過剰在庫を抱えて資金繰りが苦しい?運転資金を引き出すポイント

仕入計画の失敗や需要の急激な変動などにより、過剰在庫を抱えてしまうことがあります。

その商品が短期間のうちに販売できるならば、過剰在庫を抱えていても大きな問題はありませんが、実際には資金繰りや業績に悪影響をもたらすケースが非常に多いものです。

このため、銀行は過剰在庫を抱えている会社の融資には、慎重な対応を取るのが普通です。

そこでうまく融資を受けるためには、過剰在庫の問題点と銀行の懸念点を知り、それを踏まえた交渉をすることが大切です。

この融資交渉について、本稿で詳しく見ていきましょう。

棚卸資産と資金繰りの関係

起業の規模にかかわらず、資金繰りは必要不可欠なものであり、それを維持するかどうかによって安定性は大きく左右されます。

簡単に言えば、資金繰りが続く限り会社は倒産せず、資金繰りが続かなければ会社は倒産します。

たとえ赤字でも、資金繰りが続けば経営は可能ですし、たとえ黒字でも、資金繰りが続かなくなれば倒産に至ってしまうんだ。

このことから、資金繰りをうまく回していくことは経営の絶対条件であり、経営者の能力を問われるところでもあります。

しかし、財務基盤が基本的に弱い中小企業では、何らかの影響によって資金繰りを圧迫され、資金繰りが困難になることが少なくありません。

例えば、以下のような理由から、資金繰りを圧迫されることがあります。

  • 売掛金回収にトラブルが起こった(売掛金の回収が遅れた、売掛金が貸し倒れになったなど)
  • 売上増加に伴い、仕入れなどの経費も多く必要となった
  • 売上や利益率が低下し、会社にお金が入ってきにくくなった
  • 業績が赤字に陥り、赤字補填のために財務内容が悪化した
  • 銀行が融資に消極的になり、資金調達が難しくなった

これらは、資金繰りを圧迫する要因としてよくみられるものです。

しかし、このようにパッと思いつく要因の他にも、比較的よくみられる要因として、過剰在庫による資金繰りの悪化があります。

過剰在庫の問題点

過剰在庫は、確かに資金繰りを圧迫するものなのですが、それほど問題視しない経営者も多く、資金繰り悪化の要因としてパッと思いつかない人もいると思います。

なぜ、過剰在庫が軽視されやすいのかと言えば、そこに価値があると思い込むこともできるからです。

価値のあるものだから、たとえ通常より多めに保有しているとしても、それは棚卸資産としてプラスに捉えるのです。

しかし、過剰在庫は多くの問題を抱えていることが多いものです。

それは、以下のような問題です。

売れない可能性が高い

もし、その在庫が商品としての価値を十分に備えているものであり、確実に販売することもでき、全て売りきるまで商品価値を保ち続けるならば、価値があるといってよいでしょう。

しかし、過剰在庫にはそのような価値は見込めないケースがほとんどです。

本当に見込んだ通りの価値があるならば、見込み通りに売れていき、過剰在庫とはならなかったはずだな。

見込んだほどの価値や需要がなかったからこそ、見込み通りに売れずに過剰在庫になっているのですから、たとえ経営者が「これは価値ある棚卸資産だ」と考えていても、それだけの価値はないことがほとんどなのです。

また、過剰在庫は売れなかったからこそ過剰在庫になっているため、それをうまく販売できる見込みも薄いことが多いです。

うまく売れずに在庫として抱え続けることになれば、その間に流行の変化によって需要がさらに低下したり、商品が劣化したりする可能性は高く、そうなればさらに売ることが難しくなります。

