近年、ファクタリングという言葉を耳にすることが増えてきました。
ファクタリングサービスとは、いったいどのようなことをしてくれるのでしょうか。
一般的に、ファクタリングサービスは資金調達に役立つものとして知られています。
しかし、実際には資金調達だけではなく、その他の色々な面で役立ってくれるサービスなのです。
本稿では、ファクタリングサービスがやってくれることを色々な面から見ていきます。
ファクタリングサービスとは?
会社が事業を継続して行くにあたり、色々な業務の中でも販売は欠かすことのできない業務です。
販売をしなければ自社が提供する商品・製品・サービスなどがキャッシュを生み出すことはなく、事業の継続が不可能であることは言うまでもありません。
その販売を行うとき、取引先から販売と同時に現金で決済が行われることは基本的にはありません。
ほとんどの場合には、売掛金や手形などによって、後日の支払いを約して製品やサービスを提供するものです。

しかし、売掛債権は流動資産に属する資産であるとされるものの、それほど流動性が高くない場合が少なくありません。
売掛債権の支払い期間は短くても1〜3ヶ月です。
長ければ6ヶ月前後になることもあり、これは取引先の経営状態や業種によって変わってきます。
3ヶ月以内で回収できるならば問題にならないことも多いでしょう。
それ以上になれば、それは支払いサイトの長期化と言える状態であり、自社の資金繰りに悪影響を及ぼすことになります。

その製品やサービスが自社独自のものであるならば、開発費がかかっているものです。
開発費の回収をいかに素早く行うかということは、自社の今後の展望に深く関わってくる問題です。
独自の製品サービスでなくとも、それを製造するための原材料の仕入れにはコストがかかっていますし、製造や製品の在庫管理にもコストがかかっています。
サービスを提供している場合には原材料の仕入れや製造・在庫管理コストなどはかからないこともあるでしょう。
ですが、やはり維持費や人件費などのさまざまなコストがかかってくるのです。



支払いサイトが長期化すれば、自社はマイナスを抱えたまま事業を継続しなければならず、それゆえに資金繰りが厳しくなってきます。
資金繰りが厳しくなった時、公的機関や銀行から融資を受けることができれば良いでしょう。
それができなければ資金繰りに行き詰まってしまうことになります。
資金ショートを起こし、買掛先への買掛金の決済、銀行からの借入金の返済などが滞ってしまいます。
そうなれば、取引先や銀行からの信用を失ってしまうため、今後の事業継続に支障をきたすことになります。
また、決済や返済が滞ることは信用不安情報であり、他の取引先もすぐにその情報をキャッチするでしょう。

そのようにして多方面から信用を失ってしまった場合には、経営自体が行き詰まり、ひいては倒産ということにもなりかねません。
そこで、売掛債権を保有している状態で資金繰りに行き詰まった時、利用すべき方法がファクタリングサービスです。
ファクタリングサービスとは、自社が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することによって、資金を調達する方法です。
したがって、資金繰りに困った時にファクタリングサービスを利用して売掛債権を資金化すれば、買掛先や銀行への支払いが滞ることありません。

このように、ファクタリングサービスの最大の効用は売掛債権を資金化することができることなのですが、ファクタリングサービスではそれ以外のメリットも得られます。
本稿では、そのことも踏まえて解説していきます。

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ファクタリングサービスには二種類ある
まず、一口にファクタリングサービスといっても、大まかに分けて二種類あることを知らなければなりません。
上記のように、売掛債権を買い取ってくれるファクタリングサービスのことを、特に「買取ファクタリング」と言います。
もう一つの種類として、売掛債権の保険をかけられるファクタリングサービスである「信用保証ファクタリング」というものもあります。
この両者を詳しく解説すると、以下のようになります。
買取ファクタリング
買取ファクタリングは、償還請求権の有無に従って、さらに二種類に分けられます。
償還請求権とは、契約によって取引を行ったところ、契約の目的となるものが実現不可能になった場合には、取引相手に弁済を求めることができる権利のことです。
買取ファクタリングを行なった時、買い取ってもらった売掛債権が回収不能になった場合を考えてみましょう。
ファクタリング契約が償還請求権留保になっているか放棄になっているかによって、結果が大きく異なるのです。
償還請求権留保の場合
ファクタリングサービスを利用して資金化した売掛債権が、支払期日に全額または一部の支払いが売掛先によって拒否された場合。
償還請求権が留保になっていると、ファクタリング会社の請求によって、自社は売掛債権を受け戻す義務を負います。
買取代金を前払いで受け取っているならば、その代金をファクタリング会社に弁済しなければなりません。
償還請求権放棄の場合
償還請求権が放棄でのファクタリング契約を交わしていれば、売掛先が支払いを拒否した場合にも、自社が弁済する必要はありません。
しかし、ファクタリング会社は貸し倒れリスクの低減のために、ファクタリングを依頼された売掛債権について、売掛先の信用力を調査します。

