売掛金が支払い遅延や回収不能となったとき、掛売した企業は被害を受けることになります。
貸倒れを減らすためには、常に取引先に気を配って信用不安情報を集め、経営難の兆候をいち早くキャッチし、適切に対応していくことが求められます。
本稿では、信用不安情報の集め方と対応策を解説していきます。
信用不安情報とは
どのような会社でも、取引が全て現金で行われるということはほとんどなく、掛売での取引をしながら販売していくものです。
つまり、どのような企業でも流動資産を見れば売掛金がいくらかあるものであり、業種によって売掛金の比率が少ないこともあれば、高いこともあります。
売掛金とは、企業が取引先に商品やサービスを販売した際、その場では支払われずに数ヶ月後に支払われるものです。
この場合、商品やサービスを売っただけでは会社に利益はもたらされず、売掛金をきちんと回収して初めて利益も出てきます。



資金力に乏しい中小企業においては、支払い遅延や回収不能は財政を圧迫するものです。期日通りの回収を予定して事業計画を立てていた場合には、それにも狂いが生じます。
もし取引額の大きい取引先が倒産した場合には、連鎖倒産という事にもなりかねません。
信用調査をどれだけ徹底しても、抵抗することができない類のことで取引先が経営難に陥ることもあるため、支払い遅延や倒産をゼロにすることはできません。
できるだけ少なくするために信用調査をすることは大切なことですが、それに加えて取引先の経営難をいち早く察知して、早めの対応をするのが賢明です。
初期の段階でそれができれば、売掛金をまとめてファクタリングで買い取ってもらったり、その後の取引での保証を受けたりして、貸倒れを防ぐことも可能となります。
そのためには、信用不安情報を収集することが必要となります。


例えば、「A社が不渡りを出したらしい」「B社は決算を粉飾しているらしい」「C社は融通手形を切っているらしい」「D社を支えていたEさんが辞めたらしい」などといった情報がそれに当たります。
信用不安情報を知る際に重要となるのは、その情報の出所と背景を確認して裏付けが取れた場合に限ってのみ、取引方針の見直し、取引の停止などを判断していくことです。
むやみに取引停止などを言い渡せば、取引先との関係がこじれることは十分にあり得るため、情報を鵜呑みにして間違った判断をするのは避けたいものです。


信用不安情報が入ってくるルートや、情報を交換するルートを常に確保しておくことは、貸倒れを防ぐために大いに役立つことです。
本稿では、経営に悪影響をもたらす売掛金の貸倒れを防ぐため、信用不安情報の収集方法をまとめていこうと思います。

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さまざまな種類の信用不安情報
信用不安情報には、さまざまな種類の情報があります。
その情報が意味するものを正確に知ることで、情報を正しく利用することが可能となります。
以下のような情報に注目しておきましょう。
ヒトに関する情報
この情報は、カリスマ的存在だった経営者の急死、役員・経営幹部の退社、内紛、社員大量退社、株主構成の変化、企業批判の増加などの情報です。
これは大企業でも中小企業でもよく言われることで、最近ではセブン・アンド・アイ・ホールディングスの内紛などのようなことです。


そのため、人事面の混乱に関する情報があった場合には、それが経営戦略の迷走に繋がる可能性があるとして注意しておくべきです。
このほか、経営の実権を持つ人間の問題(放漫経営など)に関する情報や資金面での公私混同、派手な出費などは経営や資金繰りに大きな悪影響をもたらす可能性があるため、そのような情報があれば信用調査を強化した方が良いでしょう。
モノや取引に関する情報
この情報は、クレームの発生、大量返品の発生、大口取引の停止、契約打ち切り、ダンピング(不当廉売)、提携解消、予定していた提携の中止、多重リース契約などの情報です。
大幅な販売不振が起こると、資金繰りに大きな影響を与えます。
例えば、その企業の主要商品にクレームが起きたり、不振が広範囲に拡大した場合などがそうであり、最近では三菱自動車の不正問題が良い例です。


取引面の兆候としては、不当廉売(採算を顧みないような安価での販売)をしているという情報があります。
これは、資金繰りに困った会社が、とにかくつなぎ資金を得るために販売しているという末期症状である可能性も高いため、価格の根拠をしっかりと調べた方が良いでしょう。

これは、信用力が低くなってしまった企業が、他社から普通の条件では売ってもらえなくなり、悪い条件で仕入れている可能性があるからです。
このように、取引条件で信用力低下の兆候がみられる企業は、採算がとれる水準での取引ができないため、早急に信用力を回復できなければ倒産になることでしょう。
貸倒れに関する情報

取引先がそのような被害に見舞われていたならば、取引先の余裕資金はどれくらいあるのか、担保となる資産の資産価値はどれくらいかなどの情報から資金調達能力を計り、その貸倒れがどの程度影響するかを推測しなければなりません。
また、貸倒れが多発している場合には、信用力が低下してまともな企業と取引ができなくなっており、信用力の低い相手とも取引を繰り返した結果、貸倒れが多発しているとも考えられます。