会社の資金が固定化する

お金を支払って仕入れたものが、見込み通りに売れないとなれば、会社の資金繰りは圧迫されます。

なぜならば、そもそも「仕入れ」という行為がそういう性質を持っているからです。

「仕入れる」ということは、流動性の高い(いつでも活用できる)現金を、流動性の低い(販売して、売上を回収してはじめて活用できる)在庫に変えることでもあります。

これにより、会社の資金は固定されることとなります。

本来、仕入れという行為は資金繰り的にマイナスになるわ。

しかし、それをしなければ事業は回らないため、必要に迫られて仕入れを行っています。

したがって、必要以上に仕入れることなく、資金の固定化をできるだけ防ぐことが重要であり、過剰在庫は好ましくないものなのです。

処分で赤字が発生する

在庫の状態が長いほど、資金が長期的に固定化されることとなり、資金繰りを圧迫します。

このため、経営者は過剰在庫の処分を考える必要があります。

需要の回復が見込めないならば、売れ残りを大幅に値下げしてでも販売する必要があるでしょう。

利益率から考えても、値下げによって赤字になる可能性は高く、せめて赤字を縮小するくらいしか対策はないわ。

もちろん、需要が回復するかもしれないという希望的観測によって在庫を処分しなければ、資金の固定化期間が長期化して資金繰りにマイナスとなります。

商品価値もどんどん落ちていき、赤字は拡大していきます。

劣化によって価値がなくなれば、値下げしても販売することは難しくなり、廃棄するほかなくなる場合もあります。

これにより、当初よりも損失が拡大することになります。

その他

このほか、過剰在庫を抱えていると、利益の見込みがない商品が倉庫スペースを占領することとなり、管理に伴う経費もかかります。

仕入れを見直して事業の立て直しを図ろうとしても、滞留している商品が障害になり、業務効率を低下させることもあります。

この意味でも、資金繰りにマイナスの効果があります。

以上のような理由から、販売の見込みがない過剰在庫を抱えている会社では、過剰在庫が資金繰りを圧迫している可能性が極めて高いです。

その在庫の早期処分を検討すると同時に、在庫管理も見直す必要があるな。

在庫管理が上手くできていないことで過剰在庫が頻繁に発生しているならば、常に在庫から何らかの圧迫を受けることになるため、改善できれば効果は大きいと思います。

もし、「見込みほど売れずに在庫が余ったけど、そのうち売れるだろう」などと考えているならば、考え方を改める必要があるといえます。

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過剰在庫が銀行交渉に響く

過剰在庫は、資金の固定化や処分によって資金繰りを圧迫するだけではなく、もう一つ厄介な問題を引き起こします。

それは、銀行交渉にマイナスになるということです。

ほとんどの会社は、自己資金だけで資金繰りを回していくことは不可能であり、銀行融資が資金繰りに欠かせません。

このため、過剰在庫が銀行交渉にマイナスになり、資金調達が困難になれば、資金繰りはさらに危険な状態となります。

なぜ、過剰在庫が銀行交渉にマイナスになるのかと言えば、上記のように資金繰りを圧迫するからです。

過剰在庫によって生じる損失が大きければ、会社の利益は減ってしまいます。

せっかく1000万円の利益を出していても、過剰在庫の処分で500万円の損失が出れば、利益は500万円に目減りします。

また、販売が上手くいかずに売れ残りが過剰在庫となっているのですから、利益がそれほど出ていないこともあります。

そのような会社は、事業によって得られた利益では過剰在庫の負担をカバーできず、赤字に陥ってしまうこともあります。

このように、過剰在庫は資金繰りを圧迫するものであり、利益の低下を招くものでもあります。

銀行が融資した時、その返済は利益から行うことが原則です。

銀行は、貸したお金が確実に返ってくるかどうかを最重要視しており、しっかり稼いで、利益から返済できる会社はリスクも低いと考えるからです。

しかし、利益が出ていない会社では、返済原資となる利益が少ない、あるいは全く得られていない状態です。

そのため、返済資金を利益以外のどこかから捻出する必要があり、銀行から借りたお金で返済したり、手元の資産から返済したりすることになります。

このような返済を続ければ、会社の体力は徐々に失われていき、倒産の確率は高まっていき、最終的には貸し倒れになるかもしれません。

たかが過剰在庫くらいで、銀行は敏感になりすぎだと考える経営者もいると思います。

しかし、銀行が融資しているのは預金者のお金であり、貸し倒れによってそれが失われることはできるだけ避ける必要があります。

また、銀行は金融庁の指導により、融資先の会社のリスクに応じて貸倒引当金を積み立てる必要があるな。

この引当金は銀行の収益から積み立てるものであり、事業に活用できる利益を目減りさせることになるため、引当金の増加は経営効率の悪化を招きます。

以上のような理由から、過剰在庫を抱えており、資金繰りを圧迫されており、業績への影響も懸念される会社に対して、

  • 資金繰りや業績が悪化し、貸し倒れリスクが高まることを避けたい
  • 貸倒引当金を無駄に積み立てたくない

と考え、融資を渋ることが多くなるのです。

銀行の立場をこのように考えてみると、過剰在庫が融資交渉に問題となる理由が分かるでしょう。

経営者の中には、過剰在庫を軽視する人も少なくありませんが、銀行と認識のレベルを合わせることが、融資交渉の第一歩と言えるでしょう。

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銀行はどのように判断するか

銀行は、融資を検討するにあたり、融資先の財務内容を分析します。

この時、棚卸資産回転期間がどうなっているか(棚卸資産が平均月商の何ヶ月分になっているか)を分析すれば、在庫が過剰であるかどうかが分かります。

財務分析の結果、過剰在庫を抱えているとわかれば、積極的な融資は難しくなります。

しかし、過剰在庫を抱えている会社は問答無用で融資を拒否するということでもないわよ。

在庫の状況と経営への影響度をしっかりと見極めて、融資しても問題なければ融資しますし、問題があれば担保次第で融資をする、保証協会の保証が受けられれば融資をする、いっそ融資をしないなど、判断が変わってきます。

