企業が経営改善を図るためには、いろいろな問題を解消していく必要があるでしょう。
そのためには、自社の経営を様々な角度から分析していかなければなりません。

本稿では、分析によって得られる指標を紹介し、そのうちで改善できるものを探し、売掛債権の処理によって得られる効果を検討していきます。
財務分析とは
企業の体力の要素となるものにはいろいろありますが、その中でもやはり財務状況は非常に重要な要素であるといえます。
財務状況を知るためには決算書を見ることになりますが、決算書の中のいろいろな数字に対して分析を行っていくと「企業の収益構造・強み・問題点」などがわかります。
他社と取引を始めるにあたって、決算書を元に分析を行うことで、与信管理に役立てることができます。
もちろん、自社に対しても財務分析は有効であり、問題点を把握して経営改善に役立てることができます。

会社の現在までの推移、業界ごとの違いなどを加味することはもちろんですが、そのためには数期分の決算書を分析することが必要です。
また、同業他社の分析結果と比較すれば、より多面的な分析が可能となるでしょう。
一口に財務分析といってもいろいろな分析があります。
- 流動性分析
- 安全性分析
- 付加価値分析
- 収益性分析
これらがそれに当たりますが、本稿では流動性分析を取り上げます。
安全性分析、付加価値分析、収益性分析も現状把握のために役立つのですが、流動性分析は「現状の把握と同時に、本稿で取り上げる売掛債権による改善が可能な部分が見つかる」ことが多いからです。

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流動性分析の諸要素
流動性分析は、下記のことを見ていくことになります。
- 預借率
- 売掛債権回転期間
- 棚卸資産回転期間
- 流動比率・当座比率
- 買掛債務回転期間

預借率
預借率とは、金融機関にどれくらいの預金があり、それに対して借入金はどのくらいであるかを示すものです。
預借率は、「預借率(%)=現預金÷借入金総額×100」で計算します。
一般的に、預借率が低いのは好ましくない状態です。
なぜならば、現在保有している現預金で借入金を完済できないということであり、流動性が低いといえるからです。
実際、預借率と倒産確率の相関関係を見てみると「預借率が高ければ倒産しにくく、預借率が低ければ倒産しやすい」という有意な差が、以下のように現れています。
預借率 | 10%未満 | 10%以上30%未満 | 30%以上50%未満 | 50%以上80%未満 | 80%以上 | 全体 |
倒産確率 | 1.96% | 1.03% | 0.60% | 0.42% | 0.32% | 0.92% |
このデータと預借率の計算式から「企業が保有している現預金が大きくなる、あるいは借入金総額が小さくなることによって預借率が小さくなれば、企業の財務状態は良い状態になる」ことがわかります。
売掛債権回転期間
売掛債権回転期間とは、売掛先に商品を納品し、その代金を回収するまでにどれくらいの期間を要しているかを示すものです。

売掛債権の回収に時間がかかってしまうと、自社が資金として活用できる時期が遅れるということですから、資金繰りは厳しくなります。
また、売掛債権管理のための負担も大きくなります。そのため、売掛債権回転期間はできるだけ短いほうが良いといえます。
売掛債権回転期間が短くなるということは、その企業が
- 回収管理を改善している
- 取引の際に回転期間が短くなるように交渉努力をしている
といえますから、プラス材料となります。
逆に長期化しているということは、
- 回収管理がうまく行かない
- 不良債権が多数発生している
- 回収条件が悪化している
などが考えられるため、マイナス材料となります。
売掛債権回転期間を計算するためには、「売掛債権回転期間(ヶ月)=売掛債権÷月商」となります。