取引先が破産すると、短期的には資金繰りや業績に影響が出るものであり、長期的には収益力の弱体化につながるため、厳しく調査する必要があります。
資金繰りへの影響を考慮する際の目安としては、貸倒れ金額が取引先の月商の3割以上である場合には、特に注意が必要となります。
もし月商以上の貸倒れが起きているならば、緊急度が高い状態であり、すぐに調査が必要です。
民事再生手続きや会社更生手続きといった再生型の倒産手続きとなったならば、販売先の事業は継続されるため、取引が打ち切りにならないならば影響は少ないと考えてよいでしょう。
倒産後の取引では、回収サイトが短縮されたり、利益率が上がったりすることも多いため、取引の利益で損失を補填することもできます。
しかし安心するのではなく、プラスにしろマイナスにしろどのような影響が出ているのかを詳しく対処すべきです。


業績に関する情報
この情報は、売上低下、債務超過、借入過多、粉飾の噂、継続企業の前提注記、監査法人の変更、財務制限条項への抵触などの情報です。
主要商品の需要が低下するなどして売上が低下したり、何らかの大幅な損失計上があったり、連続赤字決算などによって債務超過になったりすることがあります。
特に資金力に乏しいベンチャー企業などでは、取引基盤が安定していないため、ひとたび収益が悪化すると急速に行き詰ることが多いものです。

業績悪化の理由によっても銀行の対応は変わってきますが、概ね厳しい判断が下される可能性が高いと言えます。
もし業績が悪化した企業が、資金繰りのために商工ローンから借入をしたなどの情報があれば、後々商工ローンの高い金利が悪影響を及ぼす可能性が高いため、かなりの注意が必要です。

権利に関する情報


差し押さえや競売が始まるということは、決済の遅延や税金の滞納などが原因であることが多いため、資金繰りがうまくいっていないことが良く表れています。

不動産や売掛債権、在庫などへの担保設定は、不動産登記簿謄本や商業登記簿謄本で確認が可能です。
担保設定の解釈はそれぞれの場合で異なり、例えば売掛債権担保融資を利用することによって事業拡大のための資金を調達するというような前向きなものであれば問題ありませんが、資金繰りに困って最終手段として実行されることもあるため、どのような性質のものなのかを調べる必要があります。
担保設定の登記を行った直後に倒産した場合、ほかの債権者から詐害行為として訴えられる可能性も出てくるため、金融機関が登記後に即座に倒産させるということは考えられにくいものです。


例えば、キャッシュフロー経営を目指して、逐一売掛金を現金化するシステムの構築のために、ファクタリング会社と長期契約を結んで売掛債権譲渡を行なっているなどの理由であれば、健全な理由です。
債権譲渡に伴って抵当権移転登記が行われている場合には、新たな債権者が誰であるか、支援方針はどうかなどを確認しましょう。
金融機関が債権譲渡を行なっている場合には、金融機関が取引から撤退していることの証拠になるため、警戒心を強めなければなりません。
手形・資金調達に関する情報
この情報は、手形割止め、市中手形出回り、高利資金導入などの情報です。
手形割止めとは、手形割引業者が持ち込まれた手形の割引を拒否することです。
融通手形である疑いや、振出人の信用不安、金額が大きいこと、持ち込んだ人の信用がない、他の業者からの照会が多い、手形裏書人が不明、振出人の企業内容が不明など、拒否の理由は色々考えられますが、手形割引が拒否されることがあります。
必ずしも振出人の信用不安が原因とは言えませんが、手形を割り引くことを生業としている手形割引業者が割引を拒否した手形であることは普通ではなく、その手形を振り出した当該企業には信用不安の可能性があると考えた方が良いでしょう。
手形割引業者の間では、定期的に割止めの振出人や金額、その理由などの情報を交換しており、割止めリストとして出回ります。
そのため、取引先の割止め情報を入手した場合には、噂の出所と背景を確認し、裏付けが取れた場合には対応を練る必要があります。

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事件・事故に関する情報


その不祥事や事件そのものが倒産に結び付くかどうかを判断するためには、業績、余裕資金、事件の影響、報道の規模などから総合的に判断しなければなりません。
架空取引や融通手形取引などは、一旦手を染めてしまうとなかなか手を引くことができないものです。
特に融通手形取引は、資金繰りに窮している企業にとっては簡単に資金調達できる手段です。
一般的に、融通手形には取引先を支援する目的で振り出されるもの(支援手形や貸し手形という)と、資金繰りに詰まった企業同士が互いに振り出しあうものがあります。
前者の場合でも、次第に深みにはまって自社の経営が破たんしてしまうことがあるため、支援目的の融通手形も非常に危険なものと言えます。