したがって、過剰在庫を銀行員がどのように分析していくのかを知っておくと、融資交渉に非常に役立ちます。

問題ないと見なす場合

まず、在庫が過剰な状態になっていても、問題ないと見なす場合から見ていきましょう。

問題ないと判断されれば、過剰在庫は融資交渉にあまりマイナスにはなりません。

それよりも、資金繰りの状況や業績推移など、他の要素によって判断されていくこととなります。

もちろん、過剰在庫以外は何の問題もないという会社ならば、融資をスムーズに受けられる可能性もあります。

では、どのような過剰在庫ならば、問題ないのでしょうか。

それは言うまでもなく、資金繰りへの圧迫や業績への悪影響がほとんどないと思われる場合だね。

何の影響もなければ、在庫が過剰であろうと過少であろうと、融資判断の大きな根拠にはなりません。

悪影響のない過剰在庫とは、きちんと売上につながる過剰在庫です。

一時的に見込みが外れて過剰在庫になっていたとしても、結果的にしっかり売れるならば、資金繰りや業績への影響も小さいものです。

資金繰りの悪化や業績低下によって貸し倒れリスクが高まる危険性もないため、銀行は融資しても良いと判断するでしょう。

ポイントは、現状では過剰在庫状態になっているけれども、商品自体には根本的な問題がなく、資金繰りや業績にもほとんど影響しないということです。

例えば、

  • 一時的な需要低下によって過剰在庫となったが、短期間(半年~1年程度)のうちに需要が回復し、問題なく売れる
  • 非常に売れ行きが良い商品だから大量に仕入れたところ、一時的に過剰在庫となっているが、需要は相変わらず高いため問題なく販売できる

といったものならば、過剰となっている商品が短期のうちに利益につながり、そこから返済も見込めます。

もっとも、現時点では需要があったり、商品価値があったりしても、在庫としての滞留期間が長くなれば、過剰状態が解消されるまでに需要が低下したり、劣化などによって商品価値がなくなったりする可能性があります。

したがって、過剰状態の解消まで、需要や商品価値が維持されることが前提です。

将来的に売れるものだから問題ないと見なすには、半年~1年程度の短期間で過剰状態が解消され、適正な在庫水準に回復する必要があります。

やや問題ありとみなす場合

しかし、売れずに過剰在庫になっているという状態ですから、好ましくない場合の方が圧倒的に多いです。

売れない理由があって売れ残っているのであって、それが短期間で解消されることは少なく、処分しようにも時間がかかり、劣化などの問題が生じることとなります。

それによって、資金繰りや業績に与える影響がある程度見込まれるならば、融資交渉にはマイナス材料となります。

深刻な影響がないとしても、実際に資金繰りを圧迫し、赤字発生につながると判断されれば、銀行はそれなりに危険視するのです。

また、繰り返す通り、過剰在庫は滞留期間が長いほどリスクは高まるため、早期解消が鉄則です。

したがって、経営者はいずれ解消できると思っていても、半年~1年以内の解消が見込めない場合にはマイナスに見られることとなります。

問題が大きいと見なす場合

過剰在庫に問題があり、その影響度を見た時に申告であれば、融資交渉には大きくマイナスとなります。

例えば、抱えている過剰在庫があまりにも多く、需要も見込めず、処分することで赤字に転落する、資金繰りが行き詰まる可能性が高いなどの場合には、銀行はリスクが高いと判断します。

そのため、融資を受けられる可能性も低くなります。

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問題ないように見せかけるのは不可能

実際には、問題ありとみなされる過剰在庫を抱えており、納得のいく説明は困難と考えている会社の方が多いものです。

そのような会社で、あえて問題ないという説明を貫くならば、問題ないように見せかけて交渉することになります。

それを実践する会社もしばしばみられるため、銀行は騙されないように警戒しているよ。

では、具体的にはどのように見せかけるのでしょうか。

よくみられるのは、押込み販売と採算割れの値引き販売が挙げられます。

押込み販売

まず、押込み販売による見せかけから見ていきましょう。

押込み販売とは、取引先が実際に必要としている以上の商品を販売したり、元々必要ないものを販売したりして売上を計上し、過剰在庫が問題なく解消されたように見せかけるものです。