全業種を対象として、売掛債権回転期間と倒産確率の相関関係を調べたデータを見ました。
「売掛債権回転期間が短い企業は倒産確率が低く、逆に売掛債権回転期間が長い企業は倒産確率が高くなる」ことがわかっています。
そのデータは以下のとおりです。
売掛債権回転期間 | 2ヶ月未満 | 2ヶ月以上3ヶ月未満 | 3ヶ月以上4ヶ月未満 | 4ヶ月以上6ヶ月未満 | 6ヶ月以上 | 全体 |
倒産確率 | 0.66% | 0.91% | 1.10% | 1.27% | 2.59% | 0.80% |
このデータと売掛債権回転期間の計算式から「企業が保有する売掛債権額が小さくなる、あるいは月商は大きくなることによって売掛債権回転期間が短くなれば、企業の財務状態は良い状態となり、倒産確率も小さくなる」ことがわかります。
棚卸資産回転期間
棚卸資産回転期間とは、棚卸資産(販売のために確保している商品や製品)が仕入れから販売までの間、在庫として何ヶ月分保有しているかを示すものです。
在庫をうまく捌いていくのは、経営において非常に大切なことであり、短期間で販売したほうが好ましいことは言うまでもありません。
しかし、短期間で販売するためとはいえ、在庫が少なすぎる状態であれば、品切れを起こして販売機会の損失につながることもあります。

棚卸資産回転期間を計算するためには、「棚卸資産回転期間(ヶ月)=棚卸資産÷月商」となります。
棚卸資産回転期間が短く、さらに業績が順調であれば、
- 販売促進によって在庫の圧縮ができている
- 在庫管理が効率化されている
などのプラス材料と考えられます。
逆に、棚卸資産回転期間が長くなっている場合には、
- 在庫を過剰に抱えている
- 不良在庫を抱えている
などのマイナス材料となります。

これも、売掛債権回転期間と同様に調べたデータがあるのですが、棚卸資産回転期間が短ければ倒産しにくく、長ければ倒産しやすいという結果となっています。
そのデータは、以下のとおりです。
棚卸資産回転期間 | 1ヶ月未満 | 1ヶ月以上2ヶ月未満 | 2ヶ月以上3ヶ月未満 | 3ヶ月以上5ヶ月未満 | 5ヶ月以上 | 全体 |
倒産確率 | 0.63% | 0.91% | 1.36% | 1.68% | 2.07% | 0.80% |
このデータと棚卸資産回転期間の計算式から、企業が保有する棚卸資産を小さくなる、あるいは月商が大きくなることによって棚卸資産回転期間が短くなれば、企業の財務状況は改善されます。
流動比率・当座比率
流動比率と当座比率は、企業の短期的な支払い能力を示すものです。
流動資産とは1年以内に現金化できる資産のことであり、当座資産とは流動資産のなかでもより現金化しやすい資産、多くは現金・売掛債権・有価証券の総額です。
また、1年以内に支払わなくてはならない負債を流動負債といいます。
流動比率とは、流動資産と流動負債の比率であり、当座比率とは当座資産と流動負債の比率のことです。
それぞれの計算式は、
- 流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
- 当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
となります。
流動比率は、短期的に支払いの必要がある負債に対応するために、すばやく現金化できる資産をどれくらい持っているかを示しています。
そのため、少なくとも100%を超えていることが必要とされています。
当座資産は、流動資産よりも現金化しやすい当座資産を用いるわけですから、負債と同等を有していれば支払い能力はかなり高いといえます。
当座資産が流動資産を超えるということはほぼありえないことですから、流動資産を中心に考え、当座資産は補完的な指標と考えて良いでしょう。
流動比率と倒産確率の相関関係を見たときにも、有意なデータが得られています。
流動比率が低い企業は倒産確率が高く、流動比率が高い企業は倒産確率が低くなるのです。
そのデータは以下のとおりです。
流動比率 | 50%未満 | 50%以上70%未満 | 70%以上90%未満 | 90%以上120%未満 | 120%以上 | 全体 |
倒産確率 | 1.57% | 1.20% | 1.13% | 1.00% | 0.68% | 0.93% |
このデータと流動比率の計算式から、流動資産が大きくなる、あるいは流動負債が小さくなることによって流動比率が高まれば、財務状況は改善され、倒産確率が低くなることが分かります。
買掛債務回転期間
買掛債務回転期間は、原材料や商品を仕入れる時に掛け買いを行い、買掛債務が発生したとき、支払いまでにどれくらいの猶予があるかということを示すものです。
つまり、仕入れに対する決済が問題なく行われているかどうかを示しています。
買掛債務回転期間が長ければ、それだけ運転資金の確保につながるわけですから、支払条件が自社にとって有利なものになっているということが考えられます。
もっとも、資金繰り困難によって、やむを得ず支払期間を延長している場合には、好ましくないことは言うまでもありません。
逆に、買掛債務回転期間が短期化している場合には、
- 手元資金に余力があり
- 買掛債務を圧縮している状況
であれば、プラス材料となります。しかし信用力が低下したことによって、取引先から短縮を求められている場合には、マイナス材料であるといえます。
買掛債務回転期間はどれくらいが適正であるかということは、業種によって大きく異なるため、一概にいうことはできません。
買掛債務回転期間の計算式は「買掛債務回転期間(ヶ月)=買掛債務÷月商」となります。