行政処分とは、許認可業種で重大な違反行為が発覚した場合に、担当省庁や自治体から処分されることです。
例えば、貸金業者が法定金利を守っていないことから営業停止になる、飲食業者が衛生管理の不備から営業停止になる、建設業者が工事内容の偽装によって官公庁からの指名停止を受けるなどがそれに当たります。
最近では東亜建設の空港工事の偽装問題が騒がれましたが、それが良い例です。
業績に甚大な影響をもたらすことが少なくないため、取引先に許認可業があれば注意を払っておくことが好ましいものです。
支払いに関する情報
この情報は、給与遅配、支払い遅延、手形ジャンプ要請、銀行借入返済の延滞、店舗家賃滞納などの情報です。
これらの支払いに関する情報は、取引先の資金不足から生じるものであり、倒産に直結する情報であることから緊急度が最も高い情報と言えます。
仕入先や外注先に対して、決済システムの変更などという納得できる理由がないにもかかわらず、支払い条件の変更を要請している場合には、要注意と考えられます。


不渡り手形情報にも注意が必要です。これは、手形の支払期日に決済ができなかったことを示しています。
1回の不渡りならば直接倒産とはなりませんが、6か月以内に2回の不渡りを出すと手形交換所取引停止処分となり、それ以降は銀行を介した決済がすべて不可能となり、実質的に倒産扱いとなります。
1回目の不渡り発生から2週間~1ヶ月が最も倒産しやすい時期とされており、手形の不渡り情報は数ある信用不安情報の中でも最も倒産に近い情報と考えてよいでしょう。
手形ジャンプ情報とは、手形の支払期日に決済不能であるため、取引先に相談して再度手形を振り出し直し、決済期日を延長してもらう事です。
これは支払い遅延と同じことであり、資金繰りに行き詰っていると考えることができ、これも倒産に近い不安情報と考えることができます。
関係会社の経営悪化に関する情報

グループ企業では、結局は財布がひとつということも多いため、グループ内のある企業で資金繰りが破たんした場合には、グループが総倒れになったり、一つの企業の破たんが大きく影響することが多いものです。
関係会社に不安な兆候が見られた場合には、取引先そのものにも危険が及ぶ可能性が高いと考えて、注意を払っておかなければなりません。

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信用情報に不安があればファクタリングの検討を
さて、取引先の信用不安情報には色々な情報があり、単に注意を払っておくべき情報、警戒心を強めるべき情報、緊急に対応すべき情報など、色々な情報があることが分かったと思います。
では、信用不安情報をキャッチした場合にはどうすればよいのでしょうか。
売掛債権は支払期日を約束しているものですから、信用不安情報をキャッチしたからと言って支払いの前倒しを要請することはできません。
下手にそのようなことをしてしまえば、取引先が実際にはそれほど危なくなかった場合に、取引先との関係がこじれてしまいます。



ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却することによって現金化する方法です。
ファクタリングの際には手数料を支払う必要があり、信用不安情報がある取引先の売掛債権を売却する場合、手数料が高くなる傾向があります。
また、ファクタリング会社のリスクヘッジの観点から、信用不安がある取引先の売掛債権を個別に売却するのではなく、他の売掛債権もまとめて一括でファクタリングをすることを求められることもあります。

ファクタリングの手数料は安くはありません。しかし、売掛債権の支払サイトを大幅に短縮できるのが大きな魅力です。
信用不安情報の内容によっては、取引先が数ヶ月後を支払期日としている場合、その期日まで取引先が続くかどうかさえ分からないものです。
そのような時、高めの手数料を支払っても早期に現金化するのが賢明な対応です。

このほか、ファクタリング会社は買い取り業務を主要業務としているものの、それに付帯する業務として取引先への信用調査、売掛金管理、記帳事務代行、コンサルティングなど色々なサービスを提供してくれるため、そのメリットも大きいと言えます。
そのため、信用不安情報を掴み、裏付けも取れた場合には、ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらい、それに付帯する業務の恩恵も享受するのが最も良い方法であると言えます。

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常時ファクタリング会社と契約も有効
とはいえ、会社によっては、信用不安情報を掴んでからファクタリングという行為が不可能であることもあります。
それは、企業の経営資源が乏しいために、信用不安情報の収集とその情報を掴んだ際の信用調査に経営資源を割くことができない場合です。
そのような場合には、信用不安情報の集め方を知っていたとしても、それを活かすことはできません。
そのような場合にも、ファクタリング会社との契約が有効となります。

保証ファクタリングとは、ファクタリング会社と保証契約を結ぶことで、もし取引先が支払い不能となった時には、保証限度額の範囲内で保証を受けることができるというものです。
つまり、経営資源が乏しく、信用不安情報の収集と信用調査が難しい企業は、ファクタリング会社と保証ファクタリングを結んでおくことによって、信用不安情報の収集も、信用調査も行うことなく、安心して取引を続けることができるのです。

また、ファクタリング会社との契約は、現在保有している売掛債権に対するものだけではなく、契約内容によっては将来にわたる売掛債権に対しても契約が可能です。
すなわち、買取ファクタリングならば将来発生する売掛債権も随時買い取ってもらって現金化する、保証ファクタリングならば将来発生する売掛債権にも保証を付けていくというものです。

信用不安情報の収集や信用調査に経営資源を割けない企業は、支払い遅延や回収不能に見舞われる頻度が高くなるため、それに資金繰りを悩まされることも多くなります。
貸倒れによって甚大な被害を受ける前に、ファクタリングの導入を検討し、堅実な経営体制を整えていくことが大切です。