その商品は無理に動かしたものですから、後日取引先から商品を戻してもらい、代金も返金します。

当然、騙すことを目的に在庫を操作し、財務の見た目を良くしているのですから、不正会計にあたります。

過剰在庫が融資にマイナスの影響があると知っている会社では、このような不正を行うことがあるわ。

ごく表面的な見方をすれば、過剰在庫は実際に解消されるたようにも見えます。

しかし、実際には過剰在庫が解消されたわけではないので、ここで融資を出せば貸し倒れリスクが高まります。

採算割れの値引き販売

また、採算割れの値引きをして強引に販売し、過剰在庫を消化することもあります。

銀行には、短期間で売れるから問題ないと説明しておき、実際には採算割れの値引き販売によって在庫を適正水準に戻すのです。

このような販売をすれば、会社は損失を被ることになります。

銀行の望み通りに在庫水準を引き下げたかもしれませんが、業績や資金繰りには悪影響が出ているのですから、銀行が「過剰在庫が問題なく解消された」と見ることはできません。

なぜバレるか?

押込み販売や値引き販売をしようとしている会社には、銀行は融資することはできません。

そこで、経営者の「問題ない」という説明を見極めるために、実際に会社を訪問して在庫を確認し、本当に問題ないかどうかを調べることもよくあります。

実地調査をしてみると、管理状態によっては既に商品性を失っていると判断できることがあります。

また、実際に在庫を見ながら販売の見通しを説明してもらい、疑問点などを次々と質問していくと、どこかで矛盾が出てきたり、具体性に乏しいと感じられたりすることもあります。

そのように判断されれば、問題のある過剰在庫を抱えた会社として融資を検討されることとなるんだ。

もちろん、実地調査でもうまく騙せたとしても、結局はバレるのがオチです。

なぜならば、押込み販売や値引き販売をしたことは、決算書に必ず現れるからです。

押込み販売によって、過剰在庫を問題なく解消したように見せかけても、結局在庫は減りませんし、売上も上がりません。

したがって、消化した在庫相当の売上が計上されないため、銀行にはバレることとなります。

また、押込み販売によって売掛金を計上し、実際には取引先から支払いを受けないようにすれば、業績面でも問題ないように見えるでしょう。

しかし、決算書にはいつまでもその売掛金が計上され続けるため、消化した過剰在庫分相当の不良債権を抱えることになり、財務内容は悪化します。

その不良債権の内容が過剰在庫の処分によるものだと分かれば、押込み販売はバレます。

値引き販売も同様です。

短期間で過剰在庫を解消したということは、短期間で値引き販売したということですから、採算割れになった分の赤字が短期間で発生します。

決算内容を見れば、赤字が急に拡大していることによって、採算割れでの販売がバレてしまうでしょう。

銀行を騙すと大変なことになる

過剰在庫だが問題ないと主張し、結局は押込み販売や値引き販売をしていたと分かれば、銀行からの信用や一切なくなります。

これまでの取引で培ってきた信用も全て失われますし、期限の利益を損失し、銀行が全額回収に乗り出してくることもあります。

期限の利益とは、融資契約で定めた返済条件によって会社側に生じる利益です。

例えば、返済期間は3年、毎月25日に支払いと決められているならば、その返済を月1回、3年かけて行うという利益が得られます。

銀行は、期限の利益があることによって、月に2回以上の返済を求めたり、3年未満での返済を求めたりすることはできません。

しかし、会社に信用を失う行為をした場合には、期限の利益を損失することとなります。

例えば、会社が返済に遅れた、破産手続きをした、契約違反をしたなどの場合には信用を失うため、期限の利益も損失します。

他にも、「銀行が債権保全の必要を認めた場合」には、期限の利益を損失するとされています。

これは、債権保全の必要を感じるほどに信用を失った場合のことです。

過剰在庫が問題ないように見せかけるということは、銀行に嘘の情報を伝えて、騙して融資を引き出したということであり、期限の利益を損失しても不思議ではありません。

これまで培ってきた信用を失えば、その銀行からは二度と融資を受けられなくなり、資金繰りに大きな悪影響となります。

また、銀行から積極回収を受けている会社は、別の銀行も危険視するに違いありませんから、他行からの融資も望めなくなります。

さらに、実際には過剰在庫によって悪影響を受けており、財務的にも業績的にも問題がある会社ですから、期限の利益を損失して全額返済を求められてしまうと、資金繰りが破綻する可能性もあります。