その結果、適正と認めた場合には、ファクタリングサービスを行います。
しかし、償還請求権放棄が適用されない特約が設けられているのが普通です。
- 手形要件が欠陥していたり
- 偽造・変造・盗難などであったり
- 詐欺などによって発生した売掛債権であったり
- そのほか公権力によって売掛先が債務を免除されている
このような場合には、特約により自社が弁済する必要が発生するのです。
とはいえ、これらの特約はまともに営業している会社は当てはまらないものです。

信用保証ファクタリング
信用保証ファクタリングとは、企業に対してリスクヘッジ機能を提供するファクタリングサービスです。
このファクタリング契約を結べば、売掛債権が支払い期日に支払われなかった場合に、ファクタリング会社から補填を受けることができます。
このときの保証限度額は、信用保証ファクタリングをかける売掛債権の債務者の信用力を調査した上で決められます。
自社は保証料を支払う必要があります。

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ファクタリングサービスの流れ
では、ファクタリングサービスを利用する際の流れを見ていきましょう。
これも、買取ファクタリングと信用保証ファクタリングによっていくらか異なるため、それぞれについて解説をします。
買取ファクタリング
- 自社が取引先に製品を販売し、後日の支払いを約して売掛債権が発生する。
- ファクタリング会社にファクタリングサービスを申し込む。
- ファクタリング会社は申し込まれた売掛債権について、売掛先の信用力を調査し、買取率を決める。
- 見積もり内容に納得すれば、ファクタリング契約を結ぶ。
(この時点で売掛債権はファクタリング会社に譲渡される。支払い方法はファクタリング会社によって異なるが、最短即日で支払いが行われる) - 後日の支払い期日になると、取引先から自社に代金の支払いが行われる。
- 自社はその代金をファクタリング会社の口座へスライドさせて支払う。

このファクタリング形態のことを、「二社間ファクタリング」といいます。
つまり、自社とファクタリング会社の間だけで行われるファクタリング形態です。
なぜ二社間で行うのかといえば、日本ではまだファクタリングサービスがそれほど浸透しておらず、売掛債権の転売を快く思わない会社が多いからです。
債権譲渡登記が発見されれば、それを危険な兆候として捉える会社も少なくありません。
このため、ファクタリングサービスの利用が知られると、痛くもない腹を探られ、最悪の場合取引の見直しや停止に至ることもあります。
だからこそ、売掛先に知られないように、あえて二社間ファクタリングを行うのが一般的なのです。
もっとも、これはファクタリングサービスが浸透していないからであって、ファクタリングサービスが浸透している欧米ではこのようなことは起こりません。
ファクタリングサービスを利用する際には、多くの企業が自社・売掛先・ファクタリング会社の三社間で「三社間ファクタリング」を行うのが普通です。
日本でも、今後ファクタリングサービスが浸透して行くことによって、三社間ファクタリングが一般的になるかもしれません。
信用保証ファクタリング
- 自社が取引先に製品を販売し、後日の支払いを約して売掛債権が発生する。
- ファクタリング会社にファクタリングサービスを申し込む。
- ファクタリング会社は申し込まれた売掛債権について、売掛先の信用力を調査し、保証限度額はと保証料を決める。
- 見積もり内容に納得すれば、ファクタリング契約を結ぶ。(この時点で売掛債権には保険がかけられる)
- 後日の支払い期日に、取引先から自社に支払いが行われなかった場合、ファクタリング会社から保証限度額の範囲内で補填を受ける。

