐために、取引先と交渉して、翌月末払いから翌々月10日払いなどに変更してもらう会社も多々見られますが、そのようなことをしていると資金繰りはどんどん複雑化していきます。

だからこそ、支払いがショートしそうな場合には、資金繰り予定によって数か月前に把握しておき、事前に銀行などから資金調達を検討するのです。
回収・支払サイトをちょこまかと操作して資金繰りを複雑化させるよりは、金融機関との上手な付き合い方を考えたほうがよほど賢明なのです。
【ポイント】
- ×「1ヶ月サイト」などの名称に捉われ、実質的な回収・支払いまでの期間を把握していない。
- ◎実質的な回収・支払いサイトを把握し、必要に応じて資金調達を図る。
とにかく売上をあげればいい?
資金繰りが厳しくなったとき、「とにかく売上をのばせ!」と従業員にはっぱをかける経営者がいます。
確かに、売上が伸びれば利益も増えますから、この考え方は必ずしも間違いではありません。
しかし、ここまで読んだ人にはもうおわかりでしょう。
- 売上を伸ばすということは取り扱う商品も増えるということであり、
- 取り扱う商品が増えるということは、それに仕入れの支払いやその他の経費が増えるということであり、
- 仕入れの支払いやその他の経費が増えるということは、資金が足りなくなるということである。
つまり、売上を伸ばすそうとすれば、資金が足りなくなるということであるという三段論法が成り立つわけです。
売上を伸ばすのが良いことですが、それに伴って仕入が増え、人件費や経費も増えていきます。
売り上げが増えた分だけ資金需要も増えていき、やがて資金が足りなくなるのです。
足りない資金を賄うためには、増加分の運転資金が追加で必要となります。

したがって、大口の取引先などと契約が成立した際には、「これで売上が伸びる!利益も増えて資金繰りがラクになる!」と喜びたいところですが、運転資金の増加に耐えるための資金調達が必要となります。
できれば事前に、「大口の取引先と契約が成立し、販売が一気に増えそうなので、増加運転資金の融資をお願いします」と金融機関にお願いしに行った方が良いでしょう。
【ポイント】
- ×売上さえ伸びれば資金繰りがラクになる。
- ◎売上が伸びれば資金繰りは厳しくなるので、増加分の運転資金を調達する必要がある。
減価償却を正しく理解している?
上記のように、大口の取引先との契約などによって、大きく売上が伸びる業種もあります。
一方で、売上を伸ばすためには新規店舗を開業したり、工場を広くしたり、機械を新たに導入したりする必要がある場合もあります。
その場合には、売上を伸ばすのに先立つ仕入れよりも、さらに先立って、設備投資が必要となります。
これは、多くの業態で共通しているでしょう。
- 事務所を借りたり
- 事務所のパソコンやデスクなどを購入したり
- レストラン用の店舗を借りてキッチンを導入したり
- 看板や内装を整えたり
色々なところで設備投資が必要となってきます。
また、店舗を借りる際には敷金や保証金なども必要となりますが、これも設備投資に含まれます。
すなわち、「事業を始めるのに先立って必要となる一切の資金」を設備資金というのです。
これらの費用は、損益計算書には記載されていません。
つまり、売上高から差し引かれることもありません。
事業の途中で導入される設備についても、売上から差し引いて計算することはなく、あくまでも固定資産として、税務上の法定耐用年数に基づいて減価償却していきます。
具体的には、耐用年数で設備投資にかかった費用を年々減らしていき、この費用を減価償却費と言います。
例えば、機械を新たに導入するにあたり、1000万円の費用をかけ、その耐用年数が10年であったならば、1000万円を10年かけて、つまり年間100万円ずつ減価償却費として計上し、売上から差し引いていきます。
実際にはお金が出て行っていないにもかかわらず、計算上では差し引くことができるのです。

それは、設備投資には通常高額の費用がかかるものですが、その費用の全てを減価償却できるわけではないということです。
ならば、設備投資のうちどのような場合に減価償却できないのかというと、
「買ったものや支払ったものが、年数の経過によって減らない場合(いずれお金として戻ってくる場合)」です。
分かりやすい例が、敷金と保証金です。
オフィスを借りるにあたって、敷金や保証金を支払いますが、これらは契約を解除すれば基本的に全額が戻ってきます。
したがって、設備資金の一種でありながら、減価償却することはできません。
このほか、土地は減価償却の対象になりません。
マンションなどを購入した場合にも、購入価格には土地相当分の価格が含まれており、これは減価償却できないので注意が必要です。
なぜ注意が必要かというと、設備投資をする際には自己資金ではなく、融資などを受けて行なうことがほとんどだからです。
もちろん返済の必要があるわけですが、返済はそれらの設備を運用した利益の中から返していくのが理想です。

法人税を差し引いた利益が税引き後利益であり、実際にはお金が出て行かない減価償却費と合算したものを償却前税引き後利益と言います。
減価償却できない設備投資をする場合には、それを運用することによって得られる利益から法人税を差し引いた時、残った利益で返済できるかどうかを知る必要があります。
例えば、300万円を借りてテナントの保証金とし、5年で返済するとします。
この場合、毎年60万円の返済が必要となります。 法人税率を40%とすると、
利益—利益×0.4=60万円⇒利益=100万円
となり、借入の返済に60万円必要ということは、税引き前利益で100万円の利益が必要という計算になります。
減価償却を考えるにあたっては、このような具体的な計算もできるようになっておくと便利です。
【ポイント】
- ×減価償却について理解していない。
- ◎減価償却できるもの・できないものを含め、きちんと理解している。

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まとめ
本稿では、間違いやすい知識、曖昧に理解しやすい知識、都合よく解釈しがちな知識などについて解説していきました。
本稿を読んで、ご自分に当てはまる項目があったならば、ぜひこれを機に考え方を変えてみてください。
間違った考え方は会社を悪い方へと導きますが、正しい考え方は良い方へと導きます。
是非、当サイトで色々な知識を身に着け、会社を良い方向へと導いてほしいと思います。