つまり、銀行を騙したことによって、会社が倒産の危機に陥るという、全く割に合わない結果を招く可能性があるのね。

もちろん、このような最悪のシナリオを辿るのではなく、単に騙した銀行から二度と融資を受けられなくなり、可能な範囲で早期返済を求められるくらいで済むこともあります。

しかし、銀行を騙し通せる可能性は低く、それが経営を大きく悪化させることもあるのですから、騙そうなどと考えてはいけません。

どのように交渉するか

では、過剰在庫を抱えている会社が融資を引き出すためには、どのように交渉していけばよいのでしょうか。

問題ないことを説明できれば一番

最も良いのは、言うまでもなく、過剰在庫が問題ないことを説明できることです。

そのような説明をして銀行が納得すれば、融資交渉にマイナスの影響はありません。

納得を得るためには、過剰になっている商品に品質や構造の問題がなく、さらに需要の点でも問題がなく、短期間のうちに在庫を適正水準に戻せることを説明する必要があります。

例えば、例年冬季にたくさん売れる商品をいつものように仕入れたところ、暖冬の影響によって需要が低下し、売れ残ったとします。

銀行はこれを問題視しますが、需要が低下した要因が暖冬であれば、来年の冬には過剰分を消化できる可能性が高いです。

その商品が劣化しにくく、流行にも左右されにくいものであれば、過剰在庫を消化しきるまでに品質・構造的な問題も起こらないでしょう。

このような場合では、問題ないことをしっかり説明することができるでしょうし、銀行もあまり問題ないと判断することができるね。

例年通り仕入れて過剰在庫になったというのであれば、それだけの仕入れをする合理的な理由もあり、経営者の才覚を疑われることもありません。

過剰在庫がなぜ問題ないのかについて、具体的に説明する必要がありますが、それを目指すに越したことはありません。

問題が小さいことを説明してみる

もし、過剰在庫によって何らかの悪影響が見込まれるならば、それを隠すことなく説明します。

悪影響があるとは言っても、深刻なものではないことを説明することができれば、支援を引き出せる可能性があります。

むしろ、過剰在庫を放置することなく、早期に対処することができれば、被害を最小限に止めることができます。

短期的にはマイナスですが、長期的に見れば早めに対処したことでプラスになるという論点から説明することも可能です。

そのためには、現在過剰在庫を抱えている現状、そのような現状に至った原因について説明し、短期的に需要の回復が見込めないことも説明します。

それによって、早期に対処を図る理由を明確にすることができるね。

早期の対処では、値引き販売をしたり、値引いても販売できないものは廃棄したりすることになります。

それについても、具体的な数字をもって説明するべきです。

もし、従来は10%の利益を見込んでいた商品が900万円分余っているならば、10%値引きしてプラスマイナスゼロの状態に持ち込んだり、20%値引きして100万円の赤字を受け入れたり、50%引きにして400万円の赤字を受け入れたりすることとなります。

このように、確実に在庫を整理できる価格で値引き販売した際に発生する赤字を明確にし、その損失を利益でカバーして黒字を維持できることを説明すれば、銀行は大きな問題ではないと納得する可能性が高まります。

また、劣化などによって販売の見込みがなければ、この商品は廃棄することになり、仕入れ代金の900万円が丸ごと赤字となります。

値引き販売の場合と比べて、完全に廃棄する場合には赤字の金額も大きくなります。

利益を大きく減らしてしまうこともあるでしょう。

しかし、値引き販売より悪影響が大きいとしても、それによって経営が傾く可能性がないことを説明できればよいのです。

手元資金が潤沢な会社ならば、それで損失をカバーできるでしょうし、他行からの当座貸越が多額に余っている場合なども同様です。

それに加えて、廃棄損を計上して節税することや、過剰在庫を処分することで財務内容が改善されること、倉庫サイズを縮小して固定費を圧縮しつつ過剰在庫のリスク低減に努めることなど、何らかのプラス材料を見つけて説明に盛り込むのが良いでしょう。