- 支払い遅延となった時点で支払ってくれるもの
- 支払い不能(貸し倒れ)となった時点で初めて支払ってくれるもの
この2種類になります。
これはファクタリング会社によって異なるため、申し込みの際にはよくチェックしておく必要があります。
買取ファクタリングも信用保証ファクタリングも、一つの売掛債権にたいして行うこともできます。
その場合には買取料や保証料が高くなる傾向があるほか、ファクタリングサービスによる資金調達以外の波及効果も得られにくくなります。
ため、できるだけまとまった単位でファクタリングを行うのが良いでしょう。

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ファクタリングサービスは資金調達だけではない
さて、資金調達に利用されやすいファクタリングサービスですが、実際には資金調達以外にもさまざまなメリットがあります。
たとえば、以下のようなメリットです。
リスクヘッジに役立つ
これは、すでに述べたことの繰り返しになりますが、ファクタリングサービスによって得られる重要な効果であるため、再度解説しておきます。
まず、買取ファクタリングを利用するときに、償還請求権を放棄での契約を結んでいれば、その売掛債権が回収不能になった際のリスクはファクタリング会社が負ってくれるのです。

信用不安がないと思っていた売掛債権も、実は調査不足であっただけであり、予期せぬ貸し倒れに見舞われてしまうということがあります。
しかし、そのような売掛債権も含めファクタリングをしていれば、万が一貸し倒れとなった際にも自社が被害を受けることはありません。

このような保険を利用していなければ、貸し倒れの際には大きな被害を受けることになり、その危険が常につきまとうことになります。
しかし、信用保証ファクタリングを利用していれば、貸し倒れの際に保証を受けることによって、被害を軽減することができます。

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売掛債権管理に役立つ
次に、売掛債権管理に役立つということです。
通常、売掛債権管理は自社で行うものです。
売掛債権管理マニュアルを持っていない会社も多く、それゆえに管理が行き届かず、回収遅延や貸し倒れに陥ってしまうこともあります。
しかし、ファクタリングサービスを利用すれば、売掛債権管理に役立ちます。
まず、自社の売掛債権管理が全くうまくいっていない状態であれば、それを立て直すのは容易ではありません。

ゼロの状態から次第に管理体制を作っていけば、比較的容易に売掛債権管理が行き届くようになるでしょう。
また、ファクタリング会社によっては長期的な契約が可能となっています。
そのような長期でのファクタリングサービスを利用すれば、将来的に発生する売掛債権も随時ファクタリングしてもらえることになります。
このとき、ファクタリング会社はリスクコントロールを適切に行いながら長期的なファクタリングを行う必要があります。
そのため、定期的に取引先の信用調査を行い、必要に応じて与信限度額などの見直しも行ってくれます。

財務状態改善に役立つ
最後に、ファクタリングサービスは財務状態改善に役立ちます。
たとえば、複数の売掛債権をファクタリングすることによってまとまった資金を調達すれば、それで買掛金の決済をしたり、借入金の返済をすることも可能です。
このとき、流動性の低い売掛債権の残高が減って現金が増えます。
買掛金や借入金の残高も減って財務が圧縮されれば、財務改善となるのです。
このほかにも、財務状態をはかる指標の一つに売掛債権回転率や売掛債権回転期間というものがあります。
売掛債権回転率が高ければ、販売のために投じた資金を効率よく回収できているということです。
売掛債権回転期間が小さければ、発生した売掛債権を順調に回収できているということがわかります。
計算式は以下です。
- 売掛債権回転率の計算式
売掛債権回転率(%)=売上高÷売掛債権÷100 - 売掛債権回転期間の計算式
売掛債権回転期間(ヶ月)=売掛債権÷月商
このいずれにおいても、ファクタリングサービスを利用することで売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、残高を減らしてしまうことが有効です。
計算式をみればわかるとおり、売掛債権回転率は売掛債権残高が減れば高くなり、売掛債権回転期間は売掛債権残高が減れば小さくなるからです。

財務状態が改善されれば、取引先からの信用向上につながり、今後の取引に好影響をもたらすでしょう。
また、銀行からの信用も向上しますから、必要な際に融資を受けられる可能性も高まります。
ファクタリングサービスでは売掛債権を買い取ってくれますが、それ以外にもさまざまなメリットも提供してくれるのです。
ファクタリングサービスを検討する際には、ぜひ資金調達だけではなく、それ以外のメリットも把握しながら、最大限に活用することをお勧めします。