買掛債務回転期間が短いほど倒産確率が低く、長いほど倒産確率が高いのです。
そのデータは以下の通りです。
買掛債務回転期間 | 2ヶ月未満 | 2ヶ月以上3ヶ月未満 | 3ヶ月以上4カ月未満 | 4ヶ月以上5ヶ月未満 | 5ヶ月以上 | 全体 |
倒産確率 | 0.68% | 1.26% | 1.47% | 1.69% | 2.57% | 0.76% |
このデータと計算式から、買掛債務が小さくなる、あるいは月商が大きくなることによって、買掛債務回転期間が小さくなれば、財務状況は改善するといえます。

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改善の余地はどこにある?
では、流動性分析によって上記の諸項目を把握した結果、どこを改善できるのかを考えていきましょう。
預借率の改善→×

預借率の計算式は、「預借率(%)=現預金÷借入金総額×100」でした。
預借率が大きくなればなるほど経営改善につながります。そのためには「現預金を大きくするか、借入金総額を小さくする」ことが考えられます。
しかし、現金は降ってわいてくるものではありませんから、いきなり現預金を増やしたり、いきなり返済によって借入金を減らすことは不可能です。
したがって、預借率を向上させるためには、長期的な取り組みが必要となります。

売掛債権回転期間→◎
次に、売掛債権回転期間についてみていきましょう。
売掛債権回転期間の計算式は、「売掛債権回転期間(ヶ月)=売掛債権÷月商」でした。
売掛債権回転期間は短いほど経営改善となることから「売掛債権を小さくするか、月商を大きくする」ことが考えられます。
月商を大きくすることは一朝一夕には不可能ですから、可能となるのは売掛債権を小さくすることです。

営業部門に売掛債権管理に関する教育を施し、無理な営業を行わないようにすれば、売掛債権額は圧縮されることでしょう。
また、信用調査を徹底すれば、支払能力の低い取引先に対する販売は減ります。
売掛債権のうち不良債権の比率も低く抑えることができますから、これも売掛債権を圧縮するのに役立ちます。
このほか、売掛債権回収マニュアルを作成し、全社的な取り組みを行うことで、回収が円滑に進んで回収遅延の売掛債権が減ります。
売掛債権額は圧縮され、売掛債権回転期間も短くなります。
しかし、これも時間をかけて改革に取り組むべき問題です。
これらの問題を抱えていない企業が、それ以上に売掛債権回転期間を短くしたいと考えた場合には、別の方法を利用するほかありません。

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することによって、資金調達を行う方法です。
単純に考えて、企業が保有する売掛債権の3分の1を売却してしまえば、売掛債権回転期間も3分の1になります。
売掛債権の半分を売却すれば、売掛債権回転期間も半分に短くなります。
したがって、売掛債権回転期間を短くするにあたっては、ファクタリングの活用が大変有効であるといえます。
ファクタリングは、売掛債権を保有している企業ならばほぼ問題なく利用できます。そのため、どのような企業でもすぐに売掛債権回転期間を改善することができます。
棚卸資産回転期間→×
棚卸資産回転期間の改善を考えてみましょう。
その計算式は「棚卸資産回転期間(ヶ月)=棚卸資産÷月商」でした。
この計算式から、棚卸資産回転期間を改善するためには「棚卸資産を少なくするか、月商を大きくするか」しかありません。