そうすることによって、損失を嫌って過剰在庫を保有し続けるよりもマシな状況を作っていく姿勢があれば、好印象につながる可能性があります。

問題が大きい場合には・・・

値引き販売や廃棄によって生じる影響が大きすぎる場合も考えられます。

その損失によって業績が赤字に転落したり、資金繰りが回らなくなったりしてしまう場合です。

このような場合にも、交渉をあきらめてはいけません。

確かに、過剰在庫を処分することによって深刻な問題が発生し、経営が傾く可能性はあったとしても、銀行からの支援があれば経営は続けられるのです。

この場合には、いかにして銀行にリスクを負ってもらうかという視点で交渉する必要があるわ。

考えられる代表的な方法は、

  • 保全を提供する
  • 銀行に収益機会を与える
  • メインバンクに支援を仰ぐ

などが考えられます。

保全を提供する

保全となる資産を持っていない会社も多いかもしれませんが、もし担保による保全を提供できるならば、それは強力な交渉カードになります。

例えば、過剰在庫を処分することによって、3000万円の損失が発生して資金繰りが回らなくなる場合では、3000万円の融資を受けることで損失をカバーすれば、以前と変わらない資金繰りを続けていくことができます。

もし、3000万円以上の担保価値がある不動産や、3000万円以上の定期預金があれば、それを担保とすることで、銀行のリスクはかなり抑えられます。

したがって、深刻な過剰在庫問題を抱えた会社に対しても、融資が出る可能性はかなり高くなります。

銀行に収益機会を与える

保全を提供できない会社では、銀行に収益機会を与えるのが効果的です。

銀行の収益機会には、融資を出すことによって得られる利息収入のほかにも、送金手数料や為替手数料など、色々なものがあります。

もし、自社の事業でそれらの手数料が発生しているならば、交渉する銀行にそれらの収益機会を与えることを提案し、交渉カードとするよ。

例えば、自社の事業が海外への輸出入を伴っているならば、海外からの仕入れ代金を送金したり、海外から米ドルで支払われた代金を日本円に替えたりする必要があります。

銀行にとって、融資以外で稼げる機会は貴重ですから、これが交渉に役立ちます。

過剰在庫による悪影響が深刻であること、しかし融資を受けられれば資金繰りは問題なく回っていくことを説明し、その上で、

「現在、東南アジア向けの輸出契約がまとまりそうなのですが、もし支援していただけるならば、その会社との為替取引は全てそちらでお願いすることも可能です」

などと持ち掛けるのです。

それにより、銀行がリスクを負うだけの価値がある取引だと判断すれば、融資を引き出すことができます。

メインバンクに支援を仰ぐ

保全もなく、銀行へ収益機会を与えることもできない銀行は、メインバンクに支援を依頼するべきです。

メインバンクは、融資額が他行よりも大きく、貸し倒れになれば最も大きな被害を受けます。

また、融資以外の取引も大きいのが普通ですから、それを失いたくないとも考えます。

もし、メインバンクが支援を拒否すれば、他行もメインバンクの動向に倣い、その会社への融資を拒否する可能性が高いです。

そのため、会社は過剰在庫の影響に耐えられずに潰れることになります。

そうなれば、メインバンクも大きな被害を受けることになりますから、それを防ぐための支援が期待できます。

しかし、過剰在庫による損失を融資でカバーしても、長期的に経営が危ないと思われる会社に対しては、メインバンクも支援を見送ることがあります。

結局倒産してしまうならば、支援を続けて最終的な損失を大きくするより、早いうちに見切りをつけたほうがいいと考えるからです。

したがって、メインバンクに支援を仰ぐ際には、融資を受けることで経営が安定していくことを、具体的な計画によって説明する必要があります。

それによって納得してもらうことができれば、支援を受けられる可能性は充分にあります。

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実際の交渉の様子

以上のことを踏まえて、ここからは具体的な交渉を見ていきましょう。

過剰在庫を抱えた会社の経営者が、融資担当者に融資交渉を持ち掛けた際の対話を見ていきます。

ここで例に挙げる会社は、

  • 輸入食品の販売業者のA社
  • 平均的な在庫水準は月商1ヶ月分のところを、売れ残りによって月商3ヶ月分の過剰在庫を抱えている
  • 過剰在庫の解消見込みなし
  • 過剰在庫の処分によって、財務・業績に悪影響あり
  • 準主力行に海外送金を材料とした交渉を進める

と設定します。

担当者「在庫が月商の3ヶ月分になっていますね。
在庫が非常に多いため、正直に申し上げて、積極的には対応しにくい印象です。」
経営者「おっしゃる通りです。」
担当者「過剰在庫については、どのようにお考えですか。」
経営者「今年は、世界的に○○の収穫高が少なかったため価格が高騰しています。
例年より少し抑え気味に輸入したのですが、消費が鈍って売れ行きが3分の1ほどに落ちてしまったのです。
食品ですから、早めに売らなければ賞味期限の問題が出てきます。しかし、値引きしても正直売れるかどうか。」
担当者「となると、廃棄処分でしょうか。」
経営者「今のところ、在庫の半分程度は半額で売れることが決まっています。
こちらに、発注書も持ってきました。
しかし、残りの半分は廃棄になることも見込んで、今後の資金繰り計画はこのようになる見込みです(資金繰り表を見せる)」
担当者「なるほど。
この資金繰り表を見ると、足元の手元資金にはまだ余裕がありますし、すぐに資金繰りに行き詰ることはなさそうですね。」
経営者「そうです。
今は、過剰在庫の管理にも手間がかかっていますが、それを処分すれば業務もスムーズになるでしょう。
しかし、手元資金を大きく減らすと、今後の安定性にも影響が出てきますので、できれば融資をお願いしたい次第です。」
担当者「わかりました。
ところで、この融資に対応させていただくにあたって、御社の海外送金を当行で取り扱いさせてもらうことは可能でしょうか。」
経営者「海外取引は、メインバンクに全てお願いしているのですが・・・」
担当者「もちろん、それを当行にお移しいただくのは問題があると思います。
そこで、例えば今後の新規取引について、海外送金を当行でご検討いただけないでしょうか。」
経営者「それなら、大丈夫です。
お借りした資金は海外送金に使いますから、御行で送金をお願いします。」
担当者「ありがとうございます。
既に値引き販売が決まっているものについて、発注書のコピーを頂くことは可能でしょうか。」
経営者「もちろん大丈夫です。」
担当者「ありがとうございます。
では、ご融資の検討をさせていただきます。」

A社が取り扱っているのは食品であり、鮮度の問題があることから、時間をかけて過剰在庫を処分していくことができません。

したがって、大幅な値引きと廃棄によって過剰在庫を処分することになり、担当者もこれを問題視しています。

当然、被る損失は小さくないのですが、その損失を織り込んでも資金繰りが続くことを具体的な計画によって示し、さらに海外送金を交渉材料にすることで、前向きな対話に持ち込むことができました。

担当者はこの案件を持ち帰り、上司と協議し、稟議の方向性を固めます。

上司とは、以下のような会話が行われます。

担当者「A社から融資の依頼を受けていますが、過剰在庫を抱えているという問題があります。」
上司「どれくらい抱えているの?」
担当者「月商3ヶ月分です。」
上司「A社が扱っているのは食品だろう?それは多いな。」
担当者「はい。値引き販売によって処分できるのは半分程度で、残りは廃棄の可能性も高いです。」
上司「半分売れるのは意外だな。」
担当者「といっても、半額まで値引きしての販売です。」
上司「それは確実に売れるの?」
担当者「発注書のコピーもいただいています。」
上司「そうか。在庫処分の影響はどの程度?」
担当者「資金繰り計画表を提出していただきました。それによると、手元資金は潤沢ですから、すぐに行き詰まることはなさそうです。」
上司「どのくらいの融資を考えているの?」
担当者「社長からは、3000万円の希望となっています。無担保扱いの予定です。」
上司「無担保で大丈夫か?」
担当者「会社にも社長にも不動産がありませんが、手元資金は当行宛に5000万円ほどありますから、広義の保全は取れていると思います。
また、この融資を出すことで、海外送金の一部を当行に任せていただけるとのことですから、それも加味しての無担保扱いです。」
上司「あそこは融資以外に付き合いがなかったよね。取引が広がるチャンスだな。」
担当者「そのように思います。」
上司「まあ、3000万円くらいなら無担保でも大丈夫だろうし、融資の方向で稟議をあげてくれ。」
担当者「分かりました。」

上司も、過剰在庫を抱えていることを問題視しているのですが、資金繰りが行き詰まらないことが具体的な説明によって明らかであること、手元資金が確保されていること、融資以外の取引が獲得できることを考慮して、積極的な対応を検討しています。

過剰在庫はマイナスに見なされるものですが、交渉次第で融資を引き出すことは十分に可能なんだ。

融資担当者が案件を上司と協議し、その時点で融資謝絶となれば、稟議されるまでもなく融資は拒否されます。この時点で融資すべきではないと判断できる案件を稟議で検討する意味はないからです。