棚卸資産のうち「過剰在庫・不良在庫」などが見られる場合には、それらを売却・処分することによって棚卸資産回転期間は改善されるでしょう。
しかし、これらの売却・処分といっても、すぐに買い手が見つかるとは考えにくく、売却や処分のためのコストも負担しなければなりません。
それらの負担をして棚卸資産回転期間を改善し、大きな経営改善につながるかどうかということは、判断しにくいものです。
したがって、棚卸資産を調整するにあたっては、ある程度時間をかけ、試行錯誤しながらの改善が必要となってくるものです。そのため、即座に改善できる問題とは言い難いものです。
流動比率→×
流動比率の計算式は、「流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100」でした。
したがって、流動比率を改善するためには「流動資産を増やすか、流動負債を減らすか」になるのです。
これも預借率と同じようなもので、すぐに流動資産を増やす、流動負債を減らすということは不可能です。

買掛債務回転期間→×
最後に、買掛債務回転期間を考えます。買掛債務回転期間の計算式は、「買掛債務回転期間(ヶ月)=買掛債務÷月商」でした。
これを改善するためには「買掛債務を小さくするか、月商を大きくするか」しかありません。

そこで、買掛債務を小さくする必要があるのですが、これは取引先との交渉によって少しでも安く仕入れる、あるいは買掛債務を早期に決済していくことが考えられます。
したがって、買掛債務を小さくするということも長期的に取り組んでいくべきことです。
買掛債務回転期間は短期間で改善できるものではありません。

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売掛債権回転期間を改善する!
上記のことから、流動性分析によって得られる様々な指標のうち、すぐに改善できるのは売掛債権回転期間だけであることが分かりました。
ファクタリングを利用して売掛債権を資金化すれば、売掛債権額は圧縮されて売掛債権回転期間は短くなります。
しかし、ここで一つ注意すべきことがあります。

償還請求権とは、譲受人(ファクタリング会社)が譲渡人(自社)に対して弁済の要求ができる権利のことです。
償還請求権が留保される契約であれば「売掛債権を譲渡して資金化した後、売掛先が倒産するなどして売掛債権の回収が不可能になった時」にファクタリング会社は自社に対して弁済を求めることができるのです。

売掛債権回転期間を短縮するためには、売掛債権額を小さくしなければならないわけです。
しかし償還請求権ありでの契約をしていたならば、万が一の場合には自社が弁済する必要があるため、売掛債権額が減ったとはみなされません。
したがって、売掛債権回転期間も短くなることはありません。
そのため、売掛債権回転期間を短くすることを目的としてファクタリングを利用するならば、必ず償還請求権無しでの取引をしなければなりません。
売掛債権をファクタリングすると、売掛債権回転期間が短くなります。しかし、ファクタリングの効果はそれだけにとどまらず、他の指標にも波及します。
たとえば預借率ですが、預借率の改善のためには現預金を増やすか、借入金を減らす必要がありました。
ファクタリングによって売掛債権が現金化されれば、現預金が増えるため預借率は改善することになります。

ただし、流動比率には若干の悪影響となります。
流動比率の計算式を見ると「流動資産が減るか、流動負債が増えるか」によって悪化することが分かります。
ファクタリングの際には、売掛先の信用力に応じて買取料を支払うことになりますから、買取料の分だけ流動資産は目減りすることになります。
一方で流動負債には何ら変化がありませんから、買取料の分だけ流動比率は悪化することになります。
とはいえ、売掛債権のファクタリングによって、売掛債権回転期間と預借率に与える改善効果は非常に大きいものです。
一方で流動比率に与える悪影響は買取料の分だけという微細なものですから、大した問題にはならないでしょう。
メリットとデメリットを秤にかけると、ファクタリングによって得られる経営改善効果の方がはるかに大きいといえます。

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まとめ
企業の経営改善を図るためには、問題点を洗い出す必要があります。
そのためには、流動性分析が役立ちます。
問題点を洗い出してみると、売掛債権が原因になっていることが多いものです。
また直接的に大きな問題をもたらしていなかったとしても、売掛債権をファクタリングして売掛債権回転期間を短くすることによって、経営改善につながることがあるのです。
皆さんも、ぜひ流動性分析を行い、売掛債権回転期間の改善を検討してみてください。