したがって、上司が稟議をあげてよいと判断すれば、融資担当者は稟議書を作成し、基本的には融資しようという方向で稟議が始まります。

稟議書は稟議のよりどころになる重要な資料です。過剰在庫の問題があるA社では、以下のような稟議書が作られます。

概況

  • 輸入食品の販売業者。
  • 大手小売業者に販路を持っており、事業基盤は確立されており、他行も積極支援。
  • 問題点は過剰在庫。季節性商品の仕入れ計画の失敗によるもの。
  • 足元の在庫水準は月商の3ヶ月程度。在庫圧縮に伴い損失が発生するもの。
  • 社長以下、在庫の早期適正化に注力中。

資金使途

  • 経常運転資金。
  • 商品の仕入れ資金に充当するもの。

融資条件

証貸、金額30百万円、期間3年の分割返済、利率1.975%

保全

  • 全額無担保扱い許容。
  • 会社及び代表者に見るべき資産なく、他行も無担保にて対応中。
  • ただし、1年以上にわたり当行に預金平残50百万円以上あり、広義の保全は充足しているものと思料。

資金調達余力

  • 会社及び代表者に見るべき所有不動産なく、担保余力はなし。
  • マル保は他行にて現在20百万円の利用あり。
  • 当社の業容を勘案し、さらに30百万円程度の保証余力があるものと思料。

狙い

  • 当行の準主力先。
  • 過剰在庫の問題を抱えているが、資金繰りに問題はないもの。当社は海外送金と為替取引があるが、これは現状すべて主力行に集約されているもの。
  • 今回の融資取り上げにより、海外送金の獲得など取引振りの確保を図りたい。

 

上司との協議でもゴーサインが出ているならば、基本的には「融資を実行したいが、いかが」というスタンスで稟議書が作られるため、このような内容になると思われます。

どんな場合でも基本的な考え方は同じ

過剰在庫などの問題点についてはしっかりと記載し、資金繰りには問題がないこと、取引振りの充実が図れることなどを説明し、リスクとメリットをはかりにかけ、融資判断ができるように作られています。

過剰在庫は確かに問題ですが、それを含めても資金繰りは続くことや、取引メリットがあることを考えると、A社への融資は実行される可能性が高いです。

融資担当者との面談が稟議全体へ及ぼす影響を考えると、担当者との面談の重要性が分かるわね。

そこで過剰在庫の状況を正確に伝え、資金繰りと業績への影響や対策についても具体的に説明し、取引メリットを提供することによって、融資が積極対応の方向へと進んでいくのです。

過剰在庫を抱えている会社には、A社の例よりひどい会社もあると思います。

そのような会社でも、基本的な考え方は同じです。

すなわち、

  1. 社内で過剰在庫の処分について検討する(いずれ売れるから問題ないといった甘い考えを捨てる。仕入れ、営業、経理、生産管理など、在庫と資金繰りに関係する業務の担当者も巻き込んで検討する)
  2. 過剰在庫処分による影響を織り込んだ資金繰り計画を立てる(過剰在庫処分による資金繰りへの影響を見極める。必要な資金調達額も算出する)
  3. 銀行に検討結果と資金繰り計画を持ち込み、できるだけ取引メリットを提供しつつ支援を仰ぐ

という流れです。

これにより、融資を受けられる可能性は大きく高まります。

単に「過剰在庫で資金繰りが厳しいので、融資をお願いします」という態度で融資を申し込んだのでは、融資担当者から過剰在庫の影響を聞かれたときにうまく答えられません。

悪影響の程度が分からなければ、取引メリットとリスクを比較することも困難ですから、「拒否したほうが無難だ」と思われる可能性も高いです。

しかし、しっかりと計画して依頼していれば、それが資金繰りに悪影響のある場合でも、冷静に対策を図っている姿勢が安心感につながります。

また、資金繰りへの影響度が詳しく分かれば、銀行もリスクを正確に測ることができるため、少なくとも「しっかり検討してみよう」という姿勢を引き出せます。

このように、しっかりと交渉材料を組み立てた上で交渉に入ることで、銀行の印象や実際の融資判断に、非常に大きなプラスになるのです。

過剰在庫という問題を抱えている会社だからこそ、このような融資交渉をする必要があるのです。

CF戦隊
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まとめ

過剰在庫の問題を甘く捉えている経営者は少なくありません。

しかし、実際にはそれなりの問題をはらんでいることが多いもので、銀行も融資判断には慎重になります。

甘く考えている経営者は、特に対策を考えることなく、融資をお願いすることになります。

それでは、融資交渉が難航し、融資を受けられない可能性も高いです。

しっかりと融資を引き出して資金繰りを安定させるためにも、本稿で紹介した流れも参考にしつつ、融資交渉に臨んでほしいと思います。

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